お部屋探しにあたっては、案内してもらうときや重要事項説明、契約の前に確認したいポイントをリストアップすると思いますが、そのリストに「ご近所トラブル」は入っているでしょうか。

不動産アドバイザーで、「安全で快適な暮らし」をモットーに多種の住宅の仲介を行う穂積啓子さんによると、「予算や間取りなどの物理的な確認事項のほかに、『入居後に想定できるトラブル対策』を加えてください。とくに、一人暮らしや引越しビギナーの方はその点を軽視する、また気づいておられないことがありますが、重要なチェックポイントです」とのことです。

ご近所トラブルとは具体的にどういうことなのか、また、契約前にそれを回避するにはどうすればいいのか、詳しいお話を伺いました。

穂積さんはまず、ご近所トラブルの種類について、次のように説明します。

 

「騒音、ペット、ゴミ、違法駐車などのトラブルは、賃貸でも分譲でも、また集合住宅でも一戸建てでも、人が集まるところにはいつでも起こりえることといえます。

 

そういったトラブルの中でもっとも多いのは、『騒音』です。ときに事件に発展することもあるため、貸主(オーナー、家主)や管理組合、管理人も頭を悩ますことが多い事項です。

 

部屋を探すときには誰しも、少しでも希望どおりの物件に巡り合いたいものですが、入居後に安全で快適な暮らしを継続するには、これらのトラブルも想定しておくことが賢明です。見学時のチェックリストには必ず、『騒音対策は?』という項目を入れておきましょう。

 

現実に、騒音トラブルがきっかけですぐに引越しせざるを得なくなった例や、訴訟になった例、またノイローゼになってメンタル面に支障をきたしたケースなどは枚挙にいとまがありません」

 

国土交通省の「マンション総合調査 平成30年度版」

(http://www.mlit.go.jp/common/001287570.pdf)による報告でも、「居住者間のマナーをめぐるトラブルの具体的内容」の最多は「生活音」となっています。

 

見学時にチェックできること

騒音について、入居前に「避けることができる物件か」という情報を得ることはできるのでしょうか。

 

穂積さんはその手立てについて、「まずは見学時に部屋の音の状況を細かく確認すること、次に管理態勢を見て推察すること、さらに管理会社や貸主にトラブル対策について質問することなどがあります」と話し、内見時に実践したい6つのポイントを挙げます。

 

騒音の原因は主に、人の大声、足音、生活音、ペットの鳴き声、楽器の音、そして車や電車など建物の外からの音です。それらが響きやすいかどうかの目安として、建物の構造が、「木造」「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」のどれにあたるのかを確認しましょう。これは、間取り図を記した書類(物件概要書と呼びます)に必ず記されています。一般的に後者になるほど建物は頑丈で、音が響きにくいとされています。

 

できるだけ部屋選びに慣れた第三者に同行してもらい、生活音の状態玄関やベランダの扉、窓を開けたときの音の響き、また階段や廊下を誰かに歩いてもらったうえでの音の響き、さらに近隣の店舗や人通り、道路環境の音を確認しましょう。

 

および、昼間と夜間、平日と休日では状況がかなり違います。自分が最も多く部屋で過ごす時間帯を中心に、夜間や休日にも見学をさせてもらい、同様に確認しましょう。

 

角部屋最上階の部屋は、物理的に周囲の住戸からの音は少なくなります。ただしこの場合、夏は暑く冬は寒い、風が強い、揺れやすい、盗難に遭いやすいなどデメリットがあるので、併せて考慮しましょう。

 

共用部分の管理状態をチェックしよう

玄関や集合ポストはもちろん、駐輪場、階段、エレベーター、廊下、ゴミ置き場など、ほかの住民との共用部分の清掃や整理がされているかをチェックしましょう。これらの状態がよくないと、管理態勢や状態に問題があり、騒音以外にもさまざまなトラブルがあるかもしれないと推察できます。

 

楽器やペットはOK」を確認しましょう。OKの場合は騒音があると想定したほうが無難でしょう。その物件を気に入ったけれど騒音が心配だという場合は、「楽器やペットがOKとのことですが、騒音にはどう対策をされていますか」と質問をしましょう。

 

防音対策を施している建物であれば音の響きは少ないと考えられます。ただし、「楽器やペットがOKと承知のうえでの入居なのだから、騒音には対応しない」という姿勢の物件もあるため、確認が必須です。

 

「希望の部屋の上下左右の部屋に子どもはいるか」「現在、騒音トラブルはないか」「過去に騒音トラブルがあった際にどう対処したか」「発生した場合の対処法をどう想定しているか」などを率直に質問しましょう。

 

仲介のみを行う不動産会社が案内する場合は即答ができず、管理会社や貸主に尋ねる時間が必要になる場合がありますが、「騒音対策に意識が高い」という意思表示になるので答えを待ちましょう。また、「当初に希望や質問を伝えた」という事実が、後のトラブルの回避になり得る場合もあります。もし回答がない場合は、その事実をチェックポイントのひとつとして押さえておきましょう。

騒音について臆せず聞こう

「騒音への意識の高さ」を伝えるのは有用だとのことですが、引越しビギナーはそういった質問をするのに気遅れする場合があるかもしれません。貸主や管理会社はどのような印象を持ちそうでしょうか。穂積さんは、次のようにアドバイスを加えます。

 

「誠意があり入居者の快適な暮らしを考える貸主や管理会社ならば、『騒音を起こしにくい入居希望者』と想定し、そういう借主をありがたいと捉えるでしょう。

 

過去に騒音などで困った経験がある場合はもちろん、経験がなくても『家族や友人に注意をされているので』などと言って、臆することなく尋ねてください」

 

実際に騒音トラブルがあった場合、貸主はどういった対処をするのでしょうか。

 

「一般に、まずは掲示板に『生活音にご注意ください」といった注意喚起の文書を掲示します。おさまらない場合は、回覧板などに繰り返し明記をする、郵便受けに文書を投函する、また複数の住民に管理担当者が話を聞くなど、段取りを経て対処していくことになるでしょう」

 

 

建物の造りなど物理的な状況に加え、管理の状態や姿勢を確認しておくことが、騒音トラブルの回避につながるということです。たしかに、部屋探しの段階では入居後のトラブルにまで頭が回っていないことが多いものです。楽しく前向きな生活とともに、こうしたシーンも思い浮かべたうえで、穂積さんがおっしゃる「安全で快適な暮らし」を選び取りたいものです。

 

構成・取材・文 品川 緑/ユンブル

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