「住まい」から、どのくらいの二酸化炭素が出る?

100名以上が参加した第16回目の見学会。学生、住宅関連の会社員、一般見学者まで様々な人が参加していた100名以上が参加した第16回目の見学会。学生、住宅関連の会社員、一般見学者まで様々な人が参加していた

最近の日本は、急に土砂降りの雨が降ったり、大きなヒョウが落ちてきたり、大型台風が発生したりと、気象が乱れているのは周知の通りだ。地球温暖化の影響なのは容易に想像できるが、そうした中で地球温暖化対策も各分野で進められている。

その中で住宅と言えば一見結びつかないように思えるが、住宅分野はCO2排出量に大きな関係がある。現在、日本のCO2排出量は年間約12億トンというが、建築や建設まわりで排出されるCO2の量は全体の約40%もあるという。そのため、住宅分野のCO2排出量削減をめざし省エネ住宅などが謳われているが、1999年に改正された次世代省エネルギー基準の断熱基準は法的拘束力はなく、日本の住宅の断熱化率は先進国の中でも最低というデータもある。当然、断熱性能が低ければ、暖房や冷房を使い、エネルギー消費が多い住宅、つまりCO2排出量も多くなるというわけだ。

そうした中で2020年、五輪が開催されるこの年に建築物の省エネ基準適合が「義務化」される。その義務化にあたって、動き出す住宅まわりの省エネ。その中でもやはり気になるのは住宅自体の研究だ。現在どのような省エネ住宅が研究されいるのかご存じだろうか?住宅メーカーや工務店などでも様々な研究はされているが、今回取り上げるのは独立行政法人の建築研究所が2011年から研究している「LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)」だ。

建築研究所のある茨城県つくば市で、今年6月に開かれたLCCM住宅の見学会。
どのような住宅なのか、見学会に参加してみた。

LCCM住宅とは?

ライフサイクルカーボンマイナス概念図ライフサイクルカーボンマイナス概念図

「LCCM住宅」は一言で言えば、住宅の長い寿命の中で“総CO2排出量をマイナスにする住まい”ということだ。
マイナスとはどういうことか?建設時、住んでいる時の運用時、取り壊しなどが発生した場合の廃棄時を通して、建設作業や暖房などCO2が大量に排出され、当然エネルギーも大きく消費される。こうした消費活動に関しては極力省エネ施策を行う一方、太陽光発電などの創エネでエネルギーを作り住宅寿命の生涯かけてCO2による収支をマイナスにするという。

平成21年度にそうしたコンセプトを基にライフサイクルカーボンマイナス住宅研究・開発委員会が設立された。村上周三氏(建築研究所理事長(当時))を委員長に慶應義塾大学の伊香賀俊治教授、建築研究所の桑沢保夫氏、首都大学東京の小泉雅生教授などがメンバーとして参加。様々なアイデアが詰まったLCCM住宅を建築研究所の敷地内に建てた。

見学会ではLCCM住宅の概要について桑沢氏と小泉教授から説明があり、その後、実際のLCCM住宅を見学するために移動をした。

衣替えができる住宅?

では、具体的にどんなアイデアが盛り込まれた住宅なのだろうか?
テーマは「衣替え」ができる住宅だという。どんな最新住宅なのか近未来的なものを想像しながら見に行くと、どちらかというと従来の日本の家屋を少しスタイリッシュにしたものが見えてきた。

LCCM住宅の大きなデザインコンセプトは、「多層レイヤー」「ストライプ状の平面構成」「積層された断面構成」「モード」「自然エネルギー利用」「アクティビティに応じた温熱環境と空間構成」と6つあるという。

この中でも「多層レイヤー」は面白いコンセプトだと感じた。開口部の部分を下記のように4つのレイヤーに分けてそれぞれの役割・領域を作り出し、日差しや空気の流れを変更できる。

視線制御レイヤー・・・フスマ、ロールスクリーンなど
空調区画レイヤー・・・木製建具、断熱障子など
日射制御レイヤー・・・木製横ルーバーなど
断熱・気密レイヤー・・・木製気密サッシ、ハニカムスクリーンなど

外部に窓(断熱・気密レイヤー)、窓の内側に木製ルーバー(日射制御レイヤー)、室内の縁側のようなプチ廊下をはさんで木製建具、断熱障子(空調制御レイヤー)、そして部屋と部屋との間に扉がなくロールスクリーン(視覚制御レイヤー)という配置になっている。

その時の気分に応じて住まいの環境を調整できるのが特徴で、想定モードが6つ設けてあり、そのモードにあわせてレイヤーを開けたり、閉じたりする仕組みだ。
例えば、通年時、風を心地よく感じたい場合には「通風モード」として、断熱・気密レイヤーの窓を開けて、日射制御レイヤー(木製横ルーバー)は閉じる。つまり、風を室内にいれながら、日射に関してはルーバーで光を遮断できる。ただ風をいれるだけでなく通風塔から風を出す風の“通り道”を設けているので、住宅内全体に通風がいきわたる設計だ。
また、夏の日中の場合には、冷房を住宅全体に行き渡らすよう断熱・気密レイヤーと日射制御レイヤーを閉じ、プラスして空調区画レイヤーと通気塔も閉じる。極力気密空間を小さくして冷気を負担を低減する。

状況に応じて環境を調整することができるレイヤーだが、それと合わせて今回特徴的なのが、屋根の上に見える腰屋根。古い伝統家屋などでよくみかけた腰屋根を今回建築研究所では「通風塔」と呼び、2カ所設けた。レイヤー部分で風を取り込み、通風塔から風を排出する。自然エネルギーの恩恵を受けやすいつくりになっており、見学会時に入った実験棟も風と光をダイレクトに感じることができた。

外側に窓(断熱・気密レイヤー)、窓の内側に白色の木製ルーバー(日射制御レイヤー)、</br>室内の縁側のようなプチ廊下をはさんで木製建具(空調制御レイヤー)になっている外側に窓(断熱・気密レイヤー)、窓の内側に白色の木製ルーバー(日射制御レイヤー)、
室内の縁側のようなプチ廊下をはさんで木製建具(空調制御レイヤー)になっている

風の流れが大事

屋根の上に見える通気棟屋根の上に見える通気棟

こうした仕組みを見て感じたことが、デザインだけでなく中身のコンセプトも伝統的な日本の家屋にほかならないのではと思った。日本の家屋で考えれば、部屋は襖などで区切り、軒で強い日差しに対して影をつくり、腰屋根をつくり空気の循環をよくする。さすがに断熱・気密性に関しては当てはまらないが、こうしたコンセプトが従来の日本家屋を彷彿とさせた。

その他にも、住宅のCO2を低減するために、ベタ基礎ではなく布基礎を採用する、国産の木材を使用する、また創エネのために太陽熱給湯パネルや太陽光発電パネルを屋根に設置するなど他にも現在の技術が様々な箇所で施工されている。建設時には太陽光発電パネルをたくさん使わなければならないため通常の住宅と比較してCO2排出量が少し増えているが、運用時にはエネルギー消費の倍近い太陽光発電があるため、一般的な木造住宅の寿命といわれている30年の期間でCO2排出量を充分にマイナスにできるという。建築研究所が2012年に発表したデータによると、年間排出CO2の算出結果は燃料電池使用時に、-3003.8kg。家電、照明、換気、調理、冷房、暖房、給湯で算出されたCO2排出量を足して、それを創エネした太陽光発電分マイナスした結果だ。

次世代省エネ基準の適合が義務化されるまで後6年。住宅業界自体も“変化”を免れられないからこそ、住まい手の私たちはより住まいの技術についても知っておきたいものだ。今後もLCCM住宅のデモンストレーションが不定期だが行われるという。(※建築研究所のHPを参照)興味がある人は、実際にどんな住宅なのか見学してほしい。

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LCCM住宅デモ棟の計測に基づく運用時の省CO2の可能性
http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/lccm/lccm-02.html

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