賃貸物件を借りるときには、2年ごとなど一定期間を設けて、契約更新をしていく普通借家契約を結ぶのが一般的です。

入居から2年が経過しても、更新手続きを行うことで引き続き居住を続けられるので、普通借家契約は借主に有利な契約方法とされています。

しかし、このときに「更新料」としてある程度のまとまった金額がかかるので、負担に感じることもあるでしょう。今回は賃貸物件の更新料の仕組みや相場、値下げの可否について詳しく解説します。
賃貸物件を探す引越し料金の見積もりをする

賃貸物件における更新料

 

まずは更新料の基本的な仕組みについて見ていきましょう。

 

普通借家契約で借りている物件の契約期間が満了する前には、管理会社や貸主から契約を更新するかどうか問合せがあります。このとき、契約の更新を行うために「更新料」として一定金額の支払いが求められることが多いです。

 

ただし、更新料のやりとりは法律で決められているわけではなく、あくまでも不動産の商習慣として根付いているものです。地域によってルールが異なる側面もあり、一部地域では更新料の概念自体がないところもあります。

 

たとえば、大阪府や兵庫県では契約更新時に更新料を徴収する代わりに、「敷引」と呼ばれる方法が採用されるケースも多いです。敷引とは、契約時に支払った保証金から差し引かれるお金のことであり、西日本エリアでは古くから続いている商習慣です。

 

このように、賃貸借契約における費用の仕組みには地域性があるので、住みたいエリアのルールを把握しておくことも大切となります。

 

国土交通省の調査(※)によれば、更新料を徴収する主な理由として「長年の慣習」や「貸主の一時金収入」といったものが挙げられています。

 

また「家賃が低い分の補填」「損傷の補修、大規模修繕などの財源」といった実利的な目的、「一時金を払えない人は不安」といった心理的な役割も挙げられています。

 

このように、更新料の使い道も明確に決められているわけではないため、地域だけでなく物件によってルールが異なる場合も多いです。

 

※ 国土交通省「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」(2007年6月)

賃貸物件の更新料の相場

 

国土交通省が取りまとめた調査結果(※)では、三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)における更新料の実態について紹介されています。

 

それによると、三大都市圏において更新料を設けている物件は全体の39.6%で「あり」。「なし」と回答した46.3%に比べて少ない数字とされています。

 

ただ、「更新料あり」と回答した割合は首都圏で56.2%、中京圏では13.0%、近畿圏では18.9%と、前述のように大きな地域差があるのも確かです。首都圏では半数以上が「あり」と回答しているので、全体との違いが見られる点は理解しておきましょう。

 

なお、更新料の相場については、2年ごとの更新につき「家賃1ヶ月分」というケースが多く、全体の82.3%を占めます。こちらについてはそれほど地域差が見られず、どのエリアでも家賃1ヶ月分と設定される場合が多いといえるでしょう。

 

※ 国土交通省「令和2年度 住宅市場動向調査 報告書

賃貸物件を探す 引越し料金の見積もりをする

 

更新料については、法律で明確な決まりが定められているわけではないため、交渉によっては値下げを認めてもらえる可能性もあります。ここでは、値下げを検討するときの注意点について見ていきましょう。

 

請求された更新料が高い、あるいは支払い自体に納得がいかないといった場合、更新料の支払いを拒否できるかどうかは契約書の記載内容によります

 

たとえば、2011年の最高裁判例では、契約書に更新料の支払いや具体的な金額が記載されている場合、特別な事情がない限りは支払わなければならないとされています。

 

そもそも、更新料には家賃負担を軽くしたり、賃貸借契約を継続したりするための対価という性質があります。借主が契約時に合意したのであれば、極端に費用が高く設定されている場合などを除き、支払いを拒否することはできないと考えておきましょう。

 

周辺の相場よりも更新料が高い場合は交渉の余地がありますが、基本的には契約時に決められた金額を下げてもらうことは難しいといえます。

 

ただ、なかなか新たな入居者を見つけるのが難しい物件に住んでいる場合、「更新料を少し下げてもらえれば入居を継続する」といった内容で交渉することで、値下げに応じてもらえる可能性もあります。

 

しかし、人気の物件であれば、無理に値下げに応じなくても新たな入居者を見つけることができるので、交渉が通る可能性は低いです。

 

無理に交渉を行おうとすると、貸主への心証を悪くしてしまうケースもあるので、マナーや相場とのバランスを十分に考慮しましょう。

 

値下げ自体は難しくても、早めに相談をすることで分割払いに応じてもらえる可能性はあります。貸主としても、新たに入居者を募るより、これまで安定して家賃を支払ってくれた借主のほうが安心して部屋を貸せると感じるのは確かです。

 

冒頭でも解説したように、普通借家契約は借主の立場が強いため、仮にマナーや家賃の支払いに問題がある借主がいたとしても、正当事由と認められない限りは貸主側から退去を命じにくい面があります。

 

それだけに、家賃の支払いに問題がなく、入居マナーもきちんと守っているのであれば、分割交渉に応じてもらえる可能性は十分にあるといえるでしょう。

更新料について考えるときの注意点

 

更新料の支払いについて、トラブルを避けるためには前述のとおり、契約書の内容を細かくチェックしておくことが大切です。

 

これまで解説したように、更新料については法的な決まりがないため、契約書の内容がとても重要な効力を持ちます。そのため、支払い方法やタイミングについては、賃貸借契約書をよく確認しましょう。

 

賃貸物件の更新時には、部屋の更新料だけでなく、「管理会社に支払う更新手数料」や「火災保険料」などがかかります。更新手数料は家賃の半額程度、火災保険料は1万~2万円程度が相場です。

 

物件自体の更新料と合わせると、支払いにはまとまった費用が必要となるので、計画的に準備を進めましょう。

賃貸物件を探す 引越し料金の見積もりをする

賃貸物件

 

更新料の徴収については明確な決まりがなく、エリアや物件によってはそもそも更新料がないケースもありますが、更新料がかからないからといって一概にお得であるとは判断できない点に注意が必要です。

 

なぜなら、更新料には、本来支払うはずの家賃を安く抑えるためのものといった役割もあるためです。たとえば、更新料なしの「家賃6.5万円」の物件を借りるとすると、2年間の合計家賃は「6.5万円×24ヶ月=156万円」です。

 

これに対して、家賃を5,000円下げる代わりに更新料を徴収する仕組みにすると、トータルコストは「6万円×25ヶ月(2年分の家賃+更新料)=150万円」です。このように、費用総額でいえば、同じ物件を借りるとしても後者のほうがお得になります。

 

そのため、更新料について考えるときには、2年間借りた場合のトータルコストを計算しておくことが大切です。また、賃貸物件を借りるためには敷金や礼金、仲介手数料なども必要なので、初期費用も含めて計算しておくといいでしょう。

  • 更新料は2年更新ごとに家賃1ヶ月分が相場
  • 法律で明確に決められているわけではないため地域差が大きく、徴収されないエリアもある
  • 更新料は値下げ交渉もできるが、基本的には契約書の記載内容に従う必要がある
  • 更新時には火災保険料などの費用もかかるので、計画的に準備しておく
  • 更新料の有無だけでなく、家賃や初期費用などを含めたトータルコストでお得かどうか判断しよう
賃貸物件を探す 引越し料金の見積もりをする

更新日: / 公開日:2018.09.07