社会的状況の変化と、住宅へのニーズの変容とは?

大京のライオンズリビングラボの商品が置いてあるモデルルームに取材してきた大京のライオンズリビングラボの商品が置いてあるモデルルームに取材してきた

現在、住まいに関する問題として社会的状況の変化と住宅需要ニーズの変容が起きている。
社会的状況の変化で言えば、少子高齢化や単身世帯の増加などが挙げられる。国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2013年1月推計)によると、単身世帯は2015年には総世帯の1/3に達して、さらに増加する見込みだ。
住宅需要ニーズを一言で言えば、脱昭和スタイル。「個室が欲しい」といった昭和的な考えから脱して、東日本大震災前後から“つながり”を求めた住宅ニーズに移行している。例えば、個室よりもLDKを広くとり家族がゆっくり一緒にいられる場所を設けたり、近年シェアハウスが急激に増えたのも、そうした人と人との“つながり”を求めた流れからくるのものだろう。

こうした変化は、全国1500万人が住むマンションにも当然あてはまる。

しかし、マンションはどちらかというと“つながり”に希薄な印象があると思うがこうした環境やニーズの変化の中で、現在どういう試みが行われているのか?今回、マンションの住宅設備などの商品開発から、そうした「変化」に対応する事例を紹介したい。

設計者目線でなく、生活者目線での商品づくり

座談会の様子座談会の様子

今回、取材させていただいたのは株式会社大京の商品企画部 企画開発課 リビングラボチームのチーフ山岸真樹氏。ライオンズリビングラボという一般ユーザーの声を集めて、住まいに反映し「形」にしていくプロジェクトを推進している。2005年からプロジェクトが始まり2006年にプロジェクトとしての初商品「L's KITCHEN(エルズキッチン)」を生み出した。現在、誕生から約10年…。プロジェクトの立ち上げから在籍する山岸氏は当時をこう振り返る。

「それまで設計や建築に携わる人は男性が多く、どうしても普段はあまり家にいない男性目線になりがちでした。そうした中で、約36万戸の供給実績がある大京グループには、お客様からの多くのご意見がありました。その声を生かすことはできないか?ということで、スタートしたのがライオンズリビングラボ。当時インテリアデザインに携わっていた女性メンバーが集まり、それまでの男性目線ではなく、従来の当たり前の仕様を一から見直し、“生活者目線でモノ作りに取り組もう”ということでスタートしました」

これまでに大京は、ユーザーと共創でキッチン、洗面化粧台、収納などマンション住居環境にあったオリジナル商品を約50アイテム以上生み出したという。しかし、単に、最新設備を追加したり、スタイリッシュなデザインにするということだけではない。どちらかと言えば、“痒いところに手が届く”ようなそんな生活者目線で商品を開発を行っているのが、特徴だ。

家族のコミュニケーションを考えた“痒いところに手が届く”キッチン

今回、大京のモデルルームで、ライオンズリビングラボが開発したオリジナル商品を幾つか見せてもらった。

プロジェクトの初商品として生み出され、これまで何回かのバージョンアップを果たしてきたL's KITCHEN。シンクを端に寄せて調理台スペースを広くする、コンロの近くに、調味料やおたま・へら等の収納を配置するなど、生活者にとって使い勝手のいい工夫が施されていた。面白いと思ったのが、シンク下にある収納。戸建てでいうと、台所下収納のような役割をもっている。収納には通気ができる穴が下部にあいており、根菜などいれても、腐らずに暗所保存できる。

キッチン以外にも洗面化粧台や下足入を見せてもらった。洗面化粧台の下に、マニキュアなどの小物がおける収納や、靴の幅を考えた靴収納。正直、見かけのスタイリッシュさだけでなく、その部屋で実際に住む人にとってはどれも痒いところに手が届くようなものだろう。

「キッチンは家族とのコミュニケーションが自然にできる場所です。2人立って一緒に作業ができるキッチンならば、料理をしながら話ができますよね。また、収納に関しても、どこに何がしまってあるかが家族誰でも分かりやすい収納であれば、誰か一人に任せっぱなしにせずみんなで協力できるはずです」

確かに料理するスペースが増えたり、家族みんなで共通認識ができる収納場所があると、“みんな”で色々することができる。こうしたちょっとした工夫で、家族との“つながり”が増えるのは嬉しいことだ。

(左)マルチエントクローク(下足入)</br>
(右上)L's KITCHEN(右下)キレイドレッサー(左)マルチエントクローク(下足入)
(右上)L's KITCHEN(右下)キレイドレッサー

住民同士のコミュニケーションのきっかけ作りを後押しするマンションの共用部開発

(上)サイクルピットのイメージ画像。自転車のメンテナンスをする際、ちょっとした交流も
<br />(下)ウェルカムエントランス。各住戸のインターホンパネルまわりを自由にカスタマイズできる(上)サイクルピットのイメージ画像。自転車のメンテナンスをする際、ちょっとした交流も
(下)ウェルカムエントランス。各住戸のインターホンパネルまわりを自由にカスタマイズできる

キッチンなど専有部における商品開発だけでなく、共用部における商品開発も行われている。

2013年末に発表された「サイクルピット」は名前の通り、自転車に乗る人が安全に自転車を置いたり、メンテナンスができるスペースを作ったもの。自転車と一言で言っても最近10万円以上するものも少なくない。そうした高額なものは、マンションにある一般的な自転車置き場に置かずに家に入れているとのユーザーの声をピックアップして、開発に至ったという。

2重のセキュリティを設けて、1家族ごとに収納できる駐輪スペース。また、メンテナンス部分は空気ポンプなどを置き、居住者ならば誰でも使用できる。このスペースでは、普段交流のない住民同士が“自転車”をきっかけに交流がもてやすい。サイクリングの情報交換など、コミュニケーションの場としても期待できるという。

現在、広島市にあるライオンズマンションに採用しているが、今後関東圏など物件の特性に応じて採用していく。ちなみに、何故広島かというと、広島は自転車で街を巡れて、また川沿いの街のため自転車環境としては最適で実際に自転車人口も多いということから採用にいたった。

サイクルピットの他、現在共用部に関したものは5商品ラインナップしている。何故、こうした共用部の商品についても開発しているのだろうか?

「マンションの専有部における商品開発でスタートしてきましたが3年位前から開発の幅を広げて共有部の開発にも積極的に取り組んでいます。少子高齢化や、単身世帯も増えている現代。お客様との座談会や入居者インタビューを重ねていくなかで、感じていること、それは、血縁を超えた“つながり”が注目されていると思うんです。しかし、だからといって昔ながらのご近所づきあいはマンションに住む人にとって面倒くさいと思われる方も少なくないと思われます。マンションのメリットの一つは、自分で選べるご近所づきあいができること。ただし、本当に困ったとき、震災などの災害時に情報収集するためには、普段から交流が重要です。

“非日常を日常に”と私たちは言っていますが、ちょっとしたコミュニケーションをとる“きっかけ”が日常にあれば、何かあったときでもあわてずに行動できると思います。大規模マンションでは例えば集会室やキッズルームなどコミュニケーションをとる場が確保されていますが、物件の大小に関わらずすべての居住者に提供できる空間提案を行っていきたいと考えています。例えば、玄関前の空間や、エレベーターを待つ時間、毎日素通りしてしまう空間に、ベンチやその家のシンボルがあったら、自然に足を止めてホッと口元が緩むかもしれません。こうした共用部の商品をきっかけに、住まわれている方々の交流の後押しができれば嬉しいですね」

住んでいる人に押しつけのないコミュニケーションギミックを提供している、そんな印象を受けた。サイクルピットの他、各住戸前のインターホンパネルまわりを、自由にカスタマイズできる商品「ウェルカムエントランス」も面白い。お気に入りの写真や季節ごとのデザインで殺風景な玄関周りを飾れ、思わず住んでいる住人が扉を開けて出てきたら声をかけたくなる。

ちょっとした工夫で暮らしを豊かにする

家族との“つながり”、そして血縁を超えたいざという時の住民との“つながり”。
つながりが希薄な現代だから、こうした後押しの施策はこれからの集合住宅を考える上でもとても大切なことだと思った。

ちなみに、今回取材させて頂いたライオンズリビングラボの取組みで特徴的なのが、商品開発といってもよくあるような開発当初にアンケートをとり商品化して終わり、ではないこと。ユーザーの声を聞き、企画をたて、そして商品開発を行う。開発過程や出来上がった後も、ユーザーに座談会やアンケート調査を行うことで、使い勝手や安全性等を見直し、その度にユーザーに使いやすい商品に進化していく。

このようにユーザーの声を生で聴きながら、開発からプロモーションまで一貫して行っているため、こうしたユーザーのニーズを実際に形にできるのだなと思う。

こうした取組みに興味をもった人はライオンズマンションを買わなくても、大京グループが運営する「Family First. Club(ファミリーファーストクラブ)」に登録すると実際のアンケートなどに参加できるという。様々な種類のマンションを見たい、マンション生活をイメージしてみたい、という人は無料で登録できるので活用してもよいと思う。

■「Family First. Club(ファミリーファーストクラブ)」、ライオンズリビングラボのページはコチラから。
http://family-first.jp/lionsmind/labo/index.html