進学に伴い、親元を離れて初めて一人暮らしをする学生は多くいます。新しい環境で快適に過ごすためには、どのような物件を選べばいいのか不安に思う人も多いのではないでしょうか。
その場合に有力な選択肢となるのが「学生マンション」です。
今回は、学生マンションに子どもを入居させた保護者の声を交えながら、学生マンションの基礎知識、学生寮や一般的な賃貸物件との違い、メリット・デメリットを解説します。
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学生マンションとは?

まず、学生マンションとはどのようなマンションで、学生寮や通常の賃貸物件とどう違うのかを解説します。
学生マンションは「学生専用」のマンションのこと
学生マンションとは、学生だけが入居できる「学生専用」のマンションのことです。
近隣の大学や専門学校などへ通いやすい立地にあり、入居契約をする際には合格証書や学生証といった学生であることを証明する書類提示が必要です。
学生マンションと一般的な賃貸物件、学生寮との違い
学生が一人暮らし用の物件を選ぶ際には、学生マンションのほか、学生寮や一般的な賃貸物件も選択肢となります。
学生マンション、学生寮、一般的な賃貸物件の主な特徴は、以下のとおりです。物件によって異なる部分もあるため、参考までにご覧ください。
学生マンション | 学生寮 | 一般的な賃貸物件 | |
|---|---|---|---|
大まかな特徴 | 学生専用の賃貸物件 | サポートの手厚い学生専用のシェアハウス型物件 | 通常のアパートやマンション |
費用例 | 家賃月7万円 (水道・光熱費、通信費、食費別) | 家賃月8万円 (水道・ガス代、食費、通信費込み) | 家賃月6万5,000円 (水道・光熱費、食費、通信費別) |
門限やルール | 原則なし | あり | なし |
食事 | 原則なし ※一部食事付き物件もあり | あり | なし |
サポート | なし | あり ※寮母・館長によるサポート | なし |
学生マンションと混同されやすいのが、学生寮です。
学生寮には「寮母」や「館長」と呼ばれるサポート役が常駐しており、食事や身の回りのことに関する相談ができます。浴室やトイレが共用の場合も多く、シェアハウスに近い物件である点が特徴です。
一方、学生マンションは「入居できるのが学生」というだけで、基本的には一般的な賃貸物件と変わりません。学生寮のようなサポートは受けられないものの、門限やルールに縛られることなく、自由な生活を送れるのが魅力です。
さまざまなサポートを受けたい学生は「学生寮」が適しており、プライバシー重視で自由に暮らしたい学生は、学生マンションや一般的な賃貸物件を選択するとよいでしょう。
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学生マンションのメリット

学生マンションの代表的なメリットは以下のとおりです。
セキュリティ設備が充実している
学生マンションの多くは、オートロックや防犯カメラなどのセキュリティ設備が充実しています。なかには管理人が常駐する物件や、警備会社と契約する物件もあり、一般的な賃貸物件に比べて防犯性が高いのが特徴です。
女性専用の学生マンションや女性専用フロアを設けた学生マンション、男性専用マンションなど、種類も豊富で、初めての一人暮らしでも安心して住むことができます。
立地選びに失敗しにくい
学生マンションは、ターゲットとなる大学や専門学校からアクセスのいい立地にあり、学校名から探せる物件も多くなっています。
また、学校まで徒歩や自転車で通える距離の物件や、電車の乗り換えがなく1本で通える立地にある物件など、学校を中心に比較的スムーズに物件を探せる点が魅力です。
物件から学校まで距離が近い場合が多いため、「通学時間が長すぎて疲れる」といった心配をしなくていい点もメリットといえます。
家具・家電製品が備え付けのケースも多い
冷蔵庫や洗濯機などの大型家電が備え付けられている、インターネット通信料が無料、といった物件が多いのも学生マンションの特徴です。
追加で料金を支払うことで、学習机やベッドなどの家具、小物家電などをレンタルできる物件もあります。
あらかじめ家具や家電、生活に必要な最低限の設備がそろっているため、新生活の初期費用を抑えられる点もメリットです。初めての一人暮らしで「入居した日から快適な環境で生活したい」という人にもおすすめです。
また、使っていた家具や家電を退去時にそのまま置いていける物件も多くあり、将来の退去費用や引越し費用を節約できるケースもあります。
入居審査や手続きに安心感がある
学生マンションの契約時は、基本的に学生の保護者が契約当事者となります。したがって、入居審査や手続きを安心して行えるという点もメリットのひとつです。
なかには、特定の大学への通学を入居条件に設定する学生マンションもあります。該当の大学に通う場合は、その点を考慮して有利に審査を進めてもらえる可能性があるでしょう。
同世代の友人をつくりやすい
学生マンションは、入居者の多くが同じ大学や近隣の大学・専門学校に通う同世代の学生です。そのため、賃貸アパートやマンションでよくある「隣の部屋にどんな人が住んでいるのか分からない」という不安を軽減できます。
学生という同じ境遇の入居者しかいないので、同じ物件に住んでいる人同士で友人をつくりやすい点もメリットです。
学生マンションならではの「仮押さえ」システムとは?

学生マンションは、入居までの手続きが一般的な賃貸物件と異なります。ここでは、学生マンション特有の「仮押さえ」システムについて解説します。
賃貸物件は通常、仮押さえができない
一般的な賃貸物件の場合、気に入った物件があっても仮押さえはできません。したがって、入居申し込みを完了しないと、ほかの入居希望者に先を越されてしまう可能性があります。
また、契約をすると借り手側の都合で入居日を大きく遅らせることはできず、早ければ契約の翌月から家賃が発生します。
しかし、新入生は入学の正式決定後に部屋探しをスタートするのが一般的です。そのため、入学が決まるのが遅いと、よい条件の物件が埋まってしまうことがあります。
そこで便利なのが、2つの仮押さえシステム「家賃スライドシステム」と「合格発表前予約システム」です。これらが導入されている学生マンションであれば、リスクなく、早めに部屋を押さえることができます。
家賃スライドシステムとは?
家賃スライドシステムとは、早めに賃貸契約を交わした場合でも、入居日まで家賃が発生しない仕組みのことです。
たとえば、進路が確定する10~11月ごろに物件の契約を結んだとしても、入居予定日(家賃発生日)は、3月下旬にスライドできます。
家賃スライドシステムであれば、希望の部屋をかなり早い段階で押さえられるため、入居先を焦って探さなければならない、希望の部屋が入学までに見つからない、といった不安も解消できるでしょう。
このようなシステムを学生マンションが導入できる理由は、入居者は基本的に卒業と同時に退去となるためです。空室になる予定日と部屋数を正確に把握できることから、この仕組みを導入しやすいといった事情があります。
合格発表前予約システムとは?
合格発表前予約システムとは、合格発表前に、物件予約ができる仕組みのことです。
合格が決まってから部屋探しを始めると、好条件の部屋がすでに埋まっている可能性があります。
そうした事情に配慮し、多くの学生マンションでは合格発表前でも予約できる仕組みを導入しています。万が一、不合格になった場合でもキャンセル可能で、申込金の返金も受けられます。
ただし、不合格以外での自己都合によるキャンセルは、返金の対象外となっている場合が多いため、申し込む前に契約内容をよく確認するようにしましょう。
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「学生マンションはやめておけ」と言われる理由

学生特有の事情に配慮している学生マンションですが、「やめたほうがいい」と言われることもあります。ここからは、その具体的な理由を解説します。
家賃は比較的高めに設定されている
学生マンションはセキュリティ設備が充実していますが、その分、近隣の相場よりも家賃が高めに設定されるケースがあります。
相場より多少高い家賃を払ってでも、住まいの安全性や快適性を重視したいなら問題はありませんが、少しでも家賃を抑えたいという人には不向きかもしれません。
また、一般的な賃貸物件は2年ごとの契約更新が基本ですが、学生マンションは1年ごとに契約更新を求められるケースが多いです。したがって、毎年契約更新のたびに更新料の支払いが必要になる可能性もあります。
家賃を少しでも抑えたいのであれば、学生マンション以外の選択肢も視野に入れて、部屋探しをするといいでしょう。
物件数があまり多くない
学生マンションはそもそも物件数が少なく、希望条件に合う空き部屋を見つけるのが難しいといえます。特に、好条件の物件はすぐに入居者が決まってしまうため、同じ大学や近隣の大学に通う学生同士で競争となります。
加えて、すでに入居中の学生は卒業までの間、同じ部屋に住み続けるケースが大半であるため、空き部屋が出にくい傾向にあります。
学生マンションへの入居を希望するなら、家賃スライドシステムや合格発表前予約システムを活用して、なるべく早めに部屋探しをスタートすることが大切です。
マナーや騒音が気になるケースもある
基本的に学生マンションの入居者は学生であるため、騒音や入居マナーが気になることもあります。セキュリティ面では安心できる学生マンションですが、防音性に優れているかどうかは物件次第です。
入居者以外の出入りが自由な物件だと、部屋に友人を集めて時間に関係なく騒いでしまう入居者がいる可能性もあります。
物件ごとにルールが異なるため、入居者以外の立ち入りを禁止しているかなど、契約前に利用規約やルールをよく確認しておくことが大切です。
万が一、入居してから騒音や入居マナーに関するトラブルが発生したときは、無理に自分で解決しようとせず、管理会社にまず相談しましょう。
学生マンションの入居者にインタビュー! 保護者の声も併せて紹介
不動産情報ポータルサイトのLIFULL HOME’Sが、学生マンションに入居中の学生とその保護者を対象に、インタビューを実施しました。
Aさん(男性)
Q1:学生マンションを探し始めたタイミングはいつ頃ですか?
入学の4ヶ月前、12月ごろ
Q2:学生マンションに住んでよかったことは何ですか?
入居者は基本的に同年代の学生なので、自然と仲良くなることができた点がよかったと思います。
学年や学部、クラスを超えたコミュニティを持つことで、慣れない土地での一人暮らしでも、孤独や不安を感じずに過ごすことができています。
Q3:学生マンションに住んで困ったこと、不便だったことはありますか?
困ったこと、不便だったことは特にありませんが、入居当初は、友達を招いて宅飲みをしたり、夜通しゲームをしたりするのが楽しくて、翌日学校に行くのが面倒になることがよくありました。
特に、午前中の授業はサボりがちになり、単位を落とした科目もあります。
Q4:学生マンションへの入居に悩んでいる人へアドバイスをください。
煩わしいルールがない自由な環境で過ごしたい、クラスやサークル以外の交友関係を充実させたい、という人には、学生マンションがおすすめだと思います。
多少家賃は高いですが、学校へのアクセスもよく、とにかく快適な学生生活を送ることができます。
ただし、学生マンションの競争率は高いようなので、可能な限り早く物件探しをした方がよさそうです。推薦入試ではない場合、いい物件は埋まってしまっているかもしれません。
Q5:【保護者の方へ】学生マンションに入居したお子さんの反応はどうでしたか?
親元を離れて初めての一人暮らしをするということで、内心、とても心配していましたが、学校やマンションで多くの友人ができて楽しい学生生活を送っているようで、ひとまずは安心しています。
以前はほとんどできなかった自炊や家事もこなせるようになり、わが子の成長を実感しています。
サポートの手厚い学生寮も魅力的ですが、自活の能力を身につけさせるという観点では、学生マンションがおすすめだと感じました。
Bさん(女性)
Q1:学生マンションを探し始めたタイミングはいつ頃ですか?
入学の1ヶ月前、3月ごろ
Q2:学生マンションに住んでよかったことは何ですか?
女性専用の学生マンションを選んだため、隣人は皆、同世代の女性で、セキュリティ面での安心感は抜群です。オートロックや監視カメラも備えているので、アパートなどよりも安全に暮らすことができる環境だと思います。
また、住民とも自然と顔なじみになりやすく、ちょっとした立ち話をしたり、ご飯を一緒に食べたりする楽しみもあります。
Q3:学生マンションに住んで困ったこと、不便だったことはありますか?
女性専用の物件であるため、騒音などの心配はあまりしていませんでしたが、隣室からたまに騒がしい声が聞こえてくることがあり、その点は少し残念でした(普通のマンションでも同様のリスクはありますが…)。
隣人は顔見知りということもあり、管理会社に相談するのも少し気が引けるため、結果、我慢することになっています。
Q4:学生マンションへの入居に悩んでいる人へアドバイスをください。
入学までに時間がない場合にも、必ず物件を内見して、マンションの雰囲気や設備の充実度などについて確認すべきだと思います。
特に、物件の立地や防音性能などは、快適な住環境に直結する問題なので、慎重に確認した方がいいです。
Q5:【保護者の方へ】学生マンションに入居したお子さんの反応はどうでしたか?
女の子の一人暮らしには心配事が多いため、一般的な賃貸マンションではなく、女性専用の学生マンションを選択しましたが、大きな不満はなく、快適に暮らしているようです。
騒音についての悩みはあるようですが、こういった点も含めてよい社会勉強になったのではと思います。
家賃は通常の物件より割高ですが、安心感を重視するなら学生マンションを検討することをおすすめします。
学生マンションに関するよくある質問

最後に、学生マンションについてよくある質問とそれに対する回答を紹介します。
Q1. 予備校生や社会人は入居できる? 卒業後もそのまま住める?
予備校生であっても、条件を満たしていれば入居できる物件が多いです。一方、社会人は入居できないケースがほとんどであり、卒業とともに退去することが前提となっています。
なお、大学卒業後も引き続き大学院や専門学校などに通う場合は、そのまま入居することができます。
Q2.友人を招いても大丈夫?
基本的には、友人の招待が可能な物件が多いです。ただし、女性専用マンションに男性を招くのは禁止とされているケースが多いため、注意が必要です。
入居に関するルールは物件ごとに異なるので、トラブルを避けるためにも、契約前に必ずチェックしておきましょう。
Q3.学生マンションに家族を泊めてもいい?
物件にもよりますが、親や兄弟姉妹などの家族の宿泊はOKとするところが多いです。ただし、女性専用物件の場合は、家族でも男性の訪問は禁止されていることがあります。
また、数日の宿泊が認められている物件でも、契約者本人以外の敷地内駐車場の利用が禁止されていたり、駐車場利用の事前申し込みが必要だったりするケースがあるため、訪問前に物件ごとのルールをチェックしておくとよいでしょう。
まとめ
学生マンションとは、学生のみが入居できる賃貸物件のことです。オートロックや防犯カメラ完備など、セキュリティが充実していることが多いため、一人暮らしに不安を抱える学生やその保護者にもおすすめです。
学生寮に比べて自由度が高い一方、周辺相場に比べると家賃が割高なケースが多いため、多少高い家賃を払ってでも安全性や快適性を重視したい人に向いています。
学生マンションには「家賃スライドシステム」や「合格発表前予約システム」など、早期から部屋を確保できる仕組みもあります。入居を検討している人は、なるべく早めに部屋探しをスタートしましょう。
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