プロが教える「競売」と不動産売買
競売によって不動産が差し押さえの対象となる事例も少なくありません。競売手続きの中で処分される不動産のことを競売物件といいます。一般の人が不動産を購入する際は、競売物件を対象にして入札することも可能です。そこで、競売物件とはどのようなものなのか、一般流通物件と比較しながら見ていきましょう。
競売物件は裁判所の競売流れの中で入札できる物件ですが、入札方法やその後の手続きなど、不動産取引の中でも特殊な部類に属します。居住用や投資目的のために不動産を購入しようと思えば、通常は一般流通物件を対象にするでしょう。そのため、一般流通物件との違いを把握することが、競売物件の理解へとつながります。
一般流通物件とは、複数の不動産会社で情報が共有されている物件をいいます。ある人が所有不動産を売却したいと考えた場合、仲介業者である不動産会社へ依頼するのが一般的です。不動産会社が物件売買の仲介をするときは、通常、依頼者と専任媒介契約を締結します。
これは、一社だけと締結できる媒介契約のことです。専任媒介の物件は、指定流通機構へ登録する義務があります。そのため、レインズと呼ばれる指定流通機構へ、会員である不動産会社は対象物件を登録するのです。したがって、各不動産会社が扱っている仲介物件の大半はレインズに登録された一般流通物件になります。
競売物件と一般流通物件は、取扱機関に違いがあります。前者は、不動産競売の手続きの中で処分される物件なので、裁判所が取り扱います。後者は、仲介業務を行っている不動産会社が取り扱います。さらに、不動産の処分手続きの際に適用される法律も異なります。競売とは強制執行手続きのことで、その規定は民事執行法によって定められています。民事執行法とは、一般債権回収のための強制執行や担保権実行を実現するための手続き方法が定められている法律です。
したがって、競売物件の処分はこの法律の適用を受けます。競売物件の処分は、債権者への換価代金配当が主目的で、所有者から買受人への権利移転は副次的なものになります。そのため、競売物件の購入時に不都合が生じた場合、買受人は保護を受けられないことも少なくありません。
一方、一般流通物件は、主に個人間や個人と業者間において取引が行われる物件なので、宅地建物取引業法が適用されます。この法律は、不動産取引の公正を確保して消費者の保護を図るとともに、流通の円滑化を実現するために制定されました。不動産会社と一般消費者では、情報量や不動産取引の知識に明らかな差があります。そのため、不動産取引をする際、消費者が不利な状況に置かれてしまう恐れも十分考えられます。宅地建物取引業法の存在により、消費者と不動産会社間で公平さが保たれ、適切な不動産取引が実現されやすくなるのです。
競売物件は、不動産会社が転売目的で入札する事例も多いですが、一般の人も競売に入札する機会が増えています。競売物件を購入するメリットが世間に認知され、法律の改正によって公平な取引が行われやすい環境が整ったことも大きいでしょう。ただし、競売物件にはデメリットも少なくありません。差し押さえ物件であるがゆえに、安易に手を出すと大きな損害をこうむるリスクも予想されます。そのようなことから、競売物件のメリットとデメリットを比較検討して、入札するか否かを決定しなければなりません。
まず競売物件のメリットとしては、一般市場価格よりも安く入手できることがあげられます。競売物件は、一般市場の不動産取引に比べると、買主側の保護が不十分な面は否めません。裁判所はそのような事情を考慮して、一般市場価格から相場を修正して売却基準価額を設定しているのです。競売物件の種類や状況によって違いますが、具体的な処分価格は、一般市場価格の50~70%程度になります。不動産会社で一般流通物件を購入する場合、ここまで安く手に入れるのは難しいでしょう。
次に、一般流通物件よりも手間をかけることなく入手できます。基本的に、買受人は不動産競売を進める手続きに直接関与しないからです。ただ、落札するための入札や保証金の納付、買受人となったときの代金納付は自分で行う必要があります。裁判所がすべて行い、買受人は何もしなくてもよいわけではありません。
さらに、裁判所で取り扱う競売物件の種類や数の多さもメリットです。差し押さえ物件は、居住用の戸建てやマンションおよびその敷地だけではありません。投資用のアパートやマンション、商業ビル、工場店舗など、さまざまな競売物件が存在します。一般流通物件と比較すると、多様な目的で購入することが可能です。
最後に、競売物件購入時の諸経費が安く済むことがあげられます。一般の不動産売買ではないので、不動産会社へ支払う仲介手数料は不要です。また、所有権移転の登記手続きも、裁判所が嘱託で行ってくれます。そのため、司法書士への報酬を支払う必要もありません。ただし、元所有者が競売物件をすぐに引渡さない場合、立ち退き料や強制執行費用が発生するケースがあるので注意しましょう。
一方、競売物件はデメリットが比較的多いのが特徴です。まず、競売物件の内部を確認したり、詳細な情報を把握したりするのが難しいことです。一般流通物件を購入する場合、買主は売主に対して物件の状態を確認し室内を見学させてもらえます。これを内覧といいますが、競売物件を購入するときは内覧自体がほとんど不可能です。
また、不動産会社が間に入って便宜を図ってくれるわけではありません。そのため、競売物件の情報をすべて自分で把握する必要があるのです。競売物件の情報は、物件明細書、評価書、現況調査報告書の三点セットと呼ばれる書類で確認します。物件明細書とは、不動産の権利関係が記載されている書類です。評価書とは不動産の適正価格を把握できる書類になります。現況調査報告書とは、現地の調査結果を記載したものです。しかし、これらの書類だけでは競売物件の詳細な情報を把握しきれないため、安心して購入しにくい面があるのです。
また競売物件は、一般流通物件と比較して複雑な権利関係になっている場合も少なくありません。抵当権や根抵当権などの担保権が何件も設定されていたり、差し押さえや仮差し押さえの登記が同時に設定されていたりします。ある程度専門知識がないと競売物件の権利関係を把握できないので、購入する際のリスクも高まってしまうでしょう。
競売物件は、必ずしも購入できるわけではないこともデメリットだといえます。不動産競売手続きの中で、複数の買受希望者が差し押さえオークション方式で入札していきます。最高価格で入札した人が競売物件を落札できるので、それ以外の人は購入できません。入札時に納めた保証金は返還してもらえますが、それまでにかけた時間は無駄になってしまいます。
また、競売物件の購入後も、デメリットが生じる場合があります。例えば、競売物件に隠れた欠陥があったとしましょう。この場合、買受人がそのリスクを負担しなければなりません。一般流通物件を購入するときは、売主が一定期間、瑕疵担保責任を負う内容を売買契約で定めます。そのため、適用期間内に隠れた欠陥が見つかった場合、買主は売主へ責任を追及できます。具体的には、隠れた瑕疵の修補や損害賠償を売主へ請求することが可能です。
しかし、競売物件を購入する場合は、瑕疵担保責任を問えないので、買主は元所有者へ隠れた瑕疵の修補や損害賠償を請求できないのです。また、裁判所は、競売流れの中で、買受人へ所有権を移転する手続きを行ってくれますが、競売物件の引渡しまでは行ってくれません。元所有者が買受人に競売物件を引渡ししなければ、強制執行手続きによって引渡しを受けなければならない事態にもなりかねません。
競売物件を購入するメリットはいくつかありますが、同時にデメリットも多いので安易な気持ちで手を出さないほうが賢明でしょう。
一般の人がマイホームを購入するときは、不動産会社へ依頼すれば条件に合った物件を探してもらえます。そこで紹介される物件の大半が一般流通物件です。そのため、多くの購入者は一般流通物件を入手することになります。
一般流通物件のメリットは、まず自分の希望に近い金額で物件を購入できることです。購入希望者は対象物件が決まれば、希望条件を売主側へ伝え、買い付けの申込を行います。その後、不動産会社の仲介担当者を介して、売主側と買主側でお互いの希望条件を調整しながら、契約条件を決めていくのです。そのため、一般流通物件の売買価格は、買主の希望に近い金額となる場合が多いでしょう。
次に、事前に物件の詳細な情報を把握できるのもメリットにあげられます。不動産会社が不動産売買契約の仲介を行うときは、重要事項の説明義務が課せられています。これは、売買契約前に、取引対象物件の重要情報を買主側へ説明しなければならないというものです。
重要事項の説明は宅地建物取引士が行わなければなりません。不動産取引の専門知識を有する資格者に説明させることで、その真正を担保しているのです。重要事項の中には、物件の権利関係や形状、契約に関する事項など、不動産取引に大きな影響を与えるものが含まれています。それらの説明を受けることで、買主側は物件の情報をしっかり把握できます。
また、契約前に不動産会社の仲介担当者と一緒に現地へ足を運び、物件の詳細な説明を受けられます。つまり一般流通物件に関する不明点をすべて解消した状態で、買主側は売買契約を締結できるのです。
一般流通物件は、競売物件より安全な物件が多いのもメリットになります。通常、不動産を売却するには、設定されている担保権を外して、権利関係をきれいな状態にしなければなりません。不動産売買契約書でも、売主側にその義務が課せられます。
したがって、不動産会社が取引を仲介する際は、権利関係がきれいで安全な物件が多いのです。不動産会社の中には、任意売却を扱うケースもあります。そのため、任意売却物件が取引対象になることもあるでしょう。任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった債務者が、債権者の同意を得ながら一般市場で物件を処分する取引です。任意売却物件には、複数の担保権や差し押さえ登記が設定されていることもめずらしくありません。そのため、一般流通物件の中にも、問題のありそうな物件が含まれている可能性はあります。
しかし、このような物件でも権利関係をきれいにすることは可能ですので、リスクのある物件というわけではありません。取引後は問題のない状態で買主側へ引き渡されます。その意味では、任意売却物件も安全な物件なのです。
最後に、不動産取引で生じるリスクが少ない点も見逃せません。一般流通物件は、法令を遵守して取引が行われるからです。例えば、建物の敷地用として土地を取引する場合、接道義務を満たす必要があります。都市計画区域内や準都市計画区域内で建物を建てるときは、敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。この接道義務を満たさない土地は、住居を建てられないことになります。不動産会社が仲介する場合、この点をしっかり確認して取引を進めるので問題ありません。契約前に行われる重要事項の説明の際にも、宅地建物取引士から買主へその旨が伝えられます
一方、一般流通物件のデメリットですが、競売物件よりも購入価格が高くなります。市場価格を基準に売買価格を決めるので、決して割高というわけではありません。しかし、競売物件の処分価格は、市場価格の50~70%になるのが一般的です。そのため、相対的に一般流通物件の価格が高くなってしまいます。任意売却物件も、市場価格より多少低い額で取引されますが、競売物件より高くなるのは変わりありません
さらに、不動産売買時の諸経費が多くなってしまうのもデメリットです。一般流通物件を不動産会社の仲介で購入すると、仲介手数料を支払わなければなりません。例えば、1000万円の土地を取引したときに発生する仲介手数料は36万円程度です。そのため、仲介手数料だけで数十万円程度の出費を考えておかなければなりません。
また、登記名義を変更するための手数料も発生します。競売物件を購入する場合は名義変更手続きを裁判所がしてくれるので、手数料も発生しません。しかし、一般流通物件を購入すれば司法書士へ名義変更手続きを委託するので、手数料を支払わなければならないのです。
競売物件と一般流通物件には、それぞれメリットとデメリットがあります。競売物件は低価格で購入できる反面、リスクも多く、確実性もありません。そのため、不動産の知識を有していたり、調査を苦に感じない人に適しています。一方、一般流通物件はメリットが多く、主なデメリットは金銭的なものです。購入する際にリスクを避けたい人は、一般流通物件のほうがよいでしょう。物件に求める目的や希望予算などを考慮して選択することが大切です。
(2017年11月)
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