- 1982年より前の家でも控除は受けられる
- 耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書・瑕疵保険の付保証明書のいずれか1つで対象になります。
- 3つの書類の費用・期間・段取りの違い
- 比較表と判断軸つきで、自分の物件ならどれを選ぶべきかが具体的にわかります。
- 「落とし穴」と回避策
- 引渡し後では手遅れになるケースや、旧耐震マンション特有の難しさを事前に把握できます。
気に入った中古物件を見つけて価格も立地も申し分ないのに、「築年数が古いので住宅ローン控除は使えないかもしれません」と言われて、心が揺れる。中古住宅探しでは、そんな場面が珍しくありません。控除が使えるかどうかで、10年〜13年の間に戻ってくるお金は100万円単位で変わります。だからこそ「築古=控除の対象外」と思い込んで候補から外してしまうのは、実はもったいない判断です。
現在のルールでは、登記簿上の建築日が1982(昭和57)年1月1日以降であれば、築年数がどれだけ経っていても原則として住宅ローン控除の対象になります。そして、それより前に建てられた「旧耐震」の物件でも、建物が現行の耐震基準を満たしていることを所定の書類で証明できれば、控除への道は開けます。鍵を握るのが「耐震基準適合証明書」「既存住宅性能評価書」「既存住宅売買瑕疵(かし)保険の保険付保証明書」という3つの証明書類です。
ただし、この3つは費用も期間も段取りもまったく違ううえ、どれも原則として引渡し前に動き始めなければ間に合いません。この記事では、2026年度税制改正後の最新制度を前提に、3つの証明書類の中身と取得の流れ、そしてプロだからこそお伝えしたい落とし穴と判断軸を、順を追って解説します。
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「築25年ルール」はもう存在しない—今の分かれ目は1982年

住宅ローン控除の基本と2026年からの最新ルール
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、返済期間10年以上の住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合に、年末時点のローン残高の0.7%が所得税(引ききれない分は一部住民税)から控除される制度です。控除期間は新築住宅・買取再販住宅が原則13年、中古(既存)住宅は住宅の省エネ性能に応じて13年または10年です(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)。
2026年度(令和8年度)税制改正では、制度の適用期限が2030年12月31日の入居分まで5年間延長されました。あわせて既存住宅向けの内容が拡充され、長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅に該当する中古住宅は借入限度額3,500万円・控除期間13年に、省エネ基準適合住宅も控除期間が13年に延長されています。
床面積要件も原則50㎡以上から40㎡以上へ緩和されました(合計所得金額1,000万円超の人や、子育て世帯・若者夫婦世帯向けの上乗せ措置を使う場合は50㎡以上)。中古住宅を検討する人にとって、制度面の追い風が強まったタイミングだといえます。
築年数要件の廃止と「登記簿の建築日」での判定
かつての住宅ローン控除には「耐火建築物(マンション等)は築25年以内、非耐火建築物(木造戸建て等)は築20年以内」という築年数要件があり、これを超える物件は証明書類がなければ控除を受けられませんでした。しかし2022年度(令和4年度)の税制改正でこの築年数要件は撤廃され、現在は「1982(昭和57)年1月1日以降に建築された住宅(新耐震基準適合住宅)」であれば、登記事項証明書の新築年月日を確認するだけで要件を満たす扱いに変わっています(出典:国土交通省「住宅ローン減税Q&A」2026年6月更新)。
つまり、築30年でも築40年でも、登記簿上の建築日が1982年1月1日以降なら、耐震関係の証明書類は原則不要です。「築25年を超えているからダメ」という古い情報をもとに物件を除外してしまうのは、選択肢をみすみす狭めることになります。
1981年以前の物件に残された3つのルート
では、登記簿上の建築日が1981(昭和56)年12月31日以前、いわゆる旧耐震期の物件はどうでしょうか。結論からいえば、次のいずれか1つの書類で「一定の耐震基準を満たしていること」を証明できれば、住宅ローン控除の対象になります。
- 耐震基準適合証明書(建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が発行)
- 既存住宅性能評価書の写し(耐震等級〈構造躯体の倒壊等防止〉が等級1・2・3のもの)
- 既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入していることを証する書類(保険付保証明書等)
いずれも確定申告の際に添付・提示する書類ですが、実務上は「物件の引渡し前」から準備を始めることが大前提になります。この点は後半で詳しくお伝えします。まずは1982年以降築の物件も含めて相場観をつかんでおくと、旧耐震物件の価格の割安さと証明コストのバランスも判断しやすくなります。
中古マンションを探す 中古一戸建てを探す証明書類①:耐震基準適合証明書—王道だが「段取り勝負」
どんな書類で、誰がいつ申請するのか
耐震基準適合証明書は、建築士や指定確認検査機関などが耐震診断を行い、その建物が現行の耐震基準に適合していることを証明する書類です。原則として建物の引渡し前に、売主が申請者となって手続きを進めます。買主が主体になれるのは、引渡し前に「仮申請」をして、引渡し後・入居前に耐震補強工事を実施するルートに限られます。
もう一つ重要なのが期限です。証明のもとになる耐震診断(家屋調査)は、住宅取得日前2年以内に終えている必要があります。「昔とった診断結果があるから大丈夫」と思っていたら期限切れだった、というケースは避けたいところです。
費用と期間の目安
費用は、証明書の発行が5万円前後、前提となる耐震診断が10万円前後、あわせて15万円前後が一般的な目安です。期間は、診断から発行まで順調に進んでも1ヶ月程度、補強工事が必要と判定されればさらに工事期間が上乗せされます。売買契約から引渡しまでの期間は1〜2ヶ月程度で設定されることが多いため、「購入を決めたらすぐ、売主・不動産会社に証明書の相談をする」くらいのスピード感が必要です。
診断で基準を満たさなかったら終わり、ではない
耐震診断の結果、現行基準に届かないと判定されても、そこで諦める必要はありません。必要な耐震補強工事を行ったうえで再度確認を受ければ、証明書が発行される可能性があります。
引渡し前に売主側での工事調整が難しい場合は、前述の仮申請ルートを使い、引渡し後・入居前に買主負担で補強工事を行う方法もあります。ただしこの場合、補強工事の実施が証明書発行の条件になるため、工事費用と期間を資金計画・入居スケジュールに織り込んでおくことが欠かせません。
管理状態の良い中古マンションを探す 築浅の中古マンションを探す証明書類②・③:性能評価書と瑕疵保険—特徴の違いを正しく知る

既存住宅性能評価書—「耐震等級1以上」が絶対条件
既存住宅性能評価書は、国土交通大臣登録の第三者評価機関が、国の統一基準(住宅性能表示制度)に基づいて建物の現況と性能を評価した書類です。住宅ローン控除に使うには、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級1〜3であることが条件です。評価書が交付されても、耐震等級がこの条件を満たしていなければ控除には使えない点に注意してください。
申請者に制限がなく、売主・買主のどちらでも(第三者でも)申し込めるのが特徴です。費用は現況検査が3万〜17万円前後、耐震等級を含む個別性能評価が5万〜12万円前後、期間は1ヶ月程度が目安です。評価も住宅取得日前2年以内に受けている必要があり、等級が不足する場合は評価をいったん保留し、補修後に再検査を受けて取得する方法があります。
既存住宅売買瑕疵保険の保険付保証明書—書類自体は最軽量
既存住宅売買瑕疵保険は、購入後に構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に欠陥(瑕疵)が見つかった場合の補修費用などを保証する保険です。売主が宅建業者の場合はその業者が、売主が個人の場合は検査事業者が被保険者となって加入します。この保険に加入していることを証明するのが保険付保証明書で、証明書自体の発行手数料は無料、発行までの期間も1週間前後と、3つの中では最も手軽な書類です(保険加入に伴う検査料・保険料は別途かかります)。
ただし、住宅ローン控除に使うには、住宅取得日前2年以内かつ引渡し前に保険契約の締結を済ませておく必要があります。証明書は保険契約者(不動産会社や検査事業者)のもとに届くため、買主は受け取りを忘れずに依頼しておきましょう。
3つの証明書類を一覧で比較
| 項目 | 耐震基準適合証明書 | 既存住宅性能評価書 | 瑕疵保険の保険付保証明書 |
|---|---|---|---|
| 証明する内容 | 現行耐震基準への適合 | 耐震等級1以上(+現況・他性能) | 瑕疵保険への加入 |
| 主な申請者 | 原則売主(仮申請は買主) | 誰でも可 | 売主業者または検査事業者 |
| 費用の目安 | 診断込みで15万円前後 | 検査・評価で8万〜29万円前後 | 証明書は無料(検査料・保険料は別途) |
| 期間の目安 | 1ヶ月以上 | 1ヶ月程度 | 1週間前後 |
| 動き出す期限 | 引渡し前(診断は取得日前2年以内) | 引渡し前(評価は取得日前2年以内) | 引渡し前に保険契約締結 |
| 副次的メリット | 補強で建物の安全性も向上 | 建物の状態を多面的に把握できる | 購入後の欠陥に保険で備えられる |
どれを選ぶべきかは、物件の状態・売主の協力度・スケジュールの3点で変わります。迷ったら、売買契約の前に不動産会社へ「この物件で住宅ローン控除を使うにはどの書類が現実的か」を必ず確認してください。
耐震住宅・免震住宅・制震住宅が得意な会社を探す 長期優良住宅が得意な会社を探す意外と知られていない落とし穴—プロが見る3つの判断軸
落とし穴①:旧耐震マンションは「個人の努力」では証明できないことがある
戸建てなら買主・売主の判断で耐震診断や補強工事を進められますが、マンションの耐震性は建物全体、つまり共用部分の構造で決まります。旧耐震マンションで耐震基準適合証明書を取るには、管理組合として耐震診断を実施済みで、かつ基準に適合している(または耐震改修済みである)ことが事実上の前提です。
一住戸の買主がどれだけ頑張っても、建物全体の診断・改修は動かせません。旧耐震マンションを検討するときは、内見の段階で「耐震診断の実施履歴と結果」「耐震改修の有無」を管理組合の資料(重要事項調査報告書等)で確認するのが判断の近道です。
落とし穴②:「瑕疵保険が最安・最速」とは限らない
比較表だけを見ると瑕疵保険ルートが最も手軽に見えますが、旧耐震物件の場合、瑕疵保険への加入自体に「新耐震基準相当の耐震性が確認できること」が求められるのが一般的です。つまり結局は耐震診断が必要になり、基準を満たさなければ加入できません。「保険なら無料で1週間」という数字は、あくまで建物側の条件をクリアできた場合の話です。逆にいえば、建物の耐震性に自信がある物件なら瑕疵保険ルートは速くて手堅く、購入後の欠陥への備えという実利もついてきます。
もう一つ見落とされがちなのが、1981年後半に建てられた建物の扱いです。新耐震基準は1981年6月1日以降の建築確認に適用されるため、登記簿の新築日が1981年内でも、建築確認は新耐震で受けている「実質新耐震」の建物が存在します。この場合、確認済証などの資料と現地確認によって証明書の発行につながるケースがあるので、登記簿の日付だけで諦めないことが大切です。
落とし穴③:控除額だけで判断しない—費用対効果の判断軸
証明書類の取得や補強工事には、数十万円〜場合によっては百万円単位の費用がかかることがあります。一方で控除による還付額は、ローン残高・所得税額・控除期間で決まります。そこで、旧耐震物件の購入判断では次のチェックリストを使ってみてください。
- 登記簿上の新築年月日は1982年1月1日以降か(以降なら証明書類は原則不要)
- 1981年以前築の場合、耐震診断の実施履歴・結果はあるか(マンションは管理組合レベルで)
- 証明書類の取得費用+想定される補強工事費の概算はいくらか
- 自分の年収・借入額で、控除により戻る見込み額は10年(または13年)でいくらか
- 証明手続きと工事を、引渡し・入居スケジュールに無理なく組み込めるか
- 補強工事をした場合、安全性・資産価値の向上分をどう評価するか
「控除で戻る額」より「証明と補強にかかる額」が大きくても、耐震性が上がった家に安心して住めること自体に価値がある、という考え方も十分成り立ちます。数字と暮らしの両面から、自分なりの答えを出すことが大切です。条件の近い物件を並べて比べると費用対効果の感覚がつかみやすいので、まずは気軽に相場を眺めてみてください。
耐震住宅・免震住宅・制震住宅が得意な会社を探す 長期優良住宅が得意な会社を探す実際いくら戻る?2026年以降の控除額と確定申告の流れ

既存住宅の借入限度額と最大控除額
2026年以降に入居する既存住宅の住宅ローン控除は、住宅の性能区分によって次のように整理されています。
| 住宅の性能区分 | 借入限度額 | 控除期間 | 最大控除額(総額) |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 13年 | 318.5万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 13年 | 182万円 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 10年 | 140万円 |
※控除率は一律0.7%。19歳未満の子がいる世帯、または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯には借入限度額の上乗せ措置があり、たとえば省エネ基準適合の既存住宅では最大控除額が273万円まで拡大します。実際の控除額は毎年の年末ローン残高と納めている所得税額に応じて決まるため、上記はあくまで理論上の最大値です。
証明書類で耐震要件をクリアした旧耐震物件は、多くの場合「その他の住宅」に区分されますが、それでも10年間で最大140万円。決して小さくない金額です。なお、適用には合計所得金額2,000万円以下、床面積40㎡以上(一定の場合は50㎡以上)、返済期間10年以上のローンであることなどの要件もあわせて満たす必要があります。
初年度は確定申告が必須—書類は「引渡し前」から逆算する
住宅ローン控除を受けるには、入居した年の翌年に確定申告(原則2月16日〜3月15日)を行います。会社員でも初年度だけは確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で手続きできます。申告時には、金融機関の年末残高証明書や登記事項証明書、売買契約書の写しなどとあわせて、旧耐震物件では今回紹介した3つの証明書類のいずれかを添付します。
繰り返しになりますが、証明書類はどれも「確定申告の直前に急いで取る」ことができません。診断・評価・保険契約はいずれも住宅取得日前2年以内、かつ実務上は引渡し前に動く必要があるためです。購入の意思が固まった時点で、不動産会社・売主・建築士と証明ルートをすり合わせる。これが旧耐震物件で控除を勝ち取る唯一の王道です。
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築年数が古いというだけで中古住宅を候補から外してしまうと、割安で立地のよい物件と出会う機会も、10年で最大140万円規模の控除も、同時に手放すことになりかねません。1982年以降築なら登記簿の確認だけで足り、1981年以前築でも「耐震基準適合証明書」「既存住宅性能評価書」「瑕疵保険の保険付保証明書」のいずれかで道は開けます。勝負を分けるのは、引渡し前にどれだけ早く動けるかです。
まずは肩の力を抜いて、どんな物件が市場に出ているかを眺めるところから始めてみませんか。築年数・価格・エリアを見比べるうちに、「この物件なら証明書類を取ってでも買う価値がある」という自分なりの基準が見えてきます。
おすすめ特集から中古マンションを探す おすすめ特集から中古一戸建てを探すよくある質問
Q1. 築40年の中古住宅は、住宅ローン控除の対象になりますか?
A1. 登記簿上の新築年月日が1982(昭和57)年1月1日以降であれば、築年数にかかわらず原則対象です。1981年以前築の場合も、耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)・瑕疵保険の保険付保証明書のいずれか1つで耐震性を証明できれば対象になります。
Q2. 3つの証明書類は、いつまでに用意すればよいですか?
A2. 提出自体は入居翌年の確定申告のときですが、耐震診断・性能評価・保険契約はいずれも住宅取得日前2年以内に行う必要があり、実務上は物件の引渡し前に手続きを始めないと間に合いません。購入を決めたらすぐ、売主・不動産会社に相談してください。
Q3. 耐震診断で基準を満たさないと判定されたら、控除は諦めるしかありませんか?
A3. 諦める必要はありません。必要な耐震補強工事を行ったうえで再確認・再検査を受ければ、証明書や評価書を取得できる可能性があります。引渡し前に売主側で対応できない場合は、買主が仮申請をして引渡し後・入居前に工事を行う方法もありますが、工事費と期間を資金計画に織り込んでおきましょう。
Q4. 3つの証明書類のうち、結局どれを選べばよいですか?
A4. 建物の耐震性がすでに確認できている物件なら、費用と期間の負担が軽い瑕疵保険ルートが有力です。売主の協力を得やすいなら耐震基準適合証明書、建物の状態も含めて把握したいなら既存住宅性能評価書が向いています。旧耐震マンションでは管理組合の耐震診断・改修状況が前提になるため、まずは不動産会社にどのルートが現実的かを確認するのが確実です。
更新日: / 公開日:2019.05.13










