賃貸物件の退去後、敷金返還の精算書が届かなかったり、修繕費が予想以上に高額だったりしたとき、どのように対応すればよいのでしょうか。また、精算書はいつ届くのか、敷金から引かれる金額の内訳はどのようなものなのかといった点も、事前に知っておきたいポイントです。
今回は、敷金精算書が届くまでの流れや、修繕費が高額だった場合の対処法を解説します。知識を身につけることで、スムーズに退去手続きを進められるようになるでしょう。
賃貸物件を探す敷金礼金0(ゼロ・なし)物件引越しまでにやること・スケジュール

一般的には、退去立会いから「1ヶ月以内」に精算内訳書が送付されるケースがほとんどです。ただし、契約内容や管理会社の処理状況によって、時間がかかる場合もあります。

精算内訳書が1ヶ月経過しても届かない場合は、賃貸借契約書に敷金返還の期限が記載されているかを確認してください。期限を過ぎても連絡がない場合は、大家もしくは管理会社に早めに問合せましょう。

また、精算書が届いた際には、記載内容をしっかり確認しましょう。特に修繕費やクリーニング代はトラブルの原因になりやすい費用です。内訳に疑問がある場合はそのままにせず、管理会社に問合せることでトラブルを未然に防げます。

 

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敷金から差し引かれる項目には、主に以下が含まれます。

  • 修繕費
  • クリーニング費
  • 家賃の未納分
  • 鍵の交換費(特約に記載がある場合)

それぞれの項目がどのようなものなのかを理解することで、差し引かれる金額が妥当なのかが分かるようになります。

 

修繕費は、入居者の過失や故意によって生じた損傷の修理費用が対象です。たとえば、家具を移動させた際に生じた傷やへこみ、壁に付着したタバコのヤニ汚れの原状回復費用などが該当します。一方で、日光によるフローリングの色あせや家具を置いたときの跡など、通常の使用による劣化は賃借人(借主)が負担する必要はありません。

クリーニング費用は、退去後に部屋を清掃するための費用です。一般的にはキッチン、バスルーム、トイレなどにおいてハウスクリーニングが行われます。契約書にクリーニング費用の負担が記載されている場合、この費用が敷金から差し引かれるケースが多いです。ただし、日常生活で生じる自然な汚れや経年劣化による汚れは、賃貸人(貸主)が負担するのが一般的です。そのため、請求内容が正当なものか必ず確認してください。

また、家賃の未納がある場合も敷金から差し引かれます。敷金よりも家賃の未納分が多ければ、追加で支払う必要があるため注意しましょう。

 

最後に、鍵の交換費が必要となるケースもあります。鍵の交換は防犯対策として不可欠です。鍵がそのままだと、以前の入居者が合鍵を使用して不法侵入する可能性があります。国土交通省のガイドラインでは、鍵交換費用は本来賃貸人が負担すべきものであると記載されています。ただし、賃貸借契約書に特約として記載されている場合は、賃借人が負担しなければなりません。

上記の項目を踏まえて、実際にどのくらいの敷金が返金されるのか、シミュレーションしてみましょう。家賃が12万円の物件で、クリーニングや修繕の費用が相応にかかったケースを想定してみます。

【敷金精算による返金額】

120,000円(敷金・賃料1ヶ月分)-30,000円(クリーニング費用)-30,000円(修繕費用)=60,000円

ここから、家賃の未納分や鍵交換費用が追加費用として請求されるケースがあります。

【最終的な返金額】

60,000円-120,000円(家賃の未納分)-15,000円(鍵交換費用)=-75,000円

上記シミュレーションの場合、最終的には75,000円を賃貸人に支払う必要があります。もし、敷金精算書に「費用一式」と記載されていて、内訳の金額が具体的に示されていない場合は、賃借人は納得して支払うことができないでしょう。このような場合は、大家もしくは管理会社に内訳を確認し、納得したうえで精算してください。

敷金が返金されるまでの流れを理解することは、退去後の手続きをスムーズに進めるために大切です。敷金精算書が届くタイミングや、返金が完了するまでの具体的な流れを把握して、発生し得るトラブルを未然に防ぎましょう。

ここでは、敷金が返還されるまでの流れを3つのステップに分けて解説します。

退去する際は、大家もしくは管理会社の担当者と一緒に、壁や床の傷、設備の不具合など、部屋に損傷や修繕が必要な箇所がないかを確認します。その際、不明点があれば必ずその場で質問しましょう。原因が経年劣化によるものか、それとも賃貸人の過失によるものかを明確にすることで、後から不当な請求を受けるリスクを減らせます。

なお、退去時の立会いでは、入居時に撮った写真や動画が役立ちます。入居時の記録が残っていれば、自分の過失ではないことを自信をもって伝えられます。引越しの際は、家具や荷物を搬入する前に部屋の状態を記録しておくと安心です。

退去後、大家もしくは管理会社から敷金精算書が送られてきます。先述したとおり、退去日から1ヶ月以内に届くのが一般的です。

敷金精算書で確認すべきポイントは、以下の3つになります。

ポイント

  • どの内容でいくら費用がかかるのか
  • 項目の内訳
  • 支払いの必要がない項目があるか

敷金精算書の内容に疑問点がある場合は、速やかに管理会社に連絡しましょう。特に、項目が曖昧な表記になっている場合は、しっかりと納得できるまで説明を求めるようにしてください。

敷金が返金される時期は賃貸借契約書の内容によりますが、精算書の受け取りから1ヶ月以内が目安です。そのため、引越し費用に充てることは難しいでしょう。万が一、1ヶ月以上経っても返金が確認できない場合は、管理会社に状況を確認してください。

 

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退去時に敷金精算書を受け取り、提示された修繕費が「高額すぎる」と感じるケースもあるでしょう。ここでは、修繕費の減額につながる対処法を解説します。以下で紹介する流れに沿って、冷静に対応しましょう。

修繕費は、大家もしくは管理会社が自由に請求できるものではありません。国土交通省のガイドラインに記載されている内容を要約すると、修繕費は以下のように定められています。

  • 修繕対象は、賃借人の故意や過失によって汚れたり壊れたりした部分に限られる
  • 居住期間が長くなるほど、賃借人の負担割合が減額される
  • 賃貸借契約に特約が明記されている場合は、その内容に従い賃借人が費用を負担する

参考:国土交通省住宅局|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

 

たとえば、家具の設置跡や冷蔵庫裏の壁の黒ずみ(電気ヤケ)は、通常使用の範囲とされるため、賃借人の故意や過失には該当しません。一方で、壁の落書きやタバコによる部屋の黄ばみは賃借人の責任となるため、請求される可能性があります。

また、賃貸借契約書で賃借人の負担と定められた事項がある場合は、特約の内容に従い費用を支払う義務が生じます。

修繕費が適正でないと判断した場合は、管理会社に連絡をしましょう。

 

連絡する際には、次のポイントを確認してください。

ポイント

  • 請求箇所は間違いなく自分が汚し、壊した箇所であるか
  • クロスなどの消耗材は、負担割合が考慮されているか
  • 賃貸借契約書に記載されている内容であるか

なぜその金額になったのか、なぜこちらが負担しなければならないかの根拠を詳しく説明してもらいましょう。また、契約書に記載のない費用が請求されている場合も、その根拠を明確に示してもらってください。

管理会社との交渉で解決しない場合は、第三者に相談するのが効果的です。各市区町村に設置されている消費生活センターでは、専門の担当者が賃貸物件に関するトラブルについてアドバイスを行っています。

電話あるいは直接窓口に訪問して相談しましょう。相談前に修繕箇所の写真など、証拠となるものを用意しておくとスムーズです。

なお、相談受付は原則平日のみとなり、土・日・祝日は国民生活センターに電話がつながります。

敷金精算書は、退去後1ヶ月以内に届くのが一般的です。1ヶ月経過しても届いていない場合は、賃貸借契約書を確認したうえで、大家・管理会社に連絡を行いましょう。

 

賃貸物件の退去時には、敷金返還の精算書や修繕費に関するトラブルが発生するケースがありますが、正しい知識を持つことでスムーズに対処できます。修繕費が高額だと感じた場合は、借主の負担内容の確認、大家もしくは管理会社へ相談、消費生活センターの利用を検討しましょう。適切な対応を行い、納得できる退去手続きを進めてください。

 

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