不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME'S不動産査定「任意売却」の相談をしようプロが教える「競売」と不動産売買競売の立ち退きで知っておきたい知識

プロが教える「競売」と不動産売買

競売の立ち退きで知っておきたい知識

競売開始決定が出されてから、買受希望者が入札を行い、開札日に買受人が決まります。
その後、買受人が代金を納付して競売物件を取得すると、債務者はかつての自宅から立ち退かなければなりません。

そこで、債務者は立ち退きまでにどのようなことをするべきか、具体的に紹介していきます。

立ち退きまでの流れ

競売とは、債務者の財産を処分して得られた売却代金から債権回収をはかる裁判所の手続きです。債務者が不動産競売にかけられると、最終的に自宅を処分されてしまいます。それにより、債務者は自宅の所有権を失うので、かつての自宅から立ち退かなければなりません。競売開始から競売物件の処分を経て、立ち退きしなければならなくなるまで、どのような流れになっているのでしょうか。

競売物件とは、不動産競売の手続きの中で処分される物件のことです。まず競売が開始されると、裁判所は競売物件の状況を確認するために現況調査を行います。現況調査を行うのは、競売物件の適正な売却基準価額を定める必要があるからです。それにより、公正な形で競売物件の処分が可能となります。

現況調査によって、売却基準価額が定められたら、裁判所は買受希望者を募集し、期間入札の方法で売却を実施します。一番高い金額を指定して入札した人が、競売物件を落札して買受人となるのです。

買受人は、裁判所から売却許可を得た後、代金を納付すると競売物件の所有権を取得します。そのため、債務者は買受人が裁判所へ代金を納付した日に、競売物件から立ち退かなければならないのです。

もし債務者が競売物件を引渡さなければ、買受人は法的手段を行使して、強制的に追い出すことになります。買受人が、競売物件から債務者を強制的に追い出そうとする場合、最初に裁判所へ引渡命令を申立てます。引渡命令とは、債務者や占有者に対して、買受人へ競売物件の引渡を指示する裁判所の命令です。

買受人が債務者や占有者を競売物件から追い出すには、強制執行を利用しなければなりません。買受人が強制執行をするには、その根拠となる権利が必要です。

裁判所から引渡命令の決定を出してもらうと、買受人は強制執行が可能になります。そのような理由で、買受人は最初に引渡命令の申立をするのです。買受人が引渡命令を申立てると、法律的な問題や書類上の不備がなければ、3~4日で決定を出してもらえます。債務者や占有者からの不服がなければ、買受人は申立から1週間以内で引渡命令を得ることが可能です。それにより、短期間で強制執行ができるようになっています。

買受人が引渡命令を得たら、今度はそれを根拠に、不動産明渡しの強制執行を裁判所へ申立てます。不動産明渡しの強制執行とは、強制的に債務者や占有者を追い出すための裁判所の手続きです。不動産明渡しの強制執行が終了すれば、買受人は競売物件の引渡しを受けられます。

買受人は、不動産明渡しの強制執行を申立ててから、すぐに債務者や占有者を追い出せるわけではありません。まず、強制執行の下準備である明渡しの催告を行います。裁判所の執行官が、搬出業者と一緒に現地まで出向き、債務者や占有者に対して、特定の期日に強制執行する旨を伝えるのです。

また、搬出業者によって、室内から荷物を運び出すために必要な人員の数や費用の見積もりが行われます。債務者や占有者が、明渡しの催告後も競売物件を引渡さないとき、はじめて強制執行が実施されます。現実に強制執行が行われることを明渡しの断行といいます。

通常、競売流れの中で買受人が代金を納付してから、明渡しの断行が行われるまで1カ月半~2カ月程度かかります。そのため、債務者は買受人が競売物件を取得してから、長くても2カ月以内に立ち退きしなければなりません。

立ち退き時に対策できること

債務者は自宅から強制退去させられることにより、大きな負担を受けてしまいます。室内から運び出された荷物は、倉庫で保管されるのが原則です。荷物が必要であれば、債務者は自分で引き取らなければなりません。その際、荷物の保管料や引取り料は、債務者自身が負担することになります。

それから、不動産明渡しの強制執行の費用は、債務者が負担しなければなりません。買受人が不動産明渡しの強制執行の申立てをする際に、立替で費用の支払いをしています。そのため、不動産明渡しの強制執行が終了した後、債務者は買受人からその費用を請求される場合も少なくありません。

競売で自宅を失い、経済的に厳しい状況の中、さらに荷物の保管料や引取り料と不動産明渡しの強制執行の費用を支払う必要があるので、その負担も大きくなります。したがって、立ち退きのときに備えて、何か対策をしておいたほうがよいでしょう。

債務者ができる立ち退きの対策には、どのような方法があるのでしょうか。競売で自宅の権利を失った後に行う対策として、買受人から立ち退き料をもらう方法が考えられます。自ら退去することを条件に、債務者は買受人から立ち退き料をもらえる場合があるのです。買受人から立ち退き料をもらえれば、債務者の引っ越し費用に当てられます。

さらに、債務者が自ら退去するので、荷物の保管料や引取り料、不動産明渡しの強制執行の費用を負担する必要もありません。ただ、買受人に立ち退き料の支払い義務はないので、必ずもらえるわけではないのが難点です。そのため、債務者の立ち退きの対策として、不十分な面があることは否めません。

競売で自宅が落札される前であれば、より効果的な債務者の立ち退きの対策を行えるでしょう。ほかの手続きに切り替えることで、競売を止めることができるからです。

競売の開札期日の前日までに手続きが可能であれば、任意売却への切り替えができます。任意売却で親族間取引を行えば、自宅の権利は失いますが、そのまま住み続けることは可能です。それにより、債務者は立ち退きをする必要がなくなります。

任意売却で自宅を買い取ってくれる親族がいない場合は、リースバックの利用を考えるとよいでしょう。リースバックとは、不動産業者へ売却した物件に賃貸で住み続けることです。リースバックは住宅ローンの返済が困難になった人でも利用できるので、活用できる可能性はあります。

また、債務者が住宅ローンを滞納して、債権者から不動産競売を申立てられたときは、個人再生を利用して競売を止めることも可能です。個人再生とは、債務者が裁判所へ申立てて、借金額を大幅に減らしてもらうことで再生をはかる借金整理の手続きをいいます。住宅ローン以外の借金が500万円以下で、将来的に継続して収入を得られる見込みがあれば、個人再生の申立が可能です。

ただし、住宅ローンを滞納している人が裁判所競売を止めるには、保証会社の代位弁済が行われてから6カ月以内に個人再生の申立をしなければなりません。

立ち退き料の考え方

家競売と同様に、土地競売で落札した競売土地から自主的に退去してもらうため、買受人は債務者へ立ち退き料を支払うことがあります。買受人が債務者へ不動産競売物件の引渡しを請求する際、立ち退き料の支払い義務はありません。それにもかかわらず、なぜ買受人は債務者へ立ち退き料を支払うのでしょうか。

それは、不動産明渡しの強制執行で債務者を追い出すより、コストがかからないからです。不動産明渡しの強制執行を申立てると、総額100万円以上のお金が必要になる事例もあります。不動産明渡しの強制執行の費用は、法律上の規定で債務者の負担となっていますが、買受人は申立の際、一時的に立替払いをしなければなりません。

買受人が費用の立替払いをした場合、後に債務者へ請求できますが、経済的に厳しい状態にある債務者へ請求しても回収するのは難しいのが現実です。そのため、不動産明渡しの強制執行を行うと、事実上買受人が費用を負担しなければならなくなります。

債務者が自ら退去してくれれば、買受人も不動産明渡しの強制執行の高額な費用を負担することなく、スムーズに物件の引渡しを受けられます。買受人の中には、債務者が自ら退去してくれるのであれば、立ち退き料を支払ってもよいと考えている人も少なくありません。

例えば、不動産明渡しの強制執行で100万円以上の費用がかかるとしましょう。この場合、自主的に退去してもらうために債務者へ50万円を支払っても、買受人は半額以下のコストで不動産競売物件の引渡しを受けられます。

このように、買受人は不動産明渡しの強制執行よりも安く済むときに、債務者へ立ち退き料を支払ってもよいと考えるのです。

立ち退き料の相場

買受人が債務者の自主的な退去を条件に立ち退き料を支払うのは、不動産明渡しの強制執行を行うより安く済むからです。そのため、不動産明渡しの強制執行の費用を確認することによって、立ち退き料の相場も見えてくるでしょう。

不動産明渡しの強制執行の申立をするには、買受人は予納金を納めなければなりません。手続きに関与する執行官が1人で、明渡しの対象となる物件が1つの場合、およそ6万5000円の予納金が必要です。債務者の人数や物件の数が増えるごとに金額が加算されます。そのため、予納金だけで10万円以上かかることも少なくありません。

明渡しの催告をする際、搬出業者が断行時に室内から荷物を運び出すときにかかる費用の見積りを行います。その搬出業者へは2~3万円程度の日当を支払わなければなりません。また、明渡しの断行のときも、排出業者が室内から荷物を運び出す作業を行います。そのため、搬出業者へ日当として3万円程度支払う必要があるのです。

さらに、明渡しの断行で室内から運び出した荷物を運搬する費用も必要になります。50平方メートルの部屋であれば50~65万円程度が相場です。そのため、不動産明渡しの強制執行を行うには、総額60~80万円程度かかるのが一般的です。

不動産明渡しの強制執行の費用から算出すれば、買受人は債務者へ60~80万円の半額である30~40万円程度の立ち退き料を支払ってくれそうな気もします。しかし、買受人に立ち退き料の支払い義務はないので、支出は最小限にしたいと考えている人も少なくありません。そのため、債務者が買受人からもらえる立ち退き料は、数万円程度が相場となっています。

立ち退き交渉の進め方

買受人は自ら債務者に対して立ち退き料の支払いを申し出ることは基本的にありません。買受人は、債務者からもちかけられた話を聞いて納得したときに、はじめて立ち退き料の支払いに応じてくれるのです。そのため、債務者が買受人から立ち退き料をもらうには、交渉する必要があります。

交渉の進め方によって、債務者が買受人から立ち退き料をもらえるか否かが決まるといっても過言ではありません。いずれにしても、債務者は立ち退き交渉の進め方をしっかり把握しておいたほうがよいでしょう。

債務者が買受人と立ち退き交渉をするとき、頭に入れておきたい事項があります。それは、法律上、買受人に立ち退き料の支払い義務がないことです。

立ち退き交渉の際、債務者が強気の姿勢を見せると、買受人も不快に感じてしまう可能性があります。したがって、債務者は下手に出て買受人へお願いするような形で話を進めていくとよいでしょう。

買受人が代金納付してから1カ月以内に立ち退くことを条件に交渉するのも効果的です。通常、買受人は代金納付してから1カ月後に、不動産明渡しの強制執行を申立てます。その際、予納金や申立の実費で10万円前後の出費が発生します。そのため、債務者が1カ月以内に立ち退きをすることで、買受人は不動産明渡しの強制執行の申立費用を支払わずに済むのです。立ち退き交渉のときに債務者が良心的な対応を示すと、買受人から立ち退き料をもらえる可能性が高くなります。

また、債務者が買受人からできるだけ多くの立ち退き料をもらいたい場合は、立ち退き交渉の前に室内の荷物を増やすのも効果的です。室内の荷物が増えるとそれだけ不動産明渡しの強制執行費用も高額になるからです。債務者と買受人が交渉で立ち退き料の額を決める際、不動産明渡しの強制執行費用を基準にするケースも少なくありません。そのため、室内の荷物を増やすことで、買受人からより多くの立ち退き料をもらいやすくなります。

まとめ

買受人が代金を納付して競売物件を取得した後、債務者は競売物件から退去しなければなりません。それにもかかわらず、債務者が競売物件の引渡しを行わないと、買受人に法的手段を取られて強制的に追い出されてしまいます。

しかし、債務者は立ち退きまでにいろいろな対策を取ることが可能です。競売流れの中で、任意売却や個人再生の手続きへ切り替えれば、自宅からの退去を回避することができます。また、自主的な退去を条件に買受人から立ち退き料をもらえることもあるので、ほかの場所へスムーズに引っ越せるでしょう。

立ち退き料の相場や買受人との交渉のコツを把握していれば、債務者は退去するときの負担を少なくすることも可能です。

(2017年11月)

ホームズ不動産査定は、ご本人またはご家族が所有する不動産の売却を希望する、個人のお客様向けサービスです

以下の査定依頼はお断りしています。恐れ入りますがご了承ください。
弁護士、不動産業者など、物件所有者以外からの査定依頼
競売物件の価格調査など、売却を目的としない査定依頼

※査定依頼物件が、依頼者の所有物件ではないと弊社が判断した際、依頼内容を削除する場合があることをあらかじめご了承ください