入浴だけでない銭湯の魅力
銭湯は入浴だけでなく、住民の地域交流や健康維持、日本文化を体験する場など、多様な役割を担っている。近年のサウナブームやレトロブームもあり、銭湯の魅力をあらためて感じた人も多いのではないだろうか。また、東京都内には400軒以上もの銭湯があり、従来の銭湯のイメージを覆すようなリニューアルがされた「ネオ銭湯」も注目を集めている。
そこでLIFULL HOME'Sでは、東京都浴場組合に加盟する銭湯がある駅の、一人暮らし向け物件の家賃相場を算出し、「銭湯のある家賃が安い駅ランキング(東京23区編)」を作成した。住まい探しの参考にしていただけると幸いだ。さらに、毎日違った銭湯を楽しみたいという人もいるかもしれない。そういった人に向けて「銭湯が多い駅ランキング(東京23区編)」も作成したので、あわせてお読みいただきたい。
1位「金町」、2位「篠崎」。近年リニューアルした銭湯も
1位 金町(6万6,200円)
1位の「金町」駅は葛飾区にあるJR常磐線の駅で、京成金町線の「京成金町」も隣接する。常磐線の列車が東京メトロ千代田線に直通することから、都心部へのアクセスも良好で、駅前にスーパーや飲食店が並ぶ、交通と生活の利便性を兼ね備えた駅だ。家賃相場は6万6,200円で、東京都内の常磐線の駅のなかでも低水準となっている。
駅から徒歩7分にある「金町湯」は、伝統的な宮造りの外観が特徴で、2021年に「ニューレトロ」をコンセプトに全面改装。サウナは毎週男女入れ替え制だが、水風呂や外気浴スペースもあり、サウナ好きも通うのが楽しくなる銭湯だ。
ちなみに東京周辺の銭湯に多い宮造りの建物は、関東大震災後に宮大工が手掛けた銭湯が評判を呼んだことをきっかけに、復興を期す多くの銭湯に広まっていったもの。関東大震災の発生から100年が経とうとする現在では、銭湯の伝統のひとつとなっている。
2位 篠崎(6万6,500円)
2位の「篠崎」駅は、江戸川区にある都営地下鉄新宿線の駅。新宿へ乗換なしでアクセスできる都営新宿線の駅のなかでも賃料水準は安価で、ファミリーにうれしい公共施設や公園なども充実している駅だ。
北口方向にある「庄楽の湯」は2013年にリニューアルされており、露天風呂や高濃度人工炭酸泉、シルク風呂、ジェットバス、電気風呂など、さまざまなお風呂を楽しめる。
銭湯が多いのは、「北千住」と「中野」
1位 北千住駅(銭湯数 6)
銭湯の数が同数で1位となったのは、足立区の「北千住」駅と中野区の「中野」駅だ。
北千住駅は東京メトロ日比谷線、東京メトロ千代田線、JR常磐線、東武伊勢崎線、つくばエクスプレスが利用でき、乗降客数ランキングでも上位に名を連ねる一大ターミナル。マルイやルミネといった大型商業施設もあるほか、駅周辺の商店街には飲食店や商店が軒を連ねる下町的な雰囲気も残る。銭湯は西口と東口にそれぞれ3軒あり、西口には「キングオブ縁側」と呼ばれる日本庭園のある「タカラ湯」、東口徒歩1分にある「梅の湯」や、2013年にリニューアルし、変わり湯の露天風呂などが楽しめる「大和湯」といった魅力的な銭湯が多くある。
かつて千住には、開業以来の宮造りの建築を維持し、ファンから「キングオブ銭湯」と呼ばれた大黒湯という銭湯があったが、2021年6月に廃業。その後解体されることになっていたが、地元寺院の住職によって保存が呼びかけられ、多くのファンや地元住民らの支援のもと、建物の一部が移築保存された。北千住は、銭湯を愛する文化が根付いた街といえるだろう。
1位 中野駅(銭湯数 6)
中野駅も、新宿や東京、大手町などに乗換なしでアクセスできる。駅周辺には100店舗以上が集まる「中野サンモール商店街」や商業施設があり、北千住同様、便利な暮らしができる駅といえそうだ。銭湯は北口に4軒、南口に2軒あり、北千住と並んで東京トップの銭湯数。南口には本格的な露天風呂やサウナなどが楽しめる「高砂湯」、北口にはダイナミックな壁絵が目を楽しませてくれる「昭和湯」などがある。
バス・トイレ別かそうでないかで、1万8,000円の家賃差
「浴槽を使用せずにシャワーで済ませるから」などという理由で、住まい探しのときに浴室の設備を重視しない人もいるだろう。LIFULL HOME'Sが首都圏一都三県(※)の居住用賃貸物件を調査したところ「バス・トイレ別」の物件の家賃相場は7万2,000円、そうでない物件の家賃相場は5万4,000円となり、その家賃差は1万8,000円であった。近隣に銭湯があれば、自宅の浴室にはこだわらずに家賃を抑えたうえで、たまに銭湯に通って広い浴槽で疲れを癒やしたり、さまざまな種類のお湯を楽しんだりという選択も考えられるだろう。物件の設備条件は、自宅周辺の施設によって補うこともできる。銭湯もその一例といえるだろう。
※東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
地域コミュニティの拠点としても注目されている銭湯
家庭内の内風呂がまだ普及していなかった時代には、銭湯は近隣の住民たちのコミュニケーションの場にもなっていた。内風呂の普及とともに減少し、現存する銭湯も後継者の不在などを理由に数を減らしているが、近年その役割を見直す動きもある。
例えば、銭湯の休憩所で健康診断を行うことで、近所の人々が気軽に健康診断を受け病気の早期発見につなげようとするのは、大阪市の寿楽温泉。東京都北区の滝野川稲荷湯は、修復再生を機にコミュニティスペースを設けたことで、地域の情報発信や交流の場となりつつある。いずれも、近隣住民が気軽に立ち寄れるという銭湯の特徴を生かし、地域のなかで新たな役割を担っている。
自宅の浴室が不十分だからではなく、銭湯が生み出す魅力的なコミュニティに触れたいから銭湯のある街に住むという選択も、魅力的な銭湯が増えつつある昨今、住まい探しのひとつのトレンドとなるのではないだろうか。
■調査概要
対象駅 :東京都浴場組合に加盟する東京23区内の銭湯のアクセスに記載されている駅(※休業中の銭湯を除く、駅から徒歩20分以内の銭湯に限る)
対象物件:LIFULL HOME'Sに掲載された築40年以内、駅徒歩20分以内、専有面積15m2以上40m2未満の賃貸物件(定期借家を除く)
抽出期間:2022年6月~2023年5月
家賃相場:管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
公開日:









