多くの賃貸物件は2年ごとに契約の更新が行われ、物件によってはそのタイミングで更新料が発生することもあります。更新料の金額は家賃の1~2月分程度が相場であり、決して安くはないため、事前に準備しておかなければ支払いができない事態に陥る可能性もあります。
今回は、更新料の基本的な目的や支払いができないときのリスク、支払いを拒否できるケースなどをまとめて見ていきましょう。
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賃貸物件における更新料とは

賃貸物件における更新料とは、契約満了を迎えた賃貸借契約を更新するために、大家さんに対して支払う費用のことです。賃貸物件では、2年間の普通借家契約を結ぶことが多く、2年が経過すると更新の時期を迎えます。
普通借家契約では、借主が退去の意思を示さない限り自動的に更新されるのが通常ですが、このときに発生するのが更新料です。
更新料の役割
更新料の支払いそのものは、法律によって定められているものではありません。物件の貸し借りにおける長年の慣習や、建物の損耗を補修するための維持管理費として認識されている部分があります。
また、少し古いデータではありますが、国土交通省が2007(平成19)年に行った調査によれば、更新料が徴収される主な理由として「家賃が低い分の補填」や「大規模修繕の財源」なども挙げられています。
(出典:国土交通省『民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)平成19年』)
更新料の相場
更新料の相場は「家賃の1~2ヶ月分程度」とされています。ただ、地域によっては更新料を徴収しなかったり、家賃1ヶ月分より少額であったりするケースもあります。
更新料の有無については、物件のオーナーが独自に判断するものであるため、賃貸借契約書の内容をよく確認することが大切です。
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更新料を払わないとどうなる?

賃貸物件では、家賃を支払えない状態が続くと、最終的には強制退去につながってしまいます。それでは、更新料が払えない場合はどのようなリスクが生じるのでしょうか。
ただちに退去に至るわけではない
更新料は法律で定められたものではないため、払わなかったからといってただちに退去になるわけではありません。なぜなら、借地借家法により「法定更新」と呼ばれる借主の権利が定められているためです。
普通借家契約においては、借主が更新しない旨を伝えない限り、それまでと同じ条件で更新されたものとみなされます。また、貸主側から更新を断るには、正当な事由が必要とされており、借主にとって不利な定めをするのは無効とされています。
仮に、何らかの事情で更新料が支払えなかったとしても、入居者は借地借家法における権利で守られているため、すぐに退去を命じられることはありません。
(出典:e-Gov法令検索『借地借家法』第26条)
賃貸借契約書に記載がある場合は支払わなければならない
しかし、賃貸借契約書に更新料の支払いに関する記載がある場合は、入居者の責務として支払いが必要となります。なぜなら、賃貸借契約書を交わしたということは、借主もその内容に同意したという事実を示すためです。
契約書に記載がある場合は、後述するように極端な取り決めが行われていない限り、定められたとおりに支払わなければなりません。そのため、まずは契約書に隅々まで目を通し、記載内容をチェックすることが重要です。
更新料の支払いを拒否できるケース

これまで見てきたように、更新料の支払いについては法律で決められた義務ではないため、状況によっては拒否できるケースもあります。ここでは、更新料を拒否できるケースとして、3つのパターンについて解説します。
契約書に記載がない場合
前述のように、賃貸借契約書に更新料の記載がない場合は、後から更新料の支払いを求められたとしても拒否することができます。ただ、義務がないからといって一方的に拒否すると、貸主との関係性に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
拒否をする場合は、不動産会社などに仲介に入ってもらい、丁寧に話し合える場を設けてもらうことが大切です。
契約書の記載があいまいな場合
賃貸借契約書に更新料の具体的な金額が記載されていないなど、不透明な部分がある場合も、支払いを拒否できる可能性があります。ただし、貸主との関係性を踏まえると、記載がない場合と同じように丁寧な対応を心がけることが大切です。
記載された金額が不当に高額な場合
更新料に関する記載が明確であっても、金額が明らかに高額である場合には、支払いを拒否できる可能性があります。たとえば、過去の裁判例においては、不当な更新料が消費者契約法第10条に違反するとして無効になったケースもあります。
消費者契約法とは、商品・サービスの消費者を守るために、契約上の不当な不利益が出ないように定められた法律のことです。賃貸物件の場合も、基本的には入居者の方が不利になるため、極端に不当な取り決めがあれば消費者契約法によって無効と判断されます。
なお、「1年ごとに家賃2ヶ月分程度の更新料」を請求した事例については、消費者契約法第10条でも無効にすることはできないと判断されています。
(出典:e-Gov法令検索『消費者契約法』)
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更新料が払えないときの対処法

更新料が支払えないときには、できるだけ早く貸主に伝え、事情を説明することが大切です。ここでは、費用を捻出できない場合の対処法として3つの選択肢を確認しておきましょう。
値下げ交渉をしてみる
状況によっては、値下げの相談をしてみるのも一つの方法です。特に相場よりも高く設定されている場合は、丁寧に事情を説明することで、値下げに応じてもらえる可能性もあるでしょう。
分割払いや期日の延期を相談してみる
値下げの交渉が難しい場合は、分割払いや支払期日の延期を相談してみるのもよいでしょう。たとえば、毎月の家賃に少しずつ上乗せする形で支払うなどの方法であれば、相談に応じてもらえるケースもあります。
ただし、分割払いには貸主との信頼関係が重要となるため、「過去に家賃を滞納していた」「入居トラブルを起こしてしまった」などのマイナスポイントがあると、交渉に失敗してしまう確率が高くなります。
連帯保証人に立て替えを相談してみる
連帯保証人を立てている場合は、立て替え払いを相談してみるのも一つの方法です。両親などに協力してもらえるのであれば、返済の予定を明確にしたうえで、立て替えを相談してみるとよいでしょう。
いずれにしても、更新料を支払わない状態を放置してしまうと、大きなトラブルの原因となります。不要なトラブルを避けるためにも、早めに大家さんや管理会社に相談することが大切です。
更新料の支払いをできるだけ抑えるためには、収入に見合った家賃の物件へ引越すことも検討してみるとよいでしょう。新たな物件を借りるためには初期費用が発生してしまいますが、更新料と2年間分の家賃を考えると、家賃の安いところへ住み替えるほうがトータルコストを抑えられる可能性があります。
LIFULL HOME’Sでは、家賃の上限を固定した状態で、さまざまな条件から希望の物件を絞り込むことができます。気になる物件があれば、そのページから不動産会社に問合せも行えるので、住まい探しにぜひご利用ください。
記事のおさらい
最後に、今回の内容をQ&Aで確認しておきましょう。
Q:更新料とは?
A:賃貸物件の契約を更新する際に発生する費用のことです。更新料の支払いは法的な義務ではなく、物件ごとに取り決められるルールであるため、賃貸借契約書の内容を確認することが重要です。
Q:更新料を支払わなくてもいいケースとは?
A:法的な義務ではないため、契約書に記載がない場合や契約書の記載内容が不明瞭な場合は、支払いを拒否できる可能性があります。また、著しく高額な金額が設定されている場合も、不当な契約内容として無効になるケースがあります。
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