プロが教える「競売」と不動産売買
市場価格よりも安価に購入できる競売物件。不動産をお得に入手できるという理由で、競売物件に興味を持つ人も多くなりました。競売物件には、そのほかにも利点がいくつかあります。そこで今回は、競売物件購入時のメリットを中心に見ていきましょう。
競売物件とは、裁判所が行う競売手続きの中で強制的に処分される不動産のことを指します。複数の買受申出人の中で最も高い金額で買受を申出た人が競売物件を落札できます。そのため、入札しても落札できる保証はありません。しかし、競売物件を落札できなかったとしても、経済的な不利益は受けません。入札時に納付した落札保証金は全額返金されるからです。
競売不動産を購入するには、競売手続きの入札期間内に、入札価格を指定して入札しなければなりません。その際、裁判所指定の銀行口座へ落札保証金を振込で納める必要があります。なぜそのような取扱いになっているのでしょうか。それは、入札時の不正を防止する効果が期待できるからです。例えば、売却基準価額よりもはるかに高い金額を指定すれば、ほかの買受申出人の入札を妨害することが可能です。
そこで、不正を働く買受申出人を排除する意図で、落札保証金の納付義務が規定されているのです。落札保証金は、売却基準価額の20%以上になります。例えば、競売物件の売却基準価額が、500万円だったとしましょう。この場合、100万円以上の落札保証金を用意しなければ入札できないのです。この制度の存在により、入札手続きの公正が保たれます。
開札期日に買受人が決定しますが、買受人が納めた落札保証金は、買受代金の一部に充当されます。一方、落札できなかった人の落札保証金は、裁判所から全額返金してもらえます。落札保証金の返金時期は、買受人が決定してから1週間前後が普通です。入札時、裁判所へ提出した「入札保証金振込証明書」に書かれた入札者の銀行口座へ振込により返還されます。
ただし、不動産競売の手続きの中で落札保証金を返金してもらえないケースもあります。それは、開札期日に買受人として指定された人が残代金を納付しない場合です。買受人が代金納付期日までに競売物件の購入資金を調達できず、残代金を支払えない事例が散見されます。その際、納めた落札保証金も没収されてしまうので注意しましょう。
競売不動産は、一般に市場価格の50~70%程度の価格で購入できます。優良物件の場合は80%以上になることもありえます。そのため数百万円単位、物件によっては数千万円単位のまとまった資金が必要です。裁判所競売の手続きで競売不動産を購入する人が、銀行のローンを利用したいと考えても不思議ではありません。1998年に民事執行法が改正され、銀行のローンを使用した競売物件の手続きの規定が定められました。改正後、銀行ローンで購入できることも競売のメリットになったのです。
民事執行法改正前までは、銀行のローンを利用できませんでした。銀行がローンの融資を行うには、原則、即日の担保権設定が必須です。競売物件へ担保権を設定するには、物件が買受人名義になっていなければなりません。競売流れの中で決められた期日までに買受人が代金を納付した後、裁判所が所有権移転の登記をします。
しかし、裁判所は買受人が代金を納付したその日に所有権移転の登記手続きをしていませんでした。代金納付日の時点ではまだ元所有者の名義なので、銀行も担保権を設定できず、銀行のローンが使用できなかったのです。
このような不都合が存在したことも、民事執行法が改正された理由の一つです。買受人と担保権を設定しようとする銀行が代金納付日までに申出をすれば、銀行のローンを使用して競売物件を購入することが可能になったのです。買受人が残代金を支払った後、裁判所から買受人が指定した司法書士または弁護士のもとへ所有権移転の登記嘱託書が交付されます。
その後、司法書士または弁護士が物件の権利移転と競売物件ローンの登記手続きを行うのです。これにより、不動産会社だけではなく、一般の人も裁判所競売へ参加しやすい環境が整いました。
ただし、個人が単独で銀行へ競売物件ローンの申込をしても受け付けてもらえる可能性は低いでしょう。競売物件を落札してから代金納付まで1カ月程度しかありません。そのため、落札前に競売物件ローンの申込をするのが通常です。しかし、競売物件の買受人になれるかわからない段階で、融資の審査を通過するのは困難です。
したがって、個人が銀行のローンを利用して競売物件を取得する場合は、専門の不動産会社に協力してもらう必要があります。競売案件を取り扱っている不動産会社は、銀行との信頼関係が構築されています。そのため、競売物件ローンの申込手続きをサポートしてもらえば、スムーズに審査を通過することが可能でしょう。
競売で落札される物件の種類はさまざまです。住居用の一戸建てやマンションのほかにも、商業ビルや店舗、事業用地が競売にかけられる事例も少なくありません。事業者が経営困難に陥って事業を清算するときにも、競売手続きが行われるからです。また、競売物件の中には、通常不動産市場で出回らないような物件もたまに見かけます。借金返済に行き詰った人が特殊な物件を所有していれば、差し押さえの対象になるからです。そのため、競売物件は一般流通物件と比較して、特殊な物件を探しやすいといえるでしょう。
競売物件では、不動産会社が仲介業務で普段取り扱わない物件も多く見られます。例えば、三角の形をしているなどの変形地です。変形地は住居を建てにくいので転売しづらい特徴があります。そのため、各不動産会社は変形地の仕入や仲介案件を敬遠してしまうのです。
しかし、良質な設計事務所へ依頼すれば、建築可能な場合も少なくありません。変形地でも、やり方次第では住居の敷地として十分活用できるのです。変形地は通常、四角い形をした整形地よりも価値が低くなります。競売流れの中で購入するときでも、より低価格で取得できる場合が多いでしょう。
また、市街化調整区域内にある土地も少なくありません。市街化調整区域は市街化を抑制するための区域で、原則この区域内の土地上に住居は建てられません。建築できない土地を購入する人は少ないため、転売目的の物件としては不適格で、不動産会社も積極的に取り扱おうとしないのです。しかし、都市計画法43条の許可を受けられれば、市街化調整区域内の土地上に住居を建築できます。市街化区域から1km圏内にあれば、この許可を受けることが可能です
また、幅4m以上の道路が市街化区域の当該地までつながっている場合も同様です。競売物件の中には条件を満たしさえすれば、格安で住居用の土地を入手することも可能なのです。
裁判所競売による物件の取得は、入札方式で行われるのが一般的です。競売物件に入札するには、入札期間内に必要書類を添えて入札しなければなりません。入札価格は自分で決めることが可能です。競売物件には、裁判所が決めた売却基準価額が設定されていますので、この価格の80%以上であれば、どの金額を指定しても構いません。売却基準価額は、市場価格よりも30~50%程度安く設定されるのが通例です
したがって、市場価格よりも大幅に低い価格で入札できます。不動産会社で一般流通物件を購入する場合はこのようにはいきません。売主と買主が話し合いをしながら売買価格を設定するからです。そのため、買主は市場価格の相場に近い金額を指定しなければ売買契約がまとまらないでしょう。その点、競売物件は、価格を自由に決めて入札できるため、お得に購入できる可能性も高いといえます。
また、競売物件を購入するときはローンの利用を考えている人も少なくありません。低価格で取得できるとはいえ、最低でも数百万円単位のお金が必要になります。一般の人では現金払いが難しいからです。ローンで購入するときは総代金の30%程度の自己資金を用意しておきましょう。入札時に納付する落札保証金はローン資金を利用できないからです。売却基準価額の20%以上の落札保証金を納付しなければなりませんので、自己資金が少ないと落札保証金の納付額にも不足が生じる場合が考えられます
そのため、最低でも落札保証金を納付可能な額の自己資金を用意しなければならないのです。総代金の30%程度の自己資金が用意できれば、余裕を持って落札保証金を納付できます。金融機関も、総代金の30%程度の自己資金を用意できるか否かを、融資条件の目安にしているのが一般的です。
低価格で入手できるのが競売物件の魅力ですが、それだけではありません。競売物件を購入しても消費税がかからないのです。消費税とは、事業者が国内で業務上対価を得て行う資産の譲渡やサービスの提供に対して課税される税金になります。したがって、不動産会社が販売する物件を購入した場合も消費税の課税対象です。
一方、競売とは、債権者の債権回収目的で裁判所が行う手続きになります。そのため、競売物件を入手しても買受人は消費税を負担しなくてもよいのです。高額な不動産を購入して消費税がかかるとなると、その額も大きくなります。例えば1000万円の課税不動産を不動産会社の仲介で購入したとしましょう。これに10%の消費税が発生した場合、その金額は100万円です。500円の日常生活品を購入するときに発生する消費税額は50円なので、その差は歴然です。
しかし、不動産売買では、数十万円、数百万円単位の消費税が発生するケースもめずらしくありません。そのため、消費税がかからない競売物件は、とても魅力的な不動産といえるでしょう。
ただし、不動産会社所有の物件を購入する場合、課税対象は建物のみになります。社会政策的な配慮や課税になじまないという理由から、土地の譲渡は非課税取引とされているのです。不動産会社が仲介して個人間で不動産売買を行うときも課税されません。事業者が資産の譲渡を行っているわけではないからです。そのため、不動産会社で物件を購入する場合も非課税となるケースが結構あります。
競売物件には、抵当権や根抵当権が複数設定されている場合もめずらしくありません。このような物件を安心して取得できるのか心配になる人もいるでしょう。特に競売物件の取得時に、担保権を全部外せるのかは気になります。しかし、競売で物件を処分すると担保権はすべて消滅するので問題ありません。民事執行法59条1項に、その旨が規定されています。
原則、裁判所が競売物件の登記手続きを行いますが、その際、設定されている担保権はすべて抹消されます。買受人は、きれいな権利関係の物件を取得できるのです。複雑な権利関係が自動的に処理されるため、競売物件の買受人にとっても安心だといえます。
また、競売物件の取得後、元所有者が物件を引渡さないケースもめずらしくありません。しかし、買受人は短期間で強制執行の申立ができます。裁判所が競売を進める際は物件の明け渡しまで行ってくれません。そのため、買受人は強制執行を利用して、自ら元所有者を追い出さなければならないのです。それを実現するには、通常建物明け渡しの請求訴訟をして、裁判所から判決を得なければなりません。強制執行の申立をするには、債務名義が必要だからです。
債務名義とは、強制執行の根拠となる権利を証明する文書をいい、裁判所の判決はこれに当たります。訴訟後に強制執行の申立をする際は、手続き完了まで時間を要するのが通例です。しかし、競売物件の場合、買受人が不動産引渡命令の申立をすれば、代金納付時から1週間以内で着手できる場合も少なくありません。
競売物件は低価格で購入できるほかにも、さまざまなメリットがあります。銀行のローンを利用すれば、一般流通物件に近い感覚で購入も可能です。そのため、競売物件は一般の人の間でも身近な存在となっています。また、特殊な物件を探せるので、楽しみながら入札に参加する人も多いでしょう。リスクだけではなく利点もあるので、不動産を購入する際は競売物件も選択肢の一つに考えてみてください。競売物件を専門に扱う不動産会社も存在するなど、安心して購入できる環境は整っています。
(2017年11月)
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