愛着に満ちたマイホームにはずっと大切に住み続けたいところですが、老朽化には逆らえません。家族の安全や子どもたちに残すことを考えると、いつかは思い切って建て替えを検討する時期が来るでしょう。
今回は、株式会社みさき建築研究所代表の一級建築士・御前(みさき)好史さんに伺ったお話を基に、一軒家の建て替え時にかかる費用やリフォームとの比較、なるべく安く済ませるために工夫できるポイントなどを解説していきます。
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建て替えとリフォーム、それぞれの違いとメリット・デメリット

持ち家の建て替えを検討するとき、やはりリフォームにするべきか悩ましいところでもあります。
建て替えとは、文字どおり今現在ある建物をすべて解体して更地にし、そこへ基礎工事から含めて新たに家を建てる工程を指します。
一方、リフォームは建物の基礎や柱など躯体の一部を残した状態で新しい状態にする工事を指します。
まずは、建て替えとリフォーム、それぞれのメリット・デメリットについてチェックしていきましょう。
建て替えのメリット
建て替えるメリットとしては、建物を新しくするため、ライフスタイルや家族構成の変化などに応じて、施主が思い描いたとおりの住まいを実現できることです。
たとえば、子どもが独立したことで部屋を少なくしたり、将来、車いすの生活になったときのことを考慮して廊下の幅を広めに取ってバリアフリー化したりといったことが可能です。
省エネルギーや環境の面から、少ない数のエアコンで家全体を長時間一定の温度に保てる高気密高断熱仕様に変更することも一般的になってきました。
温度変化が生まれにくいことから、冬場のヒートショック防止にもなるなど、高性能の断熱仕様にすることで、エコなだけでなく、安全にも配慮したマイホームが実現します。
建て替えのデメリット
建て替え最大のデメリットはコストです。発生する詳しい費用については次項で取り上げますが、一から新しく建物をつくり直すため、建築および解体にかかる費用はどうしてもかさんでしまいます。
同時に敷地内をフルに改修しようとした場合、外構や造園といった付帯費用も発生します。
また、法律上の問題で新築が認められない土地も存在します。
現在の建築基準法では、幅4m以上の道路に敷地が2m以上接していることが新築の条件となっていますが、この条件に満たない場合、新たに家を建てることは難しくなります。
また、道路幅が4mに満たない場合、敷地の一部を提供して道幅を広げる(セットバック)ことで新築が可能になりますが、敷地が幅2m未満の袋小路の先にあり、かつ四方建物に囲まれた場所ではどうにもなりません。
そういった場合でもリフォームは可能ですが、重機の搬入が困難なことや、新たに下水道管の敷設が必要になるなどの制約が増え、結果、大幅なコスト増につながることが考えられます。
リフォームのメリット
リフォームのメリットとしては、やはり費用の安さが挙げられます。
詳しくは後述しますが、フルリフォームにかかるコストは、建て替えの7割程度で済むため、限られた予算内で収めたい人は、まずリフォームから検討することになると思います。
また、風呂やトイレなどの部分リフォームでは、家全体を改修するわけではないため、住み続けながらのリフォームが可能です。
水回りについては、メーカーのユニットタイプのものが主流となっていることから、工事の程度によっては1日で完了してしまうこともあり、大きな不便を強いられることもないでしょう。
リフォームのデメリット
デメリットについては、解体して初めて建物の老朽化や腐食具合が明るみになることもあるため、当初の予定よりも改修に手間がかかり、見積時の金額をオーバーする可能性があることです。
また、建物の構造により柱を取り外せない場合があるなど、制約が多くなることにも注意が必要です。
建て替えにせよ、リフォームにせよ、限られた予算内でどのような住宅にしたいかという目的を明確にすることで、建て替えとリフォームのどちらを選択するかは、自然と決まってくるようです。
一軒家の建て替え時にかかる費用はどのくらい?

建て替えは新築と同じ工程を要するため、更地から始める新築同様の費用がかかります。それだけでなく、古家が残存する場合はそちらの解体費用も別途発生します。
建て替えの相場については、立地条件や材料費、人件費の変動によって異なるため一概には言えませんが、目安として以下のとおりとなります。
建物費用(新築の場合)
ローコスト住宅メーカー:45~50万円/坪 × 延床面積50坪=2,250~2,500万円
大手ハウスメーカー:70~80万円/坪 × 延床面積50坪=3,500~4,000万円
前項でも触れましたが、これに合わせて外構などの付帯工事も発生するため、こちらの金額にプラス100〜200万円ほど多く見積もったほうがよいでしょう。
大手ハウスメーカーの中には、欧州から取り寄せた部材を使用した家を提供しているところや、無垢材などの自然素材を売りにしているメーカーなどもあります。
特色あふれる個性派のハウスメーカーに依頼した場合、さらにコストが上乗せされる傾向にあります。反対に、建築に必要な部材を人件費の安い国で製作し、コストダウンを図っているハウスメーカーもあります。
どこのメーカーや工務店に依頼するにしても、候補を複数選び、比較検討しておおよその相場をつかむことが重要です。
解体費用
既存の古い建物を解体する費用です。解体費用は地域によっても差があり、千差万別ですが、延床面積40坪の古屋の場合、大体160~200万円(坪単価4万円~5万円)ほどかかります。
これは建物のみにかかる金額で、外構を取り壊すのにも別途費用が発生します。
引越しと仮住まいにかかる費用
解体から新築、引き渡しまでの期間、仮の住まいが必要になります。その間の家賃と引越し費用を考えておかなければなりません。
引越し費用は、一般的な4~5人家族でソファや冷蔵庫など大型家具を考慮した場合、移転先が同じ市内など近場でも40~60万円ほどかかり、計2回で100万円ほどかかります。
ただし、引越しは時期などによって価格の上下動が激しい業界でもあるため、ハウスメーカー選びと同様に、複数社候補を立てて見積もりを比較することをおすすめします。
不動産登記費用
新築に伴い、新たな不動産登記も必要になります。
建て替えの場合、具体的には解体後に建物がなくなったとして「滅失登記」、登記簿の表題部を新しくする「建物表題登記」、所有権を明確にするための「所有権保存登記」、新たに住宅ローンを組む際に必要となる「抵当権設定登記」などがあります。
これらは土地家屋調査士と司法書士などに一任することになりますが、おおむね数十万円の手数料が発生します。
ちなみに、建て替えとリフォームを比較すると、フルリフォームの場合、建物の工事費用の相場は、新築物件の70%ほどになります。概算になりますが、建て替えの費用が2,500万円と仮定した場合、リフォームだと1,750万円が目安です。
また、リフォームの場合、建て替え時に発生する外構などの付帯工事費や給排水工事費、不動産登記費用がかかりません。解体費用については、リフォームと解体工事を同じ会社が行い、“解体工事”という項目でリフォーム工事金額に含まれることが多いようです。
ただし、建物の状態や立地などによっても費用は大きく変わり、場合によっては、建て替えとリフォームで費用があまり変わらないということもあり得ます。あくまで目安として考えておくといいでしょう。
一戸建てを探す 全面リフォーム・リノベーション済中古一戸建てを探す 無料でリフォームについてオンライン相談する一軒家の建て替えが完了するまでの工事の流れ

一軒家の建て替えをする場合は、以下のような流れと期間になります。
解体(1ヶ月)
↓
地盤調査 → 地盤改良(2~3週間)
↓
基礎工事(2~3週間)
↓
建築(4〜5.5ヶ月)
↓
完成・引き渡し
地盤調査の結果、地盤改良が必要と判断された場合、その分の工期が伸びます。
肝心の建築期間ですが、一定の規格・設計に基づいた工事を行うハウスメーカーの場合4ヶ月、一般的な工務店の場合4.5~5.5ヶ月ほどみておいたほうがよいでしょう。
建て替えを考えるタイミング…ベストな時期は?

一般的な木造家屋の場合、寿命は30~40年とされています。
こまめにメンテナンスをしてきた家の場合、より長く住み続けることも可能ですが、メンテナンスを怠ってきた場合、部分修繕するにも費用が次々とかさんでくるため、丸ごと建て替えをしたほうが将来的によい場合もあります。
また、消費税の増税前に建て替えをするのも節約ポイントです。日本では1989年にスタートした消費税は、これまで段階的に引き上げられてきましたが、高価な買い物ゆえ、その差額も大きくなります。
今後も消費税が増税されるタイミングの場合には、増税前に支払いなどの手続きを済ませることで、コストの削減につながります。
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ここまでご紹介したように、建て替えにはどうしても多額の費用が発生します。少しでも費用を安く済ませるためにできることを紹介します。
常にコストを意識して、希望に優先順位をつける
新築時、特に陥りやすいのが、要望ばかり先行して建築士やメーカー担当者との話し合いが一向に進まないケースです。際限なくお金を使えるわけではありませんので、決められた予算を基に細かい設計や仕様を詰めていく必要があります。
まずは自分がマイホームで実現したいことをイメージして、そのビジョンを建築士に伝えることが重要です。実現したいことを箇条書きで書き出して明確にし、その中から優先順位をつけます。さらに、取り入れるポイントと妥協するポイントを洗い出し、予算内にうまく収める工夫が必要です。
見積もりは複数会社に依頼する
同じ場所に家を建てる場合でも、前述のとおりハウスメーカーや工務店によって値段はさまざまです。また、メーカーによっては希望がまったく通らないこともあるため、常に複数の会社を比較検討し、自分たちに合ったメーカーや工務店を選ぶことも大切です。
ただし、値段だけで決めてしまうのは要注意。引き渡し後、すぐに不具合が見つかったり、アフターフォローが整備されていなかったりといったクレームもよく耳にします。
見学会で実際に施工した家を見せてもらうようにしましょう。また、担当者の身だしなみや言葉遣いなども、信頼できる会社なのか見分ける重要なポイントとなるはずです。
引越し費用を切り詰める
引越し費用がトータルで100万円ほどかかると説明しましたが、これはテレビCMなど広告展開している大手引越し会社に依頼した場合の見積もりになります。
安く済ませる方法としては、目立った広告展開をしていない地元の会社を選ぶ、繁忙期である年末年始や年度末、ゴールデンウィークや移動の多い2~3月や9月を避ける、土日ではなく平日に引越しをする、などが挙げられます。
複数社に見積もりを依頼して比較することも忘れないようにしましょう。大手引越し会社の中には、初回見積もり時に高めの料金を提示するところもあります。
一度お断りを入れると値引きを提案してくれるケースもあるので、急いでいても納得いかない場合は
まとめ

家の建て替えをするときは、新築と同様に理想の家にしたいという思いがあります。
しかしながら、予算が限られた中で理想を実現するためには、目的を明確にして優先順位をつけることが大切だと、御前さんは話します。
新しいものに目移りして要望が二転三転すると、すべて一からやり直しになるケースも珍しくないようです。
家づくりは施主と建築士・施工会社が二人三脚で取り組むもの。あらゆる物事の相場感などをきちんと押さえ、ワクワクできる家づくりを目指してみてください。
一戸建てを探す 全面リフォーム・リノベーション済中古一戸建てを探す 無料でリフォームについてオンライン相談する更新日: / 公開日:2020.12.23










