各駅停車しか停まらないのに人気の駅ランキング （ファミリー編）

LIFULL HOME'Sマーケットレポートによると、首都圏、近畿圏ともにファミリー向き物件の掲載平均賃料は上昇を続けており、特に東京23区ファミリー向き物件の賃料は1年で3.2万円上昇した。住まいだけでなく物価の上昇も続くなか、「少しでも安く家を借りたい」というニーズは高まっている可能性がある。そのような状況下、LIFULL HOME'Sでは比較的賃料を抑えられる「各駅停車しか停まらない駅」に注目し、問合せが多い順にランキング化した。

各駅停車しか停まらない駅に住むと、乗車時間が長くなったり、乗り換えが必要となったりというデメリットもある一方で、賃料の安さだけでなく、電車が空いていたり、ホームの混雑が少ないといったメリットもある。「よく通う場所と家が近い」「リモートワークやハイブリッドワークをしている」「乗車時間が長いことは気にならない」といった人には参考になるのではないだろうか。

東京都編では1位「綾瀬」、2位「金町」、3位と「亀有」となり、トップ3はすべてJR常磐線の駅となった。

1位の「綾瀬」はJR常磐線と東京メトロ千代田線が乗り入れ、「日比谷」「赤坂」「表参道」などにもダイレクトアクセスができる交通利便性の高い駅だ。東京メトロ千代田線の始発駅になっている場合もあり、座って通勤・通学をすることも可能。スーパーや飲食店も充実していながら家賃相場は隣駅の「北千住」（家賃相場：9万500円）よりも6,000円ほど安く、コスパの良い街として人気である。

2位の「金町」はJR常磐線が乗り入れ、京成金町線が乗り入れる「京成金町」もあるため、2路線の利用が可能だ。下町情緒を残す「金町」は葛飾区立中央図書館や都内最大級の水郷公園である水元公園など子育て環境もよく、長閑で落ち着いた雰囲気。

3位の「亀有」はJR常磐線が乗り入れる1位の「綾瀬」の隣駅である。家賃相場も安価ながらスーパーやホームセンターなどが充実しているほか、映画館もあり、おおむね駅徒歩圏内で完結させることができるだろう。

神奈川県編は1位「淵野辺」、2位「東戸塚」、3位「古淵」となり、トップ10のうち6駅が東急線沿線の駅となった。

1位の「淵野辺」はトップ10内で唯一家賃相場が6万円台と安価でありながら、横浜まで40分程度でダイレクトアクセスができる。また南口側には国道16号が通っており、車で出かけるのに便利といえそうだ。「麻布大学」「青山学院大学 相模原キャンパス」「桜美林大学 プラネット淵野辺キャンパス」などの大学、「防衛省 防衛装備庁 陸上装備研究所」といった機関、さらに「JAXA 宇宙科学研究所 相模原キャンパス」があり、大学や研究機関が多いのも特徴。

2位の「東戸塚」は、湘南新宿ラインとJR横須賀線で「東京」「新宿」「品川」といったターミナル駅にダイレクトアクセスができる。駅周辺には大型の商業施設が複数あり、治安が良いと感じている人も多い（※まちむすび「東戸塚」より）。

3位の「古淵」はJR横浜線が乗り入れており、隣の「町田駅」で小田急線に乗り換えて新宿方面へ、「長津田駅」で東急田園都市線に乗り換えて渋谷方面にアクセスが可能だ。駅から徒歩圏内に、「イオン」「イトーヨーカドー」「MEGAドン・キホーテ」「島忠 ホームズ」「ニトリモール」といった複数のショッピングモールが集まっている。家賃相場もトップ10の中で「淵野辺」に続いて安い。

千葉県編は1位「妙典」、2位「馬橋」、3位「北小金」となり、トップ10には東京メトロ東西線とJR常磐線上の駅が並んだ。

1位の「妙典」は東京メトロ東西線が乗り入れており、「飯田橋」や「大手町」にダイレクトアクセスが可能。駅が開業したのは2000年と比較的新しく、周辺は区画整理も施されているため歩道も広い。駅前には商店街や大型商業施設があり生活利便性も良く、少し歩けば江戸川河川敷で自然を享受することもできる。

2位の「馬橋」はJR常磐線の駅で、沿線の「松戸」や「柏」と比較するとあまり知られていない駅といえるが、治安が良くファミリーを中心に人気のベッドタウンだ。公園が多く、近くには江戸川も流れており、自然やのどかさを享受できる街である。

3位の「北小金」はJR常磐線が乗り入れる松戸市にある駅だ。閑静な住宅街で、寺院や神社が多くある。

埼玉県編は1位「獨協大学前」、2位「戸田」、3位「谷塚」となり、都心や主要ターミナルへのアクセスの良い駅が並んだ。

1位の「獨協大学前」は東武伊勢崎線が乗り入れ、足立区内でも最も大きなターミナル駅「北千住」に20分程度でダイレクトアクセスできるほか、東京メトロ日比谷線直通列車であれば「日比谷」や「銀座」にも乗り換えなしで行くことができる。都心へのアクセスだけでなく、東武動物公園や大型商業施設のある「越谷レイクタウン」などへのアクセスも良く、その名の通り大学もあることから学生・ファミリー双方に愛されている街だ。

2位の「戸田」はJR埼京線が乗り入れ、「池袋」や「新宿」へも20～25分で乗り換えなしでアクセスが可能。都心へのアクセスの良さだけでなく、駅周辺には飲食店や商業施設もあり、買い物の不自由もないだろう。また、徒歩圏内に市役所やスポーツセンター、市立図書館などの公共施設がある。

3位の「谷塚」に乗り入れる東武伊勢崎線は普通のほか、急行・区間急行・準急・区間準急とさまざまな種類の電車が走っているため、普通電車は比較的空いている。また、国道4号線にも近く、車を利用する人にとっても交通利便性の高い街といえる。

大阪府編は1位「庄内」、2位「住ノ江」、3位「三国」となり、さまざまなエリア・路線の駅が並んだ。

1位の「庄内」は阪急宝塚線が乗り入れており、大阪屈指の繁華街・オフィス街である「大阪梅田」まで4駅という交通利便性が魅力。駅すぐの場所には「豊南市場」があり、青果や鮮魚、加工食品などを安く購入することができる。

2位の「住ノ江」は南海線が乗り入れており、大阪ミナミを代表するターミナル駅「難波」まで13分ほどでダイレクトアクセスができる。まちむすびによると治安が良く（※まちむすび「住ノ江」より）、子育て支援センターや公園も充実しており、子育てに向いた街といえそうだ。

3位の「三国」は阪急宝塚線が乗り入れており、1位の「庄内」の隣駅だ。「大阪梅田」まで3駅、かつ近くには国道176号線も通っている。駅周辺には大型スーパーやホームセンター、飲食店があり、交通利便性と生活利便性の両方を兼ね備えた街といえる。

優等列車が停まる駅は当然乗車可能な列車本数が多く、目的地までの速達性も優れることから、居住ニーズが高く家賃も高くなる傾向にある。しかし、コロナ禍を経てテレワークやハイブリットワークが一定程度定着した今、都心アクセスの優先度が低くなったという人も少なくないのではないだろうか。そういった人にとっては、比較的家賃の抑えられる「各駅停車しか停まらない駅」は穴場駅といえるだろう。

また、今回千葉県の1位となった「妙典」は3駅隣の浦安で、埼玉県の1位となった「獨協大学前」は1駅隣の草加で、それぞれ優等列車に乗り換えができ、近隣の優等列車停車駅とほとんど変わらない所要時間で都心に到達できる。このように、各駅停車しか停まらない駅と一口に言っても、その利便性はさまざま。住まい探しの際には、各駅停車しか停まらない駅だからといって一様に選択肢から外してしまうのではなく、優等列車との接続の有無や、目的地までの所要時間を調べてみるといいだろう。「コスパ」「タイパ」に優れた駅が見つかるかもしれない。