えらんでエールの仕組み
日本には新しい暮らしをはじめたいと思っても、今自分が置かれている環境から抜け出すことが難しい人たちがいる。
株式会社LIFULLでは、そうした人たちの一時避難所・命の駆け込み寺ともいわれるシェルターを運営する民間の法人を支援する「えらんでエール」というプロジェクトを行っている。
ここでは2021年~2022年に実施された「えらんでエール」第3回の支援先と、寄付金の使い道について紹介する。
えらんでエール:https://actionforall.homes.co.jp/erandeyell
「えらんでエール」とは、LIFULL HOME’Sを利用する方々に支援先を選んでもらい、ユーザーに代わって寄付を行うものだ。
ここでいうユーザーとは、LIFULL HOME’Sで物件検索し、物件の問合せをした方のことを指す。
ユーザーは物件問合せ完了後に表示されるアンケート画面から、応援したい分野に投票を行う。その後、投票結果と民間シェルターを運営する団体のニーズとを掛け合わせて、LIFULLが寄付金額を決定。寄付金によってシェルターの環境改善や運営に活用してもらう、という仕組みになっている。
第3回となった2021年9月1日~2022年8月31日の期間に寄せられた総エール数は、3,605エールだった。その応援を全10団体にお届けした。寄付がどのように使われたのかは、えらんでエールのwebサイトの第3回レポートのなかで詳しく伝えている。
ここからは分野別に、各団体を紹介していく。
ホームレスなど生活困窮者の方々
現代の日本において生活困窮は、社会が抱える最も身近な問題の1つだろう。
働きたくても働けない、住む所がないなど、生活が立ち行かない人たちが自立するための制度として2015年4月に「生活困窮者支援制度」が施行されたものの、困窮者の増加傾向が続きコロナ禍が長引いた結果、さらに増えているともいわれている。
何らかの理由で住む家を失い、ホームレス状態となった人が身を寄せて当座の住まいとし、自立した生活を立て直すための場所として、シェルターが運営されている。
NPO法人 反貧困ネットワーク広島
https://hanhinkon-h.sakura.ne.jp/
NPO法人 反貧困ネットワーク広島は、広島県広島市を中心に活動する団体で、2009年1月に設立された。「今の社会から貧困をなくそう」をモットーに、問題に取り組んでいる。
ここは生活苦、DVなどで住まいを失った方々に一時的な住まいの提供を目的としたシェルターだ。シェルター内の畳や浴槽など、傷んだものや老朽化した設備の交換に活用されたという。
そのほかの活動として、生活保護申請やアパート探しなどをサポートする自立支援、年に4回広島駅地下広場で弁護士や社会福祉士などの専門家がワンストップで行う無料相談会「まちかど相談会」の開催、週3回生活困窮者など社会的に孤立しがちな方々が立ち寄れる居場所として開催されている「ほっとサロン」の運営などを行っている。
日本にいる難民の方々
国連難民高等弁務官事務所UNHCRの発表によると、2020年末の世界の難民の数は8,240万人いるという。新型コロナウイルスの世界的なパンデミックのなかでも、過去最高を更新した。ロシアのウクライナ侵攻により、その数はさらに増えているという報告も上がっているそうだ。
日本における難民シェルターは、命からがら出国してきた人たちを受け入れる場所としてだけでなく、難民認定が下りるのを待つ間に強制送還されないための場所としての役割も担っている。
一般財団法人 JELA(ジェラ)
https://www.jela.or.jp/
一般財団法人 JELAは、東京都渋谷区に本拠地を置く団体だ。キリスト教主義に基づいて公益事業を行っており、前身である日本福音ルーテル社団は1909年(明治42年)に創設された歴史がある。今回の寄付先のカテゴリーである難民支援は、1985年から始められたそうだ。
難民支援事業では、「JELAハウス」と名したシェルターを板橋区と江戸川区にそれぞれ1棟所有し、運営をしている。今回の寄付は、劣化した各室のエアコンやキッチンの換気扇の交換に充てられたとのことだ。
そのほか、同事業では難民学生のための奨学金制度の運営も行っているそうだ。
活動はさらに幅広く、カンボジアやインドをはじめとした世界の子ども支援事業や海外へのボランティア派遣、ホスピスなどでのハープ演奏による慰問「リラ・プレカリア」といった奉仕者育成などの公益事業を行っている。
親と暮らせない、居場所のない子どもたち
社会や家庭の影響を一番に受けるのが、子どもだろう。虐待や経済的困窮によって親と暮らせない子どもたちがいる。
そうした子どもたちは、行き場がないことで犯罪に巻き込まれたり、心身を病んでしまったりすることもある。
未来ある子どもたちを守り、健全に自立への道を歩むために、シェルターや自立生活ホームが運営されている。
NPO法人 ピピオ子どもセンター
http://pipio.or.jp/
NPO法人 ピピオ子どもセンターは、広島県広島市を中心に活動する団体だ。2011年1月に設立されてから活動を続けている。
14歳~20歳の女子用の子どもシェルター「ピピオの家」と、中学校卒業後から20歳になるまでの男子用で日常生活や就労などを支援する自立援助ホーム「はばたけ荘」を運営している。
今回の寄付は、ピピオの家では照明器具の付け替えに、はばたけ荘では破損箇所の補修に充て、入居者やスタッフに安全で良好な住環境を提供できるようになったという。
そのほかの活動として、広島弁護士会など関係団体との協力によるシンポジウムを開催し、子どもの問題に関する啓発活動をしている。
認定特定非営利活動法人 子どもセンターてんぽ
https://www.tempo-kanagawa.org/
認定特定非営利活動法人 子どもセンターてんぽは、神奈川県横浜市に拠点を置く団体だ。2006年2月に設立された。
シェルターに関する活動は、10代後半の若者の一時避難所「シェルターてんぽ」、義務教育修了後から満20歳まで、または大学就学中の22歳の年度末までの女子を対象とした自立援助ホーム「みずきの家」を運営している。
今回の寄付では、施設の防音工事、雨漏り修繕、エアコン修繕を実施し、入居者やスタッフから「お互いに音を気にせず安心して過ごせるようになった」という声が寄せられた。
そのほかの活動として、悩みの相談と併せて行き場のない子どもたちに緊急で入れる一時的な滞在先の情報提供を行う「居場所のない子どもの電話相談」を運営している。
NPO法人 子どもセンタービリーヴ
https://center-be-live.org/
NPO法人 子どもセンタービリーヴは、北海道旭川市にて活動を行う団体だ。2018年設立の特定非営利活動法人子どもシェルターぽっけが前身になっている。
子どもシェルター「ポラリス」、15歳からおおむね22歳の女子6名を受け入れる自立援助ホーム「風凜ふうりん」を運営。
今回の寄付を使ってエアコンとLED照明器具を購入したそうで、電気料金が10%削減できたとのことだ。経済的な面で運営に苦慮する民間シェルターが多いなかで、負担軽減につながったのは大きいだろう。
シェルターや自立援助ホームの運営に加え、自立援助ホームからの卒業生(ケアリーバー)を見守る活動も行っている。
認定NPO法人 子どもシェルターモモ
https://shelter-momo.org/top.html
岡山県岡山市を拠点に活動する認定NPO法人 子どもシェルターモモは、2008年10月設立の団体だ。
女子専用の子どもシェルター「シェルターモモの家」と女子専用の自立援助ホーム「あてんぽ」、男子専用の自立援助ホーム「学南ホーム」を運営している。
今回の寄付を電気工事や備品の購入に充て、子どもたちの快適な暮らしに役立てたという。
子どもシェルター事業のほか、アフターケア相談所「enえん」を拠点とした児童養護施設等退所者に対するアフターケア事業や、子どもの問題についての啓発活動を行っている。
DVを受けている方々
夫婦に限らず、パートナーから精神的・肉体的・経済的な被害に遭う人たちがいる。この被害はDV(ドメスティック・バイオレンス)と呼ばれる。特に女性の場合、被害を受ける状況から脱却しようとしても、経済的な問題から自立に困難が付きまとうことがある。
長年にわたるDVは、学習性無力感に陥り、脱却することも回復も大変だといわれている。DV被害による心身の回復のためにはその場から離れることが必須で、シェルターはそのために必要な場所なのだ。
一般社団法人 白鳥の森
https://swanforest.or.jp/
徳島県徳島市で活動をする一般社団法人 白鳥の森は、四国では初となる配偶者暴力相談支援センター(配暴センター)の設置に尽力した元行政職員が代表理事として、2020年3月に創設した団体だ。
DV被害者(男女とも)とその子どものためのシェルターを運営。
今回の寄付は、老朽化したシェルター居室の修繕と、安全強化の機器設置、家電の購入に充て、入居者のQOLを上げることにつなげられたそうだ。
寄付に対する住んでいる方々からの感想の中には、母親と共に避難している9歳の子どもからの修繕を喜ぶ声もあった。こうした声は、飾らない言葉だからこそ響くものがある。
シェルター運営、DV被害者支援には同行支援や自立支援を行うほか、親子交流支援事業、セクシュアルマイノリティ支援、人権啓発活動も行っている。
認定NPO法人 ウイメンズハウスとちぎ
https://uimens.jimdofree.com/
認定NPO法人 ウイメンズハウスとちぎは、栃木県宇都宮市に事務局を置くDV被害者支援団体だ。1996年に民間のDV被害者保護施設としてスタートを切った。
他団体はシェルターを運営しているのに対し、ここは離婚調停を開始したり、離婚が成立したりというような、法的手続きが済んでいるか済みつつある女性たちに提供されるステップハウスを運営している。
今回の寄付を活用し、キッチンとトイレの改修や、床・畳・壁紙などの新調を図った。住環境が格段に改善されて、今回の支援が新しい生活の後押しになっているという。
このほかウイメンズハウスとちぎでは、暴力被害女性のための相談事業、女性と子どもの人権に関する啓発活動・広報活動なども行っている。
特定非営利活動法人 山口女性サポートネットワーク
http://www.dv-net.jp/
山口県宇部市で活動する特定非営利活動法人 山口女性サポートネットワークは、2015年10月に設立された団体だ。
2002年2月に母子4組まで受け入れ可能な有料のシェルターを開設したが、老朽化が顕著になっていた。今回の寄付を元手にシェルターと事務所を移転し、快適に過ごせるようになったそうだ。
ただ、DV被害者支援への理解ある不動産オーナーを探すのが難しかったという話があり、課題を感じる。
シェルター事業のほか、電話やSNSを活用したDV被害者の相談や、リモートカウンセリング、自立支援、市民啓発活動、行政への提言など、総合的なDV被害者支援事業を行っている。
NPO法人 ハーティ仙台
https://www.hearty-sendai.com/
NPO法人 ハーティ仙台は、宮城県仙台市を中心に活動する団体だ。1999年4月に発足し、2011年4月よりNPO法人に認証された。
DV被害の女性とお子さんのためのシェルターを提供しているが、現在のシェルターはもともと13年借り続けている古い物件ということだった。
今回の寄付を使って、シェルター全体をリフォームし、見違えるようにきれいになったそうだ。
入居者の声では、心身共に疲れ果てたDV被害者の方々が、室内が明るくきれいになったことで、生活のモチベーションアップにつながっている様子が報告されていた。
住環境の快適さは、人の心の健やかさにも関係しているのかもしれない。
ハーティ仙台では、セクハラ、ストーカーも含むDVやデートDV、性暴力被害を受けた女性のサポートを目標に活動しており、自助グループ「話し合いの会」の開催や、出張相談、こころのケアなども行っている。
えらんでエールを通じて課題を共有する
えらんでエールは寄付をして終わりではない。LIFULLでは社内セミナー「えらんでエールWeeks」で、寄付先の方々にシェルターの課題を聞き、社会問題を社員間で共有している。
シェルターの運営は、入居する人の安全確保のため公に取り沙汰されることがあまりなく、それゆえに“見えづらい不”とも言われる。
えらんでエールを通じて、自分の部屋探しだけでなく、こうしたシェルターの存在、誰かのより良い暮らし、より良い社会についても思いを巡らす機会なることを願っている。
※本記事の内容は、LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL note 2022年10月掲載当時のものです。
【LIFULL HOME'S ACTION FOR ALL】は、「FRIENDLY DOOR/フレンドリードア」や「えらんでエール」のプロジェクトを通じて、国籍や年齢、性別など、個々のバックグラウンドにかかわらず、誰もが自分らしく「したい暮らし」に出会える世界の実現を目指して取り組んでいます。
公開日:
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