家庭のエネルギー消費量の約3割を占める給湯器

2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響で、日本の燃料輸入価格は高騰している。2022年のもっとも高い時点では、2022年1月と比べて液化天然ガス1.7倍、石炭2.8倍、原油1.7倍となっていた。これにともない現在も光熱費は高止まりしている。多くの人がその負担の軽減を願っているはずだ。

また、そもそも私たちは地球温暖化対策などで、エネルギー消費量の削減に取り組む必要がある。それゆえ政府は住宅の省エネ化を推進している。具体的には、2030年までに新築住宅はZEH基準の省エネ性能を確保、2050年までにストック住宅の平均でZEH基準の省エネ性能確保を目標に掲げている。

ここで注目されているのが、高効率給湯器だ。給湯器は家庭のエネルギー消費量の約3割を占め、最大のエネルギー消費源といわれている。このような背景から2023年11月10日、「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金(以下、給湯省エネ2024事業)」「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(以下、賃貸集合給湯省エネ2024事業)」の予算案(令和5年度補正予算)が閣議決定。29日に可決、成立した。その内容と高効率給湯器とはどのようなものか、について解説しよう。

給湯器は家庭のエネルギー消費量の約3割を占める(出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」)給湯器は家庭のエネルギー消費量の約3割を占める(出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」)

3種類の高効率給湯器を対象に最大20万円を補助

「給湯省エネ2024事業」は、消費者等による高効率給湯器の導入支援を行い、その普及によって「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」の達成に寄与することを目的としている。見通しの達成とは、たとえば「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減」などだ。

この補助金のおもな内容は以下のようになる。

補助対象となる高効率給湯器

・ヒートポンプ給湯器(エコキュート)

気体は圧縮すると温度が上昇し、膨張させると温度が下がる。ヒートポンプ給湯器は、その性質を利用してお湯を沸かし、タンクに蓄える。

・ハイブリッド給湯器

ヒートポンプ給湯器とガス給湯器を組み合わせてお湯を沸かし、タンクに蓄えるもの。二つの仕組みを用いることで、より効率的な給湯が可能になる。

・家庭用燃料電池(エネファーム)

ガスからつくった水素と空気中の酸素の化学反応によって発電する。発電の際の排熱によってお湯も沸かしてタンクに蓄える。
 

「補助額の上限」(性能等によって異なる)

ヒートポンプ給湯器(エコキュート):10万円/台
ハイブリッド給湯器:13万円/台
家庭用燃料電池(エネファーム):20万円/台

追加措置

蓄熱暖房機を撤去する場合:+10万円
電気温水器を撤去する場合:+5万円

集合住宅向けに小型の省エネ給湯器の導入を促進

「賃貸集合給湯省エネ2024事業」は、設置場所の都合からヒートポンプ給湯器などの導入が難しいアパートやマンションなどの集合住宅に対して、賃貸オーナー等による小型の省エネ給湯器の導入促進を目的としている。

この補助金のおもな内容は以下のようになる。

補助対象となる高効率給湯器

・潜熱回収型給湯器(エコジョーズ)

エコジョーズは、ガスをエネルギー源とし、従来型の給湯器では捨てられていた排気熱を再利用することによって、より少ないエネルギーでお湯を沸かすことができる。

・潜熱回収型給湯器(エコフィール)

エコフィールは、石油をエネルギー源とし、従来型の給湯器では捨てられていた排気熱を再利用することによって、より少ないエネルギーでお湯を沸かすことができる。

補助額

追い焚き機能なし:5万円/台    
追い焚き機能あり:7万円/台

申請方法や対象となる着工日などは両事業とも共通

申請方法や対象となる着工日などは、両事業とも以下のように共通だ。

補助対象者と交付申請者

補助の対象となるのは、給湯器設置工事の発注者だ。ただし、申請の手続きは施工事業者が行い、補助金の交付を受けてから発注者へ還元する。施工事業者は、申請前に「補助事業者」として登録を受ける必要がある。

還元方法

交付された補助金は、補助事業者から工事発注者へ全額還元される必要がある。おもな還元方法は、「工事代金に充当する」「現金で支払う」のいずれかになるはずだ。どちらにするのかは、必ず申請時に双方で合意しておかなければならない。

対象となる着工日

2023年11月2日以降に着工したものが対象。

なお、申請方法などの詳細は2024年1月下旬に公表される予定だ。

申請方法等は、両事業とも共通。手続きを行うのは施工事業者になる。ただし詳細は2024年1月下旬に公表される予定(出典:省エネルギー庁資料)申請方法等は、両事業とも共通。手続きを行うのは施工事業者になる。ただし詳細は2024年1月下旬に公表される予定(出典:省エネルギー庁資料)

補助事業者と相談して最適な給湯器選びを

上記のように政府は、高効率給湯器の設置を推進している。だが、給湯器の選択肢が多すぎてどれを選べばいいのかわからない人も多いのではないだろうか。今回の補助対象となる設備の特徴や価格の目安などをまとめると下の図のようになる。

高効率給湯器は複数あり、それぞれ特徴や価格が異なる。しっかり比較検討し、費用対効果を見極めて導入したい高効率給湯器は複数あり、それぞれ特徴や価格が異なる。しっかり比較検討し、費用対効果を見極めて導入したい

基本的には、性能が高くなるほど価格も高くなり、補助額も多くなる。だからといって高性能な設備にすれば間違いないかといえばそうとは言い切れない。たとえば、単身世帯やお風呂はシャワーで済ますという家庭では、高性能な給湯器を導入しても節約効果はあまり期待できない。また、エコキュートなど電気をエネルギー源とする給湯器は、オール電化住宅でなければ意味がないだろう。つまり、それぞれの世帯によって最適な給湯器は異なる。「給湯省エネ2024事業」または「賃貸集合給湯省エネ2024事業」の利用を検討するならば、補助事業者とよく相談して、もっとも節約効率の高い設備を選びたい。


なお、令和5年度補正予算では本事業以外にも、住宅の省エネ化を支援する事業を実施。3省庁が合同で「住宅省エネ2024キャンペーン」としてさまざまな補助制度を用意している。詳細は以下の関連記事を参照いただきたい。

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住宅の省エネ化への支援強化に関する予算案を閣議決定!概要を解説

高効率給湯器は複数あり、それぞれ特徴や価格が異なる。しっかり比較検討し、費用対効果を見極めて導入したい最適な給湯器は家庭によって異なる。補助事業者とよく相談して選択することをおすすめする

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