住宅ローンは数十年にわたって返済していくため、返済中に予期せぬ事態に陥り、支払いを続けられなくなってしまうリスクもあります。返済が難しくなったときには、どのような選択肢があるのでしょうか。
今回は住宅ローン返済が困難になった場合の対処法や自己破産の仕組み、自己破産をする前に考えるべきポイントについて見ていきましょう。
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住宅ローンが返済できなくなったらどうなる?

住宅ローンの返済ができなくなったときには、どのようなリスクが発生するのでしょうか。ここではまず、住宅ローンを滞納してしまった場合について見ていきましょう。
滞納が続くと競売にかけられる
通常、一度の滞納によって何か大きな問題が起こることはありません。しかし、滞納が続くと分割返済の権利がなくなり、金融機関から一括返済を求められてしまいます。
そのまま一括返済ができない場合は、抵当権が実行され、住宅は差し押さえられてしまいます。その後、差し押さえられた住宅は競売にかけられて現金化され、住宅ローンの返済を行うのです。
競売後の流れ
競売によって残債がなくなれば、住まいを手放す代わりに住宅ローンの返済義務もなくなります。しかし、その後もローンが残ってしまった場合には、何らかの形で返済を行わなければなりません。
残債については、金融機関が分割の相談に応じてくれることもあるものの、一括での返済を求められるケースもあります。その結果、あまりにも高額で手に負えない場合には、自己破産を検討することとなるのです。
ここからは、自己破産手続きの仕組みについて詳しく解説していきます。
自己破産で住宅ローン負担はなくなる?

自己破産は、住宅ローンなどの債務問題を解決する方法(債務整理)のひとつです。ここではまず、自己破産の基本的な仕組みについて見ていきましょう。
自己破産とは
自己破産とは、「破産法」という法律で定められた借金の救済措置のひとつです。自己破産をすることで、税金などを除くすべての借金の返済義務がなくなり、住宅ローンの返済義務もなくなります。
自己破産を行う際には、地方裁判所に破産手続きの申請書を提出します。そして、裁判所から破産開始の決定を受けたうえで、さらに免責許可の決定を受けるという形で手続きが進んでいくのです。
自己破産ができる条件
自己破産はどのようなケースでも選択できるわけではありません。返済能力がなく、借金の返済が明確に困難である場合でなければ、免責の許可が下りないこともあります。
また、自己破産はあくまでも、「申請者の経済的再起」を目的とする制度です。
そのため、申請者が虚偽の報告をしたり、ギャンブルなどに多額のお金を浪費していたりした場合、「免責不許可事由」に該当してしまうこともあります。
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自己破産のデメリット

自己破産を申請して、裁判所から免責の許可が下りれば、住宅ローンの返済義務はなくなります。しかし、自己破産は債務整理のなかでも、最後の手段とされることが多く、それには明確な理由があるのです。
ここでは、自己破産のデメリットについて詳しく見ていきましょう。
資産を手放さなければならない
自己破産をした場合、家や土地などの不動産、20万円を超える財産、99万円を超える現金は没収されてしまいます。そのため、マイホームはもちろん、売却・換価をして20万円を超える車や生命保険といった財産も残すことはできません。
これらの財産はすべて差し押さえられ、現金化したうえで債権者の返済にあてられます。
一定期間は新たなローンが組めない
自己破産をしてから、最低でも7年間は新たなローンを組むことができません。住宅ローンや車のローンのほかに、クレジットカードの利用などもできなくなってしまいます。
その間は基本的に現金のみで生計を立てる必要があるため、事前にリスクを把握しておきましょう。
破産手続き中は職業に制限がかかる
自己破産の手続き中は、弁護士や税理士などの士業、金融商品取引業、警備員、建設業といったいくつかの職業に就けないという制限があります。
手続きが終われば制限がなくなるものの、これらの職業に就いている場合は、一時的に仕事ができなくなる恐れがあるため注意が必要です。
非免責債権は残る
自己破産をすれば、ほとんどの債務が免責されます。しかし、債務のなかには免責の対象にはならない「非免責債権」もあるため注意が必要です。
たとえば、税金や年金、社会保険料といった公的なもの、不法行為による損害賠償請求権や養育費、従業員への給料といったものが挙げられます。
そのため、自己破産をしても、すべての債務負担がなくなるわけではない点も理解しておきましょう。
自己破産だけじゃない! 債務整理の3つの方法と特徴

これまでに見てきたとおり、自己破産には大きなデメリットがあるため、慎重に判断する必要があります。ここでは、自己破産以外の債務整理の方法についても見ていきましょう。
任意整理
任意整理とは、債権者との話し合いによって、借金の返済方法を決め直す方法です。具体的には、スケジュールを変更したり、利息部分の支払いを減額したりしながら、返済できる現実的な手段を見つけていく手続きを指します。
しかし、住宅ローンの場合は、基本的に金融機関が抵当権を持っているため、応じてもらえるケースは多くありません。
不動産を差し押さえて競売にかければ、一定額の回収が可能であるため、金融機関からすれば減額に応じる必要性がないのです。
特定調停
特定調停は、簡易裁判所の手続きによって、債権者と返済方法などについて話し合う制度のことです。
裁判所が間に入ってくれるため、個人でも利用しやすい点がメリットであり、状況によって減額が認められる可能性もあります。
ただ、調停で決められた支払いができない場合は、強制執行されてしまう点に注意が必要です。また、残債は3年以内に完済しなければならないため、住宅ローンの返済開始直後は利用が難しいといえます。
個人再生
個人再生とは個人版民事再生とも呼ばれ、裁判所に申し立てて個人債務者の返済負担の圧縮と返済計画の立案とを支援する手続きです。
個人再生には、「住宅資金特別条項」という特殊な制度が設けられており、場合によっては住まいを手放さずに済む可能性がある点が大きなメリットです。
この条項は、「住宅ローン以外の借金」によって返済ができなくなってしまった場合に適用される制度であり、個人再生を行うことで、ほかの借金だけを減らしてもらうことができます。
その結果、もし住宅ローンだけはこれまでどおりに支払い続けられるのであれば、「住まいを手放さなくて済む」のです。
住宅ローン以外の借金については、大幅に減額されるとともに、長期的な分割払いにしてもらうことも可能です。そのため、複数の借金によって住宅ローンが支払えなくなってしまったときには、もっとも有効な方法とされています。
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競売にかけられる前に考えよう! 任意売却の仕組みとメリット

住宅ローンの滞納が続いてしまった場合、最終的には自宅が競売にかけられ、住宅を手放すこととなります。しかし、滞納を放置するのは決して得策ではありません。
競売にかけられる前に、「任意売却」を選択したほうがいいケースが多いのです。ここでは、任意売却の仕組みとメリットを解説していきます。
競売のデメリット
競売の場合は、裁判所が強制的に不動産を売却・換価して、住宅ローンの返済を行います。このとき、大きなデメリットとなってしまうのは、「相場よりも安い価格で取引されやすい」という点です。
競売については、債務者が一切関与することができないため、一般的には「市場価値の7~8割程度」まで価格が落ちてしまうとされています。
その結果、競売をしても残債分を補いきれず、ローンが残ってしまうケースは少なくありません。
任意売却の仕組み
任意売却とは、裁判所を使わず、民間の不動産会社に仲介してもらいながら住宅を売却する方法です。
通常の不動産取引と同じ手続きで売却できるため、競売よりも「高い価格で取引してもらえる可能性が高い」点に大きなメリットがあります。
任意売却のメリット
任意売却の大きなメリットは、前述のとおり、競売よりも高く買い取ってもらえる可能性が高い点にあります。妥当な価格で売却できれば、その分のお金を住宅ローンの残債にあてられるため、自己破産をしなくても済む可能性も高まるのです。
ただ、任意売却のメリットはそれだけではありません。任意売却には、「リースバック」という制度が設けられており、状況によっては、買い手と交渉して売却した住まいを賃貸できる可能性があるのです。
その結果、住宅の所有権は失ってしまうものの、これまでどおりに住み続けることができます。競売の場合は、原則として手放した物件に関与することはできないため、この差はとても大きなものだといえます。
また、見た目上はこれまでどおり居住を続けることとなるため、周囲に事情を知られるリスクが低くなる点も大きなメリットです。
そのため、最終的に自己破産を考えている場合でも、滞納した状態は放置せず、任意売却を検討してみることが大切です。
自己破産をしてしまう前にほかの方法にも目を向けてみよう

- 住宅ローンが支払えない場合は、最終的に競売にかけられて、売却金が返済に充当される
- それでも残債がある場合は債務整理が必要となる
- 自己破産をすれば債務は解消されるものの、見逃せないデメリットもある
- 住宅ローン以外の借金が原因の場合は、個人再生が有効な選択肢となる
- 滞納を放置するよりも、任意売却を行ったほうがメリットは大きい
更新日: / 公開日:2021.04.30










