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もしもの時の「差し押さえ」基礎知識

差し押さえが可能な財産の種類

差し押さえとは、債権者が債権を回収するために、債務者の財産の処分を制限する手続きです。金融機関への返済の滞りから差し押さえが行われるケースだけでなく、税金や保険料の滞納から差し押さえが行われることもあります。

差し押さえは、債権者が債権を回収するうえで、有効な手続きですが、いかなる財産に対しても差し押さえができるわけではありません。実際に差し押さえを行う際には、債務者に「差し押さえ可能な」財産があるかどうかを見極めることが重要なのです。今回は、差し押さえが可能な財産にどのようなものがあるか解説していきます。

債権

差し押さえは、債務者が第三者(「第三債務者」といいます。)に対して持っている債権に対して行うことができ、債権者は、差し押さえた債権を取り立てたりすることにより、その換価を行い、換価された金銭から自分の債権額を回収することができます。

たとえば、債務者が銀行預金として100万円が口座に入っているとしましょう。この場合、債務者は、口座のある銀行に対して、預金債権を持っていることになります(銀行が第三債務者となります。)。債権者は、債務者の持っている預金債権を差し押さえ、銀行から債務者の口座に入っている100万円を取り立てることによって、自分の債権の回収を図ることができるのです。

このように、債権から、債権の回収を図る差し押さえから換価までの一連の手続きを「債権執行」といいます。

(1)差し押さえ可能な債権

債権執行は、債権者の債権を金銭で回収する手続きですから、差し押さえの対象となる債権は金銭に換価ができる性質の権利であることが必要です。

逆にいえば、金銭評価が可能な債権であれば、基本的にいかなる債権も差し押さえが可能な債権となります。

(2)差し押さえが不可能な債権

金銭評価ができない債権

金銭に換価できない債権は差し押さえることができません。

たとえば、多くの人が有している権利である電気・ガス・水道水の供給を受ける権利は、金銭的評価が不可能であるため、差し押さえは不可能です。

差し押さえ時に債務者に属さない債権

差し押さえの時点において、存在せず、債務者の債権となっていない債権も差し押さえることができません。ただし、条件付き又は期限付きで発生することが見込まれる債権は差し押さえが可能です。たとえば、支払期日が到来していない状態の貸金債権などです。

また、差し押さえより将来に発生する債権についても、既にその発生を基礎づける法律関係が存在しており、近い将来に確実にその発生が見込まれる場合には、差し押さえ時点において、債権が発生していなくても差し押さえの対象となります。たとえば、毎月25日が給料日の債務者がいるとしましょう。次の25日までは、債務者の会社に対する債権は発生していませんが、差し押さえの時点で、債務者が会社に勤めている場合には、「債務者と会社との間の雇用契約」という次の給料日に発生する給料債権の発生を基礎づける法律関係が存在しています。また、次の25日は確実にやってくるものです。

したがって、債権者は、債務者の将来発生する給料債権を差し押さえの対象とすることができるのです。

債権者以外が行使できない債権

債権執行においては、債権者が債務者に代わって対象の債権を行使することになります。したがって、本来的に債権者以外が行使することができない債権は差し押さえの対象になりません。そのような債権としては、扶養請求権があります。夫婦や親と未成年の子との間では、一方が扶養可能な者に対して生活費等の支給等の扶養を求める権利があります。扶養とは、請求権を持つ者が自らのために受けるものであるので、債権者がその行使を求めることができません。

そこで、扶養請求権は、扶養を受ける者が自ら行使する前に差し押さえることはできないことになっています。

(3)差し押さえに際し注意が必要な債権

(2)では、差し押さえができない債権を一般的な要素から説明しましたが、法律には、特別な配慮から差し押さえが制限ないし禁止されている債権(「差押禁止債権」といいます。)があります。どのような債権が「差押禁止債権」とされているのか説明していきます。

A.債務者が国及び公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける債権

具体的には、私的年金契約に基づき生命保険会社、信託銀行等から生計を維持するために継続的に金銭の支払いを受けている債権等がこれにあたります。

※国及び地方公共団体から支給を受ける債権についても、後記エのとおり支給を定める個々の法律で差し押さえが禁止されています。

上記のような性質の債権による支払いを全額差し押さえられてしまうと、債務者は生活できなくなってしまいます。そこで、法律は、生活に必要不可欠と思われる支払いのうち、一部について差し押さえを禁止しています。具体的には、原則として支払いを受ける額の4分の3に相当する部分は差し押さえが禁止されています(※)。

※差し押さえが禁止される4分の3の額が、月額33万円を超えている場合は、33万円を超える部分については全体の給付として4分の3を超える部分ではありますが、差し押さえが可能です。これは、月額33万円の生活費があれば、標準的な世帯の生活費が賄えるという判断によるものです。

B.賃金、棒給、退職年金及び賞与に類する債権

上記のような性質の債権もAと同じく、債権による支払いを全額差し押さえられてしまうと、債務者は生活できなくなってしまいます。そこで、Aと同じく、原則として支払いを受ける額の4分の3に相当する部分は差し押さえが禁止されています。また、4分の3に相当する部分が月額33万円を超えている場合の調整もAと同様に行われます。

C.退職手当及びそれに類する債権

退職手当等は、従前働いた賃金の後払い的な性質を持つと理解されていることからイと同様の考慮のもと、支払を受ける額の4分の3に相当する部分は差し押さえが禁止されています。

※退職手当等の場合は、月額33万円を超える場合の調整はありません。

D.その他

社会保障関係の受給権等については、社会政策的な配慮に基づいて、支給を規定する個々の法律で差し押さえが禁止されています。代表的な差押禁止債権としては、国民年金、厚生年金、健康保険、生活保護給付金等があります。

(4)まとめ

世の中には、多種多様の債権があります。債権を差し押さえようとするときには、対象の債権がどのような性質であり、差し押さえの対象とすることができる債権なのかどうかをしっかりと見極めたうえで手続きをとる必要があるでしょう。

不動産

債権者は、債務者の所有する不動産を差し押さえたうえで、競売にかけ、その競売代金から債権の回収を図ることができます(「不動産執行」といいます)。一般的に不動産は財産価値が大きいため、債権回収の対象としては非常に重要な財産となります(※)。

※財産価値の大きさから、通常、銀行等が多額のお金を貸す場合には不動産に対して、抵当権を設定します。不動産に抵当権が設定されている場合、抵当権を持っている債権者が他の債権者に優先して対象の不動産から債権の回収をすることができます。その結果、抵当権を持っていないその他の債権者が対象の不動産から債権の回収を受けられないことがままあります。抵当権を持っていない債権者が、不動産執行を考える場合には、対象の不動産に抵当権が設定されていないかどうかを確認する必要があります。

(1)差し押さえ(競売)の対象となる不動産

みなさんが不動産といわれてイメージするものとしては、土地や建物があると思います。もちろん、土地や建物は不動産として差し押さえの対象になります。ここでは、土地、建物をはじめとする差し押さえの対象となる不動産を詳しくみていきましょう。

土地

土地が差し押さえの対象になることは上記のとおりです。なお、土地の定着物(地面に植わっている木や地盤に据え付けられた工業用の機械など)は、民法上、不動産とされていますが、民事執行上は不動産には含まれず、差し押さえの対象にはなりません。

建物

建物は差し押さえの対象になります。

建物は、土地の定着物ですが、法律上は、土地とは独立の不動産として扱われており、独立した登記があるため、土地とは独立して差し押さえの対象になります。

また、分譲マンション等は、建物自体は一つですが、マンション内の部屋(専有部分)はそれぞれ別の人が所有することができます。そのような場合には、それぞれの部屋が独立した不動産として扱われ、それぞれが差し押さえの対象になります。

その他

差し押さえの対象となる不動産が何人かの共有となっている場合、それぞれの共有部分(「共有持分」といいます。)を差し押さえの対象とすることができます。地上権、永小作権(及びこれらの共有持分)は、民法上は不動産ではありませんが、これらの権利は登記で表されるため、民事執行上は、不動産として差し押さえの対象となります。その他、あまりなじみのないものと思いますが、工場財団、鉱業財団、漁業財団、採石財団、鉱業権も不動産として扱われています。

(2)まとめ

民事執行においては、みなさんがイメージされる不動産とは異なるものについても不動産として扱われ、差し押さえの対象とされています。ただ、実際に差し押さえが行われる不動産の多くはやはり土地と建物です。債務者がいかなる土地や建物を持っているのか把握しておくことは、債権回収において非常に重要なことといえます。

動産

債権者は、債務者の財産である動産を差し押さえの対象とし、その動産を売却等のうえ、債権の回収を図ることができます(「動産執行」といいます)。動産執行では、不動産執行や債権執行と異なり、差し押さえの対象となる動産を特定して申し立てる必要はありません。債権者は、執行の場所を指定するだけでよく、実際に執行を行う執行官がその場所にある差し押さえ可能な動産のなかから換価価値がありそうな動産を差し押さえます。

したがって、債権者が申立て時点において、債務者の財産である動産のうち、差し押さえが可能な動産と不可能な動産を正確に把握する必要はありません。

もっとも、対象の場所に存在しそうな動産が差し押さえ可能なものであり、債務者に対して動産執行を行う価値があるのかどうかを判断する前提知識として、いかなる動産に対し、差し押さえが可能なのか押さえておく必要があります。

<差し押さえが可能な動産>

動産の種類

以下の動産は、動産執行の対象として差し押さえが可能です。

  • 不動産以外の物
  • 無記名債権(商品券、乗車券、映画等の観覧券等)
  • 登記することのできない土地の定着物(建築中の建物、石灯篭、立木(立木法の適用のないもの)等)

    ※定着物が定着している土地について先に不動産執行による差し押さえがされている場合には、土地に対する差し押さえの効力が及ぶため、土地に対する差し押さえが優先します(逆に、定着物に対する動産執行が先になされている場合は定着物に対する差し押さえが優先します)。

  • 土地から分離する前の天然果実で1か月以内に収穫することが確実である物(農作物等)
  • 有価証券(株券、手形、小切手等)のうち、裏書の禁止されていないもの

    ※裏書が禁止されているものについては、有価証券に記されている債権に対する債権執行を行うことになります。

One point登録自動車の差し押さえ

民法上、自動車は、動産とされます。しかしながら、自動車にはそれぞれに車両ナンバーがついているとおり、登録制度があるため、通常の動産とは別の執行手続き(自動車執行)が取られます。

したがって、登録された自動車は、動産とは執行手続き上は動産とは扱われません。また、同様に本来は動産でありながら、登録制度があることから、別の執行手続きが設けられているものとして、総トン数20トン以上の船舶、登記された建設機械等があります。

動産の状態

債務者の所有する上記の動産であれば、いかなる状態におかれた動産であっても差し押さえができるわけではありません。動産は、不動産に比べて、管理者を変えることが容易であるため、常に所有者がその所有する動産を所持しているとは限りません。

債務者の物であっても、全く関係のない第三者が所持していたりすることが考えられます。

債務者が占有(所持)する動産 差し押さえの対象は原則として、債務者が占有する動産に対して行うものとされています。
債権者が占有(所持)する動産 債務者が占有しない動産のうち、債権者が占有する物は差し押さえの対象とすることができます。
債務者から借りていたりして、債権者のもとに債務者の動産があることがあります。この場合、債権者は差し押さえがしたくて差し押さえを申し立てているため、債権者の動産に対する占有を尊重する必要はありません。そこで、このような場合には、動産に対する差し押さえが認められています。
第三者が占有(所持)する動産 差し押さえとは関係がない第三者が動産を占有している以上、第三者がその動産を利用することを尊重する必要があります。
そこで、この場合は、第三者が、動産の提出を拒まないときに限って差し押さえをすることができます。

<差し押さえが不可能な動産>

債権と同様、動産にも法律上差し押さえが禁止されている動産があります(差押禁止動産)。差押禁止動産は、債務者の最低限の生活の保障、信教・教育上、社会福祉上等の考慮から定められています。代表的な差押禁止動産は以下のとおりです。

  • 債務者等の生活に欠かせない衣服、寝具、台所用具、畳、建具
  • 66万円以下の金銭
  • 仏像、位牌等の礼拝、祭祀に供するため欠くことができないもの

実際に差押禁止動産にあたるかどうかは執行官が、債務者の生活水準等に照らして執行時に判断しています。

まとめ

債務者が換価価値のある動産をもっているかどうかを把握することは困難であり、また、一般家庭に対し、動産執行を行ったとしてもそこに所在する動産のほとんどが差押禁止動産となってしまうことが多いです。もっとも、債務者が事業を営んでいる場合等に事務所や倉庫に対し、動産執行を行うことにより債権の回収が図れることがあります。動産執行を考えるにおいては、債務者の事業形態等(在庫商品がある事業か否か等)から実効性の有無を考えるとよいでしょう。

(2017年11月)

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