日本の賃貸住宅で暮らすために知っておきたいこと
外国籍の方が日本で部屋を借りて暮らすならば、どんなことを知っておきたいだろうか。
ここでは外国籍の方に向けた、日本の賃貸住宅にまつわるルールを紹介する。「物件探し」から「引越」までを確認した前編に続き、後編の今回は「住み始め」から「退去」までをまとめた。
【前編】
日本で部屋を借りるには? 外国籍の方向け賃貸ガイド 物件探し~引越し編
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_01262/
入居後
新しい生活に胸が踊る一方で、日本の生活習慣の違いに戸惑うことも多いのではないだろうか。
入居後の生活で気を付けたいことをまとめた。
ゴミ出し
最も気を配りたいのが、ゴミ出しのルールだろう。基本的にはゴミを各家庭で分別してから、捨てる必要がある。
一般的にゴミは、可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミ、粗大ごみのような種類に分かれているが、自治体によって分類の方法や捨てるときのルールは異なっている。また、一部の24時間ゴミ出しができる物件を除き、ゴミは種類別に回収日が決められている。曜日ごとのルーティンになっているので、当日の朝になってから指定の場所に出すようにしよう。
ゴミの中で取り扱いが難しいのが粗大ごみだろう。通常の回収では引き取ってもらえないため、注意が必要だ。
多くの自治体において、一般家庭から出る粗大ごみは、事前申し込みをして有料で回収してもらうことになる。専用のウェブサイトや電話などで回収日を予約し、コンビニなどで粗大ごみ券を購入して捨てたいものに貼付しよう。その後は指示に従い、自宅前などの決められた場所に出して回収してもらうことになる。
気持ちよい環境を維持していくためにも、ゴミ出しのルールはしっかり守りたい。
騒音
隣人トラブルになりやすいのが騒音問題だろう。大きな話し声、パーティ、テレビやステレオの大きな音、楽器演奏など、自国とは異なる生活習慣に気を付けたい。早朝や夜間の生活音も思いのほか響くものである。お互いの生活環境を尊重する気持ちを忘れずにいよう。
家賃の支払い
家賃の支払いは滞りなく期日までに済ませよう。支払方法は契約時に指定されるが、コンビニ払い、銀行振込、銀行口座引き落としのような入金が主流だ。オーナーに直接支払う場合もある。くれぐれも遅延や滞納がないように注意して、オーナーや保証人に迷惑がかからないようにしたい。
長期間部屋を空ける場合
帰国や長期出張など、1~2ヶ月以上部屋を空ける場合は、管理会社や大家さんに伝えておこう。
契約期間を超えて住み続けたいならば、契約更新することができる。更新時期に届く案内に従って手続きを行おう。また一般的に、更新時には通常の家賃に加えて更新料が発生するので確認しておきたい。
ただし、住居が定期借家の場合は更新ができないので注意が必要だ。
禁止事項
契約書に記載されている禁止事項を守る必要がある。
たとえば、ペットを許可なく飼わない、共用部分にゴミや私物を置かない、ベランダに荷物を置かない、危険物や違法物の持ち込み禁止というようなことだ。特に注意しておきたいのが、部屋の又貸しや契約にない人の入居が禁止されていることである。借りている部屋にたくさんの人を住まわせるのはもってのほかだ。契約違反になり、即時退去や訴訟に至るケースもある。
暮らしの中で気をつけること
「簡単で良い報酬のアルバイトがある」と言われても飛びつかず、内容を確認しよう。次のようなことを頼まれたら絶対に断ってほしい。
【受けてはいけない例】
・指定する住所に行ってお金を受け取ってきてくれればアルバイト料を払う。
・キャッシュカードを受け取ってきてくれればお金をあげる。
・あなたの銀行口座に振り込んだお金を別の口座に振り込んでくれれば報酬を支払う。
・指定する住所に行って住人のフリをして配達された荷物を受け取って別の場所に送ってくれたらお金を払う。
・あなたの銀行口座の通帳やキャッシュカード、携帯電話機を売ってくれたらお金を払う。
このような誘いは、あなたを犯罪に巻き込もうとしているものだ。
これはほんの一例にすぎない。誘いに乗ってこれらを行ってしまうと、逮捕されたり日本に住めなくなったりすることがある。
<この項目で出てきた用語の解説>
粗大ごみ(そだいごみ)
…ある一定以上の大きさ以上のごみ(定義は地域によって異なる)で、ベッド、たんす、本棚などの大きな家具、掃除機や照明などの一部電化製品などが対象だ。ただし、家電リサイクル法の対象となる家電製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は、粗大ごみの対象になっていない。電気製品販売店や自治体のリサイクルセンターで、有料で引き取ってもらおう。
共用部分(きょうようぶぶん)
…集合住宅において、入居者が共同で使用する部分。廊下、階段、エレベーター、エントランス、バルコニー、外壁などを指す。
更新料(こうしんりょう)
…月々の家賃とは別に不動産オーナーに支払う手数料。金額はオーナーが設定する。更新料の有無、契約更新時に支払う具体的な金額は、契約書に記載されている。
退去
退去をすることになったとき、日本には“立つ鳥跡を濁さず”ということわざがある。スムーズな退去のためにも、十分な用意をしたい。
退去の目処が立ったら、1ヶ月前までに不動産会社へ連絡を入れよう。
具体的な日時が決り次第、ライフラインの解約、国内転居の場合は郵便物の転送手続きなどを進める。
荷物の搬出を進めたら、退去日を待とう。
退去の当日は、部屋を明け渡す前に、オーナーや不動産会社立ち合いのうえで室内の点検をする。入居時のチェックシートを参考に、原状回復がどの程度必要か確認を行い、鍵の返却をして退去となる。
後日、敷金の清算が行われ、原状回復に必要な費用を差し引いた差額が指定の口座に振り込まれる。原則として敷金は返還される。しかし、原状回復費用や残置物処理費用が敷金を上回ると不足分を支払わないといけないため、請求が発生する場合がある。
注意しておきたいのは、入居時に敷金がかからなかった「敷金0物件」と呼ばれるものだ。退去時にクリーニング費用や修繕費の追加費用が発生するケースもある。どの範囲が対象になるか、契約書をきちんと確認しておこう。
また、帰国するときには、使わなくなった銀行口座や携帯電話などを解約したか確かめておきたい。
<この項目で出てきた用語の解説>
原状回復
…賃貸借契約が終了して退去する際に、入居時の状態に部屋を戻すこと。ペットがつけた柱のキズやタバコのヤニや臭いなど、賃借人に責任がある損傷については賃借人にその修繕義務があります。通常の生活や経年変化による損耗は、貸主がその費用を負担する。
おわりに
習慣や環境が異なれば、住まいのルールが異なる。文化の違いを認め、共有し、理解を深めれば、お互いにとってより良い住まい環境になるのではないだろうか。ルールを守って住みよい街の一員になることができれば、日本での暮らしがさらに快適なものになるのではないだろうか。
今回、外国籍の方々が日本で安全に暮らしてほしいという思いを持つ田無警察署にメッセージをいただいたので、最後にご紹介しよう。
<田無警察署からのメッセージ>
日本でも皆さんの母国でも同じですが、その国の法律を守って生活していくことは大切なことです。この記事で触れているのは日本のルールのほんの一部ですが、その他にもお酒を飲んで自転車に乗ってはいけないなど、知らなくてはいけないルールがたくさんあります。
日本で生活して迷ったり疑問に感じたりすることがあったら、お近くの警察署もしくは#9110にお問い合わせください。#9110は警察の相談ダイヤルです。あなたを詐欺や犯罪から守ります。
また、警察庁国際犯罪対策課では日本に住む外国人の方に向けて公式Facebookにて情報発信をしています。ぜひそちらもご覧下さい。
http://www.facebook.com/mpdkokusaihanzaitaisakuka
お役立ちリンク集
▼外国籍の方に関する賃貸ガイド
国土交通省 外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について 外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000017.html
国土交通省 パンフレット「部屋探しのガイドブック」
https://www.mlit.go.jp/common/001317843.pdf
▼部屋探しに便利なサイト
●外国籍の向けの日本の住まいに関するルールについて
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 ウェルカム賃貸 「外国人住まい方ガイド」
https://welcome.jpm.jp/
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
公開日:





