将来の価値を据え置いて月々の返済を減らせる
住宅の購入代金のうち、将来も価値が残ると見込まれる部分を「残価」として設定し、それ以外の部分についてだけローンの返済をする仕組みです。これにより、毎月の返済負担を抑えつつマイホームを保有できます。
詳しくは、「残価設定型住宅ローンってどんな仕組み?」をご覧ください。
対象物件が限定され総支払額は高くなりやすい
資産価値を証明できる「長期優良住宅」などに利用が限定されます。さらに、据え置いた残価部分にも金利がかかり続けるため、最後まで保有した際の総支払額は通常のローンより高くなる点に注意が必要です。
詳しくは、「利用前に必ず確認しておきたい3つの注意点」をご覧ください。
将来住み替える予定や子どもに家を残さない人に適している
老後は別の場所に住み替える予定がある人や、子どもに家を残す必要がない人に向いています。将来の精算額が見通しやすいため老後の資金計画が立てやすく、手元資金を持ち出すリスクなしで次の住まいへ移る選択も可能です。
詳しくは、「残価設定型住宅ローンはどんな人が使うのが正解?」をご覧ください。

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新築・中古を問わず住宅価格の上昇が続き、住宅購入のハードルはこれまで以上に高くなっています。そうしたなか、新たな選択肢として注目されているのが「残価設定型住宅ローン」です。

 

2026年3月から住宅金融支援機構の公的保険制度がスタートしたことで、金融機関が取扱いやすくなり、今後本格的な普及が見込まれています。

 

ここでは、その仕組みやメリット、注意点について詳しく見ていきましょう。

 

残価設定型住宅ローンという言葉を初めて聞く人も多いかもしれません。

 

一言でいうと、住宅の購入代金のうち、将来も価値が残ると見込まれる部分を「残価」として設定し、それ以外の部分についてだけ、ローンの返済をする形のローンです。

 

価格6,000万円の家で、将来2,000万円では売却できるだろうと価値が設定できれば、残りの4,000万円についてのローンを払うという仕組みです。

 

現在、先行して普及している一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)などの制度を利用した場合、毎月の返済によってローン残高があらかじめ設定した残価まで減少する時点(当初設定した分割返済期間の終了時点)を「残価設定月」と呼びます。

 

このタイミングを境に、その後の返済や住まいの活用方法について選択する仕組みになっています(※商品の仕組みは金融機関ごとに異なります)。 

具体的には、上図のように、住宅を購入した直後は一般的な住宅ローンと同じようにローン返済をしていきます。

 

毎月返済を続けながらローン残高を減らしていき、あらかじめ設定された「残価設定月」を迎えます。

 

JTI(一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の残価設定型住宅ローンには、この時点で2つの選択肢が用意されています。

 

ひとつは、「返済額軽減オプション」、もうひとつは「買取オプション」です。

 

残価設定月を迎えた時に、「2つのオプション」をどのように選べばよいのでしょう。具体的に見てみましょう。

 

1. 返済額軽減オプション(住み続けたい場合)

 

残価設定月を迎えた後も、愛着のある自宅にそのまま住み続けたい場合の選択肢です。

 

このオプションを行使すると、毎月の支払いが「利息のみ」へと大幅に圧縮される「新型リバースモーゲージ」という仕組みに切り替わります。

 

住宅が完成してから50年が経過した後は、元本の返済が完全に据え置かれ、利息だけを支払えばよくなります。これにより、亡くなるまで自宅を所有し、安心して住み続けることができます。

 

最終的に契約者と配偶者の双方が亡くなった後は、もう一つの「買取オプション」が自動的に発動し、金融機関が住宅と残ったローンをセットで引き取る形で精算されます。

 

高齢期の生活資金を圧迫せず、子どもにローンの負担を残すこともなく、生涯の住まいを確保できるのが大きなメリットです。

 

2. 買取オプション(住み替える場合)

 

住み替えや売却を希望する場合の選択肢で、残価設定月以降であればいつでも行使できます。

 

最大のメリットは、その時点の住宅ローン残高と同じ金額で金融機関に自宅(土地・建物)を買い取ってもらえる点です。

 

所定の条件を満たせば、市場価格が残価を下回った場合でも、保証制度を活用して精算できる商品があります。手元の資金を持ち出すリスクなしで次の住まいへ移ることができます。

 

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今、残価設定型住宅ローンが注目されているのはなぜでしょう。

 

この仕組みは以前から金融機関で取扱いはありましたが、買取オプションを行使される際の住宅価格下落リスクの保証がないため、金融機関側も購入者側も利用しづらかった面がありました。

 

こうした状況を大きく変えたのが、2026年3月にスタートした住宅金融支援機構の公的保険制度(残価設定型住宅ローン付き住宅融資保険)です。

 

この制度は、将来の住宅価値が想定残価を下回ってしまった場合の金融機関の損害額を、機構が保険金として補償する仕組みです。

 

この国の強力なバックアップが整備されたことで、民間金融機関が価格下落リスクを負わずに独自の商品を開発・提供できるようになり、安定した仕組みが期待されるようになったのです。

 

残価設定型住宅ローンは、将来の返済負担を抑えることのできる魅力的な仕組みですが、利用する前に正しく理解しておくべき注意点も存在します。

 

ここでは、主な3つの注意点について見ていきましょう。

 

1. どの住宅でも使えるわけではない

 

このローンは、すべての住宅で利用できるわけではありません。

 

数十年先まで「残価」を据え置く仕組みである以上、将来にわたって資産価値を客観的に証明できる住宅でなければ、制度自体が成り立たないからです。

 

住宅金融支援機構の制度設計では、対象住宅が「長期優良住宅」や「管理計画認定マンション」などに厳しく絞られています。

 

国がこの制度を通じて「日本の住宅品質の底上げ」を目指しているため、建物のスペックや維持管理計画に関する厳格な審査をクリアすることが必須条件となります。

 

2. 自宅売却による大きな売却益は期待しにくい

 

残価設定型住宅ローンでは、住宅を売却した代金の多くが、まず据え置かれていた「残価」の精算に充てられます。

 

仮に市場価格が残価を大きく上回れば手元に現金が残る可能性はありますが、基本的には通常の住宅ローンに比べて、売却時に手元に残る資金は少なくなる傾向があります。

 

3. 高齢期に金利を払い続けられるか

 

残価設定月に「返済額軽減オプション」を選択すると、その後も利息を払い続けることになります。

 

変動金利を選んでいる場合は、将来金利が上昇すると、定年後の返済負担が想定より重くなる可能性があります。

 

また、この制度は住宅の価値を維持することを前提としているため、一般的な住宅ローンに比べて金利が上乗せされるなどの可能性があります。

 

さらに、建替えや大規模リフォーム、自宅を賃貸に出す際には、金融機関や保証機関への確認や手続きが必要になることがあります。

 

100%のローン返済を終えた自宅に比べると、年を取ってからの金銭的、事務的負担は意外と大きいかもしれません。

 

残価設定型住宅ローンは、月々の返済負担を抑えられる一方で、将来の住み替えや売却も前提にした仕組みです。

 

そのため、利用してもいいタイプと利用を控えたほうがいいタイプに分かれるといえます。

 

老後に遠方の実家に帰ることを決めているなど、今購入した家に一生涯暮らすつもりはない、しかしマイホームを購入したい、という人には利用価値が大きいといえるでしょう。

 

100%の住宅ローンを組むよりも少ない負担で一定期間、マイホームを保有でき、将来の精算額を見通しやすいため、その後の老後資金計画も立てやすくなります。

 

また、子どもがいない、あるいは将来子どもに住宅を残す必要がない人は、夫婦や自分だけで完結できる仕組みなので、相性がよいかもしれません。

 

このローンを使えば、自宅の処分方法が生前から決まっているため、相続をめぐるトラブルが起こりにくいといえます(相続人による手続き自体は必要です)。

 

世帯年収での支払い能力をはるかに超える家を買いたいがために、返済額が少ないからと安易に残価設定型住宅ローンを組む人は利用を慎重に考えたほうがいいかもしれません。

 

将来、自宅をどうしたいかを決めていないと、途中で売却したくなった、子どもに譲りたくなったなどの希望が出ても、思い通りにいかない可能性があります。

 

残価設定型住宅ローンは、住宅を購入しやすくするための仕組みというよりも、将来の住み替えや老後の返済に備えるための仕組みといえます。

 

月々の返済額だけで判断するのではなく、将来どのように住まいと付き合っていきたいのかも踏まえて検討することが大切です。

 

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Q1.普通の住宅ローンと比べて、最終的に支払うトータルの金額は安くなるのですか?

A.トータルの支払額が安くなるわけではありません。 月々の返済額や初期の負担は軽くなりますが、据え置いている「残価」の部分にも金利がかかり続けるため、最後まで保有した場合の総支払額は、通常の住宅ローンを組んだときよりも高くなるケースが一般的です。このローンは「家を安く買える魔法の仕組み」ではなく、あくまで「月々の資金繰りを楽にする」「老後に手放す選択肢を持っておく」ためのものだと理解しておきましょう。

Q2.新築だけでなく、中古住宅でもこのローンは使えますか?

A.利用可能ですが、物件の条件はかなり厳しめです。 制度の仕組み上、数十年後も価値が維持される物件でなければならないため、新築・中古を問わず「長期優良住宅」や「管理計画認定マンション」といった厳しい基準をクリアしている必要があります。一般的な中古住宅では対象外となることが多いため、物件探しの早い段階で不動産会社や金融機関に「残価設定型ローンを使いたい」と伝えておくことが重要です。

Q3.途中で家を売りたくなったり、転勤で引越すことになったらどうなりますか?

A.いつでも売却は可能です。 残価設定月を迎える前であっても、一般的な住宅ローンと同じように家を売却することは可能です。ただし、その時点でのローン残高(据え置いている残価も含む)を売却代金などで一括返済する必要があります。もし売却額がローン残高を下回ってしまうと、不足分を手持ちの現金から支払わなければならない点には注意が必要です。

Q4.将来気が変わって、やはり子どもに家を残したくなった場合はどうすればいいですか?

A.子どもに家を相続させることは可能です。 ただし、残価設定月以降に「買取オプション」を行使せず子どもに家を残す場合、据え置かれていた残価部分のローンを現金で一括返済するか、子ども自身が残りのローンを引き継ぐ(リレーローンなどへ借り換える)必要があります。将来のライフプランが変わる可能性も踏まえて、柔軟に対応できるか事前にシミュレーションしておきましょう。

Q5.月々の支払いが家賃のような感覚ですが、持ち家として自由にリフォームできますか?

A.リフォームの自由度には制限がかかる場合があります。 ローン完済前の家は、金融機関や保証機関にとって「将来の価値(残価)を担保している」重要な資産です。そのため、建物の価値を大きく下げるような改造や、構造に関わる大規模なリフォーム、あるいは自宅を勝手に賃貸に出すといった行為には、事前の承認が必要になるケースがほとんどです。通常の持ち家と比べると、やや管理の目が厳しくなる点は覚えておきましょう。

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