毎月の手取り額が35万円の場合、年収は「494万~560万円」が目安となります。国税庁が調査した「民間給与実態統計調査」(令和元年分)では、給与所得者の平均年収が「436万円」とされているので、平均と比較するとある程度、家賃にかけられる金額にはゆとりがあると考えられるでしょう。ただ、適正な家賃は、それぞれのライフスタイルや世帯人数によっても異なります。
今回は毎月の手取り額が35万円ならどのくらいの家賃の物件を借りられるのか、世帯人数別に詳しく見ていきましょう。
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家賃の考え方

一般的に、家賃の適正範囲は手取りの3分の1程度とされていますが、家族の構成やライフスタイルなどによって変わるため、この割合は、あくまで目安として考えたほうがよいでしょう。
たとえば、「車を所持している」「ペットを飼育している」といった場合には、平均よりも生活費がかかる分、家賃の設定額を下げる必要があります。
また、都市部は地方と比べて家賃が高くなる傾向があるため、一律に「手取りの3分の1以下」と設定すると、住まいの選択肢が狭まってしまうことになります。
そのため、具体的な生活費・固定費を計算したうえで、手取り額とのバランスを考慮して家賃を割り出すことが大切です。
一人暮らしの家計モデルケースと借りられる物件の特徴

毎月の手取り額を35万円として、一人暮らしの平均的な生活費を考慮した家賃がいくらなのか、またその家賃で借りられる物件にはどのような特徴があるのかについて見ていきましょう。
手取り35万円の生活費モデルケース
総務省統計局の「家計調査報告」(2020)における「年収500万~600万円」の単身世帯の生活費は、以下のとおりです。
費用項目 | 金額 |
|---|---|
食費 | 4万3,707円 |
水道・光熱費 | 1万362円 |
家具・家事用品費 | 4,354円 |
被服費 | 4,717円 |
保険・医療費 | 6,724円 |
交通・通信費 | 2万9,174円 |
教養・娯楽費 | 1万7,555円 |
その他の費用 | 2万5,603円 |
合計 | 14万2,196円 |
住居費を除いた平均額は「14万2,196円」であり、この金額を毎月の手取り額35万円から差し引くと、「約20万円」が手元に残ります。ここから、月々5万円を貯金すると考えても、「家賃15万円以内」なら、安定した生活を送れるといえるでしょう。
一人暮らしに必要な広さはどのくらい?
家賃設定を考えるうえでは、「広さ」に目を向けることも重要です。国土交通省の「住生活基本計画における居住面積水準」によれば、一人暮らしで最低限必要な居住面積は「25平米」、ゆとりのある生活を送るためには都市部で「40平米」とされています。
この基準を基に、借りられる部屋の特徴を見ていきましょう。
東京都心部で部屋を借りるなら
LIFULL HOME’Sの「家賃相場」を調べてみると、千代田区・港区・中央区・文京区・渋谷区・新宿区のいずれにおいても9万~11万円程度と、15万円よりも低い水準であることが分かります。

「家賃相場」の利用イメージ
また、実際にLIFULL HOME’Sで、東京都心部(千代田区・港区・中央区・文京区・渋谷区・新宿区)の家賃15万円の物件を検索したところ、該当した345件すべてが「25平米以上」となりました。また、ゆとりのある広さの「40平米以上」の物件も176件と、半数近くが該当します(2022年6月現在)。
以上のとおり、家賃15万円であれば、東京都心でも十分な広さの物件を借りることができそうです。
東京都23区で部屋を借りるなら
23区内では、915件の物件がヒットし、そのうち914件が「25平米以上」、655件が「40平米以上」となりました。また、間取りについても居室が2つ以上ある「2K以上」の物件が268件と、約3分の1の割合にのぼります(2022年6月現在)。
「広さや部屋数にこだわらない」のであれば家賃の上限を下げて、余った金額を貯蓄に回すのもひとつの方法です。一人暮らしであれば、家賃の水準を下げても十分な広さの物件を見つけられるので、希望するライフプランを考慮しながら家賃を設定しましょう。
23区外で部屋を借りるなら
東京23区外では、家賃15万円の物件が73件と大幅に減少します。これは、多くの物件が家賃15万円以下となっているためであり、東京都の市部では水準よりも高い家賃設定といえます。
賃貸面積は、73件のうちすべてが「25平米以上」であり、「40平米以上」のものも71件とそのほとんどが該当します。
また、物件のタイプとしては、「新築のマンション」「タワーマンション」などのハイグレードマンションや「デザイナーズ物件」などが中心です。
23区内の場合以上に、家賃の設定を下げても十分に利便性の高い物件を見つけられるため、余った金額で貯蓄の額を増やすことなどを考慮してみるといいでしょう。
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2人以上世帯の家計モデルケースと借りられる物件の特徴

続いて、2人以上世帯の家計と借りられる物件の特徴についても見ていきましょう。
手取り35万円の生活費モデルケース
総務省統計局の「家計調査報告」(2020)における「年収500万~550万円」の2人以上世帯の生活費は、以下のとおりです。
費用項目 | 金額 |
|---|---|
食費 | 7万6,049円 |
水道・光熱費 | 2万1,805円 |
家具・家事用品費 | 1万1,138円 |
被服費 | 7,915円 |
保険・医療費 | 1万3,213円 |
交通・通信費 | 3万9,867円 |
教育費 | 6,747円 |
教養・娯楽費 | 2万1,131円 |
その他の費用 | 4万6,014円 |
合計 | 24万3,879円 |
毎月の手取り額35万円から生活費を差し引くと、「約11万円」が手元に残りますので、平均的な家計のケースで考えると、「10万円程度」が家賃として設定できる金額と考えられます。
2人以上世帯に必要な広さはどのくらい?
先ほどの国土交通省の「住生活基本計画における居住面積水準」では、2人以上の世帯に必要な広さについて、以下のような基準が示されています。
| 必要な面積(平米) | ||
|---|---|---|---|
2人世帯 | 3人世帯 | 4人世帯 | |
最低居住面積水準 | 30 | 40(35) | 50(45) |
誘導居住面積水準(一般型) | 75 | 100(87.5) | 125(112.5) |
誘導居住面積水準(都市型) | 55 | 75(65) | 95(85) |
※( )は3~5歳児が1名いる場合
最低居住面積は生活に最低限の広さのことであり、誘導居住面積は多様なライフスタイルに対応できる広さを示しています。この基準を基に、借りることのできる物件について詳しく見ていきましょう。
東京都心部で部屋を借りるなら
「家賃10万円」と設定して、東京都心部(千代田区・港区・中央区・文京区・渋谷区・新宿区)の物件を検索してみると、2022年6月現在で534件がヒットしました。ここから、賃貸面積を2人暮らしに必要な「30平米以上」に絞ると、物件数は約20%の122件となります。数は少ないですが、都心部であっても、2人暮らしまでなら部屋探しが行えると思われます。
一方、3人世帯に必要な「40平米以上」で検索すると、ヒット数は14件になりました。
東京都心部でファミリー向けの物件を探すのであれば、条件の設定に大幅な譲歩が必要と考えられます。
東京都23区で部屋を借りるなら
23区内にエリアを広げると、総数2,493件のうち、専有面積「30平米以上」に該当する物件数は1,311件と半数以上が該当します。
また、「40平米以上」でも625件がヒットしたことから、東京23区部では、広い居住面積が必要なファミリー世帯でも住める物件が比較的に探しやすいようです。
また、物件数は少ないものの、3人世帯にとってゆとりのある広さにあたる「70平米以上」の部屋もいくつか見つかりました。間取りでいえば「2LDK」や「3LDK」など、4人家族でも十分に生活できる広さを持った物件も見つかるようです。
23区外で部屋を借りるなら
東京都の市部では304件がヒットし、ほとんどが「30平米以上」、半数以上が「40平米以上」と、2人以上世帯向けの物件が数多く見つかりました。
また、間取りについては、「2LDKのマンション」が多く見つかり、それ以外にも「新築の1LDKマンション」や「3LDK以上の一戸建て・アパート」や「駅近・設備充実の物件」といった好条件の物件も多く見つかりました。
以上のとおり、23区外では、ファミリー世帯に適した広い物件を見つけることも可能といえるでしょう。
家族構成に合った住まいを見つけよう

これまでシミュレーションしたように、家族構成によって同じ手取りでも家計や家賃に充てられる金額は異なります。また、同じ家賃設定でも、エリアごとに借りられる物件には違いがあります。
そのため、家賃の上限を設定したら、実際に借りられる部屋を検索して、間取りや設備などを確かめてみることが大切です。LIFULL HOME’Sでは、住みたいエリアや希望する条件を入力すると、スムーズに理想に近い物件候補を探すことができます。
また、「家賃相場」を参考にすれば、希望する家賃と住みたいエリアの平均相場を見比べることも可能です。理想の住まい探しには、ぜひLIFULL HOME’Sのサービスを役立ててみてください。
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まとめ

- 家賃は手取りの3分の1以下が目安とされているが、その金額は、ライフスタイル、世帯構成、居住エリアによっても異なる
- 正確な家賃設定を行うには、生活費を明確にして、手取り額とのバランスを考慮することが大切
- 一人暮らしの場合、平均的な生活費であれば15万円程度の家賃でも生活可能
- 2人以上世帯なら、10万~11万円の家賃が適正範囲
- 住みたいエリアで借りられる物件の条件はさまざまなので、実際に物件を検索してみよう
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