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遺産相続トラブルの回避方法

「法定相続人同士で遺産分割協議がなかなか進まない」、「遺言で指定された相続分に納得がいかない」など、遺産相続ではトラブル事例がよく起こります。そこで、遺産相続のトラブルに対して、法定相続人はどのような対応をすればよいのか解説していくことにしましょう。

遺産相続トラブルの原因

遺産相続のトラブルというと、高額な資産を保有している家庭で起こり得る問題だと考えている人もいるでしょう。しかし、ごく一般的な家庭で起こっている遺産相続のトラブルも少なくありません。遺産相続トラブルの原因は、ごく身近なところに存在しているのです。

被相続人の相続財産が不明確である場合、遺産相続のトラブルに発展しやすいといえます。実際に相続財産を取得できる状態になると、各法定相続人は皆、欲が出てきてしまうものです。そのため、相続財産が不明確であると、各法定相続人は、「もう少し相続財産があるのではないか」という思いを抱いてしまうのです。

また、被相続人と同居している法定相続人がいると、ほかの法定相続人の中で相続財産の使い込みや資産隠しを疑う人も出てきます。そのようなことにより、法定相続人の間でお互い不信感を抱くようになり、遺産相続のトラブルへと発展していくのです。

被相続人に内縁の配偶者がいるケースも、遺産相続のトラブルの原因となります。たとえば被相続人所有の自宅に、被相続人と内縁の配偶者が一緒に住んでいたとしましょう。その後、相続が発生した場合、内縁の配偶者は被相続人所有の自宅を相続できません。内縁の配偶者は被相続人の法定相続人ではないからです。したがって、被相続人所有の自宅を相続できる法定相続人が権利を主張したとき、内縁の配偶者は住む場所を失ってしまうのです。

法定相続人同士の仲が悪いことが原因で、遺産相続のトラブルにつながるケースも少なくありません。遺産相続の手続きをするには、原則法定相続人全員で遺産分割協議をして、取得する相続財産を決めることになります。しかし、遺産相続兄弟の仲が悪いと遺産分割協議をする際、お互い意見をぶつけ合いやすくなり、なかなか話がまとまりません。場合によっては、法定相続人同士で話し合いをすることすらままならないときもあるでしょう。

相続財産の中で不動産の占める割合が多いケースも注意が必要です。不動産は預貯金と違い、法定相続人の間で平等に分割しにくい特徴があります。たとえば、預貯金3,000万円の相続財産があり、3名の法定相続人がいるとしましょう。この場合であれば、各法定相続人が預貯金を1,000万円ずつ取得すれば、平等に分割することが可能です。しかし、相続財産が3,000万円の不動産のときは、預貯金のように物理的に分割することができません。そのため、法定相続人の間で不動産を平等に分割しようとしてもなかなかうまくいかなくて、トラブルになってしまうことがあるのです。

さらに、被相続人が残した遺言書の内容が不平等であると、遺産相続のトラブルの原因となってしまうでしょう。複数の法定相続人の中の1人が、ほとんどの相続財産を相続する旨の内容であれば、ほかの法定相続人はほぼ相続放棄をした状態になるため納得できません。このような内容の遺言書が出てくると、納得できない法定相続人の中には、相続手続きに非協力的な姿勢を示す人も多いものです。また、兄弟姉妹以外の法定相続人が遺留分の請求をしてくることにより、裁判上で争わなければならないケースも出てきます。

遺産相続トラブルを避けるための対策

遺産相続のトラブルはいろいろな原因で起こります。しかし、遺産相続のトラブルの大半は、事前に対策することで予防が可能です。

遺産目録を作成しておけば、未然に遺産相続のトラブルを防げるでしょう。遺産目録の存在により、被相続人の相続財産が明確になります。それにより、法定相続人同士で財産隠しを疑うこともなくなり、遺産分割協議もスムーズに進むケースが多いです。

また、法定相続人の中には、被相続人と同居している人も少なくありません。このようなときは、遺産目録を作成するだけではなく、法定相続人の財産と被相続人の財産を明確に区分けしておくことが大切です。遺産目録には、財産の種類ごとに分けて、特定できるように記載します。不動産であれば所在や地番、家屋番号などを記載して物件を特定します。銀行預金の場合、銀行名、支店名、預金の種類、口座番号を記載するのが一般的です。遺産分割協議書と同様、一目見ただけですぐにわかるように記載するのが、遺産目録作成のポイントになります。

相続手続きをする際、支障が出ないように、日頃から家族や親族間で適度にコミュニケーションを取っておくことも大切です。たとえば、被相続人の法定相続人が長男、長女、二男の子ども3名だったとしましょう。長男は被相続人と同居して何年もの間、献身的な介護をしてきました。その後、被相続人が亡くなって相続手続きをしようとする際、長女と二男がその状況を把握していれば、長男が多めに相続財産を取得することに同意してくれる可能性も高くなります。逆に長女と二男が長男と日頃ほとんど会話をせず、長男が被相続人を毎日介護していることを知らないと、納得しないケースが多くなるでしょう。日頃から家族や親族間で話す機会を持っておくと、相続手続きをする際、法定相続人同士が納得した形で話をまとめられることが多いです。

しかし、家族や親族の中には、どうしても性格や考え方が合わない人もいます。このようなケースで、日頃からコミュニケーションを取り合うのはなかなか難しいのが現実です。子ども同士の仲が悪く、お互い話し合いをするのが難しい状況にあるのであれば、親が生前に遺言書を作成しておくとよいでしょう。

相続が発生したとき、被相続人は遺言を活用することで、原則自分の財産を自由に処分することができます。被相続人が遺言書を残しておけば、その内容にしたがって相続手続きを進めていくのが原則です。そのため、遺産相続の手続きをするときに法定相続人同士で話し合いをする必要がありません。

したがって、被相続人が遺言書を残しておけば、法定相続人同士の仲が悪くても、遺産相続手続きのトラブルを回避できるのです。ただ、兄弟姉妹以外の法定相続人は遺留分があるので、それを考慮して遺言書を作成したほうがよいでしょう。相続遺留分を無視した内容の遺言書を作成すると、遺言で財産を取得した人が法定相続人から遺留分の請求を受ける可能性があるからです。

また、被相続人が遺言で法定相続分と違う割合で相続分を定めたり、法定相続人以外の人へ遺贈したりするケースも少なくありません。この場合、そのような内容にした趣旨を遺言書に記載しておくとトラブルを予防できます。

遺産相続トラブルでよくある質問

法定相続人の間で遺産相続の手続きを進めていく際に、さまざまなトラブルに遭遇する可能性があります。その中でも、遺産相続でよくあるトラブルについてQ&A形式でまとめてみました。

Q1.法定相続人の1人が認知症や行方不明者の場合、どのようにして遺産分割協議を行えばよいのでしょうか。

A1.人が認知症になると自分で考える力が失われるため、法律行為を1人で行えなくなります。遺産分割も法律行為に当たるので、認知症の法定相続人は1人で協議に参加できません。このような場合、家庭裁判所へ成年後見の申立を行い、成年後見人を選任してもらいます。その上で成年後見人が認知症の法定相続人を代理して、ほかの法定相続人と遺産分割協議を行うことになります。

また、法定相続人の1人が行方不明になっても、その地位に変動はありません。そのため、遺産分割協議をするには、行方不明の法定相続人を探し出す必要があります。行方不明者の戸籍と戸籍の附票を取り寄せて調査を行えば、探し出せるケースも少なくありません。もし、行方不明者の法定相続人を探し出せないときは、家庭裁判所へ不在者財産管理人を選任してもらいます。選任された不在者財産管理人は家庭裁判所の許可を得て、ほかの法定相続人と遺産分割協議を行います。

Q2.法定相続人全員で遺産分割協議を行った後、被相続人の遺言書が見つかった場合、遺産相続の手続きをやり直さなければならないのでしょうか。

A2.遺産相続の手続きでは、遺産分割協議で決定された内容より遺言書の内容が優先されます。そのため、被相続人の遺言書の内容と遺産分割協議で決定された内容に違う点があれば、その部分は無効になってしまいます。そのため、無効になった部分は手続きをやり直さなければならないのが原則です。

ただし、法定相続人全員で、被相続人の遺言書の記載事項と異なった内容の遺産分割協議をすることが可能です。そのため、法定相続人全員で、遺言書が見つかる前に成立した遺産分割協議の効力をそのまま維持する旨の決定をすれば、手続きをやり直す必要はありません。

Q3.親の相続財産の大半が不動産なので、なかなか遺産分割協議がまとまりません。どのような方法で分割するとよいのでしょうか。

A3.不動産を取得する法定相続人を決める場合、代償分割を活用するとよいでしょう。代償分割とは、特定の法定相続人が不動産を取得して、ほかの法定相続人へその対価を支払う遺産分割方法です。代償分割をする際、不動産を取得した法定相続人の代償金を支払う資力が問題になりますが、生命保険を活用すれば解決できるでしょう。

代償分割が難しいときは、換価分割を利用する方法が考えられます。換価分割とは、相続不動産をほかの人へ売却し、その代金を法定相続人全員で分ける遺産分割方法です。換価分割の方法で遺産分割を行うと相続不動産は失ってしまいますが、確実に法定相続分どおりの遺産を取得できます。

Q4.被相続人の遺言がなかなか実行されないので相続手続きが進みません。どのように対処すればよいのでしょうか。

A4.遺言で遺産を取得する人がなかなか手続きをしないのであれば、家庭裁判所へ遺言執行者の申立をするとよいでしょう。遺言執行者とは、法定相続人の代わりに遺言の実行手続きを行ってくれる人をいいます。遺言執行者を選任すれば、不動産の相続登記や預貯金の名義変更などの手続きをすべて行ってくれます。そのため、遺言で遺産を取得する人が何もしないときでも、遺言内容どおりに手続きを進めることができるのです。未成年者や破産者以外であれば遺言執行者になれるので、一般の人の中から選任することもできます。

しかし、遺言の実行手続きは法的な専門知識を要することも多いので、専門家を遺言執行者へ選任したほうが好ましいでしょう。

トラブルが起こってしまった場合

事前に遺産相続トラブルの対策をしていても、思わぬところで法定相続人同士の争いが発生してしまうケースも少なくありません。また、被相続人の子ども同士の仲が元々悪くて対策の施しようがない場合もあります。そこで、遺産相続のトラブルが起こってしまったとき、法定相続人はどのように対処すればよいのでしょうか。このような場合は、遺産分割調停や審判の手続きを利用して解決をはかっていきます。遺産分割調停や審判は、相続放棄手続きと同様、家庭裁判所へ申立を行います。

遺産分割の紛争を解決する際、調停と審判のどちらを先に申立てても構いません。遺産分割の事件は、調停前置主義(審判より先に調停を申立てなければならない法則)が取られていないからです。ただし、先に遺産分割の審判の申立が行われた際、家庭裁判所は調停に切り替えるケースが少なくありません。できるだけ法定相続人同士で自主的に解決したほうが好ましいと考えるからです。

遺産分割調停をするには、まず被相続人の法定相続人と相続財産の調査をしなければなりません。その上で、申立書と必要書類を家庭裁判所へ提出して遺産分割調停の申立を行うのです。申立書には、被相続人と法定相続人全員に関する情報、遺産分割調停の申立をした具体的理由などを記載しなければなりません。

また、遺産分割調停の申立に必要となる書類は、被相続人と法定相続人の相続関係がわかる戸籍、被相続人の相続財産の詳細がわかる遺産目録です。また、遺産の中に不動産が含まれているときは、登記簿謄本(登記事項証明書)も提出する必要があります。家庭裁判所が遺産分割調停の申立を受理した後、調停を行う日が決定されます。通常は申立が受理されてから1カ月後くらいに定められるケースが多いでしょう。

調停を行う日に、各法定相続人は調停委員(調停手続きを進めていく人)を通じて、意見を主張します。調停委員の主導のもと、法定相続人の間で話し合いがまとまれば、遺産分割調停が成立します。この場合、各法定相続人は調停で決まった内容どおりに遺産相続の手続きを行うことになります。一方、話し合いが決裂したときは、審判手続きへ移行して家庭裁判所側で遺産分割の内容が決められるのです。

まとめ

被相続人の相続財産が明確でない、法定相続人同士の仲が悪いなど、遺産相続のトラブルとなる原因は身近にあります。遺産相続のトラブルは、遺産目録や遺言書を作成するなどの方法で、未然に防げるケースも少なくありません。ただし、相続が発生して、遺産相続のトラブルが発生してしまう場合はどうしてもあります。そのようなときは、遺産分割調停や審判の手続きを活用しましょう。遺産相続のトラブルが起こった後は、法定相続人同士お互い感情的になっていることが多いものです。そのため、法律の専門家に間に入ってもらいながら、解決をはかるとよいでしょう。

(2021年2月)

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