補助金の規模は542億円、2022年も住宅購入支援策は手厚い
ここ数年、毎年度実施される補正予算に、住宅関連の補助金事業が継続して採択されている。
2021年(補正予算なので年度区切りではない)には、追加工事を伴う完了報告の提出期限を2022年5月末まで延長した「グリーン住宅ポイント制度」が実施され、それ以前にも「省エネポイント制度」や「次世代住宅ポイント制度」などが事業化されてきた。そして今年(2022年)も「こどもみらい住宅支援事業」が創設され、他にもいくつかの補助金事業が採択された(補正予算の閣議決定は11月26日だったので、正確には2021年末からスタートしている)。
「こどもみらい住宅支援事業」とは、子育て支援と2050年カーボンニュートラルの実現に向け、子育て世帯や若者夫婦世帯が高い省エネ性能を有する新築住宅を取得するケースや、住宅の省エネ改修をするケースなどに補助金を支給する制度だ(毎年なさまざまな名目で支援策を打ち出し続ける国土交通省の姿勢・取り組み、そして背景については後述)。
この事業には542億円の予算が計上されており、他に住宅関連では「2050年カーボンニュートラルの実現に向けたクリーン・エネルギー戦略」との位置づけで地域型住宅グリーン化事業(IT活用による効率的な合同調達など木材の安定確保に資する先導的な取組を支援)に30億円、既存建築物省エネ化推進事業に0.5億円、特定施策賃貸住宅ストック総合改善等事業(UR賃貸の省エネ改修・再エネ導入)に4.87億円がそれぞれ計上されている。
また「子ども・子育て支援」との位置づけでも、セーフティネット登録住宅における家賃低廉化に1.04億円、子育て支援型共同住宅推進事業(子どもの安全・安心や子育て期の親同士の交流機会の創出に資する取組みを支援)に1億円、などが実施されているが、これらの中ではこの「こどもみらい住宅支援事業」の予算が突出して大きいことがわかる。
ちなみに「すまい給付金」も補正予算閣議決定時に計上されており、予算も1,190億円と公表されているから、住宅ローン減税の控除率が0.7%に引き下げられることを根拠として、住宅が買いにくくなったと悲観する心配は全くない。
こどもみらい住宅支援事業の概要
補助金の対象となる事業は3つ。
①注文住宅の新築:
子育て世帯(申請時点において2003年4月2日以降に出生した子を有する世帯=概ね18歳未満)または若者夫婦世帯(申請時点において夫婦であり、いずれかが1981年4月2日以降に生まれた世帯=概ね40歳未満)のいずれかが、こどもみらい住宅事業者と工事請負契約を締結して対象となる住宅を新築する場合、住宅の性能に応じてZEH住宅(Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Orientedを含む)は100万円、高い省エネ性能等を有する住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅)では80万円、一定の省エネ性能を有する住宅(断熱等級4かつ一次エネ等級4を満たす住宅:両方とも満たすことが必要)にも60万円が支給される。
②新築分譲住宅の購入:
子育て世帯または若者夫婦世帯のいずれかが、こどもみらい住宅事業者と不動産売買契約を締結し、新築分譲住宅を購入(所有)する場合、①と同様に住宅の性能に応じてZEH住宅は100万円、高い省エネ性能等を有する住宅では80万円、一定の省エネ性能を有する住宅にも60万円が支給される。
③住宅のリフォーム:
住宅の所有者(①②のように子育て世帯または若者夫婦世帯である必要なない)がこどもみらい住宅事業者と工事請負契約等を締結し住宅のリフォーム工事をする場合、1戸あたり30万円を上限とした補助金が支給される。上限額以内であれば、複数回リフォームを実施しても申請は可能となっている。ただし店舗併用住宅の場合、住宅部分以外のリフォーム工事は対象外なので注意が必要だ。
また③には補助金の上限が引き上げられる仕組みが併設されており、③-1. 子育て世帯または若者夫婦世帯が自ら居住する住宅に行うリフォーム工事、③-2. 工事発注者が自ら居住するために購入した既存住宅に行うリフォーム工事、については最大60万円まで条件に応じて15万円刻みで支給されることになっている。
条件などの詳細は、こどもみらい住宅支援事業の概要ページを参照されたい。
https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/about/
こどもみらい住宅支援事業は補正予算での実施のため対象期間は短い
毎回同様のことだが、年末に決まった補正予算で事業を開始するため、事業開始から締め切るまでの対象期間が比較的短いことにも注意が必要だ。まず、対象となる期間のうち、基本となる「いつまでに契約すれば補助金対象になるのか」という点では、契約期間はすでに2021年11月26日(補正予算が閣議決定された当日)から始まっており、「遅くとも2022年10月31日」となっている。この「遅くとも」という表現は予算の執行状況に応じて最終日の目安が記載されているという意味であり、それまでに予算の542億円に達するとその段階で打ち切りとなる。例えば、飲食店の“売り切れじまい”と同じということだ。
また交付申請期間は2022年3月頃~遅くとも2022年10月31日(交付申請の予約は2022年9月30日まで)、完了報告期間については、一戸建てが2023年5月31日まで、10階以下の共同住宅が2024年2月15日まで、11階以上の共同住宅は2024年12月31日までとなっている。物件の規模によって竣工までの期間に違いがあることを想定しての区分ではあるが、複数棟で構成されるマンションで階数に違いがあるようなケースはどちらに該当するのかなど、確認が必要だろう。
さらに、この補助金については昨年の「グリーン住宅ポイント制度」と同様に申請だけでなく、完了報告も行わなければならないことにも注意が必要だ。申請して補助金が支給されても、完了報告、つまり実際に対象となる住宅に所有者本人が住み始めているとか、リフォームが完了したことなどの報告を、担当する施工事業者もしくは販売事業者が期日までに実施しなければ補助金の返還義務が生じてしまうので、「こどもみらい住宅支援事業」に登録した事業者は、責任をもって対応しなければならない。
補助金の対象となる住宅の条件もさまざまあるので確認が必要
この期間に加えて、対象となる住宅、リフォームにもなさまざまな条件がある。「こどもみらい住宅支援事業」の事業者が施工・販売・リフォームする住宅であっても、細かい条件を満たしていなければ補助金の対象にはならないから、併せて確認しておく必要がある。
①注文住宅の新築および②新築分譲住宅の購入の対象となる新築住宅は、
1.所有者(建築主・購入者)自らが居住するものであること
2.土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域「外」に立地していること
3.未完成または完成から1年以内の人の居住の用に供したことのない住宅であること
(完成は完了検査済証の発出日による)
4.住戸の床面積が50m2以上であること
(建築基準法で算定される「壁芯面積」であることに注意)
5.ZEH住宅(Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Orientedを含む)
および認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅
および一定の省エネ性能を有する住宅(断熱等級4かつ一次エネ等級4を満たす住宅)
であることを示す証明書があること
6.申請時に一定以上の出来高の工事完了が確認できること(建築士による証明書が必要)
具体的には基礎工事(杭基礎の場合は杭工事)が完了していること、もしくは省エネ性能等に応じた住戸あたりの補助額に総戸数を乗じた金額以上の出来高の工事が完了していること(専門家でなければ証明できない)のいずれか
③住宅のリフォームで対象となるリフォーム工事は、
1.開口部の断熱改修
2.外壁、屋根・天井または床の断熱改修
3.エコ住宅設備の設置
4.子育て対応改修
5.耐震改修
6.バリアフリー改修
7.空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
8.リフォーム瑕疵保険等への加入
となっており、このうち1~3はいずれか必須、4~8は1~3と同時に実施する場合のみ補助金対象となる。なお、建材・設備メーカー等が元請けとなり、自社の対象製品を用いて自らリフォーム工事をした場合は対象にならないのは、これまでのリフォーム補助金事業と同様の対応となっている。
良質な住宅購入支援、リフォーム助成は今後の国を支えるために必要不可欠
上記の通り、こどもみらい住宅支援事業の補助金対象となる期間、対象者、住宅の条件など概要を示したが、かつて国交省主導で実施された「グリーン住宅ポイント制度」や「次世代住宅ポイント制度」と内容・条件がほぼ同じであることに気付く。つまり、国は毎年補正予算を活用した、住宅に対する補助金事業を、時に環境負荷が低いこと、時に省エネ性能が一般住宅よりも高いこと、時に子育て世帯を支援すること、などニーズに合わせてスタイルや名称を変えて実施し続けている。
なぜこのようにより良質な住宅を購入するための支援および良質化するために必要なリフォームを助成し続けているのかというと、要件を微妙に変化させつつ支援し続けることで、長らくスクラップ&ビルドといわれてきた日本の住宅を長寿命化させること、および長く住み続けられることで資産価値や居住価値といった将来に向けての安心感を担保できるものにすること、などに国が一貫して取り組み続けているからだ。
国交省の資料によれば、日本の住宅ストックは6,000万戸超だが、そのうち実際に人が居住している住宅は5,200万戸程度に留まり、空き家は850万戸にのぼる。しかも、バリアフリーかつ省エネ仕様の住宅は僅か3%ほどの約200万戸、バリアフリーか省エネ仕様どちらかである住宅も20%程度の約1,300万戸しかない。
つまり、日本の住宅ストックの多くはバリアフリーでもなく、省エネ性能が高いわけでもなく、また耐震性も低いまま築年数だけが経過しており、リフォームによって性能が向上可能と期待できそうな住宅ストックも、現状の50%程度しかないとされる。あとは建て替えて別の活用方法を模索するとか、居住ニーズとのミスマッチを解消して住み替えを活性化するなどの方法しかない。地震や台風による大雨など自然災害が頻発し、かつ年々激甚化しているといわれる日本におい、て住宅ストックの構成がこのように脆弱では、社会財としてある種の公共性を帯びているはずの住宅が日本の経済成長の阻害要因・リスクとなりかねない状況にある。この状況を(可能であれば速やかに改善する必要があるが個人所有の住宅を恣意的に変えることはできないから)徐々に改善していくことが国の役割として求められているのであり、助成金を活用して良質な住宅を購入したり建築したりすることは、その後の環境負荷を減らし、自然災害などにも耐えうるという点で、国家的なコストの軽減につながると考えるべきだろう。
住宅ストックの性能向上、および高性能・高機能な新築住宅の供給は、特に環境負荷を抑えるという点で、今後日本という国を支える上で欠かせない屋台骨の一つとなるだろう。そのことを認識し、一人一人が“住宅の強靭化”に努めることが、結果的に地域経済ひいては日本経済を牽引するのではないかと考える。





