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プロが教える「競売」と不動産売買

競売の手続き

銀行が住宅ローン滞納者の不動産に対して競売の申立をすると、裁判所は不動産競売の開始決定を出し、最終的に差し押さえられた不動産は処分されてしまいます。そこで、競売の申立がされると、どのような流れで競売手続きが進んでいくのか、詳しく見ていくことにしましょう。

開始決定

競売とは、民事執行法の規定に基づいて、債権者が債務者から強制的に債権を回収する手段の一つです。競売とよく比較される任意売却という手続きも存在します。任意売却とは、返済困難となった住宅ローンの債務者が、債権者の同意を得ながら、一般市場で不動産を処分する手続きです。任意売却は、売主と買主が不動産売買契約を締結して取引をしますが、競売は裁判所主導によって手続きが行われるところに違いがあります。

競売の手続きを利用するには、債権者が裁判所へ競売の申立をしなければなりません。不動産競売の場合、差し押さえを予定している不動産の所在地を管轄する裁判所へ申立をする必要があります。債権者が不動産競売の申立をした後、裁判所は開始決定をするか否かを判断します。債権者から提出された書類を調査しながら、申立要件を満たしているか否かを審査するのです。そして、裁判所が適法と判断すると、不動産競売の開始決定がなされます。

裁判所から不動産競売の開始決定が出された後、債務者へ開始決定通知書が送付され、その時点で差し押さえの効力が発生するのです。多くの債務者は、裁判所から送付された開始決定通知書を目にして、所有する不動産が競売にかけられたことを知ります。また、裁判所は不動産競売の開始決定を出した際、それと同時に対象不動産に差し押さえの嘱託登記をします。嘱託登記とは、裁判所や市町村役場などの公的機関が、登記手続きを行うことです。不動産を差し押さえられると債務者の処分権が制限されます。

例えば、債務者が差し押さえられた不動産をほかの人へ売却したとしましょう。通常、不動産を売買することによって、売主から買主へ所有権が移転します。しかし、競売を申立てた債権者との間では、不動産売買の効力が否定されてしまうのです。

不動産競売の開始決定が出された後、裁判所の執行官がまず現況調査を行います。現況調査とは、差し押さえた不動産の所在地まで出向き、現地で物件の状況を調査することです。競売流れの中で、差し押さえた不動産を処分するには、適正な価格をつけなければなりません。

不動産競売流れの中で、不動産価格の目安となるのが売却基準価額です。競売物件を入手する目的で入札する際、入札者は希望の金額を指定したり、保証金を納めたりしなければなりません。売却基準価額は指定する金額や保証金の額の目安となるので、入札者もその額に注目します。登記簿謄本の記載事項や固定資産評価額から、ある程度不動産の情報を把握できます。そのため、現況調査をしなくてもよいのではと考える人もいるでしょう。

しかし、競売不動産に現在住んでいる人や不動産の内部や周辺の状況はわかりません。不動産の価格は、さまざまな要素を総合的に評価してつけられます。そのため、正確な価格を把握するためには、現況調査を行う必要があるのです。執行官が現況調査を行う場合、不動産鑑定士と一緒に現地を訪れます。執行官は不動産の専門家ではないので、自分一人で調査の業務を行うことはできません。専門家である不動産鑑定士の協力があってこそ、意味のある現況調査が行えます。そのような理由で、執行官は不動産鑑定士と現地まで同行するのです。

現況調査は、不動産の現況や占有状況の確認が主な業務になります。したがって、執行官は現況調査を行う際、不動産の居住者や近所の人へヒアリングを行ったり、部屋の中の写真を撮影したりすることがあります。また、不動産所在地の近辺の環境や近接する道路の確認をすることも少なくありません。

売却手続き

現況調査が終了すると、裁判所は競売物件の売却に向けた準備を行います。競売物件とは競売の手続きで強制的に処分される債務者の不動産のことです。執行官は現況調査報告書を作成して、裁判所へ提出しなければなりません。現況調査報告書とは、執行官が現況調査を行った日時や場所、現地の不動産の占有状態や物件の状況の調査結果が記載されている書類です。また、現況調査に同行した不動産鑑定士は、評価書を作成します。評価書には、不動産の評価額と算出した日、評価した過程などが記載されています。

裁判所は、現況調査報告書と評価書を元に、売却基準価額を定めると同時に物件明細書を作成し、競売物件の売却へ向けた準備を行うのです。物件明細書とは、競売物件の権利関係の情報を把握できる書類です。具体的には、競売物件の権利関係と取得した際に引き受ける権利関係が記載されています。また、マンションの滞納管理費や物件の占有状況を参考程度に記載していることも少なくありません。物件明細書を確認することで、買受希望者は、適切な形で入札手続きに参加できるのです。

なお、現況調査報告書、評価書、物件明細書を合わせて、「三点セット」と一般的に呼ばれています。通常、入札期日の2週間前から、インターネット上に三点セットが公開されます。さらに、新聞紙上に競売物件の情報が掲載されることもあります。

売却の準備が終了したら、裁判所は、競売不動産の処分手続きを実施します。民事執行法上では、裁判所書記官が競売不動産の売却の方法を決定しなければなりません。通常は期間入札の方法で行われます。期間入札とは、あらかじめ買受の申出ができる期間を定めて行う入札方法をいいます。一般的に入札期間は8日前後で設定されています。買受希望者が入札する場合、入札期間内に入札書に必要事項を記載し、裁判所へ提出して行います。入札書は必ず封筒に入れて封をしないと無効になってしまうので注意しましょう。

また、入札の際には、保証金を納付しなければなりません。売却基準価額の20%以上の金額が必要になるので、事前に準備しておくことが大切です。保証金は裁判所が指定する口座へ、振込の方法で納付するのが一般的です。なお、入札書の提出は、裁判所へ直接持っていく方法と郵送する方法があります。そのため、入札手続きを行う裁判所から離れた場所に住んでいても、手間をかけることなく入札が可能です。

入札期間が経過すると、開札を行います。開札とは、競売物件の入札者が提出した入札書を開封することをいいます。入札者全員の中で、一番高い金額を指定して買受の申出をした人が、競売物件を落札できるのです。そのため、競売物件は買受の申出をしたからといって、必ず落札できるわけではありません。入札者の数が多ければ多いほど、落札できる可能性は低くなります。開札後、落札できなかった入札者は、裁判所から保証金を返還してもらえるので、自分の指定口座に返金されているか忘れずに確認しましょう。

売却後の手続き

最高価買受申出人になっても、その時点でいきなり競売物件の所有権を得られるわけではありません。裁判所から売却許可の決定を出してもらい、代金を納付することで、はじめて競売物件の所有権を取得できるのです。

開札手続きが行われた日より1週間以内に、裁判所は売却決定期日を開き、その日に売却を許可するか不許可にするかを決めなければなりません。そのため、最高価買受申出人が裁判所から売却不許可の決定を受けてしまうと、競売物件を取得できなくなってしまうのです。しかし、その点はあまり心配しなくてもよいでしょう。裁判所が売却不許可事由を出す理由は限られているからです。民事執行法により、売却不許可事由が定められていますが、この事由に該当しなければ売却許可を得られる仕組みになっています。

そのため、売却決定期日では、レアケースを除き、売却許可決定を受けられるのが通常です。なお、売却不許可事由には、買受申出人が欠格者であること、裁判所競売の手続きに不備や瑕疵が存在する場合などが規定されています。

売却許可が決定すると、買受人は競売物件を取得するために、代金を納付しなければなりません。売却許可決定が出された後、裁判所から買受人へ代金納付通知書が送付されます。代金納付通知書には、納付期限が定められているので、その日までに代金の納付が必要です。通常、買受人へ代金納付通知書が送付されてから、1カ月後に代金の納付期限が定められています。もし期限までに代金を納付できないと、どのようになってしまうのでしょうか。

まず、買受人は競売物件の所有権を取得できません。民事執行法では、買受人が代金を納付した時点で、競売物件の所有権が移転すると定められているからです。さらに、売却許可決定が取り消されて、買受人が入札時に納付した保証金も没収されてしまいます。保証金の納付額は売却基準価額の20%以上になるので、数百万円から数千万円単位のお金を失ってしまう場合もあるでしょう。期限までに代金を納付できないとき、買受人はこのような不利益を被ってしまうので注意しましょう。

買受人が代金を納付すると、競売物件の所有権を取得することになるので、裁判所が所有権移転登記を行います。不動産業者から物件を購入するときとは違い、原則買受人側で登記手続きをする必要はありません。競売物件に設定されている担保権や差し押さえ登記もその際すべて抹消されます。

ただし、ローンを利用して競売物件を落札しようとするときは例外です。この場合、登記手続きを行うのは、買受人とローンの融資を行う金融機関が共同で指定した司法書士等の専門家になります。裁判所は登記を行う司法書士等の専門家へ書類を交付し、その後、所有権移転と担保権設定の登記を連続で申請するのです。

また、買受人が競売物件を取得後、元所有者や占有者が引渡しをしない場合は法的手段をとって追い出します。具体的には、まず買受人が裁判所へ引渡命令の申立を行います。裁判所から引渡命令の決定が出された後、買受人はこれを根拠に不動産明渡しの強制執行を行うのです。競売物件の元所有者や占有者の中には、このような行動を取る人も少なくありません。したがって、競売物件の買受申出人は、引渡命令や不動産明渡しの強制執行の手続きも頭に入れておいたほうがよいでしょう。

配当

競売物件が処分された後、売却代金は各債権者へ配当されます。不動産競売は、債権者の債権を回収する目的で行われる手続きです。競売物件を取得しようと考えている人は、売却処分の手続きへ目が行きがちですが、債権者にとっては、売却代金の配当手続きが最大の関心事になります。どの債権者がどのように配当を受けられるのか、その点を気にしている債権者がほとんどでしょう。

不動産競売の手続きでは、配当を受けられる債権者が決まっています。まず、差し押さえ債権者があげられます。不動産競売の申立てをした本人なので、配当手続きに参加できるのは当然の流れです。次に、不動産競売の差し押さえに対して権利を主張できる抵当権者も配当を受けることが可能です。具体的には、不動産競売の差し押さえよりも前に設定された抵当権者を指します。抵当権は競売によって債権を優先的に回収する権利なので、当然のこととして配当手続きに参加できる権利が与えられているのです。仮差し押さえ債権者は、不動産競売の差し押さえよりも前に登記していれば、何もせずに配当手続きに参加できます。

仮差し押さえとは、債権者が債務者に対して金銭債権を持っているときに、債務者が財産を処分できないようにする手続きのことです。このほか、民事執行法では、配当を受けられる債権者として、配当要求をした債権者が規定されています。配当要求とは、差し押さえ債権者以外の債権者が、裁判所へ配当を求めることです。不動産競売の開始決定後に、裁判所は配当要求の終期を定めますが、この期間までに配当要求をしなければなりません。配当要求できる債権者も民事執行法によって定められています。どのような債権者が配当要求を請求できるのでしょうか。

まず、執行力のある債務名義の正本を所持している債権者です。借金の支払いで裁判所へ訴訟を起こし、勝訴判決を得た債権者が代表的な例としてあげられるでしょう。次に不動産競売の差し押さえよりも後に登記されている仮差し押さえ債権者です。仮差し押さえをした時期が、不動産競売の差し押さえ時期の前後により、配当要求をしなければならないか否かが変わってきます。

最後に一般の先取特権があることを証明できる債権者です。先取特権とは、複数の債権者がいるとき、その中で優先的に債務者の総財産から返済を受けられる権利をいいます。マンションの滞納管理費を請求するときに、この先取特権の主張が可能です。また、税債権の権利を持っている公的機関も、裁判所へ交付を要求すれば配当が受けられます。

売却代金はどのように各債権者へ分配されるのでしょうか。まず、不動産競売の手続き費用を売却代金の一部から支払い、その残額が法律の規定されている順序に基づき、債権者へ配当されるのです。抵当権者や税債権者は無担保債権者より優先的に配当が受けられます。

売却代金が抵当権者や税債権者へ配当された後、残額が余らなければ、無担保債権者は配当を受けられません。抵当権と税債権の優先順位は、税金の法定納期限が基準になります。税金の納付期限が抵当権設定日より前であれば税債権が優先され、後の場合は抵当権が優先されるのです。また、先取特権者は無担保債権者には優先しますが、抵当権者より配当順位が後になります。したがって、不動産競売の手続きにおいて、配当を受けられる債権者が抵当権者、先取特権者、無担保債権者であるとき、抵当権者、先取特権者、無担保債権者の順で売却代金が分配されます。

まとめ

不動産競売の開始決定が出された後、現況調査、期間入札による売却、配当とさまざまなプロセスを経て手続きが進んでいきます。裁判所、各債権者、債務者、競売物件の買受希望者など、不動産競売の手続きに関わる人や機関は相当数にのぼります。競売物件の買受希望者は、売却手続きに関心を持っているのに対し、各債権者は売却代金の配当が一番の関心事です。不動産競売に関わる人や機関によって、注目する手続きの過程も違います。不動産競売に関わる人や機関のそれぞれの視点から見てみると、より競売手続きの内容が理解できるでしょう。

(2017年11月)

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