住宅の購入は大きな支出であるため、住宅ローンを利用して住宅を購入する人も多いでしょう。住宅購入総額のうち、自己資金と住宅ローンをどの程度の割合で設定するのが適切なのでしょうか。

中には自己資金なしで住宅購入をする人もいますが、自己資金が豊富な場合に比べて総支払金額はどれくらい変わるのでしょうか。

今回は、自己資金とローン金額の適切な設定を知るためににいくつかシミュレーションをしてみましょう。

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住宅購入にあたって、自己資金はどの程度の割合が必要なのでしょうか。実は、条件を満たせば、物件購入額+諸費用分の住宅ローンを借りて家を購入することができることもあります。

 

ただし一般的には審査が厳しくなることや、金利が高くなることがいわれます。審査基準については、金融機関によって異なるので一概には言えません。

 

また、頭金の割合が少なくなると、最終的な支払い総額が高くなる傾向があります。家計とのバランスを考えて、頭金にどの程度支払うのかを考える必要がありますが、どのくらいの割合が適切なのでしょうか。

 

まずは、住宅を購入した人が物件価格に対してどの程度の自己資金を拠出しているのか見ていきましょう。

 

 

自己資金の比率平均について

 

国土交通省の平成28年度住宅市場動向調査によると、物件価格に対する自己資金率の全国平均は以下のような結果になっています。

住宅種別物件価格自己資金住宅ローン自己資金率
注文住宅※14,195万円1,298万円2,897万円30.9%
注文住宅※23,249万円1,169万円2,080万円64.0%
分譲個別住宅3,810万円2,783万円1,027万円26.9%
分譲マンション4,423万円1,729万円2,694万円39.1%
中古戸建住宅2,693万円1,157万円1,536万円43.0%
中古マンション2,657万円1,293万円1,364万円48.7%

※1 土地を購入した新築世帯、※2 建て替え世帯

 

自己資金率は、以前の住宅ローン契約の基準であった物件価格の20%がひとつの目安と言われています。一方で、住宅市場動向調査の結果を見ると、物件価格に対する自己資金率は高いと思われる方も多いでしょう。

 

これには、シニア世代の現金購入や、親からの贈与のケースが含まれていることもあるのでしょう。実際の30~40代で支払総額に対し3~4割もの自己資金を用意できる人は多くありません。

 

ただ、自己資金率を上げて返済総額を減らすようにすることは、リスク回避の面から検討してもいいでしょう。

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物件価格に対する自己資金率の基準を20%とし、その割合が上下10%ずつ変化した場合、どのような違いが生じるのでしょうか?

 

物件価格を4,000万円、返済期間35年、金利1.36%(固定金利・元利均等返済)で住宅ローンの契約を行った場合にどの程度の違いが生じるのかシミュレーションを行ってみましょう。

 

自己資金率を20%の場合

 

自己資金率20%の場合の返済計画は以下の通りです。

物件価格

自己資金

(20%)

住宅ローン返済総額

返済額

(1ヶ月)

4,000万円800万円3,200万円4,010万5,729円9万5,490円

自己資金率を30%の場合

 

自己資金率を20%から10%上げて30%になった場合の返済計画は以下の通りです。

物件価格

自己資金

(30%)

住宅ローン返済総額

返済額

(1ヶ月)

4,000万円1,200万円2,800万円3,509万2,454円8万3,554円

自己資金率20%の場合と比較すると、10%自己資金率を上げたことによって返済総額が約500万円、1ヶ月当たりの返済額が約12,000円少なくなっています。

 

自己資金に返済総額を加算した合計を比較しても100万円ほど支払総額が下がるため、返済負担が小さくなったといえるでしょう。

 

自己資金率を10%の場合

 

自己資金率を20%から10%下げて10%になった場合の返済計画は以下の通りです。

物件価格

自己資金

(10%)

住宅ローン返済総額

返済額

(1ヶ月)

4,000万円400万円3,600万円4,511万9,031円10万7,426円

自己資金率20%の場合と比較すると、10%自己資金を下げたことによって返済総額約500万円、1ヶ月当たりの返済額約12,000円多くなっています。

 

自己資金に返済総額を加算した合計を比較しても、約100万円支出が多くなってしまうため、返済負担が大きくなったといえるでしょう。

 

 

自己資金率が10%変わるだけでも返済負担は大きく変わる

 

今回のシミュレーションでは、10%自己資金率が変化したことによって、自己資金と返済総額を加算した合計額に100万円の差が生じることが分かりました。

 

自己資金に余裕があれば、ある程度自己資金率を大きくしているほうが返済負担を小さくできます。さらに、返済額を抑えた分だけ購入予算を引き上げることができるため、より良い物件を購入できるようになるでしょう。

 

今回の条件では、自己資金率を10%変化させたことによる差は100万円でしたが、住宅ローンの融資額や金利が大きくなった場合、さらに差が大きくなってしまいます。

 

支払い総額を低く抑えたい場合は、無理のない範囲で自己資金の割合を増やし、返済負担を小さくするように心がけましょう。

 

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物件価格に対する自己資金率を上げた分だけ、返済負担は小さくなりますが、支払った分一時的に資産が少なくなることを忘れてはいけません。

 

例えば、お子さんの教育や自動車購入などの出費が控えている場合には、ある程度手元に資金を残しておく必要があります。今後の支出予定や万が一の出来事を考慮して無理のない範囲で自己資金率を調整するようにしましょう。

 

住宅購入以外の出費について、教育費や自動車購入などは、いつどの程度の出費が発生するのか事前に把握することができますが、体調不良による休業などは予期せず発生します。

 

休業してしまうと、一時的に収入がなくなるため、貯金を崩して生活費や返済に充てる必要があります。したがって、ある程度の資産を手元に残して、万が一の事態に備えておくようにしましょう。

 

 

返済負担を小さくする方法として、自己資金率の割合を高くする以外に、返済負担率を下げるという方法があります。

 

返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合を表しており、金融機関が融資上限額を決める場合に使用する基準になります。

 

住宅ローン契約の1つである“フラット35”の返済負担率は以下の通りです。

年収400万円未満400万円以上
返済負担率30%以下35%以下

例えば、年収300万円の場合は、返済負担率30%以下が適用されるため、年間返済額の上限が90万円以下になり、年収500万円の場合は、返済負担率35%以下が適用されるため、年間返済額上限は175万円以下になります。

 

年収300万円に対して年間返済額が90万円の住宅ローンを組んでしまうと、生活費が1ヶ月当たり20万円を下回ってしまいますが、家族構成や今後発生する出費予定によっては生活に支障が出る可能性があります。

 

国土交通省の平成28年度住宅市場動向調査の結果を見てみましょう。

住宅種別年間返済額返済負担率
注文住宅142万円22.7%
分譲戸建住宅116.3万円19.2%
分譲マンション137.3万円18.0%
中古戸建住宅94.9万円18.9%
中古マンション98.9万円15.7%

上記は住宅ローンを契約した場合の年間返済額と返済負担率の全国平均を表していますが、返済負担率を見ると、フラット35が設定している返済負担率の上限よりも低い割合で融資を受けていることが分かります。

 

注文住宅のみ20%を超えていますが、返済負担率20%前後が生活に支障が生じにくい1つの基準といえるでしょう。

 

とはいえ、結婚して子どもがいる場合には生活費が多く発生するなど、家族構成などにより適切な返済負担率は変わってきます。

 

ご自身の自己資金率や返済負担率をいくらにすればいいのか不安な場合には、近くのファイナンシャルプランナーに相談すると良いでしょう。

 

まとめ
・物件購入費全額の住宅ローンを組めるようになった
・自己資金率は最低でも20%
・自己資金率を上げることで総返済金額を低く抑えられる
・将来の支出を考慮して無理のない範囲で自己資金率を調整する
・自己資金率に加えて返済負担率も考慮する
・わからない場合には近くのファイナンシャルプランナーに相談する

 

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マイホーム購入時の手付金は、物件価格の5〜10%程度が相場です。また手付金には上限があり、物件価格の20%と決められています。詳しくは手付金の相場をご覧ください。

国土交通省の「令和3年度住宅市場動向調査」によると、物件価格に対する自己資金の比率は次のとおりです。一戸建ての場合は、注文住宅を建てた世帯で23.5%、建売住宅を購入した世帯で20.9%、中古住宅を購入した世帯で44.0%。マンションの場合は、新築マンションで39.1%、中古マンションで41.3%となっています。自己資金率が返済計画に与える影響については自己資金率割合の変化による影響とはをご覧ください。

更新日: / 公開日:2018.08.06