前提:モノの値段はまだまだ上がる。だが、上がり方にはばらつきがある

これからを考える前提として不動産価格、家賃に限らず、モノの値段は続伸するという点をあげておきたい。不動産に関していえば新築は今後、かけたコストに見合うだけ高く売れる、貸せるものが中心になっていくと考えられ、高額にならざるを得ないだろう。

こうしたモノの価格の上昇に連動して収入が増えるならよいが、なかなかそうはいかないことは言うまでもない。では、どうするか。ひとつ、分かっているのはモノの値段の上がり方は必ずしも一律ではないということ。

特に不動産の場合はその傾向が顕著で、立地、広さ、築年、建物種別などと条件が変わればそれだけで価格、家賃は変化する。2026年に限らず、今後、不動産を巡る動向はそのバラツキをどう使っていくかということになってくる。もちろん、予算が潤沢にある人なら従来通りの買い方、借り方でよいだろうが、そうでない場合にはどう隙間を狙うか。二極化が進むことになるだろう。

後者の場合の具体例としては、違うものに目を向ける、これまで忘れられていたもの、使えないとされていたものが再評価される、新しいやり方が模索されるなどの動きが想定される。

この記事では、取材などを通して実感したいくつかの動きのうちの一部を、買いたい人、買う人向けの予測として紹介していきたい。

トレンド予測1:分譲一戸建て供給はわずかに増加

マンションの高騰で都市部では一戸建てに目を向ける人が増えている。2010年を100とした不動産価格指数でみると東京都のマンションは2025年9月のデータで233.5となっているが、戸建住宅は138.3。まだ、比較的買いやすいと考えられるわけだ。

とはいえ、新築住宅着工戸数は2005年の124.9万戸から減少を続けており、今後も長期的には増える見込みはない。

だが、2026年についてだけは多少増えるのではないかと一般財団法人 建設経済研究所が予測している。その根拠は2025年度は2024年度に省エネ基準適合義務化等に伴う駆け込み需要があったため、その反動で着工戸数が減ったが、2026年にはそこからの回復が見込めるのではないかというのである。

といっても前年度比2.9%という予測で、数では3300戸ほど。それほど選択肢が豊富になるわけではないが、一戸建てを買いたい人にはチャンスかもしれない。

ちなみに分譲マンションはマイナス1.9%と予測されており、価格、供給数ともにさらに買いにくくなりそうである。

不動産価格指数(令和7年9月分)不動産価格指数(令和7年9月分)
不動産価格指数(令和7年9月分)不動産価格指数(令和7年9月分)

個人的には首都圏近郊でいくつかコーポラティブの仕組みを利用した一戸建て分譲が始まっている点に期待している。購入希望者が組合を作って共同で土地を買い、ある程度内容の決まった住宅に個人の好みでプラスαをしていくというやり方で、関わる事業者を減らし、必要なものに絞ることで価格を抑えることが可能という。

【LIFULL HOME'S】一戸建てを探す

<参考サイト>
●不動産価格指数(令和7年9月分)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001975622.pdf
●建設経済モデルによる建設投資の見通し
https://www.rice.or.jp/wp-content/uploads/2025/10/251010-model.pdf

不動産価格指数(令和7年9月分)一般財団法人建設経済研究所 建設経済モデルによる建設投資の見通し(2025年10月)より、2026年の住宅着工戸数の推移(2025年、2026年は見通し)
不動産価格指数(令和7年9月分)西武柳沢駅近くの農家が主体となって宅地を分譲、売っておしまいではないやり方を模索している(筆者撮影)

トレンド予測2:団地の再評価、活用が進む

国が定めた公営住宅の法定耐用年数はRC造で70年となっている。そのため、多くの団地ではこれまで築年数が古くなった団地については新規入居者募集を停止、徐々に人を減らし、最終的には建物を取り壊す、建て直すなどしてきた。だが、地域によっては建替えはもちろん、解体にすら費用が捻出できない例もある。

一方で安価で住める、使えることに加え、独自の雰囲気に惹かれて団地を選択する人達も増えつつある。そうした動きに呼応するように用途廃止を決めた、廃止した団地を再度使おうという動きが出始めている。

例えば福島県では2000年に用途廃止を決定、新規募集を停止していた県営野田町団地を2025年に保存活用することを決めており、日本最古の静岡市営羽衣団地もこの10年ほど止めていた新規入居募集を移住者のためのお試し住宅という位置づけで再開している。

また、神奈川県住宅供給公社では二宮(二宮町)、浦賀(横須賀市)で本拠地とは別に団地を借りられる「二地域居住制度」を導入。古くなった団地の使い方を新しくすることで利用者を増やしている。

人手不足、資材高騰、開発適地の減少その他による住宅価格、家賃の上昇が続いている。それを背景に2026年の住宅、不動産の動きのうち、高値をどう回避するかを中心にデータ、事例を踏まえながら予測される動きを考えてみた。静岡市内には昭和20年代に建築された団地が9棟現存している。写真左から2棟目、3棟目が最古の羽衣団地(筆者撮影)

住宅を買う、借りるを考えた時、多くの人は民間の事業者を想定すると思うが、多くの自治体には公的住宅を供給している主体がある。しかも、彼らが活動を開始したのは戦後の住宅不足解消のためだったため、保有する物件の大半は古く、安く、空き家も多い。それをどう使っていくか、どこの事業者も考え始めている。必ずしも従来通り住宅としての再利用だけでなく、店舗やオフィス、宿泊施設など多彩な使い方も含め、今後模索が続くはずである。

ちなみにここまでは賃貸住宅の話だが、京都市住宅供給公社では40年以上前に分譲したニュータウン内の住宅を買い取り、手を入れて2026年1月から子育て世帯や若年層に向けて販売を始めた。この手の動きも進むと面白いと思う。

<参考サイトなど>
門司区の築73年「旧畑田団地」。やりたいことをできる場に団地を再生、月額1万円で入居者を募集
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_01223/

未踏の集落リノベーション、月見台住宅(リノベーション・オブ・ザ・イヤー2025 無差別級最優秀賞)
https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2025/2254

京都市住宅供給公社 若者・子育て世帯向けリノベーション住宅 
https://kosha-risingcasa.my.canva.site/

トレンド予測3:ちょっと郊外に目を向ける人の増加

コロナ禍で都心以外に目を向ける人が増えたと言われる。実際、総務省の移住相談に関する調査結果では2024(令和6)年度の移住相談件数は過去最高となっている。2019年度から始まった移住支援金の利用者も年々増加、4年目の2022年度には制度を利用して5,000人以上が移住している。2022年度末に政府が掲げた2027年度までに年間1万人という目標にはまだ遠いが、確実に増えてはいる。

とはいうものの、移住者数が多いのは静岡県、群馬県、茨城県、栃木県などで東京へのアクセスが強く意識されていることが分かる。思い切って遠くではなく、ちょっとだけ外へ目を向ける人が大半というわけで、その傾向は今後も続く。

それ自体は以前からの動きだが、あえて取り上げたのはデジタルネイティブといわれるZ世代がそろそろ30代、つまり、不動産購入の主役になり始めるからだ。そして、彼らは地方移住に他の年代以上に関心を持っている。

内閣府の「第6回新型コロナウィルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年4月)を見ると地方移住への関心は20歳代で高くなっており、「強い関心がある、関心がある、やや関心がある」で44.8%。全年齢では35.1%である。

個人的な経験としても地方取材で若い移住者に会うことが増えている。デジタルを駆使した働き方にも抵抗がないと考えると、世代の変化が移住増に繋がる可能性があるのではなかろうか。また、この世代が住宅市場の主役となることで立地以外の要件に関しても今後、動きが出てくるのではないかと考えている。変化が楽しみだ。

<参考サイト>
令和6年度における移住相談に関する調査結果(移住相談窓口等における相談受付件数等)総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei08_02000312.html

地方創生移住支援事業
https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/digiden_chisou_setsumeikai/pdf/r06-01-16-shiryou5.pdf

内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生
https://www.chisou.go.jp/iikamo/column/column39.html

令和6年度住宅市場動向調査報告書(令和7年6月)世帯主の年齢
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001900667.pdf

トレンド予測4:首都の中心はさらに南へ、品川エリア大変貌

首都圏のオフィス街、繁華街は古くは東京駅周辺や浅草などの下町エリアから、新宿、渋谷、六本木と分散しながら南下してきた。それが2026年以降、さらに南下する。すでに姿を現しているJR大井町駅前の再開発「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」、同じく高輪ゲートウェイ駅前の「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」では2026年春からレジデンスの入居が始まるが、どちらも好評と伝え聞く。どちらも、これまでのその地になかった賃料、質の住宅が用意されており、そこに人気が集まるとすれば地域のイメージが大きく更新されることになる。

【LIFULL HOME'S】大井町駅の不動産・住宅を探す
【LIFULL HOME'S】高輪ゲートウェイ駅の不動産・住宅を探す

人手不足、資材高騰、開発適地の減少その他による住宅価格、家賃の上昇が続いている。それを背景に2026年の住宅、不動産の動きのうち、高値をどう回避するかを中心にデータ、事例を踏まえながら予測される動きを考えてみた。高輪ゲートウェイ駅。今後、誕生するレジデンスはすべて賃貸(筆者撮影)

品川エリアでは旧東海道沿いの品川浦周辺での13.5㏊もの巨大開発の計画もある。渋谷の最開発がある程度終わり、新宿の再開発に暗雲が立ち込める中、品川の存在感が増していくことになるのではなかろうか。

品川浦周辺北地区・西地区・南地区市街地再開発事業の事業協力者に選定(日鉄興和不動産株式会社プレスリリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000334.000001379.html

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トレンド予測5:小商い、副業できる物件のさらなる増加

建物の複合化が進んでいる。そのうちでも目立っているのが事業者によって呼び方は異なるが、住居の一部を小商い、副業などに利用できる住居だ。2011年の東日本大震災以降、これまでの働き方に疑問を抱く人が増えたことを受け、小商い、なりわいをタイトルにした書籍の出版が相次いだが、その実践の場として実際の物件が出始めている。

人手不足、資材高騰、開発適地の減少その他による住宅価格、家賃の上昇が続いている。それを背景に2026年の住宅、不動産の動きのうち、高値をどう回避するかを中心にデータ、事例を踏まえながら予測される動きを考えてみた。2026年春開業予定の、大船に誕生した新築のなりわい賃貸住宅kuguru。松竹株式会社が所有する土地に建てられたもので、建築設計監理、ブランディングを株式会社ブルースタジオが担当(写真提供/ブルースタジオ)

当初は既存住宅を改修、その一部に外に開かれた、商いの場を設けた事例が多かったが、近年は新築で小商いスペースを設けた物件も続々出てきている。かつて高度経済成長は職住を遠く分離することで進んだが、今後はそれが再度近寄っていくのかもしれない。個人的には前述の大井町トラックスにSOHOフロアが設けられていることにも変化を感じる。