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遺言書

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など遺言書にはいくつかの種類があります。遺言書の種類によって作成方法が違うので、それぞれの作成規定をしっかり理解しておかなければなりません。そこで今回は、遺言書の法的効力と作成方法について見ていきましょう。

遺言書の法的効力

遺言書の効力は、民法で定められている相続順位や相続分に優先します。遺言書の効力が発生した場合、その内容にしたがって遺産相続の手続きを進めていくのが原則です。民法には私的自治の原則があります。私的自治の原則とは、契約をしたり、財産を処分したりする決定を自分の意思で行う考えのことです。相続財産も元々被相続人が生前に所有していた財産になります。そのため、被相続人自身で相続財産の承継方法を決めるのが私的自治の考え方に合致します。

しかし、相続が発生したときは、すでに被相続人は亡くなっているため意思表示ができません。そのようなことから、被相続人が自分の意思で相続財産を処分できるように遺言書の制度が設けられているのです。

ただ、遺言書へ記載すればどのような事項でも法的効力が認められるわけではありません。遺言書へ記載したときに法的効力が発生する事項については民法で定められています。遺言書で法的効力が発生する事項を法定遺言事項といいます。

なぜ、法律で法定遺言事項が定められているのでしょうか。それは、遺言書の効力が発生したときに、被相続人の意思を確認できないからです。被相続人の意思が確認できない状況の中、どのような事項でも遺言書の法的効力が発生すると、権利関係が不明確になる可能性が出てきます。それによって、法定相続人や受遺者の間で紛争が起こりかねません。そのような事態を防ぐために、民法では遺言書で法的効力が発生する事項を限定しているのです。

法定遺言事項にはどのようなものがあるのでしょうか。まずは、遺言書で財産を譲り渡すことができる遺贈です。遺贈を利用すると被相続人は法定相続人以外の人へ財産を移転することができます。そのため、遺贈をする目的で遺言書を作成する人も少なくありません。

ただ、遺贈の対象財産が不動産である場合、登記手続きのことも考える必要があります。遺贈による不動産登記の手続きをするには、原則被相続人の法定相続人全員の協力が必要だからです。遺言書で遺産分割方法の指定をしたときも法的効力が発生します。法定相続人同士で遺産分割協議をしても、なかなか話がまとまらないときもあるでしょう。

しかし、被相続人が遺言書で遺産分割方法を指定しておけば、そのような事態を未然に防げます。それにより、相続人同士でスムーズに話し合いが進み、短期間で遺産分割協議書を作成することが可能です。

また、相続廃除の旨を遺言書に記載したときも法的効力が発生します。相続廃除の申立を行うと、法定相続人は相続放棄をしたときと同じように相続権を失います。遺言で相続廃除をしたとき、遺言書の効力が発生すると、遺言執行者(遺言書の内容を実現するために事務手続きをする人)が家庭裁判所へ相続廃除の申立を行わなければなりません。そのほか、遺言書で法的効力が発生する事項に、相続分の指定、認知、遺留分の請求方法の指定、遺言執行者の指定などがあります。

また、遺言者の中には、法定遺言事項以外のことを記載する人が少なくありません。遺言書を通じて自分の意思や思いを法定相続人へ伝えられるからです。遺言書で定めた相続分や遺産分割方法を指定した理由を記載しておけば、各法定相続人もその意図を理解しやすくなります。

それにより、各法定相続人は遺言書の記載事項について納得し、相続手続きに協力的になるケースも多くなるのです。遺言書に法定遺言事項以外のことを記載しても法的な意味はありません。しかしながら、遺言書に基づく相続手続きをスムーズに進めやすくなるという点では大きな意味があります。

遺言書の書き方

遺言書の作成方法は民法で定められています。この規定に反して遺言書を作成しても法的効力が発生しません。したがって、遺言書を作成する際、その書き方を理解しておく必要があります。遺言書の種類はいろいろありますが、その中でも自筆証書遺言と公正証言遺言は利用機会の多いものです。公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書なので、書き方自体を覚える必要はありません。これに対して、自筆証書遺言は遺言者本人が作成する方式の遺言書です。したがって、自筆証書遺言の方式による遺言書の書き方をしっかり把握しておいたほうがよいでしょう。

自筆証書遺言の方式で遺言書を作成する場合、遺言書の全文を自筆で書く必要があります。ほかの人に書いてもらったり、パソコンで作成したりすることはできないのです。また、遺言書には、承継させる財産を明確に記載しなければなりません。特に不動産は登記手続きとの関係上、登記簿謄本(登記事項証明書)どおりに記載することが要求されます。ただ、自筆証書遺言書を作成するには、全文が自筆で書いてあるという要件が満たされていればよいので、使用する用紙やペンに制限はありません。したがって、便箋やメモを使用して遺言書を書いても問題ないのです。ただし、鉛筆を使用して遺言書を作成すると、ほかの人に内容を書き換えられてしまう可能性が高くなります。そのため、簡単に消すことができないペンを使用して書いたほうがよいでしょう。氏名や日付を記載して押印することも自筆証書遺言の作成要件になっています。氏名は、人物が特定できれば通称やペンネームでも構いません。ですが、争いを未然に防ぐという意味で、戸籍上の氏名を記載したほうが確実です。

日付は遺言作成日時が特定できるような書き方をする必要があります。年月日の「年」を記載する場合、西暦を用いても年号を用いても構いません。また、「私の65歳の誕生日」など日付が特定できれば有効です。ただ、まわりの人がだれでもわかるように、年月日で記載しておいたほうが好ましいといえます。押印するときに使用する印鑑は、実印でも認印でも法的には有効です。しかし、遺言者の実印が押印してあると、より遺言書の有効性が認められやすくなります。そのため、自筆証書遺言書へ押印する場合、実印を使用したほうが安全です。遺言書が数枚になる場合、契印(複数の用紙を重ねて押印すること)をする必要はありません。数枚のうちの1枚に押印があれば、自筆証書遺言の要式を満たします。

自筆証書遺言の方式で遺言書を作成している途中に、記載内容を間違えてしまったときはどうすればよいのでしょうか。このような場合、間違えた箇所を訂正することが可能です。ただ、自筆証書遺言書の訂正方法は民法に規定されているので、その方式にしたがって修正しなければなりません。遺言者が訂正した箇所を指示し、変更した旨を記載して署名します。さらに訂正した箇所に遺言者が押印しなければなりません。自筆証書遺言書の記載内容を訂正する場合、この方法以外は認められないので注意しましょう。

遺言書の文例

遺言者は、遺言でいろいろな財産を承継させようとします。また、遺言書を作成すれば、相続人だけではなくそれ以外の人へ財産を承継することが可能です。そのため、遺言書に記載される文言も状況によって変わってきます。そこで、遺言書の文例のさまざまなパターンを紹介していくことにしましょう。

相続人Aに遺言者が所有する土地を相続させるとき

文例1.遺言者の有する下記の土地を相続人A(生年月日)に相続させる。
上記の文の下に、相続させる土地の所在、地番、地目、地積を登記簿謄本どおりに記載します。

相続人Bに遺言者が所有する建物を相続させるとき

文例2.遺言者の有する下記の建物を相続人B(生年月日)に相続させる。
上記の文の下に、相続させる建物を登記簿謄本どおりに記載します。建物の記載事項は所在、家屋番号、種類、構造、床面積です。

相続人Cに遺言者が所有する建物と借地権を相続させるとき

文例3.遺言者の有する下記の建物および借地権を相続人C(生年月日)に相続させる。
建物の敷地と地主の氏名、住所を記載して相続対象の借地権を特定します。建物の敷地は所在、地番、地目、地積を登記簿謄本どおりに記載します。

相続人Dに遺言者の有する銀行預金を相続させるとき

文例4.遺言者の有する下記銀行預金を相続人D(生年月日)に相続させる。
銀行預金は、銀行名、支店名、口座の種類、口座番号を記載して特定します。

相続人Eに遺言者の有する自動車を相続させるとき

文例5.遺言者の有する下記自動車を相続人E(生年月日)に相続させる。
遺言対象の自動車を特定するために、登録番号、種別、車名、車台番号などを記載します。

相続人Fに遺言者の有するすべての財産を相続させるとき

文例6.遺言者の有する一切の財産を相続人F(生年月日)に相続させる。
遺言者の全財産を1人の相続人に相続させる場合は、それぞれの財産の詳細を記載する必要はありません。

相続分を定めて、相続人Gと相続人Hに遺言者の有する不動産を相続させるとき

文例7.遺言者の有する下記不動産を相続人G(生年月日)が3分の2、相続人H(生年月日)が3分の1の割合によって相続させる。
この遺言書があれば、遺産分割協議をすることなく、相続人Gが3分の2、相続人Hが3分の1の持分で不動産の相続登記ができます。

内縁の妻Iに遺言者の有する不動産を承継させたいとき

文例8.遺言者の有する下記不動産を内縁の妻I(生年月日)へ遺贈する。
内縁の妻は法定相続人ではないので、「相続させる」ではなく、「遺贈する」とします。また、不動産の受贈者である内縁の妻Iを遺言執行者に指定しておけば、単独で遺贈による不動産登記の手続きをすることが可能です。

以前作成した遺言書を取り消して、再度遺言書を作成するとき

文例9.遺言者は、年月日付で作成した自筆遺言証書による遺言を全部撤回し、ここに改めて以下のとおり遺言する。
遺言者が一度作成した遺言書を取り消すには、再度遺言書を作成してその旨を記載する必要があります。

遺言書の封筒見本

作成した遺言書を保管するとき、遺言書を封入した後、封印しなければならないという法律の規定はありません。しかし、作成された遺言書が書き換えられないように、封入と封印を行うケースも多いです。公正証書遺言の方式で遺言書を作成する場合、原本は公証役場で保管されます。そのため、遺言書が書き換えられてしまうリスクはないので、封入と封印を行う必要はないでしょう。

しかし、自筆証書遺言の方式で作成したときは、原則遺言者自身が遺言書を保管しなければなりません。したがって、ほかの人に書き換えられる可能性もあるので、自筆証書遺言書は封入と封印をしておいたほうが好ましいのです。

自筆証書遺言書を封入したり、封印したりする際、封筒にはどのようなことを記載すればよいのでしょうか。封筒の表面には「遺言書」「遺言状」などの文字を記載します。ほかの人が見てすぐわかるようになるべく大きな文字で記載したほうがよいでしょう。封筒の裏面には、遺言書の作成年月日と遺言者の氏名を記載して、封筒の綴じ目に押印します。封筒の綴じ目に押印する印鑑は、遺言書に押印した印鑑と同じものを使用しなければなりません。また、「開封せず、遅滞なく家庭裁判所へ提出してください」という1文も入れておきましょう。自筆証書遺言書の効力が発生した後、法定相続人は検認手続きのために、遺言書を家庭裁判所へ提出しなければならないからです。

検認手続きとは、遺言書の内容を明確にして、不正を防止する目的で家庭裁判所が行う手続きです。不動産の相続登記をする際、検認手続きをした自筆証書遺言書の提出が必要なことも知っておきましょう。また、自筆証書遺言書が封入や封印されている場合、検認手続きをする前に開封すると5万円以下の過料に科せられるとされています。そのようなことから「開封せず」という文言も記載しておくのです。

まとめ

遺言書で法的効力が発生するのは、法定遺言事項に限られます。それ以外の事項を遺言書に記載しても法的な意味はありませんが、被相続人の意思や思いを法定相続人に伝えられるメリットがあります。それにより、スムーズに相続手続きを進めることができるのです。遺言書の作成方法は法律で規定されているので、それにしたがって書かなければなりません。また、自筆証書遺言の方式で遺言書を作成した場合、封入や封印をしておいたほうが安全です。さらに、法律の規定に反して遺言書を作成すると無効になってしまいます。そのため、遺言に関する規定を把握してから、遺言書を作成したほうがよいでしょう。

(2021年2月)

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