保証金から契約で定めた一定額を差し引く「敷引き」は西日本特有の賃貸慣行です。
退去時の返金割合や定額負担の仕組みについて解説します。
詳しくは、「保証金と敷引きの仕組み」をご覧ください。
最高裁判例において敷引き特約は有効とされていますが内容で判断されます。
消費者契約法に基づき無効となる可能性について解説します。
詳しくは、「敷引き特約は有効?最高裁判例と消費者契約法の考え方」をご覧ください。
トラブル防止には契約前の確認と入居時の状態記録が極めて有効です。
退去立ち会い時の精算内容確認の手順を解説します。
詳しくは、「退去時のトラブルを防ぐ!契約前・入居・退去時にやるべき確認」をご覧ください。

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西日本エリアで賃貸物件を探す際、「敷引き」という言葉を目にすることがあるかもしれません。何かの割引が受けられそうにも思える言葉ですが、そうではなく、退去時に保証金から差し引かれる金額に関わる取り決めです。

 

契約を結んだあとに「知らなかった……」と困惑することのないよう、敷引きの仕組みや注意点を知っておきましょう。

 

 

「敷引き」の仕組みを知る前に、まず「保証金」について解説します。

 

保証金は貸主への預け金
「保証金」とは、主に近畿地方をはじめとする西日本の一部でみられる賃貸借契約上の預け金です。賃料の未払いなど、契約上借主が負担すべき費用を担保する目的などで、入居者から貸主(大家さん)に預け入れます。保証金の金額は物件ごとに異なりますが、「家賃◯ヶ月分」と指定されることがあります。賃貸借契約を結ぶ際に、初期費用として支払います。

 

返金の際に保証金から敷引きされる
契約終了時には、保証金から契約上借主が負担すべき費用などを差し引いた残額が返還されるのが基本です。敷引き特約が設定されている場合は、預けた保証金から、契約時に取り決めた敷引きの金額が差し引かれ、その残額が返金されることになります。
敷引きの金額も「家賃◯ヶ月分」と指定されることがあります。

 

例えば家賃8万円の物件で「保証金3ヶ月・敷引き1ヶ月」と記載されている場合、保証金として支払う額は8万円×3ヶ月の24万円です。敷引き特約が有効に適用される場合、退去時には家賃1ヶ月分に相当する8万円が差し引かれ、残りの16万円が返却されることになります。
また、「保証金3ヶ月・敷引き3ヶ月」のように金額が同じに設定されている場合、敷引き分についての返金はありません。
※実際の初期費用には仲介手数料や前家賃などが別途必要となります。

 

敷引きは一定額を負担する特約
敷引きは、通常損耗等の補修費用や、賃貸借契約に伴うさまざまな費用などを一定額で負担してもらう趣旨で定められることがあります。実際の修繕費用が敷引き額を下回っていたとしても、有効な敷引き特約が契約に定められていれば、契約で決められた金額が差し引かれることがあります。
一方、入居者の故意・過失などによって生じた損傷については、敷引きとは別に原状回復費用を請求されることがあります。具体的な負担範囲は契約内容によって異なるため、契約時に確認しておきましょう。

 

 

地域によって賃貸借契約の商慣習には違いがあり、物件によって「保証金・敷引き」や「敷金・礼金」など、さまざまな契約条件が設定されています。ここでは、敷引きと比較されることが多い敷金・礼金について確認しておきましょう。

 

 

敷金は貸主への預け金
敷金とは、賃料の未払いなどや、借主が負担すべき原状回復費用などを担保するため、貸主に預け入れる金銭です。賃貸借契約が終了した際には、借主が負担すべき費用などを差し引いた残額が返還されます。

 

礼金は返却されない
礼金とは、賃貸借契約を結ぶ際に、借主から貸主に支払う一時金です。敷金のような預け金ではないため、通常は退去時に返還されません。金額は物件によって異なり、礼金を設定していない物件もあります。

 

一例として、家賃8万円の物件で「敷金2ヶ月・礼金1ヶ月」と記載されている場合、家賃3ヶ月分である24万円が初期費用として必要になります(手数料・前家賃は別途)。敷金から借主が負担すべき費用を差し引いた残額が返金されるため、退去時の精算方法が敷引きとは異なります。

 

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敷引き特約に対して「部屋をきれいに使っていたのに一律で引かれるのは納得がいかない」と感じる人もいるかもしれません。敷引き特約の法的な有効性については、過去に裁判で争われています。

 

最高裁判所は、賃貸借契約における敷引き特約について、契約書に明確に記載され、借主と貸主の間で合意されているなど、一定の要件を満たす場合には、直ちに無効になるものではないとの判断を示しています。

 

ただし、どのような敷引き特約でも有効になるわけではありません。消費者契約法第10条により、消費者である借主の権利を制限したり義務を加重したりする条項が、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する場合には、無効となる可能性があります。

 

敷引き特約の有効性は、敷引き額だけで一律に判断されるものではありません。賃料や保証金の額、敷引き額、契約時にどのような説明がされていたかなど、契約内容を総合的に確認することが大切です。

 

 

 

賃貸物件の退去時に起きやすいものが、修繕費用に関するトラブルです。保証金・敷金の返金額に関わってくるため、入居者と貸主のどちらが費用を負担するべきかで問題になるケースもあります。

 

そこで、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。
このガイドラインでは、原状回復とは、室内を入居時と全く同じ状態に戻すことではないとされています。通常の使用による損耗や経年変化まで借主が負担するものではなく、借主の故意・過失や、通常の使用方法を超える使用によって生じた損傷などについて、借主が原状回復費用を負担するという考え方が示されています。

通常の使用による損耗の一例・紫外線による床材や壁紙の日焼け・黄ばみ
・ポスターなどを掲示するための画びょう・ピン等による小さな穴
・冷蔵庫の裏側の壁にできた黒ずみ(電気やけ)

敷引きが定められている物件では、通常損耗等の補修費用を一定額で負担する趣旨を含む特約が設定されている場合があります。そのため、原状回復に関する一般的な考え方と敷引き特約の内容が異なることもあります。契約時には、敷引きに含まれる費用と、敷引きとは別に請求される可能性がある費用を確認しておきましょう。
※国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

 

 

退去時の返金額や修繕費用の請求をめぐるトラブルを防ぐためには、契約前から退去までの各段階で、契約内容や室内の状態を確認・記録しておくことが大切です。

 

1. 契約前に重要事項説明書と契約書・特約を確認
契約前の重要事項説明を受ける際や賃貸借契約を結ぶ際には、保証金・敷引きの条件を確認しましょう。「敷引きの金額(または家賃何ヶ月分か)」「敷引き以外に退去時クリーニング費用などを別途請求される特約がないか」「借主が負担する原状回復費用の範囲」などをチェックします。

 

2. 入居時に室内の状態を確認して写真撮影
入居時には、もともとあった床や壁の傷、汚れの状況をチェックシート(入居時現況確認書など)に記録し、管理会社や貸主に提出しましょう。同時に、傷や汚れの箇所をスマホなどで日付が分かる形で撮影しておくと、退去時の確認に役立ちます。

 

3. 退去時に精算内容を確認する
退去時の立ち会い検査では、修繕箇所や費用の負担内容を確認しましょう。敷引き特約がある場合でも、敷引きとは別に請求される費用があれば、その内容や根拠を確認することが大切です。精算内容に疑問がある場合は、すぐに署名・支払いをするのではなく、管理会社や貸主に説明を求めましょう。

 

まとめ
・敷引きとは、保証金から契約で定めた一定額を差し引く仕組み
・敷引きは主に西日本の一部地域でみられる賃貸借契約の慣行
・敷引き特約は一定の条件のもとで有効とされる一方、内容によっては無効となる場合がある
・契約時には敷引き額や退去時の追加費用、原状回復費用の負担範囲を確認しておくことが大切

 

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Q.1 敷引きは退去時に必ず差し引かれるのですか?

A.1 敷引き特約が契約に定められており、その特約が有効な場合は、原則として契約で定めた金額が保証金から差し引かれます。ただし、特約の内容や敷引き額などによっては、消費者契約法により無効となる場合があります。

 

Q.2 敷引きと原状回復費用は両方払う必要がありますか?

A.2 敷引き特約の内容によっては、通常損耗等の補修費用を一定額で負担する趣旨が含まれる場合があります。一方、借主の故意・過失などによる損傷については、敷引きとは別に原状回復費用を請求されることがあります。具体的な負担範囲は契約内容を確認しましょう。

 

Q.3 敷引き特約が無効になるケースはありますか?

A.3 あります。敷引き特約は、敷引き額や賃料、保証金額などを踏まえて、消費者契約法により無効と判断される場合があります。敷引き額が高額だからといって一律に無効になるわけではないため、具体的な契約内容を確認することが大切です。

更新日: / 公開日:2018.10.04