2020年12月中旬に2021年度の税制改正大綱が「与党税調」から答申
2020年12月10日、与党の税制調査会の審議内容が取りまとめられ、概要が公表された。
この後の進捗としては、閣議に提出され閣議決定を受けて国税に関する改正法案については財務省が、地方税の改正法案については総務省が各々作成し、2021年1月下旬から開催予定の通常国会での衆参両院委員会(財務金融委員会と財政金融委員会)および本会議での審議を経て成立し、順調にいけば予定通り4月1日に施行される。
これまで時の与党税調が答申した税制改正大綱を基にした税制改正法案が否決された例はないから、2020年12月10日に公表された与党答申の内容がほぼそのまま(ごく稀に法案化に際して微調整が行われる場合がある)法律として施行されることになる。
なお、現在では毎年度の税制改正案を政治決着させる役割を担うのが与党税調であるのに対して、我が国のあるべき税制を有識者が中長期的な観点から論議する場が内閣府の所管の下に設置されている政府税調という位置づけになっており、整合性は別として、事実上与党税調が毎年度の税制改正に関する実権を握っているといえる。
今回の税制改正で特徴的なのは、コロナ感染下の状況を踏まえて「ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生」と銘打って、新たな日常に対応した企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を促進するため、クラウド型システムを対象とする税制措置を設けてレガシーシステム(古くなったコンピューターシステムなど)からの脱却を図るとしている点だ。
また年間売上が2%以上減少した企業を対象として、大学やベンチャーと共同で研究開発を行うことを条件に、研究開発費の一部を法人税から差し引く上限を50%に拡大するほか、コロナ禍を踏まえた投資の促進に関係する税制の要件を見直し、今後の投資計画を策定して国の認定を得られれば、足元の赤字を翌年度以降の黒字と相殺して法人税の負担を軽減できる措置を拡充するなど、コロナの経済的影響を可能な限り税制からサポートしようとする試みが盛り込まれている。
今回の税制改正における住宅と土地関連のポイントは?
住宅関連では、固定資産税について2021年度に限り税額が増加する土地=地価が上昇した土地を対象として前年度の税額に据え置く特例を設けるほか、住宅や土地税制についても多くの対策が公表されている。
まず、コロナ禍における住宅取得環境が厳しさを増しているとして、消費税の10%引き上げに伴う住宅購入の反動減対策で導入された住宅ローン減税期間13年拡大の特例措置が延長されることになった。
新築住宅は2020年10月~2021年9月末、その他の住宅は2020年12月~2021年11月末までの契約で、かつ2022年12月末までの入居者を対象としている。契約期間および入居について期限はあるが、事実上13年間の住宅ローン減税の延長措置が2年間引き延ばされる。
また、この延長した期間に限り、床面積40m2以上50m2未満の住宅についても住宅ローン控除の対象とすることが決まった。ただし、新たに対象となるこの面積帯の物件については所得制限が従来の世帯所得3,000万円から1,000万円に引き下げられる(所得制限要件を満たしていても所得が1,000万円を超えた年については控除されないことに注意)。
所得税額から控除しきれない額については、現行制度と同様に控除限度額の範囲内で個人住民税額から控除される(この住民税の減収分は全額国費で補填される)。
なお、これらの措置を講じてもなお効果が限定的な所得層については、別途さらなる給付措置も検討するとしている。
この住宅ローン減税の拡大傾向については、会計検査院より現在の年末時点での住宅ローン残高の1%を所得税から差し引く方式では、住宅ローン金利が軒並み1%を大きく下回る状況を考慮すると金利相当額以上の控除が受けられることになり適切でないとの指摘が為されている。
このことから、2022年度の税制改正において「年末時点のローン残高の1%かその年の金利相当額のうち少ないほうを控除の対象とする」旨も税制改正大綱に明記されており、再来年度以降に実際の控除額を縮小する方向で見直しされることとなりそうだ。
2021年度の住宅・不動産関連の減税措置で想定される効果は
上記の通り、2021年度実施される税制改正大綱には、住宅に関連するものとして、
① 固定資産税の地価上昇分を前年度並みに据え置く(特例措置)
②-1 住宅ローン減税期間の13年拡大を2022年12月末まで延長(特例措置の維持)
②-2 住宅ローン減税13年適用物件の入居期限を2022年末まで延長(特例措置の維持)
③ 床面積40m2以上50m2未満の住宅をローン控除対象とする(世帯所得1,000万円が上限)
が明記された。
これによって、コロナ禍の影響を受けて住宅市場が縮小することを回避し、住宅需要を下支えすることで将来の固定資産税、都市計画税などの税収を確保しようとする明確な意図が汲み取れる。①の固定資産税に関しては、2020年度の税制改正によって2022年3月末までに建築された新築住宅についての減免措置が実施されており、土地については都市計画税も減免措置があることから(※)、住宅の購入に際して、手厚い優遇策が用意されているといえる。
首都圏を例にとると、新築マンションの新規販売戸数は緊急事態宣言が発出されていた春から解除後の秋にかけて激減し、その影響もあって2020年の販売戸数は2万戸台半ば程度に留まることが決定的な状況であり(2019年は約3.1万戸)、住宅購入による将来の税収の拡充を経済政策の重要な柱に据えてきた政権運営に影響が及ばないよう、業界の意向も取り入れた上で更なる「住宅購入促進策」を展開したものといえるだろう。
②の延長措置についても+3年間の住宅ローン控除が継続し、同時に適用期間も2年延長されることになったことで「住宅購入促進策」の重要な柱となる。
特にこれまで業界が要望し続けてきた③の40m2台の住宅がローン控除の対象となることは、全国の市街地中心部および近郊に建築される、単身者もしくはDINKSを主な対象者としたコンパクトタイプの新築・中古マンション(延べ床面積が40m2台の分譲戸建てはごく僅かである)が今後注目され、販売戸数が増えるであろうことは想像に難くない。
※住宅の固定資産税については、戸建ては3年間1/2減額、マンションは5年間1/2減額
土地は、小規模住宅用地の固定資産税評価額が1/6に減額、都市計画税評価額も1/3に減額
一般住宅用地の固定資産税評価額は1/3に減額、都市計画税評価額も2/3に減額される
各々面積要件などの適用条件があることに留意
「住宅ローン控除の対象となる40m2台のマンション」購入する際には確認が必要
ただし、この新たに住宅ローン控除適用の対象物件に加えられた「40m2以上」の物件(実はこの面積要件緩和も消費増税対策の一環とのことで、10%の消費税が掛かる新築もしくは買取再販物件が対象となる)とは、登記簿上の面積、つまり専有部分の内側を測った内法面積で、一般にマンションの間取図で採用されている面積表記は壁芯面積:壁や柱の厚みの中心部から測定した面積であるから(その差は概ね5%程度)、2021年度から住宅ローン控除を受けるには少なくとも間取図上で42m2以上、物件の形状によっては44m2程度の壁芯面積が必要となる可能性がある。
つまり、購入予定のマンションの専有面積が40m2を僅かに超えるものであった場合は、住宅ローン控除を受けたいと希望するなら(受けたくないと考える人は極めて少ないと思われるが)、適用対象であるかどうか必ず確認することがまずは重要だ。
さらに、住宅ローン控除を受けるために想定よりも専有面積の広い、つまりグロス価格の高い物件を購入しようとする可能性も出てくる。
住宅ローン控除は元本の上限が4,000万円に固定されている(長期優良住宅は5,000万円が上限だが面積要件は55㎡以上であるため本稿では考慮しない、なお中古は2,000万円が上限)ため、13年間の控除総額は最大で約480万円(10年間は元本の1%+11~13年目は合計2%相当で計算)となる。例えば東京都心もしくは近郊で現在分譲されている新築マンション(同一物件)で30m2台と40m2台の物件価格を比較するとそれ以上の価格差があるものも散見され、最大480万円の控除を受けるために500万円以上高額な物件を購入するという本末転倒な状況を生み出す可能性すらある。
当然のことながら、専有面積が広くなれば管理費・修繕積立金などのランニングコストのほか、固定資産税、都市計画税も(減免措置があるとはいえ)30m2台のマンションより確実に高額であるから、住宅に支払うコスト全体は想定を超えて増えることになる。
住宅ローン控除を目的とした「予算オーバー」な物件を購入することについては、熟慮の上にも熟慮を重ねてもらいたい。
新たな住居で自分と家族が安心・安定の生活を営むことが最重要・最優先の目的
実際に、現在の住宅ローン超低金利を前提として(この原稿を執筆している2020年12月時点でネット銀行の変動金利で0.4%台前半の住宅ローンが複数ある)、毎月支払う家賃と住宅ローン返済額を単純比較して、30m2台の物件を予算ギリギリで買おうとする購入希望者は多いと聞く。
担当者によれば住宅ローン金利が低い分、購入者スペック(年収や職業、勤続年数、年齢、家族構成などを総称する業界用語らしい)が一項目でも満たないケースについては事前審査で自動的にはねられるとのことだから、住宅を購入する前提として社会的信用=クレジット・スコアを高めることが先行させるべきポイントとなる。
超低金利時代に住宅ローン減税が13年間受けられる物件を購入すると実質的にマイナス金利となる場合があるとの会計検査院の指摘は尤もであり、これ以上の金利低下および住宅ローン控除期間の長期化が想定しにくい状況下では「空前の買い時」と業界が煽る可能性は高い。しかし、こういう時期であるからこそ、また自分の思うところに沿って生活を継続していくためにも、今一度「住宅を購入する目的は何か」ということについて考えておく必要がある。
いうまでもなく、住宅を購入し実際に新たな生活を始めることは人生の中でも大変有意義なことだし、自分と家族が安心して幸せに、そして大過なく過ごせることが最も重要なことで、最優先されるべきだ。「お得」だからというのが住宅購入の最大の目的になっているとしたら、それもやはり本末転倒のそしりを免れない。
予算や広さだけでなく、家族構成や勤務先、将来の資産形成など様々な点を考慮して住宅を市街地中心部もしくはその周辺で購入しようと考えている人には、内法面積で40m2以上の住宅が新たにローン控除の対象となることは一義的に歓迎すべきことだ。
ただし、その購入を目的として経済的に無理をすることは極力避けなければならない。まさに社会はコロナ禍にあって経済環境も生活環境も大きく変わる可能性があり、この時期に長期の住宅ローンを組むことに不安を感じる人も多い。住宅を購入したいという気持ちに水を差すようだが、時に「立ち止まって冷静に考える勇気」を持つことも大切なのではないか。
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