- 「9万円の差」の正体と、損する人がハマる落とし穴
- 借入3,000万円の場合、登録免許税の軽減措置(2027年3月31日申請分まで)が適用されるかどうかで、納める税額は12万円と3万円。実に9万円の差になります。こうした「知っているかどうかだけで生まれる差」がどこに潜んでいるのか、定額型手数料の金利逆転や電子契約と印紙税の関係も含めて、具体的な数字で解き明かします。
- 何に・いつ・いくら払うのかがわかる諸費用チェックリスト
- 住宅ローンの諸費用は事務手数料や保証料、各種税金、火災保険料など項目が多く、支払う相手もばらばらです。本記事では「支払い先」「タイミング」「節約余地」の3視点で全項目を一覧表に整理。契約前にチェックしておけば、引渡し直前に慌てる事態を防げます。
- 得する人が実践している「賢い払い方」の判断軸
- 諸費用の支払い方は現金・住宅ローンへの組み込み・諸費用ローンの3通り。総返済額を最小にしたい人と手元資金を残したい人では最適解が異なります。3つの方法を比較し、「自分はどれを選ぶべきか」を迷わず判断できる基準を示します。
物件のページを眺めながら「頭金はこれくらい、月々の返済はこれくらい」と計算していたのに、いざ話が進むと「諸費用として別に150万円ほどご用意ください」と言われて戸惑った。。。住宅購入の場面では、こうした声が少なくありません。
しかも諸費用の世界には、もうひとつ知られていない事実があります。同じ物件を同じ金額で買っても、支払う諸費用の総額は人によって違うということです。たとえば登録免許税の軽減措置を使えるかどうかだけで9万円、金融機関の選び方次第では数十万円。損する人と得する人の差は、収入や交渉力ではなく「知っているかどうか」でほぼ決まります。
とはいえ、身構える必要はありません。諸費用はひとつずつ分解すれば金額の根拠がはっきりしているお金ばかりです。ここでは、どこで差がつくのかを具体的な数字で確かめながら、「得する側」に回るための知識を順番に整理していきます。
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まず全体像から—諸費用は物件価格の5〜10%、3,000万円なら150万円超

諸費用とは「物件価格以外に必要になるお金」の総称
住宅ローンの諸費用とは、物件そのものの代金とは別に、住宅の購入とローン契約に伴って発生する費用の総称です。大きく分けると、次の3つの性格のお金が混ざっています。
- 金融機関・保証会社に払うお金:事務手数料、保証料など
- 国や自治体に払うお金(税金):印紙税、登録免許税、不動産取得税など
- 保険や専門家に払うお金:火災保険料・地震保険料、司法書士への登記代行手数料、仲介手数料など
性格の違うお金が一括りに「諸費用」と呼ばれているため全体像がつかみにくいのですが、この3分類で捉えると、後述する「節約できる費用・できない費用」の見分けが一気にしやすくなります。実は、損する人と得する人の分かれ道も、この3分類のどこに注目するかで説明できます。
目安は150万〜300万円。幅が生まれる理由
諸費用の総額は、一般的に物件価格の5〜10%程度が目安とされます。仮に3,000万円の物件であれば150万〜300万円。決して小さな金額ではありません。
幅があるのは、物件の種別によって必要な費用が変わるためです。たとえば仲介手数料は、不動産会社が仲介する中古物件では発生しますが、売主から直接購入する新築マンションでは原則かかりません。また、事務手数料や保証料の設定は金融機関によって大きく異なります。つまり「自分の場合はいくらか」は、物件タイプと金融機関の組み合わせで決まる、と考えておくとよいでしょう。
より具体的な相場感や計算方法を知りたい方は、<住宅ローンの諸費用>具体的な内訳と計算方法、節約のコツを解説もあわせてお読みください。
支払いは「契約時」と「融資実行時」に集中する
損する・しない以前に、多くの人が最初につまずくのが支払うタイミングです。
売買契約時には手付金とあわせて契約書の印紙税が、ローンの融資が実行される引渡し時には、事務手数料・保証料・登録免許税・司法書士への報酬・火災保険料などが一度に必要になります。さらに入居後、半年〜1年ほど経ってから不動産取得税の納税通知書が届くケースもあります。
「引渡しの日にまとまった現金が動く」「入居後にも税金の請求が来る」。この2点を先に知っておくだけで、資金計画の精度は大きく変わります。
家計から住宅購入予算を試算する 月々の返済額を調べる何に・いつ・いくら払う? 住宅ローン諸費用チェックリスト
ここで、主な諸費用を「支払い先」「タイミング」「節約余地」の3つの視点で一覧にしてみましょう。物件や金融機関によって不要な項目もあるため、自分のケースに当てはまるものにチェックを入れながら使ってみてください。
| 費用項目 | 支払い先 | 主なタイミング | 金額の考え方 | 節約余地 |
|---|---|---|---|---|
| 印紙税(ローン契約書) | 国 | ローン契約時 | 借入1,000万円超5,000万円以下で2万円 | △(電子契約なら不要の場合あり) |
| 事務手数料 | 金融機関 | 融資実行時 | 定額型/定率型(借入額の一定割合)で金融機関により大きく異なる | ◎(金融機関選びで差がつく) |
| 保証料 | 保証会社 | 融資実行時または金利上乗せ | 金融機関・審査結果により変動。不要の商品もある | ◎(フラット35などは保証料不要) |
| 登録免許税(抵当権設定) | 国 | 登記時 | 本則は借入額の0.4%。要件を満たせば0.1%に軽減 | △(軽減措置の適用可否を確認) |
| 登記代行手数料(司法書士報酬) | 司法書士 | 登記時 | 依頼内容・事務所により変動 | ○(見積り比較が可能) |
| 火災保険料・地震保険料 | 保険会社 | 融資実行時前後 | 補償範囲・期間・建物構造で変動 | ○(補償の取捨選択で調整可能) |
| 団体信用生命保険 | 金融機関経由 | 多くは金利に含まれる | 一般的な団信は金利込みが主流。上乗せ型の特約もある | ○(特約の要否を検討) |
| 仲介手数料 | 不動産会社 | 契約時・引渡し時 | 中古物件などの仲介取引で発生 | △(法定上限の範囲内) |
| 不動産取得税 | 都道府県 | 入居後(通知が届く) | 軽減措置により大幅に減額・ゼロになるケースも | △(軽減の申告を忘れない) |
金融機関・保証会社に払うお金は「選び方」で変わる
事務手数料には、借入額にかかわらず一定額を支払う「定額型」と、借入額の一定割合(たとえば2.2%と設定する金融機関が多く見られます)を支払う「定率型」があります。借入3,000万円で定率2.2%なら66万円。定額型なら数万円〜数十万円で済むこともあり、一見すると定額型が有利に見えますが、ここには後述する落とし穴が潜んでいます。
保証料は、返済が滞った場合に備えて保証会社と契約するための費用で、金融機関によって「一括前払い」「金利に上乗せ」「そもそも不要」と扱いが分かれます。たとえば住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する全期間固定金利型の「フラット35」では、保証料と繰上返済手数料がかかりません(出典:住宅金融支援機構「フラット35」)。
税金として払うお金は「軽減措置」の知識で差がつく
住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)に貼る印紙税は、記載金額が1,000万円超5,000万円以下の場合で2万円と定められています(出典:国税庁「No.7101 不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書」)。
そして、タイトルの「9万円の差」の正体がここにあります。抵当権設定登記にかかる登録免許税は、本則では借入額の0.4%ですが、床面積50㎡以上の自己居住用住宅であることなど一定の要件を満たすと、税率は0.1%に軽減されます(適用期限:2027年〈令和9年〉3月31日)(出典:国土交通省「住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置」)。借入3,000万円なら、本則12万円が3万円に。同じ家を買っても、適用の有無だけで9万円の差が生まれる計算です。
保険・専門家に払うお金は「必要十分」を見極める
火災保険は、金融機関が加入を融資の条件とするのが一般的です。保険料は補償範囲(水災を含めるか等)・保険期間・建物の構造によって変わるため、単純に安いプランを選ぶのではなく、ハザードマップで居住地域の災害リスクを確認したうえで補償を取捨選択するのが基本です。
司法書士への登記代行手数料は、報酬部分については事務所ごとに設定が異なります。金融機関から紹介された司法書士に依頼するケースが多いものの、報酬の内訳を見積書で確認しておくと安心です。
免震構造の新築マンションを探す 管理状態の良いマンションを探す損する人がハマる3つの落とし穴—「安く見える」に要注意

諸費用で損をする人に共通するのは、項目を知らないことよりも「一部だけを見て判断してしまうこと」です。得する側に回るために、つまずきやすい3つの落とし穴を先に知っておきましょう。
落とし穴①:定額型の事務手数料は、金利とセットで見ないと逆転する
前述のとおり、事務手数料は定額型のほうが初期費用としては安く済みます。ところが、定額型を採用する商品では、そのぶん適用金利が定率型よりも高めに設定されているケースがあります。
初期費用は安いのに総返済額では高くつく。この逆転現象は、35年という返済期間の長さゆえに起こります。手数料単体で比べるのではなく、「事務手数料+保証料+総返済額」のトータルで比較することが、損しない金融機関選びの鉄則です。
落とし穴②:9万円トクする軽減措置は「登記申請日」が基準
登録免許税の0.1%への軽減措置には、2027年3月31日までという期限があります。ここで注意したいのは、基準になるのが購入日や契約日ではなく登記の申請日だという点です。適用を受けるには、市区町村が発行する住宅用家屋証明書を登記申請時に添付する必要もあります。
要件の確認や書類の準備は司法書士と金融機関が案内してくれるのが通常ですが、「軽減が適用される前提の見積りかどうか」を自分の目で確かめておくと、想定外の負担を防げます。
落とし穴③:紙の契約か電子契約かで、印紙税の扱いが変わる
印紙税は紙の課税文書に対して課される税金のため、金融機関が電子契約に対応している場合、書面の契約書を作成しなければ印紙税がかからないことがあります(電子契約の手数料が別途設定されている場合もあります)。近年はネット銀行を中心に電子契約の取り扱いが広がっているので、契約方法の選択肢と費用の違いを事前に確認してみる価値があります。
住宅購入のやること・スケジュール あなた専用!引越しまでのやることリスト得する人はここを見ている—節約できる費用・できない費用の見分け方
諸費用の節約を考えるときにまず押さえたいのは、「すべてを削ろうとしない」ことです。得する人は、力を入れる場所と割り切る場所をはっきり分けています。費用は次の3グループに整理できます。
節約余地が大きい費用:金融機関選びで決まるもの
事務手数料と保証料は、どの金融機関・どのローン商品を選ぶかでそのまま金額が変わります。数字のうえでは最も差がつきやすいグループです。ただし落とし穴①のとおり、必ず金利・総返済額とセットで比較しましょう。
工夫次第で調整できる費用:保険・引越し・登記
火災保険料は補償範囲と期間の設計次第で調整できます。ハザードマップで水災リスクが低いと確認できる地域なら水災補償を外す選択もあり得ますが、「安くすること」自体が目的化して必要な補償まで削っては本末転倒です。引越し費用も、繁忙期(2〜4月)を避けるだけで大きく変わる代表的な項目です。
削れない費用:法律で決まっている税金
印紙税や登録免許税は法律で税額・税率が定められており、値引き交渉の余地はありません。ここでできるのは「軽減措置を漏れなく適用すること」だけです。不動産取得税も同様に、軽減の申告を忘れないことが実質的な節約になります。
なお、この「見分け」を実際の物件に当てはめるには、具体的な物件価格をもとにシミュレーションしてみるのが一番の近道です。まだ物件を絞り込んでいない段階でも、気になるエリアの価格帯を眺めておくと、諸費用の目安(価格の5〜10%)が現実的な数字として見えてきます。
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払い方でも差がつく—現金・組み込み・諸費用ローンの判断軸
諸費用は現金で支払うのが基本ですが、まとまった現金を用意しにくい場合には「住宅ローンに組み込む」「諸費用ローンを別途組む」という選択肢もあります。ここでも、どれを選ぶかで長期的な損得が変わります。
3つの支払い方法の比較
| 支払い方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 現金で支払う | 利息がかからず総負担が最小 | 手元資金が減り、緊急時の備えが薄くなる |
| 住宅ローンに組み込む | 住宅ローンの低金利で借りられる/手元に現金を残せる | 借入総額が増え毎月返済額が上がる/金利が上乗せされる場合がある |
| 諸費用ローンを組む | 現金がなくても購入時期を早められる | 住宅ローンより金利が高い傾向/返済口座が増え管理が煩雑 |
判断軸は「利息の損」と「手元資金の安心」のどちらを取るか
総返済額だけを見れば、現金払いが最も有利です。しかし、諸費用を払った結果、預貯金がほぼゼロになるようでは、病気や転職など不測の事態への備えがなくなってしまいます。目先の利息を惜しんで手元資金を空にするのは、それはそれで「損する払い方」なのです。
目安として考えたいのは、「諸費用を現金で払ったあとも、生活費の数ヶ月分の予備資金が手元に残るか」です。残るなら現金払い、残らないなら無理をせず一部を組み込む、というのが基本の判断軸になります。組み込みや諸費用ローンを選ぶ場合も、「いくらまでなら毎月返済額の増加を許容できるか」を先に決めてから借入額を逆算すると、借りすぎを防げます。
諸費用ローンの仕組みや注意点をさらに詳しく知りたい方は、住宅購入に必要なのは購入費用だけじゃない! 諸費用のための「諸費用ローン」と節約方法が参考になります。
資金計画は「物件価格+諸費用+予備費」の3点セットで
最後に、資金計画の立て方をシンプルにまとめると次のとおりです。
- 物件価格の目安を決める(エリアの相場を確認する)
- 諸費用を物件価格の5〜10%で仮置きする
- 引越し代・家具家電・当面の予備費を上乗せする
- 手元に残す予備資金を差し引いて、頭金と諸費用の現金額を決める
この順番で考えれば、「諸費用を忘れていて頭金を減らす羽目になった」という典型的な失敗を避けられます。
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住宅ローンの諸費用で損する人と得する人の差は、特別なテクニックではなく「どこで差がつくかを知っているかどうか」にあります。登録免許税の軽減で9万円、金融機関選びで数十万円。そして軽減措置には2027年3月31日という期限があるため、検討を先延ばしにするほど「得する側」に回る選択肢は狭まっていきます。
とはいえ、焦って決める必要はありません。まずは気になるエリアの物件価格を眺めて、「自分の場合、諸費用はいくらくらいになりそうか」をざっくり計算してみる。それだけでも、資金計画の解像度は確実に上がります。
よくある質問
Q1. 住宅ローンの諸費用は、頭金とは別に用意する必要がありますか?
A. 別のお金として考えるのが基本です。頭金は物件価格の一部に充てるお金、諸費用は手数料や税金などに充てるお金で、性格が異なります。諸費用を住宅ローンに組み込める金融機関もありますが、その場合も借入総額が増えるため、資金計画では最初から分けて見積もっておきましょう。
Q2. 「9万円の差」は誰でも受けられるのですか?
A. 登録免許税の軽減(0.4%→0.1%)には、床面積50㎡以上の自己居住用住宅であることなどの要件があり、2027年3月31日までに登記申請することが条件です。また9万円という金額は借入3,000万円の場合の計算例で、借入額によって差額は変わります。適用可否は金融機関や司法書士に必ず確認しましょう。
Q3. 中古物件と新築物件では、諸費用に違いがありますか?
A. あります。代表的なのは仲介手数料で、不動産会社の仲介で購入する中古物件では発生しますが、売主から直接購入する新築マンションなどでは原則かかりません。中古住宅の諸費用相場は中古住宅購入にかかる諸費用の相場は? 物件価格別にシミュレーションで詳しく解説しています。
Q4. 諸費用を少しでも抑えるなら、まず何から見直すべきですか?
A. 最初に見直すべきは金融機関選びです。事務手数料と保証料は金融機関によって数十万円単位で差がつく一方、税金は削れないためです。ただし手数料が安い商品は金利が高い場合があるので、必ず総返済額まで含めて比較してください。そのうえで、火災保険の補償設計や引越し時期の調整を検討しましょう。
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更新日: / 公開日:2020.06.24










