同性パートナーと長く一緒に暮らしていきたいと思ったとき、マイホームの購入を考える人は多いと思います。LGBTQ(※)向け住宅ローンを取扱う金融機関も増えていますし、実際に行動に移す人も増えてきました。ただ、同性間での婚姻が認められていない日本で安心してマイホームを購入するには、さまざまな課題があるのも事実です。

この記事では、同性パートナーと家の購入を検討し始めた方に向けて、二人で組める住宅ローンの種類や必要な手続き、相続への備え方について紹介します。

(※)LGBTQとは:L(レズビアン、性自認が女性の同性愛者)・G(ゲイ、性自認が男性の同性愛者)・B(バイセクシュアル、男性・女性の両方を愛することができる人)・T(トランスジェンダー、主に身体的な性別と性自認が一致しない人)・Q(クエスチョニング、自分の性別が分からない・意図的に決めていない・決まっていない人)の頭文字をとったセクシュアルマイノリティの総称の一つです。本記事では頭文字にあてはまらないセクシュアルマイノリティの方も含む総称を「LGBTQ」とし、便宜上表記を統一しています。
参考:LGBTQ・LGBTQIAとは?【LGBTとの違い】(株式会社JobRainbow)より

LGBTQ向け住宅ローン

 

家を買うときには、住宅ローンを利用することが一般的です。一人で返していける資金力に見合った住宅ローンを組むのであれば、特に問題はありません。しかし、同性カップルが二人で住むことを前提に少し多めの金額を借りたい場合には、問題がありました。二人の収入を合算して利用できる夫婦ローンなどを数年前までは同性二人では利用することができなかったのです。

 

しかし最近ではLGBTQや同性カップルの認知が上がり、社会の理解が徐々に深まるにつれ、同性二人で利用できる住宅ローンを提供する金融機関も増え始めました。

 

こうした「ペア型住宅ローン」には、次の二つの方式があります。

  • 「2本並立型」住宅ローン
  • 「連帯型」住宅ローン

いずれの方式も収入合算できるので、一人で借りるより大きな額を借り入れでき、住宅購入の選択肢が広がるといえます。

一つは、借入額を折半しそれぞれが折半額で住宅ローンを組む「2本並立型」。たとえば6,000万円を借りる場合、それぞれが3,000万円ずつのローンを組むものです。

 

「2本並立型」のメリット

「2本並立型」のメリットとしては、不動産の所有権も出資額に応じて共有になることが挙げられます。(上記の例だと持分2分の1ずつ)。また住宅ローン控除(減税)も、二人それぞれが利用できます。

 

「2本並立型」のデメリット

一方、「2本並立型」のデメリットは、金融機関の手数料や登記そのほかの手続き費用が2本分かかることです。また共有持分であることで、離別や一方が死亡した場合、双方ともに煩雑な手続きが発生します。

 

二つ目は、一人が主債務者となりもう一人がその連帯保証人となる「連帯型」です。主債務者が返済できなくなったときは、直ちに連帯保証人が返済にあたります。

 

「連帯型」では、不動産の持分も住宅ローン控除の利用も、主債務者のみです。「2本並立型」のデメリットとして手続きが2本分かかることを挙げましたが、「連帯型」では手続き費用等は1本分ですみ、リスク対策も基本、所有名義者に限って備えればよいといえるでしょう。

公正証書

 

 

同性カップルがこうしたペア型住宅ローンを利用するためには、それぞれ資力などの審査を経るとともに、金融機関側は二人のあいだで共同生活の「合意契約」と相互での「任意後見契約」を締結することを求めるケースがほとんどです。

 

  • 「合意契約」に係る公正証書および「任意後見契約」の正本または謄本
  • 「任意後見契約」に係る登記事項証明書
  •  

※金融機関により詳細条件は異なります。

聞きなれない言葉かもしれませんが、「合意契約」とは、二人が人生のパートナーとして今後も生活をともにすることを誓約し、生活費用の分担など、夫婦に準ずる必要事項を取り決めるものです。

 

「任意後見契約」とは、一方が認知症などで自己の財産管理ができなくなった場合、もう一方が後見人となり、相手のローン返済事務などを行うことをあらかじめ委任しておくものです。

 

住宅ローンの返済は長期にわたるものですから、こうした健康時はもちろん、一方に健康上の事故があっても返済が滞らない保証が必要になるのです。

 

任意後見契約は国の法律に基づくもので、その契約は「公正証書(こうせいしょうしょ)」ですることになっており、契約は国に登記されます。ペア型ローンの利用には、その「登記事項証明書」が多くの場合求められます。

公正証書とは、全国に約300ヶ所ある公証役場で、公証人によって作成される契約書などのことです。原本が公証役場に保管されるため、改変などされない、もっとも信頼できる書面とされています。

 

任意後見契約は定型的な書式が普及していますし、同性間での合意契約も、すでに日本公証人連合会が作成したひな型があります。しかし、合意契約は二人の事情に応じて、オリジナルな内容で作成できるものです。単にペア型ローンを借りるためだけのものとせず、これからの長いパートナーシップを二人で見据え、役立つ内容にすることが望ましいでしょう。

 

公証人も相談に応じてくれますが、検事・裁判官を退官した高齢男性が就任することが多い公証人が、必ずしも同性カップルの実情に通じているとは限らない現状もあります。多少費用がかかっても、LGBTQコミュニティに通じた法律の専門家などに相談するのも一つの選択肢です。

相続について相談する

 

金融機関の多くは上記のように、ローン返済中の二人の安定的な関係を裏打ちする二つの公正証書を求めています。しかし、将来にわたって安心して暮らしていくためには、それ以外のリスクにも備える必要があるでしょう。

 

パートナーの一方が亡くなった場合、その所有権が相手にきちんと移り、残ったパートナーが居住できるようにしておく必要があります。二人のあいだに夫婦としての「法定相続(法律で定められた相続)」は発生しないので、不動産は亡くなった人のその時点の「法定相続人(親またはきょうだい)」に相続されてしまいます。トラブルを未然に防ぐためには、物件の購入と並行して、遺言あるいは死因贈与契約の準備をしておくことが賢明です。

 

利用するLGBTQ向け住宅ローンが「2本並立型」であれ「連帯型」であれ、債務者が死亡した場合は、生命保険(いわゆる団信)で残債務が返済されますが、「連帯型」の保証人側が亡くなった場合にはそれはなく、半額をあてにしている債務者が返済に窮することになります。近年増えた、パートナー受け取りが可能な生命保険の加入を検討するのもよいでしょう。

 

住宅ローン債務以外にも、配偶者が相続する場合の相続税の税制優遇が一切ないため、遺産額によっては相続税がかかる場合があり、一定の現金の準備も必要になります。万一、パートナーシップを解消することになった場合、どちらが家を出るのかなども、合意契約では重要な事項となります。

同性パートナーとの家購入

 

Q 家を買いたいとき、不動産会社に二人の関係をどう伝えたらいい?

A, 不動産会社側も徐々にLGBTQの情報に慣れてきているようです。もちろん無理にカミングアウトする必要はありませんが、「どうしてこの街に住みたいか」、「二人でどのような暮らしがしたいか」など、住まい選びは二人の暮らしに直結する内容です。はじめからパートナー同士であると伝えて希望やイメージをオープンに相談できたほうが、スムーズに進みやすい可能性はあります。

 

Q パートナーシップ制度のない自治体では、二人で住宅ローンは組めないの?

A, ペア型ローンに必要とされる公正証書は日本全国で通用する制度ですから、自治体に関係なく利用することができます。公正証書が求められるかどうかは、金融機関によって異なりますので確認が必要です。

 

Q 住宅ローンの必要書類は、自治体のパートナーシップ証明書でもいいの?

A, ペア型ローンを組む場合、金融機関によって求められる必要書類は異なります。必要書類として、自治体の発行する「同性パートナーシップ証明書」、またはこれに類する証明書としている金融機関もあります。その場合は、自治体の発行するパートナーシップ証明書でまかなえますが、指定のないところは公正証書が必要になります。

 

Q 同性カップルであっても住宅ローン控除(減税)は使えるの?

A, 自分が債務者となる場合は、残債務額に応じて利用できます。ただし、「連帯型」の保証人になる側は、債務者ではないので利用することができません。

 

Q 「養子縁組」をすれば相続できると聞いたけど?

A, 養親が亡くなった場合、養親名義のものを養子がすべて相続することができます。遺言作成のかわりに養子縁組をすることも一考に値します(相続時に、親族への税制上の優遇も利用できます)。ただし、養子側はあらゆる証明などの姓を変更する必要があります。また、養子側が亡くなった場合、養親のほか実親も相続人となるため、遺産相続には養親・実親が協議するか、あらかじめ養親へ相続させる旨の遺言の作成が望ましいでしょう。

オンラインでの個別相談

 

日常生活でカミングアウトしていない場合、不動産会社へいきなり相談するのはハードルが高いと感じる当事者は多いと思います。パートナーとのマイホーム購入に少しでも興味がある方は、同性カップルの住宅購入が学べる講座を受講してみてはいかがでしょうか。

 

『LGBTQの方向けマイホーム講座・個別相談』では、住宅購入の基礎知識をはじめ、今回ご紹介したようなLGBTQ当事者が直面する法的な課題への備え方を講座形式で、一組ごとに相談や質問をしながら、学ぶことができます。

  • 講座名:『パートナーと家を買うには? 建てるには? LGBTQマイホーム講座・個別相談』
  • 対象ユーザー:戸籍上同性の二人で、注文住宅の建築や新築・中古物件の購入等を検討している方
  • 受講方法:「LIFULL HOME’S 住まいの窓口」各店舗での対面受講、ならびにオンライン受講
  • 受講日時:日時指定可(完全予約制)

 

特徴

(1)法律の専門家と提携し、公正証書類の作成手続きをサポート

(2)物件種別を問わず相談が可能(注文住宅、新築一戸建て、新築マンション、中古マンション、中古一戸建てなど)

 

ユーザーからの声

「状況を理解してもらった上で相談でき、自分たちがどういう関係かを説明しなくてすむ点が楽だった」

住宅は人生最大の買い物といわれます。返済できる十分な経済力を担保することはもちろんですが、長期にわたる返済期間中には、さまざまなリスクが考えられます。男女の夫婦であれば、万が一の場合にも法定の手続きがすでにありますが、婚姻制度の外で暮らす同性カップルが安心して暮らしていくためには、適切に備えることが大切です。希望条件を整理し、何が必要で、どう備えたらいいのか、二人だけで考えるのではなく、ときには専門家などから客観的なアドバイスをもらってみてもいいでしょう。

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