ふるさと納税受入額は対前年比約1.3倍。受入額に占める自治体の経費割合は？平成29年度ふるさと納税に関する現況調査

「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として2008年に創設されたふるさと納税。2015年の納税枠の拡充やワンストップ特例制度により、年々受入額が大きく増加している。総務省は2018年7月6日、「平成29年度ふるさと納税に関する現況調査」を発表した。調査結果から、ふるさと納税の直近の実績を振り返りたい。

2017年度のふるさと納税の実績は、約3,653億円で対前年度比は約1.28倍、受入件数は約1,730万件で、約1.36倍の増加となった。前述の通り、年々増加傾向にあるふるさと納税だが、2015年度から2016年度の受入額の増加1.7倍と比較すると、やや伸びが鈍化する結果となった。（2015年度の受入額は約1,652億円、2016年度は約2,844億円）

総務省は2017年4月、地方団体間の返礼品の競争過熱や、制度の趣旨に反するような返礼品が送付されているなどの状況を受け、全国の自治体へ通知。プリペイドカードや商品券など、金銭類似性の高いものや家具、貴金属類など資産性の高いものを控える、返礼品の調達価格の割合（以下、「返礼割合」）は3割以下とすることなどを助言した。通知に強制力はないものの、多くの自治体が返礼品対応の方向性を変更することとなった。

総務省「平成29年度ふるさと納税に関する現況調査」より、ふるさと納税の受入額及び受入件数（全国計）を参照して作成

ふるさと納税の受入額が多かった都道府県、自治体はどこだったのだろうか。
都道府県別では、北海道が最も多く受入額約365億円（受入件数は約220万件）、次いで佐賀県が約315億円（約171万件）、宮崎県約249億円（約155万件）だった。

地方団体別の上位10位は下記の結果となった。

1位　大阪府泉佐野市　　135億3,300万円　 862,082件
2位　宮崎県都農町　　79億1,500万円 430,018件
3位　宮崎県都城市　　74億7,400万円 523,164件
4位　佐賀県みやき町　72億2,400万円 122,058件
5位　佐賀県上峰町　　66億7,200万円 510,453件
6位　和歌山県湯浅町　49億5,100万円 325,558件
7位　佐賀県唐津市　　43億8,900万円 384,019件
8位　北海道根室市　　39億7,300万円 242,022件
9位　高知県奈半利町　39億600万円 196,108件
10位　静岡県藤枝市　37億800万円 107,762件

1位の大阪府泉佐野市は100億円超えと、突出した受入額となった。前年の約34億円から100億円以上の増加、約4倍となっており、全国の自治体でも受入額が100億円を超えるのは初となる。
1位の泉佐野市や、4位の佐賀県みやき町、7位の佐賀県の唐津市は、調査結果の最後に記されている、＜返礼割合3割超の返礼品及び地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村で、平成30年8月までに見直す意向がなく、平成29年度受入額が10億円以上の市区町村＞に挙がっている。高い返礼割合が魅力となり、受入額も大幅に増加したものと思われるが、今後の対応によっては、この受入額の状況も大きく変わる可能性があるだろう。

2017年度のふるさと納税の募集や受入等に伴う自治体の経費を振返ると、「返礼品の調達に係る費用」は受入額に占める割合が38.5％と最も大きい。その他、返礼品の送付、広報、事務、決済などに係る費用も含めると、受入額のうち経費が占める割合は55.5％となっている。総務省からの通知もあり、今後は返礼品の調達に係る費用は少なくなることが予想されるが、それでも自治体の負担は一定して発生するであろう。

総務省「平成29年度ふるさと納税に関する現況調査」より、（参考）ふるさと納税の受入額及び受入件数（受入額の多い20団体）を参照して作成

平成28年熊本地震により甚大な被害を受けた熊本城。復旧・復元を目指し、復興事業の支援金を募集している

ただ返礼品の送付だけに留まるのではなく、本来のふるさと納税の趣旨でもある自治体の取組みにも注目してもらいたいと、ふるさと納税の受入額実績や活用状況の公表など実施している団体が増加している。
「受入額実績・活用状況（事業内容等）の両方を公表している」団体は1,138団体（63.6％）と前回調査の1,040団体から98団体増加。「寄附者に対して、寄附金を充当する事業の進捗状況・成果について報告している」団体は499団体（27.9％）と、こちらも前回の433団体から増加した。

自治体の中には、より用途を明確にして寄附を募る取組みも見られる。石川県輪島市の、熊本地震で被害を受けた陶片と輪島塗漆器を組み合わせて生まれ変わらせる「被災陶器再生プロジェクト」や、岡山県真庭市のインターナショナルシェアハウスの開設費用の募集などだ。

平成30年7月豪雨を受け、現在では被災地支援を目的にしたふるさと納税や、被災した自治体に代わって他自治体が代理でふるさと納税の受入れをする取組みも進められている。現地に赴くことができない人も、ふるさと納税で被災地支援ができる。寄附を検討している人は、自治体のふるさと納税も確認してみるのもよいかもしれない。