50歳になり、老後暮らすための住宅を購入したいと考える人も少なくないのではないでしょうか。もちろん、その際、購入資金の一部は住宅ローンから融資を受けたいと考える方が多いと思います。

しかし、そもそも50歳で住宅ローンが組めるのか、また返済はどのようにするのか、不安ですよね。そこで今回は、そんなお悩みにお答えいたします。

 

結論から言うと、50歳でも住宅ローンは組めます。まずは、住宅ローンの基本から見ていきましょう。

 

住宅ローンは、金融機関ごとに金利など内容が異なるところもありますが、融資するための審査項目の多くは同じです。主に、購入する物件に担保価値があるかという「物的要件」と、滞りなく返済する人かという「人的要件」の審査が行われます。

 

「人的要件」では、契約者の借入時の年齢、完済時の年齢、勤続年数、年収や健康状態などが審査されます(※1)

 

借入時の年齢は20歳から満65歳未満や満70歳未満、完済時の年齢は80歳の誕生日の前日や81歳未満など金融機関によって条件はさまざまです。

 

(※1)国土交通省「平成27年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」(p.18)

返済期間が短く返済額が高い

 

50歳で融資を受けるとした場合、単純に考えると30年間でも返済できるのですが、定年退職を想定すると、現実的には65歳くらいまでに完済しないと家計の負担が重くなります。それを踏まえて返済すると、毎月の返済額が高くなってしまうでしょう。

 

また、民間の金融機関から融資を受けるときは、契約者が住宅ローン返済中に万一亡くなった場合などに、保険金で残債を弁済する団体信用生命保険(団信)に加入できる健康状態であることも必須です。

 

なお、金融機関が住宅金融支援機構と提携した住宅ローンの「フラット35」は、必ずしも団信に加入しなくても融資を受けられます。しかし、すでに融資返済額相当の保険金が受給できる生命保険に加入しているといった対策なしに住宅ローンを組むことは無謀です。契約者が万一返済できなくなった時に備えておきましょう。

 

では、50歳の方はどのような住宅ローンが組めるのでしょうか。50歳の会社員Aさんを例に考えてみます。

 

Aさんは入社後ずっと社宅暮らしで、50歳を迎えるに当たり、終の棲家となる自分たちの家を持ちたいと専業主婦の奥さんと考えています。Aさん夫婦には、独立した長男と大学2年生の長女がいます。

 

Aさんの会社は、60歳まで昇給し60歳で定年です。その後5年間は再雇用されます。定年退職の時に退職一時金が支給されますが、60歳以降の給与はこれまでの半分以下になります。Aさんは65歳で完全リタイアをして、年金生活に入ろうと思っています。

 

さて、Aさんの家計ですが、60歳までは給与収入だけで賄っていけます。60歳以降は、退職一時金と今までの貯蓄を取り崩さないと生活が成り立たない可能性もあります。社宅に住んでいた分、貯蓄はしているとしても、住宅ローンの返済が加わると家計収支がどうなるか心配です。

 

そこで、平均寿命プラス5歳、奥さんが93歳になるまでの将来の家計収支のシミュレーションをすることにしました。この試算をすることで、家計に負担のない老後の家計収支や住宅ローンの毎月の返済額と返済期間を算出でき、自ずと購入できる住宅の価格が決まります。

 

ではAさんに適した住宅ローンについて考えてみます。年金生活に入ると家計に負担がかかると考え、Aさん宅は、融資の返済期間は65歳までの15年とします。また、Aさんは、この先の生涯の収入が明確に算出できているため、毎月の返済額が定額な全期間固定金利の住宅ローン商品が適していると考えられます。

 

返済の方法は、15年間の住宅ローンを組む方法(表1)がスタンダードですが、今後、親からの相続、生前贈与やご自身の資産運用などで、まとまった資金が入る予定があれば、毎月の返済額が少ない30年間でローンを組み15年目を目途に完済する(表4)選択もできます。

 

なお、退職一時金は老後の生活資金の一部であり、すべてを住宅ローンの返済資金に使ってしまうと、75歳や80歳になってから家計が破たんする可能性があるので、おすすめいたしません。

 

では、Aさんが3,000万円住宅ローンの融資を全期間固定金利の「フラット35」にした場合の返済シミュレーションを考えてみます。

 

借入時年齢:50歳・返済期間:15年・金利1.110%(融資率9割以下15年の返済ですので「フラット20」/2019年8月の金利)

融資額:3,000万円(表1)

毎月の返済額 181,003円
返済総額 32,580,614円
利息支払い総額 2,580,614円
住宅ローン控除額 約1,960,000円

利息支払い総額と住宅ローン控除額に注目すると、住宅ローン控除(2019年8月現在)制度の恩恵に気が付かれるでしょう。

 

表1と同条件で1,500万円の融資を受けた場合は次のようになります。

 

・融資額:1,500万円(表2)

毎月の返済額 90,502円
返済総額 16,290,307円
利息支払い総額 1,290,307円
住宅ローン控除額 約980,000円

 

次に「フラット35」で、30年間融資を受けて、30年間で完済する場合です。

借入時年齢:50歳・返済期間:30年・金利1.170%(融資率9割以下/2019年8月の金利です)

・融資額:3,000万円(表3)

毎月の返済額 98,852円
返済総額 35,586,845円
利息支払い総額 5,586,845円
住宅ローン控除額 約2,520,000円

住宅ローン控除額は、表1より返済期間が長い分、元本の減り方も遅く控除額も大きくなります。

 

表3と同じ条件で15年目に約1,640万円を繰り上げ返済して完済した場合は次のようになります。

 

・融資額:3,000万円(表4)

毎月の返済額 98,852円
返済総額 34,188,536円
利息支払い総額 4,105,668円 
住宅ローン控除額 約2,520,000円

生前贈与などで1,640万円の援助があった場合のご自身の支払総額は約1,778万円です。

 

なお、「フラット35」のサイトからご自身で住宅ローンの返済のシミュレーションが可能です。また、もっとゆとりをもった返済をしたいという方に向けて親子リレーローンという方法もあります。

 

親子リレーローンとは、たとえば、Aさんと長男家族が同居する家の住宅ローンを、最初はAさんが返済し、65歳以降の完全リタイア時に長男が引き継ぐ方法です。親子で30年間かけて完済するイメージは前述の表3のようになります。

 

ただ、Aさん宅で長男家族と親が同居することに、親と兄妹の間で合意がなされていないと、後にトラブルが発生することもあります。また、入居後の修繕費の負担や将来に向けた住宅の維持、建て替えなどについても、親子間で同意がなされていることが重要です。

50歳前後からは老後の生活費を貯める時期と重なり、貯蓄をしながら融資を返済することになります。返済が負担にならない範囲での借入れが大原則です。

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