なにわ筋線とは?
2023年3月18日、JR「大阪」駅に新たな地下ホーム(うめきた地下ホーム)が開業する。現在、関西空港や和歌山方面から大阪に向かう特急「はるか」「くろしお」は梅田貨物線を走行するため大阪駅に停車しない。そのため新大阪駅で普通列車に乗り換えて、ひと駅戻ってこなければならない(特例で新大阪駅~大阪駅間の運賃は不要)が、うめきた地下ホームの開業によって、大阪駅への停車が実現する。
なにわ筋線とは、そのうめきた地下ホームとJR「難波」駅および、南海本線「新今宮」駅をつなぐ約7.2kmの新路線のこと。開業は2031年の予定で、今春開業するうめきた地下ホームが、なにわ筋線の大阪駅となる。なにわ筋線の開業にあたっては、ほかに、中之島駅、西本町駅、南海新難波駅の各駅が設けられる(すべて仮称)予定だ。
関西は2014年以降、急激に増えたインバウンド需要により、多くの外国人が訪れるようになったが、関西国際空港から都心部へのアクセスに時間がかかるなど、交通インフラの課題が指摘されていた。コロナ収束後のインバウンド需要増加を考えると、都心アクセスの改善は急務であるが、なにわ筋線はその改善策として注目されている。
なにわ筋線が完成すれば、新大阪駅から「関西空港」駅まで乗り換えなしで直結するので、現在より乗車時間が減少し、都心へのアクセスが改善される。
残念ながら、なにわ筋線の開通は、2025年に大阪・夢洲で開催される国際的なイベントには間に合わないが、それを期にさらに膨らむインバウンド需要に対応する、関西の重要な交通インフラ計画であることは間違いない。
開業効果などについては過去の記事を参考にしていただきたい。
■関連記事
「なにわ筋線」は大阪グローバル化を牽引するか。関空-新大阪間のスピードアップで、アクセス向上を狙う
乗り換えなしで所要時間は約10分短縮へ。ルートはどうなる?
なにわ筋線がなぜ時間短縮になるのか理解するためには、現状の交通アクセスを説明しておく必要があるだろう。
関西空港駅から大阪の都心部にある大阪駅や梅田駅に行くルートは、現在2通りある。一つはJR線の特急「はるか」や「関空快速」などを利用する方法だが、大阪市内の中心部は大阪環状線を走るので、中心部を迂回するような形となり時間的なロスが発生する。
もう一つは、南海電鉄を利用する方法で、特急「ラピート」であれば「なんば」駅まで約38分で到着する。しかし、南海電鉄はなんば駅が終点。梅田駅に行くためには、なんば駅からOsaka Metro 御堂筋線に乗り換えることになる。地下まで下りるには移動距離がかなりあるので、キャリーバッグを持った旅行者にとっては、乗り換えの手間と時間がかかることになってしまうのである。
関西が国際都市として発展していくためには、少しでも都心部のアクセス時間を短縮したいところである。また、国内の移動を考えた場合、新幹線の停車駅である新大阪駅の重要性が年々高まっている。将来、リニア中央新幹線の停車駅にもなる新大阪駅と関西空港駅を結ぶ交通アクセスの強化も重要な課題となっているのだ。
乗車時間を短縮するためには、できるだけ南北を直線的に走るルートを確保し、既存のJR阪和線と南海本線にスムーズにアクセスする必要がある。そこで、四ツ橋筋の西側を走る道路「なにわ筋」の下を通るルートを採用し、途中に、(仮称)中之島駅・(仮称)西本町駅・(仮称)南海新難波駅の3つの新駅を設けることになった。
なにわ筋線のルートを新大阪駅から関西空港駅に行く場合で説明しよう。新大阪駅⇒うめきた(大阪)地下駅⇒中之島駅⇒西本町駅と南下していくが、西本町駅を過ぎると、JR難波駅方面と新設される南海新難波駅方面の2つのルートに分岐することになる。なにわ筋線が開通すると、新大阪駅から関西空港駅まで最大10分、大阪駅から関西空港駅まで最大20分、乗車時間が短縮されると予測されている。10分くらいと思うかもしれないが、乗り換えにかかる時間を考慮すると、実際の短縮時間はもっと大きくなるだろう。大きな荷物を持った旅行者にとっては、手間と時間が大幅に短縮されるので、メリットは大きい。
関西一深い駅も。各駅の構造はどうなる?
地下鉄を作る場合、既存の地下構造物を避けなければならないのは宿命であるが、大阪市内の中心部はOsaka Metroを中心とする交通網が格子状に走っているため、かなり深い場所を通ることになる。
計画によると、中之島駅は深さ40mで、2面2線の二層構造になっている。これだけ深くなったのは駅の南北に堂島川と土佐堀川が流れているからだろう。また、この駅は京阪中之島駅との乗換駅になるので、京都方面へのアクセスが確保できる。
西本町駅は深さ30mで1面2線の構造になっている。なにわ筋線で唯一、乗換駅ではない駅となる。ただ、Osaka Metro四つ橋線の本町駅まで近いので、歩いて乗り換えすることは可能だ。
南海新難波駅は深さ40mで2面2線の構造になっている。現在のOsaka Metroで一番深い駅は、長堀鶴見緑地線の「大阪ビジネスパーク」駅の32.3mなので、中之島駅か南海新難波駅が、関西で一番深い駅となりそうだ。
また、新難波駅から新今宮駅までのルートは、44‰(44パーミル:1,000mの距離で44mの高低差)となるので、この急勾配に対応する車両の開発を検討するという話になっている。やはり一番深い所を走るというのは何かと大変なのである。駅の深さは最終的に確定しないとわからないが、なにわ筋線が、関西で一番深い場所を走る沿線であることは間違いないようだ。
大阪の人の流れはどう変わる?
大阪市の都心部は、ビジネスや商業の中心地でありOsaka Metroを中心にいくつもの路線が集まっている。特に梅田を中心とする「キタ」エリアと、なんばを中心とする「ミナミ」エリアの南北を移動する人の数が非常に多く、朝のラッシュ時などは非常に混雑している。現在、梅田地区となんば地区を直接結ぶ路線は、Osaka Metro御堂筋線と四つ橋線の2つである。そこに、3つ目の路線として新たになにわ筋線が加わることで、乗客が分散され、梅田駅やなんば駅などの乗り換えターミナル駅の混雑が緩和されることが期待される。
また、周辺の各路線となにわ筋線の乗り換え駅ができることで、都市鉄道のネットワークが強化され、さらにフットワークがよくなると考えられている。より多くの人が都心部に集まりやすくなり、インバウンド需要の復活で人が増えても、人の流れを分散させることができる。
JRと南海が共用。ダイヤはどうなる?
コロナ禍以前、南海本線ではおおむね関西空港方面への特急「ラピート」が1時間に2本、空港急行が4本運行されていた。また、JRでは同じく、特急「はるか」が1時間に2本、関空快速が4本運行されていた。それぞれの路線で、特急は30本に1本、非特急は15分に1本運行している計算になる。(JRは和歌山方面への特急「くろしお」も、1時間に約1本運行)
2017年9月の大阪市都市計画局の資料によれば、なにわ筋線にはこの2路線の電車が乗り入れることになり、特急は15分に1本、非特急は7~8分に1本と、運行頻度が倍になるとしている。具体的な列車ダイヤはこれから決まっていくが、便利になることは確かである。
また、大阪環状線には、阪和線と大和路線が乗り入れているので、大阪環状線のダイヤが乱れた場合には広範囲に影響がでてしまうが、なにわ筋線が整備されると、大阪環状線のダイヤの乱れが起きたとしても、関西空港へのアクセスに影響が波及しにくいというメリットがある。
阪急も「なにわ筋連絡線」「新大阪連絡線」を構想
将来、なにわ筋線に阪急電鉄が参入する構想も進んでいる。阪急電鉄は、阪急神戸線、阪急宝塚線、阪急京都線の3線が、「大阪梅田」駅に乗り入れているが、新大阪駅には停車しないので、なにわ筋線に乗るためには、大阪梅田駅でおりてうめきた(大阪)地下駅まで歩いていくしかない。人気の沿線で利用客も多いので、なにわ筋線に乗り入れることができれば、利便性は大きく向上し、多くの人がその恩恵を受けることになる。
そこで、阪急電鉄は「十三」駅の地下に新しくホームを設置し、うめきた(大阪)地下駅へとつながる「なにわ筋連絡線」を計画している。完成すれば、なにわ筋線への乗り換えがとてもスムーズになる。(従来の阪急各線は、なにわ筋線と線路幅が異なるため、乗り入れできない)
また同時に、十三駅から新大阪駅までつなぐ「新大阪連絡線」も計画している。開通すれば、新大阪駅へのアクセスも大きく改善されるので、阪急沿線の乗客にとってはさらに便利になるのである。新大阪駅までつながることで、南海電鉄の特急列車が新大阪連絡線経由で走ることになる可能性もある。
このように、各路線がつながっていくことで、さらに完成の都市鉄道ネットワークが強化されていくので、将来がとても楽しみである。
公開日:








