- 結論①:実家売却と贈与は別の取り引き
- 実家の売却と、売却代金の一部を子どもへ贈与することは、税務上それぞれ別の取り引きです。売却価格から税金や諸費用、親の生活資金などを差し引き、手元に残る金額を確認してから贈与額を検討しましょう。
詳しくは、実家の売却資金を子どもの住宅購入に活用する仕組みをご覧ください。 - 結論②:非課税特例の金額と要件
- 住宅取得等資金の贈与の非課税特例では、住宅の性能に応じて500万円または1,000万円まで贈与税が非課税になります。利用するには、贈与者・受贈者・住宅・取得時期などの要件を満たす必要があります。
詳しくは、住宅取得等資金贈与の非課税特例は2026(令和8)年12月末までをご覧ください。 - 結論③売却から申告までの流れを整理
- 実家の査定から住宅の取得・入居までには、売却代金の確定、贈与、住宅購入など複数の手続きがあります。住宅の名義や住宅ローンとの関係も確認し、期限に間に合うよう全体の順番を整理することが大切です。
詳しくは、実家売却から贈与・住宅購入までの進め方をご覧ください。
実家を売却したお金を、子どもの住宅購入に活用したいと考える家庭もあるでしょう。一定の要件を満たせば、「住宅取得等資金の贈与の非課税特例」を利用できる場合があります。
この記事では、実家の売却資金を子どもへ贈与する流れと、非課税特例の条件、手続きで注意したいポイントをFP(ファイナンシャル・プランナー)が分かりやすく解説します。
実家の売却資金を子どもの住宅購入に活用する仕組み

実家を売却してまとまった資金が入った場合、その一部を子どもの住宅購入に充てる方法があります。ただし、実家を売ったお金をそのまま子どもへ渡せばよいわけではありません。親自身に必要な資金を確保したうえで、贈与する金額や時期を考えることが重要です。
実家売却と資金贈与は別の取り引きとして考える
実家の売却と、売却後の資金を子どもへ贈与することは、税金の扱いが異なります。
親が実家を売却して利益が出た場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。譲渡所得とは、土地や建物などの資産を売却したことによって生じる所得です。売却価格そのものに税金がかかるのではなく、原則として売却価格から取得費や売却にかかった費用などを差し引いて計算します。
一方、その売却資金の一部を子どもへ渡すと、親から子どもへの贈与として扱われます。子どもが住宅購入のための資金として贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば「住宅取得等資金の贈与の非課税特例」の対象となる可能性があります。
流れとしては、まず親が実家を売却し、税金や諸費用などを踏まえて手元に残る金額を確認します。そのうえで資金の一部を子どもへ贈与し、住宅購入代金に充てる形です。
税務上の手続きも別になります。親は実家の売却について譲渡所得が生じた場合などに確定申告を行い、子どもは住宅取得等資金の非課税特例を利用する場合に贈与税の申告を行います。
売却価格ではなく手取り額から贈与額を決める
子どもへの贈与額を考えるときは、実家の売却価格ではなく、最終的に親の手元に残る金額を基準にすることが大切です。
実家を売却すると、仲介手数料をはじめ、状況によっては登記や測量、建物の解体、残置物の処分などに費用がかかります。また、売却によって利益が生じれば、所得税や住民税などがかかる場合もあります。
なお、これらの費用がすべて譲渡所得の計算で差し引けるわけではありません。「譲渡費用」とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。たとえば、売却のために支払った仲介手数料や、土地を売るために建物を取り壊した場合の費用などが該当します。
さらに、実家じまいでは税金や売却費用だけでなく、親自身の今後の生活も考えなければなりません。住み替えにかかる費用のほか、生活費、医療費、介護費なども見込んでおきたいところです。
子どもの住宅購入支援だけを優先するのではなく、親自身に必要な資金を確保し、その残額から無理のない贈与額を検討することがポイントになります。
住宅取得等資金贈与の非課税特例は2026(令和8)年12月末まで
住宅購入に充てる金銭を父母や祖父母などの直系尊属から受け取るとき、所定の条件を満たすことで贈与税の負担を一定額まで抑えられるのが、住宅取得等資金の贈与の非課税特例です。
現行制度では、2024(令和6)年1月1日から2026(令和8)年12月31日までに行われた贈与が対象です。ただし、この期間内に贈与を受けただけで適用されるわけではありません。贈与を受ける人や購入する住宅などにも、一定の要件があります。
非課税限度額は500万円または1,000万円
非課税となる金額は、購入する住宅の性能によって異なります。一定の省エネルギー性能、耐震性能またはバリアフリー性能のいずれかの基準に適合し、所定の書類で証明された「省エネ等住宅」の場合、非課税限度額は受贈者1人につき1,000万円です。それ以外の住宅は500万円までとなります。
制度上、財産を受け取る側は「受贈者」と呼ばれます。本記事で想定しているのは、親などから住宅購入費の援助を受ける子どもです。
この特例を暦年課税で利用する場合、年間110万円の基礎控除も適用できます。暦年課税では、毎年1月1日から12月31日までに受け取った財産を合計し、その年分の贈与税を計算します。
省エネ等住宅の購入資金として1,100万円を受け取るケースでは、特例の非課税枠1,000万円を差し引いた残額は100万円です。同じ年にほかの贈与がなければ、この100万円は暦年課税の基礎控除110万円に収まります。
特例の上限と基礎控除を使い切ってもなお金額が残れば、その部分は課税対象となる可能性があります。住宅資金だけを見るのではなく、同じ年に受けた別の贈与も含めて合計額を確認しましょう。
贈与者・受贈者が満たす条件
対象となるのは、受贈者から見て直系尊属にあたる人からの資金援助です。直系尊属には、本人と直接つながる上の世代である父母や祖父母などが含まれます。知人や兄弟姉妹からの贈与には、この特例を使えません。
本人の父母・祖父母から受ける住宅資金は対象となり得ますが、配偶者側の父母・祖父母は、養子縁組をしている場合を除き、本人の直系尊属としては扱われません。
受贈者については、贈与年の1月1日現在で18歳以上であることに加え、その年の合計所得金額が原則2,000万円以下であることが必要です。合計所得金額は年収そのものではなく、給与所得・事業所得・不動産所得などを税法上の方法で合算した額を指します。
登記簿上の床面積が40平米以上50平米未満の住宅を取得する場合に限っては、受贈者の合計所得金額の上限が1,000万円に下がります。
配偶者や親族など、受贈者と特別な関係にある人から取得した住宅は対象外です。また、過去の申告で同種の非課税制度を利用していると適用できないことがあるため、以前の贈与税申告も確認しておきましょう。
購入する住宅と入居時期の条件
購入する住宅についても、一定の条件があります。
対象住宅は国内に所在し、登記簿で確認できる床面積が40平米以上240平米以下でなければなりません。さらに、床面積の半分以上を受贈者自身の居住部分として使うことが必要です。40平米以上50平米未満の場合には、合計所得金額1,000万円以下という追加条件があります。
マンションの面積要件は、販売広告の表示ではなく、登記簿に記録された専有部分の面積で判定します。広告上は基準を満たして見えても登記面積が異なることがあるため、契約前に登記事項を確認しましょう。
中古住宅の場合、1982(昭和57)年1月1日以後に建築された住宅であれば対象となり得ます。それ以前に建築された住宅でも、一定の耐震基準を満たしていることを証明できる場合などは、対象になる可能性があります。
資金の使用にも期限があります。受贈者は、原則として贈与年の翌年3月15日までに受け取った金銭を新築・取得などの代金に充てます。入居も同日までが基本ですが、事情により遅れる場合でも、速やかに住み始めることが確実と見込まれれば適用の余地があります。
3月15日の時点で入居前の場合でも猶予が無期限に続くわけではありません。原則として贈与年の翌年12月31日までに居住を開始できないと、特例の対象から外れます。
1,000万円の限度額を適用するには、取得する家屋が省エネ等住宅に該当することを、住宅性能証明書などの指定書類によって示す必要があります。
実家売却から贈与・住宅購入までの進め方

親の売却手続きと子どもの住宅購入は、互いの時期が資金計画に影響します。個別に予定を立てるのではなく、実家の売却から贈与、購入代金の支払い、入居までを一つの工程として並べておくと、期限や必要資金を把握しやすくなります。
実家売却時は3,000万円特別控除を確認する
親が居住していた実家の売却では、要件に該当すれば、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除を検討できます。
3,000万円特別控除は、マイホームの売値を直接減らすものではなく、売却によって計算された譲渡所得から最高3,000万円を控除する制度です。譲渡所得の基本式は、売却収入から取得費と譲渡費用を差し引く形になります。
実家の売値が4,000万円でも、4,000万円と3,000万円の差額がそのまま課税対象になるわけではありません。先に取得費と譲渡費用を反映して譲渡所得を算出し、その後に特別控除を適用します。
また、この特例を利用するには一定の要件があり、確定申告が必要です。以前住んでいた実家でも、売却時期などの条件を満たせば対象となる場合があります。
自分が居住していない相続実家の売却では、通常のマイホーム向け特例ではなく、被相続人の居住用財産(空き家)に係る特別控除を利用できるか確認します。
適用できる売却特例や納税額によって、親に残る資金は変動します。贈与額を先に決めず、税引き後の見込み額を確かめることが大切です。
売却・贈与・住宅購入・入居の順番を整理する
第一に行うのは、実家の査定額から売却費用と税金を見積もり、受取額の目安を出すことです。そこから親の住み替え費用や生活資金を確保し、残りの範囲で子どもへの援助額を決めます。
援助額と並行して、購入候補の住宅が制度要件に合うかを調べます。床面積や性能を贈与後に確認すると計画を変更しにくいため、物件選定の段階で対象可否を確認しておきましょう。
金額を決めた後は、贈与者・受贈者・実行日・金額を記した贈与契約書を残す方法があります。現金で手渡すよりも口座間で送金し、資金移動を後から確認できる状態にしておくと管理しやすくなります。
送金を受けた資金は住宅代金の支払いに使用し、制度上の期限から逆算して取得と入居を進めます。
最後は税務上の手続きです。親は、実家の売却によって譲渡所得が生じた場合や特例を利用する場合に確定申告を行います。子どもが住宅取得等資金の非課税特例を利用する場合は、贈与税額が0円でも贈与税の申告が必要です。それぞれ別の手続きとして整理しておきましょう。
住宅ローンの借入額と住宅名義を決める
購入予算は、子どもの自己資金、親から受ける金額、住宅ローンの3つに分けて整理します。特例の対象は、受贈者が暮らす住宅の新築・取得などの代金に使う目的で渡された金銭です。
住宅ローンの希望額は、贈与で賄える部分を反映して決めます。申込時に必要となる確認や書類は金融機関ごとに異なるため、親からの援助予定と金額を事前に伝え、手続き方法を確かめてください。
夫婦など複数人で購入するなら、資金計画と同時に登記名義も決めます。共有名義における「持分」は、その不動産を各人が所有する割合を示すものです。登記上の持分が実際の資金負担割合と合っていない場合、その差に相当する金額が共有者間の贈与と判断され、贈与税の対象になることがあります。
夫が購入費の3分の2、妻が3分の1を出すなら、その負担割合を基礎として持分を検討します。自己資金やローンだけでなく、それぞれの親から受けた資金も各人の負担額に含めて整理しましょう。
贈与を受けると住宅ローン控除に影響する場合がある
非課税特例を使ったからといって、住宅ローン控除が直ちに利用できなくなるわけではありません。両制度の条件を満たせば併用できますが、非課税となった贈与額は控除計算に関係します。
住宅ローン控除は、借入れによって要件を満たす住宅を取得した人について、年末のローン残高などを基に算出した額を所得税等から差し引く制度です。
併用時には、住宅の取得対価から非課税特例を適用した贈与額を控除し、その残額を住宅ローンの年末残高などと比較して、住宅ローン控除の計算対象額を求めます。借入残高が大きくても、その全額を基礎として住宅ローン控除を計算できるとは限らない点に注意が必要です。
親の援助で借入額を減らせる可能性だけでなく、住宅ローン控除への影響も含めて判断します。購入価格に対する自己資金・贈与資金・借入金の配分を一つの表にまとめると検討しやすくなります。
兄弟姉妹がいる場合は贈与内容を家族で共有する
実家の売却資金から特定の子どもへまとまった金額を贈与する場合は、税金の手続きだけでなく、家族間での情報共有も意識しておきたいところです。
たとえば、住宅を購入する子どもだけが1,000万円の贈与を受けた場合、ほかの兄弟姉妹がその事実を知らなければ、後になって「なぜ一人だけ多く資金援助を受けたのか」と認識の違いが生じることも考えられます。
こうした行き違いを避けるため、誰が、いつ、いくら贈与を受けたのか分かるよう記録を残しておくとよいでしょう。必要に応じて、住宅購入を支援するための贈与であることや、親がどのような考えで資金援助をしたのかを家族で共有する方法もあります。
実家じまいは、まとまった資産を今後どのように扱うか考える機会にもなります。親自身の生活資金や将来の相続も含め、家族で認識を合わせておくことが大切です。
【FP監修】非課税特例の申告手続きと失敗例

住宅や受贈者が条件に合っていても、申告期限を過ぎれば特例を適用できないおそれがあります。贈与を実行する前に申告時期と必要書類を確認し、取得・入居の予定と併せて準備しましょう。
贈与税が0円でも申告が必要
特例を使った結果、納付する贈与税がなくなる場合でも、適用を受けるための贈与税申告は省略できません。
贈与税の申告は、原則として贈与年の翌年2月1日から3月15日までに行います。申告書と非課税の計算明細書に加え、戸籍謄本や売買契約書の写しなどを準備します。省エネ等住宅の1,000万円枠を使うときは、性能を確認できる所定の証明書も必要です。
必要書類の組合せは、新築・中古・増改築などの区分や取得方法によって変わります。申告対象年に対応した国税庁のチェックシートで、該当する書類を確認してください。
一般的には、贈与税申告書、非課税特例の計算明細書、戸籍関係書類、住宅の売買契約書の写しなどを提出します。ケースによっては、登記事項証明書や住宅性能に関する証明書も加わります。
なお、贈与契約書や振り込み記録は、非課税特例を利用するすべての人に一律で提出が求められる書類ではありません。ただし、贈与の内容や資金の流れを確認する資料になるため、保管しておくとよいでしょう。
非課税特例を利用できなくなる主な失敗例
非課税枠の範囲内であっても、それだけで適用が決まるわけではありません。受け取った金銭の用途、住宅の内容、名義、期限まで含めて条件を満たす必要があります。
購入代金を支払った後で同額の贈与を受けても、原則として住宅取得等資金に該当しません。受贈後の金銭を既存ローンの繰上返済に回す場合も対象外です。住宅の新築・取得などに必要な代金として受け取り、実際の支払いへ充てる必要があります。
受贈者が取得住宅の所有者にならないケースでは、この特例を利用できません。単独名義である必要はありませんが、共有にするなら受贈者本人の持分を登記します。
ほかにも、登記面積が下限を割っていたり、中古住宅の要件に該当しなかったりすると対象外になります。1,000万円枠を予定していても、省エネ等住宅であることを書類で示せなければ、その枠は適用できません。
住宅の取得、入居、贈与税申告には、それぞれ確認すべき期日があります。贈与を実行する前に、物件の引き渡し予定と入居予定、申告期間を時系列で並べてください。
住宅取得等資金の贈与に関するよくある質問
住宅購入資金の援助では、誰から受け取るか、複数人から受け取るか、いつ住宅を取得するかによって扱いが変わります。ここからは、実際に迷いやすい点を質問形式で確認します。
Q1.住宅取得等資金の非課税特例と年間110万円の基礎控除は併用できますか?
A1.暦年課税によって申告する場合は併用可能です。省エネ等住宅で1,000万円の特例枠を使うケースでも、同じ年の贈与について年間110万円の基礎控除を別途適用できます。
Q2.父と母からそれぞれ1,000万円ずつ非課税で贈与してもらえますか?
A2.父と母に枠が一つずつ与えられる制度ではありません。限度額は受贈者単位で計算するため、省エネ等住宅の資金として父母から合計2,000万円を受け取っても、この特例で非課税にできるのは合計1,000万円までです。
Q3.祖父母や配偶者の親からの贈与にも非課税特例を利用できますか?
A3.祖父母は直系尊属にあたるため、要件を満たせば対象になります。一方、配偶者の父母や祖父母は自分の直系尊属には該当しないため、通常は対象外です。ただし、配偶者の父母や祖父母と養子縁組をしている場合は、ほかの要件を満たせば対象になります。
Q4.2026(令和8)年中に贈与を受ければ、住宅の購入や入居が2027(令和9)年でも利用できますか?
A4.一定の期限内であれば対象になり得ます。原則として2027(令和9)年3月15日までに贈与資金を使って住宅を取得し、同日までに入居するか、その後遅滞なく入居することが確実と見込まれていることなどが条件です。ただし、原則として2027(令和9)年12月31日までに入居していなければ、特例を利用できません。
Q5.実家の売却代金であることを証明する書類は必要ですか?
A5.この特例では、贈与された資金を住宅の取得などに充てたかどうかがポイントです。親の実家の売却代金であることを証明する書類は、国税庁が示す通常の添付書類として一律に提出を求められているものではありません。ただし、申告内容によって必要書類が異なる場合があるため、贈与や資金移動を確認できる記録を保管し、申告する年分の案内や所轄税務署で確認しましょう。
まとめ:実家売却と資金贈与は全体の順番を先に決めよう
実家の売却代金を住宅購入支援に回すときは、売値だけで判断しません。売却費用と税金を差し引いた見込み額から、親の住み替え費用や生活資金を先に確保し、残額を基準に援助額を決めます。
確認すべき点は500万円・1,000万円という枠だけではありません。贈与者と受贈者の関係、所得、住宅の面積や性能、取得・入居の時期、申告書類を一つずつ照合する必要があります。
親の実家じまいと子どもの住宅取得を一つの資金計画として捉え、売却、送金、代金支払い、入居、申告の順に予定を並べておきましょう。
更新日: / 公開日:2026.10.19










