賃料相場を理解すると、部屋探しが効率的になる

これから部屋を探そうと思っていても、知っている街、良く乗ったことがある鉄道なのかそうでないのかで、部屋探しの効率のよさが多少変わってくる。ゆっくり引越しを考えている人であれば、新しい電車に乗って降りたことのない駅に降りて、街歩きをしてみるのはとても楽しいに違いない。せっかく少なくとも2年間は住むかもしれない街だから、自分の目で見て考えたほうが納得感がある。

入学、就職、転勤などで必要に迫られて引越しをする人は、場合によっては部屋探しに割ける時間が限られているかも知れない。見ず知らずの街と物件をわずかな時間で総合的に判断するのはなかなか大変だ。

そこで事前に知っていると選択肢を絞り込みやすいのが賃料相場だ。HOME'Sでは駅ごと・間取り帯ごとの平均賃料を公表しているので、まずは自分の予算と照らし合わせるといいだろう。

本連載では、まず首都圏、愛知県、京阪神、福岡県といった広いエリアの沿線ごとにおおよその賃料相場を紹介する。また、1つ1つの沿線ごとに、駅別の賃料相場を紹介していく予定だ。

平均賃料だけではない沿線や駅の魅力・人気のトレンドも、トピックスとして紹介していきたい。沿線の中には大規模な再開発などが予定されていて利便性の向上が見込まれる駅や、昨今人気が高まっているエリアの最寄駅もある。自分の生活スタイルに合わせておおよその場所を選び、その中で相場感を見て駅をセレクトしていってほしい。

なおマンションとアパートでは、首都圏では一般的に構造の違いや住宅設備のグレードの違いなどもあり、似たような立地であっても賃料帯が変わることが多い。よって本連載では分けて紹介していく。また便宜上本連載では、1K物件と1DK物件を合算して「シングル向き」とし、1LDK物件と2K物件、そして2DK物件を合算して「カップル向き」とした。

東京の地下鉄沿線の、シングル向き物件家賃ランキング

東京の地下鉄沿線で、シングル向きアパートの家賃相場が最も高かったのは東京メトロ半蔵門線で、89,445円だった。2位が僅差で千代田線の88,314円、3位が銀座線87,794円と続いている(特に説明がない場合の記述金額は、2015年5月の平均賃料)。またシングル向きマンションでも1位は同様に半蔵門線で112,224円となった。ただし2位は110,349円をつけた銀座線で、3位も103,374円の日比谷線となっており、アパートと異なるランキングとなった。

沿線ごとに賃料は異なるため、どういった駅をつなぐかが本記事のランキングに影響する。つまり、賃料が高い駅の割合が多い沿線ほど、この表の平均値が上がりやすいということになる。

またマンションとアパートとでランキングが入れ替わる主な理由も、駅ごとの賃料だ。例えばアパート賃料が比較的安い駅が沿線にたくさんあれば、その沿線のアパートランキングが下がる傾向になる。

データを見ると東京メトロ沿線の賃料が比較的高い中にあって、都営線の中でアパートで77,646円と6位にランクインして他の都営線より突き抜けているのが大江戸線だ。新宿周辺や六本木、そして東新宿から本郷までのアパート賃料が高いエリアを走っているため、この位置をキープしていると推測される(参考 HOME'S家賃相場)。

2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順
2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順

都内及び東京西部方面へ向かう沿線の、シングル向き物件家賃ランキング

都内及び東京西部方面の沿線別家賃相場を見ると、地価が明らかに高いところを中心に走るJR山手線がアパートでは80,627円で1位という想定内の結果となった。ここでの注目はりんかい線だろう。マンションでは14年5月データでも100,143円、15年5月データでも105,990円とJR山手線を上回り、最も賃料が高いという驚きの結果となった。比較的新設の路線のためマンションの新規建設数も多く、築浅による賃料の上ぶれが順位を押し上げているのではと考えられる。

また、東急沿線の賃料の高さがやはり目に付いた。東急目黒線、東急大井町線、東急池上線とアパートもマンションも5位以内にランキングしており、安定している。また私鉄でランクの高さが目に付くのは京王井の頭線だろう。人気のある渋谷駅から吉祥寺駅をつないでおり、アパートで75,071円の2位、マンションで88,454円の3位をキープしている。

東京でも西側へ延びる沿線の賃料は、小田急小田原線のアパートが55,800円、途中から埼玉県に入る西武新宿線のアパートが58,599円などと、明らかに低い傾向となった。これは賃料が低い郊外の駅を多く抱えているためと考えられる。

目線を変えれば、例えば東武東上線の場合、マンションとアパートの差が約8,000円となっており、都市部しか走らない東急系沿線よりもマンションが比較的割安になっているとも言える。安さ重視もお部屋選びの1つのポイントなので、是非めぼしを付けて探してほしい。

2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順
2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順

神奈川県内及び都内から神奈川県方面へ向かう沿線の、シングル向き物件家賃ランキング

首都圏の中でも都心から神奈川方面へ向かう沿線別では、やはり東京の都心南部と横浜・川崎をつなぐ沿線が上位にランクインした。東京同様に神奈川方面でも東急沿線のステイタスは高く、アパート1位が74,346円の東急東横線、2位が74,060円の東急田園都市線、3位が68,242円で東急東横線と直通運転しているみなとみらい線となった。マンションでは様子が異なり、3位に80,083円のJR京浜東北・根岸線が割り込んできている。

基本的には東京都心へ向かう沿線は高めで、横浜や町田・藤沢などへ向かう沿線は比較的リーズナブルであることが見て取れる。

横浜市営地下鉄も横浜市内をメインにつないでいるだけあって賃料が高め。港北ニュータウンのみをつなぐグリーンラインが66,362円で61,150円のブルーラインよりも高いランクとなった。

2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順
2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順

埼玉・千葉方面へ向かう沿線の、シングル向き物件家賃ランキング

埼玉方面と千葉方面をまとめてランキングしてみると、両県とも東京のベッドタウンということもあり、どちらかの方面が上位を占めるといった状態ではないことが分かる。なおJR京浜東北・根岸線は神奈川県に入れてみたが、もしこの埼玉・千葉ランキングに入れた場合は、アパートで65,990円の2位、マンションでは80,083円で1位となる。

66,732円でアパートと1位となったJR埼京線は、やはり便利のよさからくる相場だろう。池袋・新宿・渋谷・恵比寿と主要な駅をつなぐほか、りんかい線も乗り入れており、実質湾岸エリアも通勤圏内となる沿線だ。78,178円でマンションで1位となったJR京葉線も、千葉県内で最も人気がある浦安、船橋などの湾岸エリアを通って東京駅に直通するのが魅力だ。

新たな都市開発が進むつくばエクスプレスが、アパートで57,488円の3位、マンションでも70,368円の3位となっているのも象徴的で、単純に距離や通勤時間だけではない、街の魅力も家賃相場に影響を与えていると考えられる。



【集計概要】
調査実施:HOME'S PRESS データ担当
調査対象:HOME'Sに掲載された賃貸マンション物件(徒歩10分以内)
       マンション=鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、
            プレキャストコンクリート工法等の耐火構造の共同住宅
       アパート =軽量鉄骨造、木造の共同住宅

調査期間:2015年5月15日時点
調査方法:調査時点で公開されている物件の賃料を元に、駅ごとの平均賃料をさらに平均

2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順
2015年5月データ「1K、1DK」アパート平均賃料の高額な順

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