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もしもの時の「差し押さえ」基礎知識

差し押さえの対処法

ここまでは、債権者の側から、つまり差押手続きを利用する側から、差し押さえの利用法等を解説していきました。今回は、債務者の側から、つまり逆に差し押さえを受ける側から、差し押さえを受けないため、又は受けた場合の対処法を解説していきます。

差し押さえを受けないために

差し押さえを受けると、口座が凍結され預金が引き出せなくなったり、給与債権が差し押さえられれば、借金をしていることが会社にばれてしまったりなどの不利益が生じてしまいます。

債権者は、債権の回収を行うことが最終目標であるため、差し押さえを受けない何よりの方法は、債務を返済する意思を明確に表示することです。例えば、お金がなくて一括での返済が困難である場合であっても、分割での返済計画を債権者に対して提示し、できる限り債務の返済を行っていく意思を持っていることをアピールすることで差し押さえが回避される可能性があります。

特に債権者が金融機関等の場合には、任意整理という形で、分割での返済計画を話し合ったうえで、和解をしてくれることも多くあります。債権者としても、強行的な債権回収によって、自己破産等をされてしまうよりも、一部でも債権の弁済を受けられる任意整理を認めるメリットは大きいのです。支払意思を示すことの重要性は、税金の滞納場合でも同様です。

納税が難しい場合には猶予制度を利用することによって、納税期間の猶予、分割払いの利用が可能になる場合があります。猶予制度の利用するためには、最終的に納税する意思が必要であり、利用を考える場合には、担当窓口で手続きを行う必要があります。

差し押さえがなされる前に、債権者に対し誠意をもって対応することが、債権者、債務者の両者にとってメリットがあります。債務の支払いが滞っている場合には、弁護士等に相談のうえ、任意整理を含めた対応を早めに取ることが得策といえるでしょう。

差し押さえを受けた場合の対処法

(1)差し押さえが適切に行われている場合

差し押さえが行われてしまっている場合、差し押さえは適切な手続きを踏んでいることがほとんどですし、債務名義が取得されたうえで差し押さえがなされている以上は原因となっている債務について異議があるようなことはほとんどないと思います。

弁済による解決

差し押さえを解いてもらう一番の方法は、債務の全てを債権者に対し支払うことですが、これはすぐに債務の支払いができるほどの財産を持っている場合に限ります。

支払うための財産を持っているけれども単に支払いたくなく、結果、差し押さえがなされてしまった場合には、弁済による解決が図れます。

任意整理による解決

上記と異なり、現時点で弁済を行えるほどの財産をもっていない状況で、将来発生する給料債権等を差し押さえられてしまっているような状況においては一括弁済による解決を図ることは難しいかと思います。そのような場合には、任意整理の提案によって、差し押さえを取り下げてもらうことが考えられます。

しかしながら、給料債権を差し押さえられている状況を例にとれば、債権者としては、毎月給料の差し押さえ可能な部分である手取り金額の4分の1については確実に弁済を受けられる状態になっています。

したがって、債権者が任意整理を受け入れ、差し押さえを取り下げてくれるためには、そのような状態以上に効率よく、かつ確実に弁済が受けられる内容の任意整理案を提示する必要があります。差し押さえが申し立てられるような段階までになっている債務者は、通常、何度も債権者からの支払い催促に応じず、また、支払いの約束を反故にしてきた人であることが多いので、任意の支払いを誓約する任意整理による提案を債権者が受け入れる可能性はそれほど高くはないかと思います。

自己破産

給料債権の差し押さえがなされている場合、自己破産の申立てにより、裁判所によって、破産開始決定後の給料債権の差し押さえを停止してもらうことが可能です。自己破産とは、破産開始決定時の財産状況に照らして、その時点でいる債権者に対し、債務の支払いを続けていくことが困難である場合に将来の生活のためにその時点で生じている債務を免除する手続きをいいます。

資産状況に照らして、債務が過大である場合には、給料債権への差し押さえを停止してもらうことに加え、将来の生活に向け、再スタートをきるという点においても自己破産を選択することも考えられるでしょう。

(2)差し押さえの手続きに異議がある場合

差押手続きとは、債務名義という債権を証する根拠に基づき、債務者の意思を顧みずに行う強制的な手続きです。また、債権回収の実効性の確保という点から、簡易・迅速な差し押さえが求められている背景もあります。

法律は、差押手続きによる執行によって不利益が生じる者を救済する手続きとして、手続きにつき異議を申し立てる制度を設けています(※)。

※ここでは、債務者の救済のために異議制度を使うという文脈で記述していますが、異議制度は裁判所の判断によって不利益を受ける者であれば、債権者・債務者関係なく行うことができます。したがって、実際は、申し立てた債権者の望む判断が出なかった場合に異議がなされることもあります。

違法執行に対する救済

違法執行とは、執行機関(裁判所、執行官)が手続規定に反して執行処分を行い、又は定められた執行処分を行わなかった場合のことをいいます。違法執行に関しては、「執行抗告」と「執行異議」という制度を設け、違法執行によって不利益を受ける者の救済を図っています。

<執行抗告>

執行裁判所が執行手続き内において行う判断について、主として手続きについての規定違反を理由に判断の是正を求めて、執行裁判所の上級審(執行裁判所が東京地方裁判所である場合、上級審は東京高等裁判所)に対して行う不服申し立てです。

執行抗告は、法律上で特別に定められている執行裁判所の判断についてのみ申し立てることができます。代表的な執行抗告の対象となる執行裁判所の判断としては、不動産競売手続きにおける売却許可決定と引渡命令(競売における買受人による申立てに基づいて行われる競売物件の占有者に対してなされる競売物件を買受人に引き渡す旨の命令)があります。

実務上は、執行抗告のうちの多数を売却許可決定及び引渡命令に対する執行抗告が占めています。執行抗告の申立てによる執行妨害を排除するため、執行抗告の申立てをするには裁判(判断)の日から1週間以内に申立てをしなければならない点など厳しい制限があります。また、執行抗告を申し立てる理由が具体的でない、民事執行の遅延を目的としたものである場合には、執行抗告は却下されてしまいます。

実際、執行抗告が認められる例は少なく、不動産の所有者によってなされる遅延目的の申立てが多いといわれています。執行抗告に理由がある場合は、もとの判断が取り消され、再度新たな判断がなされます。

<執行異議>

執行抗告が、法律上で特別に認められている執行裁判所の判断に対してだけしか申立てることができないのは前に書いたとおりです。法律は、執行抗告が認められていない場合に、主として手続きについての規定違反を理由に執行裁判所に対して行う不服申し立てとして執行異議を設けています。執行裁判所は、申立てに理由があるときはもとの判断を取り消し、再度新たな判断を行います。

<その他>

上記の他に、執行文の付与や配当の額についての異議申し立て制度も存在します。

不当執行に対する救済

不当執行とは、執行手続き自体は法律に基づいて適法になされているものの、実際の権利関係と異なる権利関係に基づいて執行を行った場合をいいます。不当執行に対する異議では、実際の権利関係の有無が問題となり、その際には充実した審理が必要になるため、通常の民事裁判と同様の訴訟手続きが用いられます(※)。

※それに対し、違法執行の場合は、行われた判断が手続き規定に合致しているかどうかを判断すればよいだけであるため、当事者双方の主張・立証を経ずに異議を認めるかどうかの判断がなされます。

<請求異議の訴え>

債務者が債務名義に表示された給付請求権について実際の権利関係と齟齬が生じていることを理由として、その債務名義に基づく執行の排除を訴えるものです。なお、債務名義のうち、仮執行宣言付判決及び仮執行宣言付支払督促のうち確定前のものについては、上訴又は異議により、判決や支払督促自体を争うことができるため、請求異議の訴えを起こすことはできません。管轄裁判所は、訴えの対象となる債務名義によって異なります(※)。

※判決:第一審裁判所
仮執行宣言付支払督促:これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所
執行証書:債務者の普通裁判籍所在地を管轄する裁判所
和解調書・調停調書:和解・調停が成立した裁判所

訴えの理由としては、請求権がそもそも発生していないこと、いったん発生した請求権の消滅、請求権の効力の停止又は制限、請求権の主体の変更が考えられます。

代表的な具体例としては、債務名義が取得された後に既に債務を弁済している、既に相殺した等が考えられます。訴えに理由があると認められ、判決が確定した場合には、対象の債務名義の執行力が失われ、当該債務名義に基づき執行はできないことになります。

<第三者異議の訴え>

強制執行の対象物について、所有権等の権利を有する第三者は、債権者に対して、対象物に対する執行の排除を求めて訴えを提起することができ、この訴えを第三者異議の訴えといいます。強制執行手続きでは、物の所有者について、不動産であれば登記、動産であれば占有を基準に一義的に判断します。

したがって、登記、占有の状態と実際の権利関係が異なる場合には、本来執行の対象とならない第三者の対象物に対する権利が害される可能性があります。

そこで、執行の対象物の実際の権利者は、第三者異議の訴えを起こすことによって、執行の停止と取消しを求めて訴えを提起することができるとされています。

訴えの根拠となる第三者の権利は、代表的なものとしては所有権があげられますが、共有持分権、地上権・賃借権等も含まれます。理由があると認められ、第三者が確定した判決を執行機関に提出すると、執行の停止とそれまでに行われた執行が取り消されます。

<その他>

その他の不当執行に対する救済を求める訴えとしては、執行文付与の訴え、執行文付与に対する異議の訴え、配当異議の訴えがあります。

(3)執行の停止・取消

強制執行が開始すると、通常は定められた手続きにしたがって停止することなく進行していきます。しかしながら、法律で定められた事情が生じた場合には、一時的に執行を停止(執行の一時的停止)したり、終局的に執行を停止し、その事情の発生までに行われた執行が取り消されたりする場合(「執行の終局的停止」又は「執行の取消し」)があります。

執行の停止・取消は停止・取消の事由が生じたときに当然になされるものではなく、その旨が記載された所定の文書を債務者又は第三者が執行機関に提出し、停止・取消の申立てをした場合に行われます。

執行の一時的停止

執行の一時的停止が記載される文書としては、強制執行の一時停止を命ずる裁判の正本が挙げられます。また、債権者が債務名義の成立後に債務の弁済を受け又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書(例えば、領収書、債権譲渡通知書等)も一時的停止が記載される文書となります。

執行の取消し(終局的停止)

執行の取消しが記載される文書としては、請求異議の訴え、第三者異議の訴え等における異議の内容を認める判決正本が代表的なものである。その他にも、民事執行法上に規定される文書がある。

停止・取消の効果

停止の場合は、その時点から先に予定されていた執行行為が停止される。取消の場合は、執行行為の停止に加え、その時点までに行われた執行行為が取り消される。たとえば、動産執行において執行官が対象動産を占有下において管理している場合には、その動産はもとの占有者のもとに戻されることになる。

まとめ

差し押さえを受けた後に各種異議の手続きを行うには弁護士費用等のコストがかかり、債務者にとっては容易ではないことが考えられます。また、異議が認められるためには厳しい要件を満たす必要があるため、異議が認められ、民事執行を免れることができる場合は必ずしも多くありません。差し押さえがなされる前に適切な対処を行うことが差し押さえによる不利益を被らないようにするうえで非常に重要です。

(2017年11月)

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