東武不動産が押上に宿泊施設「T-home景(KEI)」をオープン
2月11日、東武不動産がプロデュースする木造2階建ての宿泊施設「T-home景(KEI)」がオープンした。東京スカイツリー間近の押上駅から徒歩3分ほどの街並みの一角にある。
木造2階建ての棟は全6棟、29室という規模で、各室4~10名のグループに対応する。宿泊料金は1室ごとに設定されており、約3万円から約8万円ほど(時期により変動)。宿泊する人数や部屋にもよるが、1人あたり1泊約1~2万円程度に相当する価格帯となっている。
主な顧客層として想定されているのは、海外からの観光客のグループだ。キッチンや洗濯乾燥機、冷蔵庫、炊飯器などの家電や食器類も完備。長期にわたる滞在を想定したアパートメントホテル型施設として計画されている。そのほか、ビジネスパーソンのテレワーク、女子会やサークルなどのプライベートなパーティー、上京してきた受験生の勉強部屋兼宿泊所などの用途にも使えそうだ。
目を引くのは、和風の外観。焼き杉を思わせる黒い外壁に、瓦葺きの下屋を備えた切妻屋根の棟は、江戸の長屋をイメージしたデザインとなっている。あえて2階建ての低層に抑えた建物は周辺の街並みにも馴染む。地域と地続きになった「暮らすように泊まる」というコンセプトがベースに据えられた施設だ。
和風とモダンを融合させた、非日常感を楽しめる客室
「T-home景(KEI)」のネーミングは、「『景』観」、「風『景』」、「『景』色」などを由来とする。6棟の配置は江戸の街並みをイメージしたもので、広場と路地でつなぎ、日本の古き良き景観を提示してみせたものだ。
設計はアトリエ9建築研究所、施工は三井ホームが手掛けた。敷地は厳しい耐火規制がある防火地域の指定を受けているが、三井ホームの「2×4工法耐火構造」を取り入れることでクリア。独自の遮音床、屋根断熱などの技術も活用して、町中にありながら、静かで天井の高い、落ち着ける空間を実現した。
29室のうち間取りは15タイプ。1室あたり4、6、8、10名の定員を想定している。外国人も使いやすいよう、完全な和室ではなく、ベッドを用いた「和モダン」なしつらえとなっている。一部の客室では二段ベッドを設置した。
客室ごとに、北欧風、和モダン、モノトーンなど、多彩なスタイルがあり、宿泊客が自分の好みに合わせて部屋を選ぶことができる。
インテリアには木製の造作、障子、和紙などのほか、墨田区にある企業の製品などを使用。
室内に設置したテレビには、近隣の店舗などの情報を映すようにして、宿泊客を地域に導くような仕掛けも用意している。
まちをこれからの時代に合わせて アップデートしていく
東武不動産では、2018年より東京スカイツリータウン®周辺エリアでアパートメントホテル型施設「T-home」シリーズを展開している。「T-home景(KEI)」は、20室以上の客室を有する初の施設となった。
同社では、東京スカイツリーの南側エリアのにぎわいづくりを目的とした「ことまちプロジェクト」が進行中だ。「T-home」シリーズの展開もその一環に位置付けられる。
墨田区押上の周辺は、東京スカイツリーが2012年に開業して以来、大きく再開発が進んだ。その一方、スカイツリーの南側のエリアは、倉庫や駐車場、小規模なビル、マンションが多く、空地・緑地が少ない。さらに商店街の高齢化、後継者難などもあり、時代から取り残されかねない状況にある。
そこで東武不動産では、従来は観光ののちに他の地域のホテルに帰っていったスカイツリータウンの来訪者を、「T-home」シリーズのホテルに宿泊させ、周辺地域に導き、新たなにぎわいを生み出そうとしているというわけだ。
これまでのまちの雰囲気や歴史、文化、なりわいなどを踏まえて、地域の人々と新たな住民、観光客などが一緒に息づくコミュニティをつくる。ヒューマンスケールのまちづくりを目指して、空地や緑地の確保などをおこなって、歩行者が足を止めながら楽しく歩ける沿道空間を形成する。店舗や宿泊施設の整備を進め、観光客に長く滞在してもらう。同社は、このような取り組みを続けて、まちをこれからの時代に合わせた形にアップデートしていこうとしている。
コミュニティを生み出す再開発。 東武不動産のひとつの答えに
「T-home」シリーズでは、既存のビルをリノベーションしたり、低層の木造建築を使用したり、まちと一体となったホテルを展開することで、「まちに滞在する」感覚を観光客に持ってもらおうとしている。いわば、観光客もまちの一員として参加してもらえるようなホテルだ。
墨田区はもともと生活文化の豊かなエリア。地域に根付いた飲食店、工芸、銭湯などの施設がたくさんある。「T-home」に滞在してもらい、短期的にまちの住民としての体験をしてもらう。地域のお祭りに参加してもらったり、住民との交流イベントを開催したり、ちょっとしたきっかけを提供していくことで、地域に人が行き交うにぎわいを取り戻そうとしている。
鉄道会社系のデベロッパーでは、近年こうした箱ものに頼らず、コミュニティを生み出すスタイルの地域再生の動きが各地で見られるようになってきた。タワーマンションや大規模な商業施設に頼る方法と違い、時間はかかるものの、現実的なコストで着実にまちを変えていくことが期待できる。
まちの資産ともいえる生活文化をコンテンツに取り込み、木造建築や和風スタイルといった伝統的なモチーフを切り口にした「T-home景(KEI)」。東武不動産ならではの再開発のひとつの答えと言えそうだ。











