家賃の値上げを提示され、「この金額には納得できない」と思いながらも、どう対応すべきか分からず、更新期限が迫ってきてしまった経験はありませんか。
「契約書にサインしなければ退去になるのか」
「値上げを断ったら住み続けられないのか」
住まいに関わる問題だからこそ不安も大きく、簡単には判断できません。
しかし、賃貸借契約には借主(入居者)の居住を守る仕組みがあります。家賃の条件で合意できないまま契約期間が満了しても、「法定更新」によって契約が自動的に継続される場合があります。
そのため、サインをしていないからといって、すぐに退去しなければならないわけではありません。
ただし、法定更新は「何もしなくてよい状態」という意味ではありません。家賃、契約期間、更新料、そして貸主(大家さんや管理会社)との関係など、知っておくべき点がいくつもあります。
この記事では、家賃値上げを拒否した場合に起こり得る法定更新の仕組みと、契約書を交わさずに住み続ける際の注意点を分かりやすく整理します。まずは更新時のルールを正しく理解するところから始めましょう。
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「法定更新」とは? 交渉決裂でも住み続けられる仕組み

期限を過ぎると自動的に「前と同じ条件」で更新される
借地借家法第26条では、貸主と借主の間で更新の合意ができないまま契約期間が満了した場合、自動的に「従前の契約と同一の条件」で契約が更新されたと見なされる旨が示されています。
これを「法定更新」といいます。法定更新のための特別な手続きやサインは不要です。
期限を過ぎても住み続けているだけで直ちに不法占拠になるわけではなく、法律に基づいて契約が継続している状態になります。
家賃は「値上げ前の金額」のままでよい
法定更新における「同一の条件」には家賃も含まれます。つまり、貸主から値上げを提示されていても、双方が合意していない以上、家賃は従前の金額のままで法的に有効です。
借主が値上げに同意しない限り、更新時に自動的に家賃が上がることはありません。家賃値上げは、あくまで「合意」があって初めて成立するものだからです。
契約期間は「期間の定めのない契約」になる
法定更新で変わる点が契約期間です。一般的な2年契約のような期間の定めはなくなり、「期間の定めのない契約」に移行します。
「期間の定めのない契約」とは、契約の終了時期をあらかじめ決めない契約形態を指す専門用語です。この状態では、借主は継続して居住できます。
一方で、退去したい場合は、契約書の特約がなければ、原則としていつでも解約の申し入れが可能です。
更新期限に縛られない点は特徴ですが、あくまで合意に至らなかった場合の契約形態であることを理解しておく必要があります。
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法定更新になると「更新料」や「契約書」はどうなる?

手元の「古い契約書」がそのまま有効
法定更新になった場合でも、新しい契約書を作成しなければならないわけではありません。これまで使っていた契約書の内容が、そのまま継続して有効になります。
そのため、「契約書がない状態」で住み続けることにはなりません。契約条件やルールは、従前の契約書に基づいて判断されます。
万が一トラブルが起きた際も、元の契約書に書かれている特約や条文が基準になります。
したがって法定更新へ移行後は、新しい契約書の有無ではなく、「今の契約書にどのような内容が書かれているか」を確認することが重要です。
更新料の支払いは「契約書の特約」次第
「法定更新になれば更新料は払わなくてよい」と考える方もいますが、これは必ずしも正確ではありません。更新料の扱いは、契約書の特約によって変わります。
たとえば、契約書に「法定更新の場合でも更新料を支払う」といった記載がある場合は、支払い義務が生じる可能性があります。
一方で、そのような記載がない場合は、更新料は合意更新の対価と解釈され、支払いが不要と判断されるケースもあります。
ただし、この点は過去の裁判例でも争点になりやすく、判断が分かれることもあります。
更新料については自己判断で対応せず、契約書を確認したうえで、不明点があれば専門家に相談することをおすすめします。

契約書を更新せずに住み続ける「リスク」と「デメリット」

貸主・管理会社との「信頼関係」が悪化する
法定更新によって法的には住み続けられますが、それと人間関係は別です。貸主や管理会社から見ると、「値上げに応じず、契約書も交わさない入居者」と受け取られる可能性は否めません。
その結果、やり取りが事務的になったり、連絡が取りづらくなったりと、日頃のコミュニケーションに影響が出ることもあります。
隣人トラブルなどがあっても相談がしにくくなるなど、いざというときに困ってしまう場面も出てくるかもしれません。
賃貸住宅は、貸主との関係が長期にわたるケースも多いため、信頼関係が住みやすさに影響する点は無視できません。
将来の「設備交換」や「要望」が通りにくくなる
エアコンや給湯器などの設備が故障した場合、原則として貸主には修繕義務があります。
ただし、関係がぎくしゃくしていると、対応の優先度が下がったり、最低限の対応にとどまったりする可能性は否定できません。
たとえば、交換時に選べる設備のグレードや、対応までのスピードなどに差が出ることも考えられます。
もちろん、法的義務がなくなるわけではありませんが、円滑な対応を受けるためには、日頃の関係性も影響するのが実情です。
あくまで「中ぶらりん」の状態であること
法定更新は借主を守る仕組みですが、位置づけとしては「合意できなかった結果として継続している状態」です。積極的に条件を取り決めて更新した状態とは異なります。
そのため、将来、建替えや売却など、貸主の事情による立ち退き交渉が生じた場合、円満に合意更新を重ねている入居者と比べると、話し合いが複雑になる可能性もあります。
法定更新はあくまで交渉決裂時のセーフティーネットです。長期的に安心して住み続けるためには、可能な限り双方が納得できる形での合意更新を目指す姿勢が大切になります。
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トラブル回避! 法定更新中の正しい家賃の払い方

勝手に「値上げ後の金額」を振り込まない
管理会社から「法定更新でもよいので、値上げ後の金額を振り込んでほしい」と言われることがあります。しかし、値上げに納得していない場合は、無理に従う必要はありません。
注意したいのは、一度でも値上げ後の家賃を支払うと、「値上げに黙示的に合意した」と受け取られる可能性がある点です。後から「同意していない」と主張しても、認められにくくなることがあります。
トラブルを避けるためにも、合意していない間は必ず「従前の家賃」を支払うようにしましょう。従前の家賃の支払いを続ける意思を示すことが、借主自身を守る行動になります。
受け取りを拒否されたら「供託」を利用する
もし貸主が「値上げした金額でなければ受け取らない」と、従前の家賃の受け取りを拒否した場合は注意が必要です。そのまま支払わずにいると、形式上は家賃滞納と扱われる恐れがあります。
このようなときに利用できるのが「供託(きょうたく)」です。これは、家賃を法務局に預ける手続きをすることで、法律上「支払った」と同じ扱いになる制度のことです。
供託を行えば、家賃未払いを理由とする契約解除のリスクを避けられます。手続きに手間はかかりますが、万が一のトラブル時に借主を守る有効な方法です。
法定更新中は、「払わない」のではなく、「正しい方法で払う」ことが重要です。冷静に対応することで、不要な争いを防ぐことにつながります。


まとめ

家賃値上げに合意できないまま期限を迎えても、「法定更新」によって住む場所が直ちに失われることはありません。借主の居住は法律で守られています。
一方で、貸主との関係がぎくしゃくしたり、更新料をめぐって認識の違いが生じたりと、現実的なトラブルが起こる可能性はあります。法的に問題がなくても、住みやすさに影響が出る可能性は十分に考えられます。
大切なのは、「法的な権利」と「これからの住みやすさ」の両方を踏まえて判断することです。
法定更新は交渉がまとまらなかった場合の備えとして理解しつつ、可能であれば双方が納得できる形での合意更新を目指し、冷静に話し合いを続ける姿勢が安心につながります。
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