- 収入合算には2つのタイプがある
- 収入合算とひと口にいっても、実は「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類が存在し、どちらになるかで合算者が住宅ローン控除を受けられるか、団体信用生命保険(団信)に入れるかが変わります。金融機関ごとにどちらの型を扱っているかが異なるため、申込前に必ず確認すべきポイントを整理します。
- 収入合算の落とし穴と回避策
- 「借入額が増える」というメリットの裏側で見落とされがちな、合算者に万一のことがあってもローンが減らないリスク、離婚しても連帯保証・連帯債務から簡単には抜けられない問題、産休・育休で世帯収入が下がっても返済額は変わらないという現実を、回避策とセットで解説します。
- ペアローンとの違いと自分たちに合う選び方
- 契約の本数、団信、住宅ローン控除、諸費用という4つの視点で収入合算とペアローンを比較表で整理したうえで、「どちらを選ぶと自分たちの家計と将来設計に合うのか」を自己診断できる7項目の判断チェックリストを用意しました。
物件情報を眺めていて「この家、いいな」と思った瞬間、頭の中でローンの計算が始まるけれど、自分ひとりの年収では審査に通りそうにない。そんなとき、多くの共働き夫婦がたどり着くのが「収入合算」という選択肢です。
実際、いまや共働きは特別な働き方ではありません。総務省「労働力調査」をもとにした集計によると、2024年の共働き世帯は1,300万世帯に達し、前年からさらに22万世帯増えています(出典:労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計 図12 専業主婦世帯と共働き世帯」)。夫婦2人の収入を前提に住まいを考えることは、ごく自然な流れになっています。
ただ、収入合算は「借りられる額が増える便利な仕組み」とだけ理解して契約してしまうと、10年後、20年後に思わぬ形で家計を圧迫することがあります。とくに見落とされやすいのが、収入合算に「連帯保証型」と「連帯債務型」という2つのタイプがあり、どちらになるかで税金や保険の扱いがまったく違うという点です。仕組みの違いを知ったうえで、ペアローンも含めて比較し、自分たちの働き方と将来設計に合う方法を選んでいきましょう。
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住宅ローンの収入合算とは? 実は2つのタイプがある

収入合算の基本:世帯の収入を合わせて審査を受ける仕組み
収入合算とは、住宅ローンの主債務者(名義人)の収入に、配偶者や親・子など一定の親族の収入を合算して審査を受ける方法です。合算した金額をもとに借入可能額が計算されるため、単独では届かなかった金額まで借入の枠が広がります。
たとえば全期間固定金利の【フラット35】では、収入合算できるのは申込者の直系親族や配偶者などで、申込時の年齢が70歳未満、原則としてその住宅に同居すること、そして連帯債務者になることなどが条件とされています(出典:住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」)。
友人や知人といった親族以外の人と収入を合算することはできません。合算できる人数や「収入の全額まで合算できるか、半分までか」といった細かなルールは金融機関ごとに異なるため、候補の金融機関で個別に確認が必要です。
「連帯保証型」と「連帯債務型」—ここを混同すると後悔しやすい
収入合算を理解するうえで最も重要なのが、この2つの型の違いです。
連帯保証型は、多くの民間金融機関が採用している形です。合算者は「連帯保証人」となり、主債務者が返済できなくなったときに返済義務を負います。あくまで保証人であって債務者ではないため、原則として物件の持分は持たず、住宅ローン控除も受けられず、団信にも加入できません。
連帯債務型は、【フラット35】や一部の金融機関で選べる形です。合算者は「連帯債務者」として、主債務者と同じ1本のローンについて全額の返済義務を共に負います。物件の持分を持ち、負担割合に応じて2人とも住宅ローン控除の対象になり得る点が、連帯保証型との大きな違いです。
つまり「収入合算にしたのに、妻(夫)の分の控除が受けられないと後から知った」という後悔の多くは、自分たちのローンが連帯保証型だったことを契約時に理解していなかったことが原因です。収入合算を検討するときは、まず「その金融機関の収入合算はどちらの型か」を確認することが出発点になります。
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借入可能額が増え、選べる物件の幅が広がる
最大のメリットは、審査上の年収が増えることで借入可能額が広がることです。【フラット35】では、年収に占めるすべての借入の年間合計返済額の割合(総返済負担率)の基準が、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下と定められています(出典:住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」)。
単純計算で、年収500万円の人が単独で申し込む場合の年間返済額の上限が175万円(500万円×35%)であるのに対し、年収200万円の配偶者と合算して700万円で審査されれば上限は245万円(700万円×35%)まで広がります。この差が、借入可能額の差となって表れます。
契約が1本なので、ペアローンより諸費用を抑えやすい
収入合算はあくまで「1本のローン」です。夫婦がそれぞれ契約を結ぶペアローンでは、事務手数料や契約書の印紙税、抵当権設定の登記費用などが2契約分かかるのに対し、収入合算では1契約分で済みます。借入額が同じでも、初期費用の面では収入合算のほうが軽くなりやすい構造です。
パートや契約社員でも合算に加われる場合がある
単独では審査が難しい働き方でも、収入合算の「合算者」としてなら審査対象の収入に加えられる場合があります。取り扱いは金融機関によって異なりますが、正社員の主債務者にパート収入を合算する、といった組み合わせが選択肢になり得るのは収入合算ならではの柔軟さです。
さらに連帯債務型を選べた場合には、持分と負担割合に応じて2人分の住宅ローン控除を使える可能性があります。住宅ローン控除は年末のローン残高に控除率0.7%を掛けた額が所得税等から差し引かれる制度で、住宅の省エネ性能や世帯の状況によって対象となる借入限度額が細かく定められています。制度の内容は税制改正で変わるため、最新の条件は国土交通省の案内で確認してください(出典:国土交通省「住宅ローン減税」)。
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合算者に万一のことがあっても、ローンは1円も減らない(連帯保証型)
住宅ローンには通常、主債務者が亡くなった場合に保険金で残債が完済される団信が付いています。しかし連帯保証型の収入合算では、合算者は団信に加入できません。つまり、合算者である配偶者が亡くなったり働けなくなったりしても、ローン残高はそのまま残り、主債務者が1人で返し続けることになります。「2人の収入があるから返せる」前提で組んだ返済計画が、その瞬間に崩れるリスクです。
なお【フラット35】の連帯債務型であれば、夫婦2人で加入でき、どちらかに万一のことがあれば残債が全額弁済される連生団信「デュエット」を選べます。連帯保証型を検討する場合は、合算者に民間の生命保険でどこまで備えるかをセットで考えておくと、このリスクを和らげられます。
「合算した分だけ」ではなく、債務全体に責任を負う
誤解されがちですが、連帯保証人・連帯債務者が負うのは「自分が合算した収入に見合う分」ではありません。主債務者が返済できなくなれば、ローン残高の全体について返済を求められる立場です。合算はあくまで審査上の計算であって、責任の範囲を分ける仕組みではないことを、契約前に夫婦で共有しておく必要があります。
離婚しても、連帯保証・連帯債務からは簡単に抜けられない
夫婦関係が終わっても、金融機関との契約は自動的には変わりません。連帯保証人や連帯債務者の地位を外すには、代わりの保証人を立てる、ローンを借り換える、物件を売却して完済するといった対応が必要で、いずれも金融機関の審査や市場価格に左右されます。「離婚したのに、元配偶者のローンの保証人であり続けている」という状態は現実に起こり得ます。収入合算は、家計だけでなく夫婦の関係そのものを長期の契約で結び付ける選択だと捉えておきましょう。
産休・育休・介護離職—収入が減っても返済額は変わらない
収入合算で借入額を最大まで引き上げると、返済計画は「2人がいまの水準で働き続けること」が前提になります。しかし出産・育児・介護・転職などで合算者の収入が減っても、毎月の返済額は変わりません。ライフイベントの多くは、離婚や死亡と違ってある程度予測できるものです。「合算者の収入が数年間ゼロになっても返せる金額か」という視点で借入額を決めることが、収入合算を安全に使う最大のコツといえます。
具体的な返済額の感覚をつかむには、金利と期間を入れて月々の返済額を試算してみるのが早道です。▶ LIFULL HOME’Sで月々の返済額を調べてみる
収入合算とペアローンの違いを比較表で整理
ペアローンは、夫婦それぞれが主債務者として別々のローンを契約し、お互いが相手のローンの連帯保証人になる方法です。「収入を合わせて買う」という目的は同じでも、契約の構造がまったく違います。
| 項目 | 収入合算(連帯保証型) | 収入合算(連帯債務型) | ペアローン |
|---|---|---|---|
| 契約の本数 | 1本 | 1本 | 2本 |
| 合算者・パートナーの立場 | 連帯保証人 | 連帯債務者 | 各自が主債務者(相互に連帯保証人) |
| 団信 | 主債務者のみ | 主債務者のみ(【フラット35】は夫婦連生団信「デュエット」を選択可) | それぞれ加入 |
| 住宅ローン控除 | 主債務者のみ | 負担割合に応じて2人とも対象になり得る | それぞれ対象になり得る |
| 物件の持分 | 主債務者のみが原則 | 2人で持ち合う | 2人で持ち合う |
| 諸費用(手数料・印紙・登記等) | 1契約分 | 1契約分 | 2契約分 |
| 向いているケース | 合算者の収入が補助的・不安定 | 1本の契約で2人分の控除も活かしたい | 2人とも安定収入があり、控除と団信を最大限使いたい |
ペアローンは2人分の団信と控除を活かせる一方、諸費用が2契約分かかり、どちらかが離職するとその人の控除が使えなくなるうえ、返済だけが残ります。収入の安定度が2人とも高いならペアローン、片方の収入が補助的なら収入合算、と大まかに整理できますが、最終的には次の判断軸で自分たちのケースに当てはめて考えてみてください。
なお、ペアローン側の詳しい解説や借入額別のシミュレーションは、住宅ローン、共働き夫婦で検討したい「収入合算」と「ペアローン」とは、住宅ローン5,000万円の場合、月々の返済額はいくら?もあわせて参考になります。
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契約前に、夫婦(または親子)で次の7項目を確認してみてください。ひとつでも「答えられない」項目があれば、その部分を金融機関や専門家に確認してから進むのが安全です。
- 【型の確認】 検討中の金融機関の収入合算は「連帯保証型」か「連帯債務型」か、書面で確認したか
- 【収入の持続性】 合算者の収入は、出産・育児・介護・転職を挟んでも10年単位で続く見込みか
- 【片働き耐性】 主債務者の収入だけになった場合でも、返済を続けられる借入額に収まっているか
- 【万一の備え】 団信でカバーされない側に万一のことがあった場合、生命保険などで残債分を補えるか
- 【離婚時の想定】 縁起の話ではなく契約の話として、離婚時の持分・返済・住み続ける人の扱いを話し合ったか
- 【費用の比較】 ペアローンにした場合の2契約分の諸費用と、控除・団信のメリットを天秤にかけたか
- 【控除の試算】 連帯債務型やペアローンで2人分の控除を使う場合、それぞれの所得税・住民税で控除を使い切れるか
このチェックリストを埋める過程で「そもそも自分たちはいくらの物件を狙うべきか」が曖昧だと気づいたら、先に予算の輪郭をつかむのがおすすめです。▶ LIFULL HOME’Sで家計から住宅購入予算を試算してみる
予算感がつかめたら、その価格帯でどんな物件があるのかを眺めてみると、収入合算が本当に必要な金額なのか、単独ローンで届く範囲に良い選択肢があるのかも見えてきます。
まとめと次のステップ
収入合算は、単独では届かない住まいに手を伸ばせる心強い仕組みです。ただしその中身は「連帯保証型か連帯債務型か」で税金・保険・持分の扱いが大きく変わり、ペアローンまで含めれば選択肢は実質3つあります。どれが正解かは年収の額ではなく、「2人の収入がこの先どう変化しそうか」で決まります。
一方で、「難しそうだから」と検討を止めてしまうと、いま使える住宅ローン控除の枠や、希望エリアで条件の良い物件に出会う機会をそのまま手放すことにもなりかねません。制度や物件は待ってくれませんが、判断の材料を集めることは今日からでも始められます。
まずは大きな決断の前の小さな一歩として、希望エリアの相場感を眺めてみたり、月々いくらの返済ならいまの家計と無理なく両立できるかを試算してみたりするところから始めてみてください。▶ LIFULL HOME’Sで物件を探してみる
「連帯保証型と連帯債務型、うちはどちらが得なのか」「ペアローンと比べて結局どうなのか」を第三者に整理してもらいたい場合は、中立的な立場のアドバイザーに資金計画から相談できる窓口もあります。▶ 無料で住まいの窓口に相談してみる
よくある質問
Q1. 収入合算は夫婦でないとできませんか?
A. 夫婦に限らず、親子など一定の親族間でも利用できます。【フラット35】では申込者の直系親族や配偶者などが対象で、申込時70歳未満、原則同居、連帯債務者になることなどが条件です。友人など親族以外との合算はできません。対象となる続柄の範囲は金融機関ごとに異なるため、個別に確認しましょう。
Q2. パート収入でも合算できますか?
A. 金融機関によりますが、パートや契約社員の収入を合算対象として認めるケースはあります。ただし「収入の全額を合算できるか、一部までか」の扱いも金融機関ごとに違います。また、合算できたとしても、その収入が長期的に続く前提の返済計画になる点には注意が必要です。
Q3. 収入合算した相手(合算者)も住宅ローン控除を受けられますか?
A. 連帯保証型では受けられません。連帯債務型であれば、物件の持分と債務の負担割合に応じて合算者も控除の対象になり得ます。控除の対象となる借入限度額や要件は住宅の性能や入居年によって細かく定められているため、最新の内容は国土交通省の「住宅ローン減税」の案内で確認してください。
Q4. 収入合算で家を買ったあとに離婚したら、ローンはどうなりますか?
A. 離婚しても連帯保証人・連帯債務者としての立場は自動的には解消されません。外すには代わりの保証人を立てる、借り換える、売却して完済するなどの方法が必要で、いずれも審査や物件の売却価格に左右されます。契約前に「もしも」の場合の取り決めを話し合っておくことが、将来のトラブルを防ぐ現実的な備えになります。
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更新日: / 公開日:2020.05.15










