家はどうなる?自己破産ガイド
自分で債務の管理が不能となり、債務超過かつ支払い不能となってしまった場合、自己破産をするために、破産宣告(破産手続開始決定)の申立てをすることができます。自己破産は、破産法という法律で認められている法的制度です。債権者の権利を守るとともに、破産者(債務者)の経済的再生を目的としています。刑法に書かれている犯罪とは違うのです。
ところが、自己破産すると履歴書の賞罰欄に自己破産したことを書かなければならないから再就職ができなくなる、というような噂を信じている方が少なからずいます。また、選挙権が無くなるという噂を信じている方もいます。自分で管理できない状態の債務を整理する方法として、自己破産はメリットのある法的制度ですので、誤解のないよう、正確な情報を把握しておきたいものです。ここでは、皆さんが心配されている点をQ&A形式で明らかにしていきます。
戸籍や住民票には、自己破産について一切記載されることはありません。
ところが、戸籍や住民票に“破産者”と記載されると、本気で思っている方が少なからずいるのは事実です。
どうして誤解する方が多いのでしょうか。おそらく誤解の元になっているのは、本籍のある市区町村役場に備えてある「破産者名簿」だと思われます。この破産者名簿は、第三者が閲覧することはできません。市区町村役場が個人の方の“身分証明書”を発行する際に、この破産者名簿を確認します。氏名が登録されていれば、“破産者名簿に記録が有る”という内容が、“身分証明書”に入ります。この“身分証明書”を要求されることがない限りは、他の方が目にすることはありません。現在この名簿に記載されることは、少ないケースとなっています。
どういうことかと言いますと、この名簿には免責が認められなかった方だけが記載されるのです。破産手続に次ぐ免責手続では約98%の方が免責許可の決定を得るため、残りの2%前後の方だけが記載されています。つまり破産者名簿に載っている方は、破産者と認められたにも関わらず、免責が認められなかったという、かなり悪質なケースの方ということになります。
心配する必要はありません。基本的に裁判所から会社に、破産宣告(破産手続開始決定)の申立てがあり手続きが開始された等と、通知することはありません。また破産者となった旨を会社に通知することもありません。
時々、退職金見込額証明書を会社に発行してもらって裁判所に提出するのだから、会社には知られてしまうという意見を耳にします。退職金制度のある会社ならば、退職金規定があり、その算出方法等についても定めてありますので、そのコピーを取り、自分で計算した額を提出すれば問題ありません。上申書を付けて、退職金規定のコピーで代用したい旨を切々と綴れば大丈夫です。その時に、嘘を書くことだけは絶対にやってはいけません。
別の方法としては、住宅ローンや教育ローンを組むため、銀行与信のために必要だと会社にお願いする方法もあります。なお、会社の方が官報を目にして、破産手続き中だとか、免責されたとかを知ることは理屈上あり得る話です。
破産宣告(破産手続開始決定)がなされると、裁判所は債権者全員に通知することになります。そこで、判明している債権者には、裁判所から書面で破産宣告(破産手続開始決定)がなされたことが通知されるのです。ですから、もし申立者(債務者)が会社から借り入れをしていた場合には、会社に知られてしまうことになります。
しかし、もしも破産について会社が知り得た情報を社内で広めたならば、個人情報の扱いが不適切だとして会社と争うことも可能ですから、そのくらいの開き直ったスタンスでいた方がよいのではないでしょうか。確かに居心地が悪くなって、退職に追い込まれるという事例は少なからずあります。しかし現代社会では個人情報は守られますし、会社にはコンプライアンスを遵守しなければならない環境が整っています。ここは強気な姿勢でよいとは思いますが、漏れた情報を消すことは難しいのも事実です。
知人の方から借り入れがある場合:知られることになります。
心配はいりません。官報を見る一般の方は、基本的にいませんから、誰も知り得ることはないはずです。市区町村役場にある破産者名簿も、第三者が目にすることはできません。
免責を受けていれば、名簿に名前も載りません。
破産宣告(破産手続開始決定)がなされると、裁判所は債権者全員に通知することになります。そこで、判明している債権者には、裁判所から書面で決定がなされたことが通知されるのです。もし申立者(債務者)が知人の方から借り入れをしていたら、裁判所からの通知で知られることになるでしょう。
破産は解雇事由ではありませんので、解雇する理由にはなりません。
会社から借り入れをしているような場合、裁判所から債権者全員に通知が行くために、破産手続き中ということが会社に知られてしまいます。会社はその個人情報を他の社員や第三者に公表してはいけません。個人情報の取扱いとして、そのような決まりがコンプライアンスとなっているはずです。よって、もしも社内に噂が広まるようならば、個人情報の取扱い違反として争う覚悟でもよいのではないでしょうか。漏れた情報は消せませんから、毅然と振る舞う姿勢が求められます。
自己破産したとしても、銀行口座は引き続き今まで通りに利用できます。また新規に口座を作ることも可能です。できないのは、新規にローンを組んだり、融資を受けたりすることです。
クレジットカードは残念ながら使用できませんし、新規に発行してもらうのは、諦めましょう。7年~10年経って、ブラックリストから外されたとしても、簡単には作れないでしょう。信用情報機関のデータは消去されても、カード会社のデータとして事故歴が残っている可能性があるからです。
しかしクレジットカードの無い状況を不便に感じることも多いかと思います。その場合、デビッドカードをクレジットカードの代わりに使うという代替策はあります。更に配偶者の方がご自身の名義でクレジットカードを持っていれば、家族カードを作ってもらうということはできるでしょう。
また同じJCBカードでも銀行系のカードとショッピングサイト系では審査基準が異なる場合がありますので、ショッピング系カードを持っていなかったならば、申し込んでみる価値はあります。新しいクレジットカードを入手できたら、使用履歴(通称、クレヒス)を少額で積み上げていくことが必要です。支払いが滞らずに実績を積み重ねることで、使用枠を広げましょう。
但し、債務超過となり支払い不能になってしまった過去と自己破産した経験を元にして、債務管理を計画的かつ慎重に行うことを忘れないでください。
1.破産者であっても、最低限の生活は法の下で保障されています。そうでなければ、破産法の目的の一つでもある、破産者の経済的生活の再生という目的が果たせなくなるからです。したがって、以下に挙げるような必要最低限の家財道具は差押え禁止財産として没収されることはありません。
冷蔵庫、洗濯機(乾燥機付きを含む)、電子レンジ(オーブン付きを含む)、テレビ(29インチ以下)、瞬間湯沸かし器、ラジオ、エアコン、掃除機、鏡台、冷暖房器具、整理タンス、洋タンス、ベッド、調理器具、食器棚、食卓セット、実印、仏像、位牌、礼拝に欠かせないもの、農業・漁業・大工さん等その職業に欠かせないもの、義手・義足等の身体補助具、その他破産者が破産手続開始決定後に取得した財産
2.更に裁判所毎に基準とその運用を定めています。全国一律ではありませんが、総額99万円という基準と時価20万円という二つの基準があります。
以下に東京地裁の基準とその運用をご紹介します。
東京地裁では、現金は総額99万円まで手元に残しておけます。そして、以下にあげる財産のうち、時価20万円以下のものは原則として破産者の手元に残すことができるのです。
例えば預金が15万円あったとすると、その預金は手元に残したまま現金は99万円まで没収されません。ゆうちょ銀行にも20万円の貯金があった場合は、どうでしょう。この場合は預貯金合計で35万円になりますから、15万円分は没収されてしまいます。このような運用の仕方は裁判所によっては否定され、現金と上記財産の総合計が99万円以下とするという基準もあります。
3.マイホームについては、原則手放すことになります。
申立人(債務者)が不動産を所有している場合は、裁判所によって破産管財人が選任されると思っておいて間違いはありません。すなわち管財型の手続きとなります。そして不動産は、破産管財人によって売却され(任意売却)、代金は各債権者に配当されます。
なお、不動産に担保権(抵当権など)が設定されているような場合で、破産管財人による任意売却が不可能となったときには、競売の申立てがなされます。
自己破産することのメリットやデメリットは、破産者だけのものです。本人に代わって、家族や親戚が債権者に支払う必要はありません。自己破産したからといって、戸籍や住民票にも特に記載される事項はありませんので、子どもの進学や就職、結婚についても何ら影響はありません。心配は無用です。親等が亡くなられた場合にも、当然相続人となることができます。
但し家族が借り入れの保証人となっているような場合は、本人が自己破産をすると、家族が代わりに支払う義務を負うことになります。また破産者が家族カードで借金をしていたような場合には、信用情報機関に家族のデータが登録されていることがあり、破産者に関係のない家族がローンを組めなくなったりする場合があります。
そもそも、国民年金・厚生年金などの各種年金の受給権や生活保護受給権、失業保険受給権、児童手当受給権は、法律上、差押禁止財産となっています。したがって、破産宣告(破産手続開始決定)による影響は皆無と言わざるを得ません。支給額が減らされるということもありません。
場合によっては、破産者となった後の生活が立ち行かなくなることが想定されることもあるでしょう。そのようなときには、もちろん生活保護の申請をすることも可能です。弁護士等の専門家に自己破産の手続きについて依頼するのであれば、生活保護の申請についても相談してみましょう。両方とも同時に受任してもらえることも、珍しくはありません。
債務整理の方法としての自己破産は、その言葉自体が持つイメージのせいでしょうか、大変ネガティブに理解されているところがあります。そのために、必要以上のマイナスイメージが勝手に膨らんでいるところもあります。破産者としてのデメリットは、あくまでも本人だけが享受するものであり、家族などには原則迷惑がかかりません。家族に迷惑が及ぶとすると、それは家族だからではなく、保証人としての関係であったり、家族カードで借金をしたりしたような場合に限定されるのです。
更に、破産法の本来の趣旨を理解しておけば、怪しげな噂や虚偽の情報に惑わされずに済むのではないでしょうか。破産法はあくまでも破産者(債務者)の経済的再生を目的としています。ですから、過去を反省して真摯に再出発を図ろうとする債務者の足を引っ張るようなことは原則あり得ないのです。したがって社会生活において、通常の人と区別するような制度は一切ありません。逆に破産者であることを、殊更に強調しないように努めています。また最低限の生活が営めるように、丸裸にしてしまうこともあり得ないのです。生活に必要なものは残してくれます。
ただし、会社や友人に借金をしているような場合には事情を知られてしまうリスクを抱えます。そのために退職に追い込まれたり、人間関係を破綻させたりすることも少なくはありません。慎重に検討されることをお薦めします。
(2017年11月)
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