家は人生で一番高い買い物といわれます。そのため、立地や広さ、間取りなど、さまざまな視点から検討したり、住宅ローンなどの資金計画をしたり、やらないといけないことがたくさんあります。何からすればいいのか、漠然とした不安を抱く人も多いのではないでしょうか。

特に「今まで転勤が多く住み替えのしやすさから賃貸住宅だった」「安価に借りられたため、ずっと社宅だった」「晩婚だったため、終の住処を視野に購入検討中」など、60歳前後になって初めてのマイホーム購入を検討中なら、なおさらでしょう。

しかも、予算に余裕がない場合は、手が届く価格帯の物件で妥協すべきなのか、年齢を考えて頭金をためるより1日でも早くローンを組んだ方がいいのか、そもそも諦めた方がいいのか…と悩みは尽きないでしょう。

60歳前後でマイホームを購入することは可能なのか。これまでに1,000棟以上の物件を見てきたマンションのプロフェッショナルであり、「60歳からのマンション学」(講談社+α新書)など多数の著書のある、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんに解説してもらいました。

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ライフステージが変わる時は、住まいを見直すチャンス

 

人生100年時代。これからの長い人生を有意義に過ごすため、60歳にさしかかるタイミングで「住まい」を見直す人は多いものです。定年退職や子どもの独り立ちなど60歳前後は、老後の住まいを考える“絶好のタイミング”。しかも、高齢社会の現代では、シニア世代に優しいさまざま選択肢が広がっています。

 

実際に、国土交通省の「令和3年度住宅市場動向調査報告書」によると、住宅を初めて取得する世帯は、「30 歳代」がもっとも多いですが、2回目以上の取得となる二次取得世帯は、「60 歳以上」がもっとも多いという結果が出ています。

 

しかし、第1回で登場した転勤が多くずっと賃貸住宅だった吉田さん、晩婚だった藤井さんご夫婦のように60歳前後で初めての購入となれば不安は尽きないでしょう。まずは60歳でも住宅ローンは借りられるのか見ていきます。

住宅ローンは70歳でも借りられる!

 

60歳前後であれば、購入や買い替えを検討する際、諸条件を満たせば住宅ローンを借りることは可能です。ただし、注意すべきなのが、「借入時」と「完済時」の年齢制限です。金融機関ごとにローン借入時と完済時のボーダーが定められており、主要金融機関の「借入時」の年齢条件は70歳前後という設定が多くみられます。

 

かつて「借入時の年齢」は、「65歳未満」が主流でしたが、近年では「70歳未満」「70歳の誕生日まで」などに引き上げた金融機関も多く、なかには「71歳未満」に設定されているなど緩和されてきています。

 

また「完済時の年齢」においても、「80歳未満」「80歳の誕生日まで」など80歳前後、なかには85歳未満という金融機関も出てきています。

 

そのため、住宅ローンには年齢の壁があることを意識しておきましょう。金融機関の選定から、必要書類をそろえるなど手続きには時間を要すものです。審査通過まで数ヶ月かかることも見越して、早めに行動するのが吉といえます。

 

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現金で足りない分をローンで

 

近年では、融資可能額について頭金を用意しなくても、物件価格と同額(100%)まで借りられる「フルローン」を認める銀行も増えています。ネット銀行のなかには、借り入れ時にかかる手数料なども融資する「オーバーローン」も。年齢、年収、返済負担率などの審査はあるものの、ローンが借りやすい傾向にあります。

 

そのため、高額ローンも通りやすいですが、定年後も長く続く返済は、無理をすると老後の生活に影響するばかりか、老後破産に陥る恐れもあります。

 

しかも、60歳前後からの住宅ローンは借入時と完済時の年齢制限から逆算すると、借りることができても借入期間は15~20年。物件価格の高騰もあり、全額ローンだけでまかなうのは、現実的に考えると無理をせざるを得ず、現金+ローンの合わせ技が理想的でしょう。60歳前後の購入は、貯金や退職金などを充てたうえで“足りない分をローンで補塡(ほてん)する”のがおすすめです。

「リバースモーゲージ」「リースバック」という選択肢も

 

物件価格や手持ち資金などによっては、一般的な住宅ローンを組むことが必ずしも最適な選択とはいかないことがあります。そんなときに、「リバースモーゲージ」「リースバック」という選択肢もあります。

リバースモーゲージ

「リバースモーゲージ」とは、自宅(所有不動産)を担保に入れて生活資金を借りる融資の仕組みをいいます。また、新たに買う新居を担保に入れて、毎月の返済は利息だけ、亡くなったときに不動産を処分して借入金を返済する「リバースモーゲージ型住宅ローン」もあります。亡くなったときにと聞くと切ないですが、相続問題とは無縁というメリットもあります。

リースバック

「リースバック」は、以下のような仕組みです。

  1. 自宅の所有者(売主)がリースバック事業者(買主)に住居を売却する
  2. 買主は買い取り代金を売主に一括払いし、売主は自宅の所有権を買主に移転する
  3. 買主を貸主、売主を借主とした賃貸借契約を締結する

まとまった資金を得ることができるのに、そのまま住み続けることもできます。また所有していないため、管理費等や固定資産税などの維持費も不要。引越しの手間暇や、近隣に売却したことを知られることもありません。

 

リバースモーゲージは、「60歳以上」や「70歳以上」といったように一定の年齢以上でなければ利用することはできませんが、リースバックの利用には年齢制限はありません。

 

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リバースモーゲージとリースバックの注意点

 

リバースモーゲージは長生きすればするほど、最初に設定された融資限度額まで資金を使ってしまうというリスクがあります。リースバックも配偶者や子どもなどに資産を残すことができません。しかも売却価格は相場より低くなる傾向があります。さらに、毎月の賃料は相場より高くなる傾向があり、更新時に賃貸借契約を断られてしまうことも。

 

今リースバックは、持ち家比率の高いシニア世代で取扱件数が増加しています。しかし、売却と賃貸借契約が同時に発生する煩雑さから、理解不足によるトラブルも起こっています。利用する場合は、事業者の説明をよく聞き仕組みを理解すること、専門家などに相談して長期的な計画を立てることをおすすめします。なお、国土交通省においても、リースバックの適切な活用方法や留意点等を検討し、消費者向けのガイドラインを公表しているので、参考にしてください。

 

ガイドブックは以下リンクからダウンロードできます。

参考:

ひとり住まいや、パートナーに先立たれた場合

 

将来、ひとりになることも考えておくべきでしょう。日本では女性の平均寿命は、男性より6年以上長くなっています。パートナーに先立たれたら、その後の住まいはどうなるのでしょうか。

 

ローン契約時の「団体信用生命保険(団信)」によって住宅ローンが完済され、そのまま住むことができます。ただし、フラット35などは団信への加入は義務付けていません。任意のため、契約時に加入していなかった場合は、自ら対応できるような資金計画が必要です。

 

なお、団信には三大疾病(がん・心筋梗塞・脳血管疾患)などの特約を付ける人が増えています。ただし、特約は住宅ローンや団信以上に年齢制限が厳しい傾向にあります。「8大疾病」「11大疾病」「全疾病保証」など内容もさまざま。新たに住宅ローンを組む場合、特約も検討するなら、内容のほか年齢のタイムリミットに注意しましょう。

 

パートナーに先立たれ部屋が広いと感じたら、ダウンサイジングし今の家は売らず賃貸に出すという選択肢もあります。貸してその賃料内の新居を借りる、または、新居のローンに充てるのもよいでしょう。つまり、大切なパートナーとの思い出のつまった“家に働いてもらう”というわけです。このようにシニア世代でもさまざまな選択肢が増えています。

 

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老後の住処をうつる際、注意すべきこと

 

老後は年金収入のみなど、毎月使えるお金が限られている人も多いと思います。所有(分譲)マンションは長く住み続けられるメリットがある半面、管理費や修繕積立金など将来にわたる居住費用が不透明なところがあります。

 

その点、賃貸マンションであれば、一般的に賃料や共益費以上の費用は発生しないので、毎月の生活資金も明瞭です。

 

また、相続や将来ひとりになることを考えて、売りやすい物件を選ぶ人も多くいます。さまざまな手続きや引越しは、思いのほか大変です。体力・気力ともに元気なうちをおすすめします。

60歳前後のマンション選びのポイント

 

立地や広さ、築年数、ペット可、バリアフリーなど、チェックポイントはさまざまですが、なにより重要なのが、これから“何年住む予定か”です。

 

終の住処にするのか、将来的には子どもとの同居や老人ホームなどへの入居を考えているのかによっても、住まいを選ぶ基準は大きく変化します。相続にも関係するので、自分が亡くなったあとに子どもたちが必要とするのかも確認しておくと安心です。

 

また、間取りを自在に変えられる「可変性」貸したり売却したりしてお金を生み出す「換金性」を持ち合わせているマンション選びができれば、住み替えなどもしやすく自分の人生を支える糧となり“負動産化”しにくいでしょう。

 

全額を現金で買う場合を除いてタイムリミットを意識しつつも、5年先、10年先、20年先の自分——。今後のライフステージやライフスタイルの変化をイメージしながら、無理なく購入できるマンションを選びましょう。

 

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