家はどうなる?自己破産ガイド
破産法とは、債権者の利益を確保するだけでなく、債務者が経済的に再生する機会を確保することをも目的とした法律です。法人や会社ではなく、個人の自己破産の場合には、後者の経済的再生ということが重視されています。法人や会社は倒産すれば、その法人や会社は消滅してしまいます。ところが人が自己破産した場合には、そうはいきません。その後の生活があり、当然生きていかなければならないからです。
この”法人・会社は倒産で消滅しても、個人は自己破産しても生き続ける”という大きな違いが、破産法の”免責”という制度に表われています。この免責という制度は、自己破産した後も生き続ける”人”に対してのものです。破産法の重要な目的である経済的再生のための制度なのです。では、自己破産について具体的に学びながら、破産手続きについて確認していきましょう。
この法律は,支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により,債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し,もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに,債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
自己破産の申し立てをするメリットなど、存在するのでしょうか。”破産”という二文字から沸き上がるイメージは、お先真っ暗というマイナスのイメージです。
しかし、自己破産にも間違いなくメリットがあります。
破産という道を歩むメリットがあるからこそ、自らの意志で自己破産を選択する人がいるのです。破産は誰かに強制されてするものではありません。あくまでも個人の自由意志に基づいて裁判所に申し立てをしているのです。
ショッピングローンや消費者金融のキャッシングなど、借金が膨らんで返済ができなくなった…。
住宅ローンや自動車ローンを抱えながら収入を得る手段を失った…。
つまり自ら債務管理を行って月々の弁済をしていくことができなくなったときに、自己破産という選択肢を自由意志で選ぶことができるのです。
そう、もうお分かりになりましたね。自己破産という道を歩む一番のメリットは、自分の意志で今後を決めることができるという”自由”です。誰かに強制され、無理やり押し付けられるという不自由さを味わうことはありません。
確かに債権者も破産を申し立てることができます。これを”第三者破産手続”とも言います。この場合、債権者の意向で破産手続きが進められるため、ある意味強制されることになります。しかしこの方法は一般的ではありません。債権者にとって特別な魅力がなく、かつ実務上も手続きを進めることが容易ではないのです。
次に破産手続きが開始(破産宣告)されて免責が認められれば、税金を除く借金・債務を弁済する必要がなくなるというメリットがあります。この借金の帳消しともいえる効果が、自己破産の重要なメリットなのです。更に付け加えるならば、債務をゼロにしてもらいながらも、過払い金があれば返還を求めて過払い金請求することは可能なのです。
このように、自由な意思決定権を維持しながらも借金の帳消しをすることができるというのが、自己破産をする2大メリットです。
1 債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
2
債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
それでは、自己破産のデメリットは何でしょうか。破産という道を歩むデメリットは、メリットの裏返しとも言えます。
1.自分の自由意志(自己都合)で借金を帳消しにするのですから、当然その反対の効果として、必要最小限の財産を除いた自分の財産のすべてを失うことになります。個別の財産について、20万円まで、手元に持っている現金ならば、99万円まではそのまま保有することが許されます。しかし、それだけで後は全て失います。
2.信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行協会)に事故情報が記録されるため、各種のローンを利用することができなくなります。全国銀行協会の場合は、最も長く情報が記録され、その期間は10年間となっています。
3.破産手続き中に制限されることが4つあります。1つ目が職業です。弁護士や公認会計士等の士業に就くことができません。警備員や宅建業、生命保険の外交員等も同様になることができません。会社の役員も退任せざるを得なくなります。2つ目は郵便物が破産管財人に転送される場合があるということです。自分宛ての郵便物を、直接自分で受取れなくなるかもしれません。3つ目は、破産手続き中に裁判所が必要と認めると、身体拘束(引致)を受ける場合もあります。裁判所に対してあまりにも非協力的で反省の態度も示せないと、引致される可能性があります。4つ目は、氏名が官報に掲載されるということです。いわば、世間に破産者として氏名を公表されるということになります。しかし新聞に氏名が公表される訳ではありませんから、一般の方が目にすることは、普通はないと思いますが、公表される事実には変わりがありません。
自由意志で自己破産の道を歩き出し、借金を帳消しにしたのです。その反面、自分の財産を無くしたり、新たな借金ができなくなったり、その他に色々と制限されるというデメリットは、甘んじて享受しなければなりません。
自己破産の申し立てをしようとした場合の手続きについて、確認しましょう。
1.破産申し立て書類の作成
裁判所に提出する書類は数も多く、一般の人が作成することに慣れているはずもありませんから、少々面倒な作業にはなります。
先ずは、自分の住民票がある住所を管轄する地方裁判所を調べましょう。そして、その管轄裁判所に問合せて書式を確認します。破産申立書(破産宣告の申立書)は、裁判所によって書式が異なることが多いので、必ず管轄の裁判所に確認しなければならないと思っていた方がよいでしょう。また申し立てをするには、その費用を納めなければなりません。裁判所によって金額も異なりますが、おおよそ2万円から3万円必要となります。
2.破産申し立て書類の準備が整ったら、いよいよ破産の申し立てです。直接持参しても構いませんし、郵送でも可能です。不明な点は事前に管轄の裁判所に問合せておきましょう。
3.破産の申し立てをすると、破産管財人が選任される場合があります。破産管財人が選任されると、後はほとんど破産管財人に任せておけばよいのです。債権者への通知や裁判官に事情などを訊かれる審尋、裁判所や破産管財人に求められた追加資料の作成等の対応は必要となります。破産管財人が選任されない場合は、ほとんど財産が無い場合です。したがって手続き開始と同時に廃止となり、免責手続きとなります。
このように自分で自己破産を申し立てることは十分可能ではあります。しかし実際に申し立て書類を作成するのは、かなり大変な労力を必要とします。そこで、一般的には弁護士や司法書士の専門家に依頼することが多いというのが実情になっています。この場合には、専門家の報酬を負担しなければならなくなります。
自己破産の申し立てをすると、裁判所が借金等を返済できるかどうかを判断します。返済できないと判断した場合、破産手続きを開始する決定(破産宣告)がなされます。そして、破産法の2つの目的にそった手続きが並行して進んでいくことになるのです。1つは、債権者の利益確保のための破産手続きです。債務者(申立人)の財産を換金して、債権者に公平に分配します。もう1つが債務者の経済的再生を目的とする免責手続きです。
破産手続きをすすめる費用を債務者が負担できるかどうかで、2種類に分かれます。
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費用を負担できない場合 同時廃止型 |
破産手続開始決定(破産宣告)と同時に手続廃止決定をします。少し違和感のある話ですが、債権者の利益を確保する目的に立ち返ると分かり易いでしょう。破産者(債務者)には金銭及び財産がほぼ無いという状況ですから、債権者に平等に分配する金銭を用意することができないのです。したがって破産手続きを進めても意味がありません。そこで、開始と廃止を同時に決定してしまうのです。 |
|---|---|
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費用を負担できる場合 管財型 |
この場合、裁判所が破産管財人を選任します。以後、この破産管財人が中心となって手続を進めていくことになります。具体的には、破産者(債務者)の財産を調査し、財産があればそれを売却してお金に換えます。債権者の債権の有無や金額を調査して、用意できたお金を分配(配当)することになります。この報告をもって、裁判所は破産手続の終結を決定します。 ところが場合によって、破産管財人が破産者(債務者)の財産を調査した結果、債権者に配当できる財産が無いことがあります。このようなケースでは、裁判所は配当をせずに破産手続廃止の決定をすることになります。 |
| 同時廃止型 | 破産者(債務者)が経済的に立ち直ることを目的とした手続です。その反面、債権者の権利は犠牲になるわけです。そこで、1ヶ月以上の期間をとって債権者の意見を聞き取ります。すなわち債権者の権利に対する配慮です。また、裁判官が直接に破産者(債務者)から事情を訊きます(免責審尋)。これらの後に、裁判所が免責許可・不許可の決定を下します。 |
|---|---|
| 管財型 | 債権者集会で破産管財人が業務の報告をし、配当の有無などを債権者に説明します。また破産管財人は免責についての意見も述べることになり、破産者(債務者)から事情を訊く”免責審尋”が同時に行われます。その後裁判所は免責許可決定もしくは免責不許可決定をすることになります。 |
自己破産という道を歩み出すためにも、よくある質問ベスト10で疑問を解消しましょう。
A1:裁判所から、家族についての書類提出を求められることもあります。家族に隠そうとするよりも、家族の協力を得られるように、話し合いをすることが重要ではないでしょうか。なお官報には掲載されますが、一般の方の目に届くことは多くはないと思われます。
A2:原則妻が弁済することはありません。但し、妻が連帯保証人になっているような場合には、弁済義務が生じます。
A3:会社からの借り入れがあると、会社は債権者となりますから、裁判所からの通知が送られます。しかし、会社からの借り入れが無ければ、基本的に知られることはないはずです。現実には、居づらくなって会社を辞めたという事例がないわけではありません。
A4:自己破産しただけでは、会社は解雇することはできません。解雇するには相当の理由を必要としますが、自己破産だけでは、相当の理由に該当することはありません。
A5:自己破産の効果は家族には及びませんから、ローンを組むことは可能です。
A6:自己破産の効果は家族には及びませんから、妻名義の財産は処分されることはありません。ただし、実質で判断されます。表面的には妻の名義でも、実質は破産者(債務者)名義のものと判断されることがあります。
A7:自己破産の効果は家族には及びません。家族にこれ以上の迷惑を掛けたくないという気持ちは理解できますが、自己破産したら離婚しなければならないということにはなりません。支え合える関係ならば、家族の絆はより強固なものになるでしょう。
A8:住宅ローンが残っている場合は、住宅ローン会社に処分、換価されることになります。住宅ローンが無い場合には、確実に処分されてしまいます。
A9:破産者が任意で財産を整理する任意売却、もしくは競売ということになります。
A10:任意売却の売主は破産者(債務者)ですが、競売の売主は裁判所ということになります。任意売却は、破産者が任意に自分の財産を整理する方法です。競売の場合は、実際に売却して換価できるまでに相当の日数を要します。
自己破産を検討する状況とは、債務管理が十分にできずに債務超過となっている状況のはずです。しかも、その債務を返済できる見込みが立たないと判断される場合です。このような債務者を支援する目的を有している法律が、破産法なのです。
免責という制度で、破産後の個人の経済的な立ち直りを目指します。このような制度を利用するかどうかは、あなたの自由意志に任せられています。つまり強制ではない、任意の財産整理方法が自己破産なのです。心配なことも多々あると思いますが、自己破産は家族にその影響を及ぼすことは原則ありません。自己破産・破産宣告は経済的再生への一歩なのです。デメリットを乗り越えられるのであれば、メリットを最大限に享受する選択には、十分価値があると思われます。自己破産の手続きを一人で行うことも可能ですが、その煩雑さと専門性を考えると、弁護士や司法書士の協力を仰ぐことが一般的になっていることに、納得がいきます。
(2017年11月)
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