都市再生緊急整備地域とは?
都市再生緊急整備地域は、2002年に制定された都市再生特別措置法に規定されている。同法については、近年、日本の人口減少に伴ってコンパクトシティ政策(立地適正化計画制度)が注目されているが、法制定時は、主に大都市の都市再生に主眼が置かれていた。
都市再生特別措置法が制定された背景として、1990年代のバブル経済崩壊以降の大都市を中心に発生した不良担保不動産や低未利用地が国の経済再生に対して足枷になっていたことが大きい。こうした状況下を打開するため、内閣総理大臣指示のもと、大都市の中心地における都市構造の抜本的再編や都心居住、商業機能の回復に向けた土地の有効利用を図ることが政府の方針の一つとなった。
都市再生緊急整備地域を簡単に説明すると、国や自治体、民間事業者が一体となり強力に市街地再生プロジェクトを推進するための地域といえる。指定地域は、政令(都市再生特別措置法施行令)で定められているのが特徴となる。従来型の市街地再生との大きな違いは、国が緊急に都市再生に取り組むべきエリアを法令により指定し、それらの地域に対して、都市計画と税財政金融支援を行うことにある。1次指定は、東京や大阪を中心に、2次指定は政令指定都市を中心に指定が行われている。
また、2011年改正では、都市の国際競争力強化を図る観点から、より強力に都市再生を推進するために都市再生緊急整備地域の中に指定される特定都市再生緊急整備地域が追加された。この特定都市再生緊急整備地域も従前の都市再生緊急整備地域同様に政令で指定される。
都市再生緊急整備地域に指定されるメリットとは?
都市再生緊急整備地域に指定されることによるメリットは、土地利用規制の緩和、民間事業者による都市計画提案、国等による税財政・金融支援が行われる点にある。特に、本稿を読まれている読者の方であれば、再開発に関して興味があると思うので、都市計画の面からメリットをお伝えできればと思う。
都市再生緊急整備地域が指定されると、都市再生プロジェクトにおいて都市計画提案とセットで、都市再生特別地区の指定や用途地域の変更などを都市計画決定権者である自治体へ提案することができる。特に、都市再生特別地区は再開発プロジェクトとの相性が良い。というのも、この特別地区が指定されると、用途地域や容積率、高さ制限、日影規制などが適用除外となる。よって、超高層建築物をはじめとして、大規模都市再生プロジェクトに不可欠な自由度の高い設計が可能となる。
また、通常、再開発を行う場合、容積率の限定解除の設定は、公共貢献や一定の条件に該当する項目ごとに対して積み上げて容積率を割り増していくが、都市再生特別地区では、国の都市計画運用指針においても提案に基づいて柔軟に対応することとされており、民間提案に基づいて自由度の高い再開発プロジェクトを実行することが可能となる。これにより従来にはなかったより高度利用された建築物が次々に建設されている。
都市再生緊急整備地域に指定されているエリアとは?
都市再生緊急整備地域は全国に54地域、約9,752ha(2024年12月13日時点)が指定され、特定都市再生緊急整備地域は全国に15地域、約4,339ha(2023年9月1日時点)が指定されている。主に、東京都や大阪市をはじめ、大都市を中心に指定が行われている。また、大都市近郊の都市として、柏市や岐阜市、松戸市なども指定が行われている(下図参照)
東京都内では、8地域が指定されており、それぞれ「東京都心・臨海地域」、「池袋駅周辺地域」、「新宿駅周辺地域」、「渋谷駅周辺地域」、「品川駅・田町駅周辺地域」、「羽田空港南・川崎殿町・大師河原地域」、「大崎駅周辺地域」、「秋葉原・神田地域」となる。
国家戦略特区と都市再生緊急整備地域の関係性は?
国家戦略特区と都市再生緊急整備地域の関係は、主に東京都内で顕著に見られる。現在、国家戦略特区における都市計画法の特例制度を活用している地域は、東京圏(特区法により定義される東京都、神奈川県、千葉市、成田市)に限定されている。
中でも東京都では、都市再生緊急整備地域において都市再生特別地区を活用する際、国家戦略特区制度の併用を原則としている。この背景には、国家戦略特区を活用することで、都市計画決定主体が区域会議(内閣府、自治体、民間事業者等により構成)となることで、都市計画決定手続きがワンストップ化され、都市再生特別地区などの再開発プロジェクトに不可欠な都市計画決定がより迅速かつ柔軟に行えるというメリットがある。
このため、都市再生特別地区の活用が前提となるが、制度的に連動して適用される傾向にある。
国家戦略特区における都市計画法の特例制度は、都市計画決定・変更の主体が自治体から国家戦略特別区域における区域会議となることで、都市計画決定手続のプロセスの一部が省略されることがメリットの一つとされる。手続きがワンストップ化することにより円滑な都市計画決定・変更手続きが期待されている。
加えて、国家戦略特区における規制改革項目の一つに「都心居住促進のための容積率・用途等土地利用規制の見直し」が掲げられており、都心部における住宅供給の促進や、用途地域の柔軟な見直し、容積率の弾力的運用などが推進されている。都市再生緊急整備地域内での住宅系プロジェクトが、特区制度の活用によって実現しやすくなる背景には、こうした国の明確な都市再生の方針もあるといえる。なお、国家戦略特区における都市計画法の特例を活用した再開発プロジェクトは、これまでに東京都内では45認定を受けている。
住まい探しにどのように関係する?
都市再生緊急整備地域は、全国で54地域、約9,752haが指定されている。指定には、市街地環境の改善が急務であること、おおむね5年以内に着手が見込まれる具体的なプロジェクトの存在、10年以内に事業化が想定される再開発の気運、そして都市計画マスタープランや総合計画などの行政計画として都市再生の方針が明確であることなどが要件として挙げられる。
すでに複数の再開発プロジェクトが進行・完了しているが、指定地域内であっても未だ開発の進んでいないエリアも少なくない。とはいえ、これらの地域は将来的な再編や投資が見込まれるエリアとして、国や自治体が優先的に都市機能の更新を図っているエリアでもある。
このため、資産価値や都心近接性を重視する方にとっては、都市再生緊急整備地域内に住宅を持つことは中長期的なメリットが見込める選択肢といえる。特に今後、インフラ更新や街区の機能強化が行われれば、周辺環境の質が向上し、住まいとしての魅力もさらに高まっていく可能性がある。
今後、注目されるエリアは?
都市再生緊急整備地域の注目エリアは、積極的な都市再生プロジェクトが進む東京都特別区内の都心エリアだといえるのではないだろうか。容積率が2,000%以上の高度利用が図られるプロジェクトがいくつも進められる。
例えば、2022年3月に国家戦略特区による区域計画の認定(都市計画決定とみなすもの)を受けた「日本橋一丁目東地区」では、最大容積率が約2,090%と、地方都市や東京近郊では考えられないレベルの高度利用が図られる予定となっている。なお、国家戦略特区の活用も相まって、日本橋一丁目東地区では、事務所や店舗、公共・公益施設に加えて約568戸の住戸も計画されている。
この日本橋一丁目東地区以外でも「池袋駅西口地区(2024年11月に特区認定)」では、最大容積率が約2,040%、「宮益坂地区(2023年4月に特区認定)」では約2020%、「新宿駅西南口地区(2022年11月)」では、約2,000%と次々と2,000%以上の都市再生プロジェクトが進行している。
このように、今後も、東京都心の街並みは大きく変化していくことが考えられる。このような、都市再生プロジェクトに関して、興味がある方で具体的なエリアを知りたい方は内閣府においてまとめている都市再生緊急整備地域一覧から確認することができる。
▶︎参照:内閣府、「都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域の一覧」外部リンク
最後に、都市再生緊急整備地域内にある物件では、将来的な再開発による市街地環境の改善や資産価値の維持、街のブランド化など、都市環境向上が期待されるため、今後のライフスタイルにあわせた資産形成の選択肢にもなりえる。
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