プロが教える「競売」と不動産売買
強制的に債権回収をはかる手段として活用される競売。不動産を差し押さえて行う手続きが、不動産競売です。債権者から不動産競売を申し立てられた場合、債務者はどうすればよいのでしょうか。
そこで、競売を申し立てられてしまうケースや競売が行われた場合はどのくらいの期間がかかるのかなど、任意売却と比較しながら詳しく見ていくことにしましょう。
人や企業からお金を借りる契約をすると、金銭債務を負うことになります。それにより、債務者は契約で決められた期間内にその債務を履行しなければなりません。
債務者が金銭債務によって発生する義務を果たさない場合、債権者は法的手段を行使して、債権の回収をはかります。その債権の回収方法の一つが不動産競売です。債権者が裁判所へ競売申し立てを行った後、債務者の不動産を差し押さえて処分し、その代金から回収をはかるもので、実務上利用される機会が多い回収方法です。
不動産競売を申し立てられてしまう場合はいくつかあります。まず、一般の人でも身近な原因として、住宅ローンの滞納があげられるでしょう。マイホームを購入する場合、中古物件でも最低数百万円、新築物件であれば数千万円単位のお金が必要になります。資産家や高い収入を得ている人であればともかく、一般の人はこのような大金を一度で用意するのは難しいのが現実です。
そのため、住宅ローンを組んで、マイホームを購入するのが通常です。住宅ローンの支払額は、人によって違いますが、その半数以上は5万円以上11万円未満となっています。中には支払額が月に15~20万円ほどの人も存在します。
したがって、転職やリストラによって収入が減ったり、無収入になってしまったりすると、住宅ローンを支払うのが困難となり、滞納してしまう場合があるのです。銀行などの金融機関は、住宅ローンの滞納が始まってから、通常6カ月を経過すると申し立ての手続きを進めます。
次に、マンションを所有している人が、管理費や修繕積立金を長期間滞納している場合です。このケースでは、所有マンションの管理組合から、裁判所へ法的手続きが取られて、競売の申し立てをされてしまうことがあります。
マンション内にあるエレベーター、階段、エントランスなどの共用部分は、所有者全員で利用するものです。その維持のための管理費を所有者全員が負担しなければなりません。
また、マンションの建物内が老朽化してきた場合、共用部分を修繕する必要があります。そのための費用を事前にプールしておく意味で、所有者全員は毎月修繕積立金の支払いをするのです。管理費と修繕積立金の月負担は2万円前後が相場となっています。
不動産を差し押さえて競売にかけるほどのものではないと考える人もいるでしょう。しかし、所有者によっては、住宅ローンや生活費などの負担が大きく、管理費や修繕積立金の支払いができない人も少なくありません。
このような人は、一時的ではなく、数年単位で滞納していることも多く、管理費や修繕積立金の未払額が100万円以上にのぼる場合もめずらしくないのです。このような状況であれば、管理組合も競売手続きの対象として考えても不思議ではありません。
一般的に管理会社へこれらの費用の徴収業務を委託していますが、法的手続きを取るか否かの判断は、管理組合側が行います。通常は理事会を開いて判断した後、競売申立をすることになります。
それから、投資用不動産を購入する際に組んだローンを滞納して競売の申し立てをされてしまうケースも少なくありません。投資用不動産購入のためのローンを組む場合、賃料収入を当てにして返済計画を立てるのが一般的です。
しかし、空き室が多くなって賃料収入が減少すると、計画通りにローンの返済ができなくなってしまいます。それにより、ローンを長期間滞納してしまい、債権者から競売を申し立てられるケースが多いのです。
さらに、夫婦でマイホームを購入後、離婚をした場合にも競売を申し立てられてしまうことがあります。夫婦が生活するマイホームを、所有者名義と住宅ローン名義を夫にして購入したとしましょう。その後、事情により夫婦が離婚をして元夫が出ていき、元妻がマイホームで生活し続けるとします。
このような場合、元夫が住宅ローンを支払い続けていてくれれば特に問題はありません。しかし、自分が生活していない家の住宅ローンの支払いについては無責任になりがちです。また、元夫の収入が職場の事情などで減ってしまった場合、住宅ローンの支払いが困難になります。こうした原因で元夫が住宅ローンを長期間滞納してしまうと、元妻が生活しているマイホームは、競売の対象となってしまうのです。
競売は、債権者が申し立てをすることによって手続きが開始され、その後も裁判所主導で進んでいきます。債務者側は基本的に関与しないのが特徴です。また、競売をするかしないかにかかわらず、住宅ローンなどの借入金の支払い義務が免除されるわけでもありません。そのため、競売をわざわざ回避させなくてもよいのではと考える人もいるでしょう。
しかし、債務者にとって、この手続きをして得られる利益は一つもありません。それどころか、いくつもの不利益を受けてしまうのです。 債務者が受けてしまう不利益とは、具体的にどのようなことがあげられるのでしょうか。まず、競売物件は、一般の不動産取引の市場価格より、かなり安い金額で処分されることがあげられます。
競売物件とは、競売によって処分される不動産のことです。競売不動産を落札しようとしている人は、内覧ができないため、物件の状況を把握できません。また、一般の不動産取引の場合とは違い、仲介業者から物件の説明を受けられなかったり、瑕疵担保責任を問えなかったりと、買い手側の保護が不十分です。
そのようなことから、競売物件の処分価格は、一般の不動産取引の市場価格よりもかなり安くなっています。競売物件が売却される相場価格は、市場価格の50~60%、高くても70%程度です。
例えば、競売不動産の市場価格が1000万円だったとしましょう。その場合、500~700万円程度の価格で処分されてしまうのです。住宅ローンの残債が、1050万円ある場合、市場で不動産を処分することができれば、残債を50万円まで減額できます。このくらいの金額であれば、親族の援助などを頼れば完済できる場合もあるでしょう。しかし、競売で処分されてしまうと350~550万円程度の残債が残ってしまうのです。
経済的に苦しい中、自分だけで数百万円単位の借金を返済するのは、かなり困難になります。そのため、最悪、自己破産を検討しなければなりません。 次に、引越し代の援助を受けられない不利益があります。買受人が落札した場合、債務者は即時に物件から立ち退かなければならないので、引越しすることになります。その際、他から資金を援助してもらえないので、債務者自身が捻出しなければならないのです。多額の借金を抱えている中、引越し代も用意しなければならないのは、かなりの負担となるでしょう。
任意売却で不動産を処分する場合、債権者や買主から引越し代の援助を受けられる場合がありますが、なぜ競売の場合はできないのでしょうか。それは、債権者や買主は、債務者の引越し代を援助する必要性がないからです。競売は、裁判所が主導で手続きを進めてくれます。そのため、債権者が処分された不動産の換価代金から配当を受けるのに支障はありません。
また、買主も引渡命令という強制執行手続きによって、債務者を立ち退きさせられるため、引越し資金を援助しなくても問題ないのです。
さらに、競売によって不利益を受けるのは、債務者自身だけではありません。住宅ローンの契約をする際に連帯保証人を立てている場合、連帯保証人にも不利益が及んでしまいます。
連帯保証人は、債務者が借金の支払いを怠ったとき、代わりに返済しなければならない義務を負います。競売では安い価格で不動産が処分されてしまうので、多くの残債が残ってしまいます。そのため、連帯保証人も債務者と同様、多額の借金を負わなければなりません。また、連帯保証人には、債権者から請求を受けた場合、債務者と同じ立場で返済する必要があります。
なぜなら、催告の抗弁権がないので、債務者へ先に請求する権利がないからです。競売を選択すると、このような不利益が生じてしまうので、得策とはいえません。
債権者が、住宅ローンなどの高額な借入金を回収しようとする場合、債務者の手持ちの現金だけを対象にしても、その実現は困難です。そのため、債務者の保有財産を処分し、その換価代金から回収をはかるのです。
特に数百万円から数千万円程度の価値がある不動産を処分して換価すれば、より多くの金額の回収を実現できるでしょう。そのため、住宅ローンなどの高額債権者は、債務者の不動産を処分して回収するのが一般的です。この方法による回収手段には競売と任意売却がありますが、それぞれどのような手続きなのか把握しておきましょう。
まず、競売とは、債権者が、裁判所の判決や抵当権などの担保権を根拠に、裁判所を活用して債務者の保有財産を処分する手続きのことです。また、裁判所で行われる手続きであることから、裁判所競売と呼ばれる場合も少なくありません。さまざまな財産が差し押さえの対象になりますが、不動産を処分して行う競売手続きを不動産競売と呼んでいます。裁判所へ競売の申立ができるのは、抵当権者などの担保債権者だけではありません。無担保債権者も申立が可能です。
無担保債権者が申立をする競売を強制競売、担保債権者が申立人である手続きを担保不動産競売といいます。住宅ローン債務の回収をはかるために、銀行などの金融機関が行うのは後者の手続きです。
債権者が裁判所へ申立をした後、対象不動産を調査して売却基準価額を設定し、最高額で買受を希望する人へ売却するのが、一連の競売流れになります。 一方、任意売却とは、債権者の同意を得ながら、債務者本人が一般の市場で不動産を処分する手続きのことです。裁判所を活用することなく売却できるのが、大きな特徴だといえるでしょう。また、競売よりも高い価格で処分できるのも見逃せません。任意売却も手続き期限があるので、早期に買主を見つけるため、市場価格より多少低い額での処分が一般的です。
しかし、それでも限りなく市場価格に近い額で売却できます。競売のように、30~50%引きの極端に低い価格で処分する必要はありません。不動産を高い価格で処分できれば、債権者は回収可能額がより多くなり、債務者も残債をより少なくすることが可能です。
さらに、任意売却を選択すると、不動産を処分した後もそのまま住み続けられる可能性もあります。親族に買主となってもらえば、賃貸という形を取ることでそれを実現できます。任意売却の方法だと親族間売買は難しい面もありますが、仲介業者を入れて市場価格以上の金額で取引すれば、認めてもらえる場合もあるでしょう。さらに、親族間売買での任意売却が難しい場合でも、投資目的の買主へ一度売却した後、賃貸で住み続けるリースバックの利用も考えられるところです。
ただ、一般の不動産取引と比較すると、債務者である売主と買主だけではなく、債権者もあわせた三者で売買価格などの契約条件を決定していかなければなりません。そのため、手続きに手間が生じてしまうといわれています。
しかし、任意売却の仲介専門業者へ手続きを依頼することで、この懸念を解消することが可能です。債権者との交渉や売買契約の段取りまで、すべての手続きを任せられます。債務者は、ただ任意売却の仲介専門業者の指示通りに動けばよいので、手間は生じないのです。
競売よりも任意売却の方法で手続きしたほうが、債権者と債務者双方にとってメリットがあります。銀行などの金融機関も、不動産を処分して回収をはかる場合、最初に任意売却を選択するのが通常です。この方法での手続きが難しいと判断した場合に、競売の申立準備にとりかかります。
債務者が返済義務を果たさない場合、債権者は強制的に回収をはかるため、競売の手続きを利用することがあります。財産の中でも不動産は価値が高いので、差し押さえによって換価処分をすれば、回収率も高くなります。
そのようなことから、不動産が差し押さえの対象になる場合が少なくありません。競売の申立から不動産が処分されるまで、半年から1年程度かかります。任意売却 は競売よりもメリットが多いので、その間に任意売却に手続きを切り替えたほうが効果的でしょう。
(2017年11月)
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