高齢者が一人暮らしをしていると、「生活に不便はないだろうか」「犯罪に巻き込まれていないだろうか」と心配になる家族は多いでしょう。

高齢者の一人暮らしには、さまざまなリスクがあるため、起こりうる問題を事前に把握し、対策を講じることが大切です。今回は、高齢者が一人暮らしをする際のリスクと対策について解説します。

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近年、高齢者の一人暮らしが増えています。総務省や内閣府による調査報告書によると、高齢者(65歳以上)の一人暮らしは男女共に増加しており、1980年代では男性約19万人、女性約69万人だったのに対して、2020年時点では男性約231万人、女性約441万人まで増加しています。

 

ではなぜ、高齢者の一人暮らしが増え続けているのでしょうか。高齢者の一人暮らしが増える要因には、以下のことが挙げられます。

  • 身近に頼れる人がいない
  • 今の生活を変えたくない
  • 経済的・健康的に不安を感じていない

さまざまな事情から家族と同居できない高齢者や、身近に頼れる人がいないという方もいます。一方で、経済的・健康的に不安がなく、望んで一人暮らしをしているという方もいるでしょう。

 

健康状態が良好で、特に不自由なく一人で生活できているうちは問題ありませんが、さらに年を重ねたとき、一人暮らしのリスクは高まるため注意が必要です。

 

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高齢者の一人暮らしでは、目には見えにくい危険が潜んでいます。「自分は大丈夫」と思っていても、思わぬところで危険にさらされるかもしれません。

 

ここでは、高齢者が一人暮らしをすることで起こるリスクについて解説します。

 

高齢になると足腰が弱り、免疫力も低下してくるため、ケガをしやすくなったり病気にかかりやすくなったりします。高齢者の一人暮らしでは、気がつかないうちにケガや病気が進行してしまうケースが少なくありません。

 

また、一人暮らしで人付き合いが希薄になると、周囲の人が高齢者の変化に気づきにくいというリスクがあります。

 

高齢者の一人暮らしで、特に注意が必要なのは「転倒・転落事故」と「認知症」です。

 

消費者庁によると、高齢者の事故でもっとも多いのが転倒・転落とされています。発生場所は自宅が約半数を占め、そのうち8割以上の高齢者が通院や入院が必要なケガを負ったと報告されています。

 

加えて、認知症の進行によって起こる近隣トラブルや事故被害は後を絶ちません。認知症は周囲の人が早く気がつくことで進行を遅らせたり、今後トラブルや事故に巻き込まれないための対策を講じたりできます。

 

高齢者の一人暮らしでは、災害時に必要な情報を入手できない、自力で対応できないなどの理由から対処が遅れてしまう可能性があります。また、避難所までの距離が遠かったり、道が険しかったりすると避難できないケースも考えられるでしょう。

 

特に民家の少ない地域では、近隣住民の手助けを得ることも困難であり、災害時のリスクは高くなると考えられます。

 

高齢化が進む日本では、振り込め詐欺や還付金詐欺など高齢者をターゲットにした犯罪が増加しています。

 

高齢者の一人暮らしでは周囲との関わりが減るにつれて、犯罪情報や防犯に関する情報を得る機会が少なくなります。最新の手口を知らないと、「これは詐欺ではない」と認識し、知らぬ間に犯罪に巻き込まれる恐れもあるでしょう。

 

また、高齢者の一人暮らしは、隙が生まれやすいことから強盗や窃盗被害にも注意しなければなりません。

 

犯人からすると、「高齢者に見つかっても逃走できる」「反撃されても、力で抑え込んでしまえばいい」という考えに至りやすく、高齢者の一人暮らしを狙った犯行が多発しているのです。

 

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ここまで、高齢者の一人暮らしで起こるリスクについて解説しましたが、対策にはどのようなものがあるのでしょうか。高齢者が安心・安全に生活するためにできるリスク対策について紹介します。

 

リスク対策として、自治体が提供している高齢者向けサービスを利用するのは有効な方法です。地域によっても取り決めは異なりますが、原則として住民登録がされていれば、その登録している市区町村が提供するサービスを受けられます。

 

利用できるサービス内容は自治体によってさまざまで、誰でも利用できるサービスもあれば、要介護度や所得によって利用制限がある場合もあります。市区町村が提供している高齢者支援サービスには以下のようなものがあります。

緊急通報システム

 

緊急通報システムは、災害時や体調不良、緊急事態に陥ったときに利用者が専用通報機のボタンを押すことで受信センターへ通報できるシステムです。

 

専用通報機には、ペンダント式、据え置き式、手元式などがありますが、どのタイプが利用できるかは市区町村によって異なります。

 

緊急通報システムを利用すれば、24時間いつでも救助に駆けつけてもらえるため、高齢者本人はもちろん、家族も安心です。

介護予防教室

 

介護予防教室には、介護が必要な状態になることを予防するために、足腰を鍛える体操教室、そしゃく機能を向上させる教室、認知機能の低下を予防する教室などがあります。

 

高齢者の生活機能を高めつつ、地域社会への参加を促すことを目的としている事業です。教室に参加することで、健康維持だけでなく、周囲の人間とのつながりも得られます。

 

民間事業者が提供しているサービスは、介護保険の申請なしで、住民登録の場所などに関係なく利用できます。

 

たとえば、食事の宅配サービスや家事支援サービス、訪問美容・マッサージなどが挙げられ、民間サービスを利用することで、人との関わりが生まれ、周囲が高齢者の変化に気づきやすくなるメリットがあります。

 

なお、自治体のサービスと比較すると、民間のサービスは本人や家族の費用負担が大きくなることもあります。サービス利用を検討する際は、かかる費用に対する効果をよく検討することが大切です。

 

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高齢者が安心して一人暮らしするためには、家族や周囲の支えが必要です。ここからは、家族や周囲の人ができることについてお伝えします。

 

一人暮らしをしている高齢者に対しては、まずは一人で日常生活を送れているのか定期的に確認しましょう。

 

たとえば、食材管理や服薬管理をすることで、高齢者の異変や生活状況を把握できます。

 

同じものがたくさんある場合や、賞味期限切れや腐敗した食品の保管が繰り返されている場合、認知機能の低下が進行している可能性が考えられます。あるいは認知症を発症している可能性もあるでしょう。

 

また、近所付き合いや人と関わる機会を積極的に設けることで、高齢者の「うつ」を防ぐ効果も期待できます。家族や周囲の方は、高齢者本人と積極的にコミュニケーションを図るようにしましょう。

 

大切なのは、いずれの場合も定期的に行うことです。仮に確認が不定期だった場合、異変を感じても「たまたまだろう」と、気に留めず放置してしまうこともあります。定期的に確認を行うことで、異変や変化を感じやすくなります。

 

高齢者本人が元気なうちに、将来の準備を始めましょう。

 

「どこでどのような暮らしがしたいか」「老後の生活で求めるものは何か」「老人保健施設についてどう思うか」など、具体的に本人の意見を聞いておくことで必要なサポートが見えてきます。

 

また、意見を聞く場合は「聞く人を変えてみる」ことも重要です。可能であれば、複数の人が高齢者本人と話し、そこで得た意見を総合して今後を考えるのもひとつの方法といえます。

 

高齢者の一人暮らしには、さまざまなリスクが潜んでいます。日頃から緊急時の対応について家族で話し合っておきましょう。

 

また、高齢者が元気なうちに将来の準備を始めておくことも大切です。利用できる・利用したいサービスを調べたり、早くからコミュニティや地域活動に参加したりすることで、認知機能低下の予防につながります。

 

周囲の人間によるサポートや介護サービス、自治体のサービスなどをうまく活用しながら、状況に応じて「今何が必要か」を判断しましょう。

 

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