新築マンションが毎年「買い時」である理由

「客観的な」買い時と「個人的な」買い時があり、表現の仕方によっては新築マンションは毎年何らかの理由で「お買い時」と表現されることになる「客観的な」買い時と「個人的な」買い時があり、表現の仕方によっては新築マンションは毎年何らかの理由で「お買い時」と表現されることになる

筆者は、年が改まる前後に「買い時」についての取材を受けることが多いのだが、実はこの「買い時であるかどうか」という判断には客観的な買い時=市況からみて多くの購入予定者が買っても良いと考えられる時期、および個人的な買い時=頭金の目標額が貯蓄できたり、親から資金提供を受けられたり、これまでその気はなかったのだがライフステージの変化(結婚、出産、転職etc.)を控えて一国一城の主となるべく覚悟を決めたタイミング、の両方があり、媒体各社から取材時に聞かれるのは専ら前者の客観的な買い時のほうである。

客観的に買い時であるかどうかも個人のライフステージや所得や貯蓄額などによっても左右されるものではあるが、実際には社会を取り巻く経済環境によって決まってくるものであり、概ねマーケットの動きや購入予定者の動向を分析・検証することで見えてくることが多い。
そうなると(余談だが)、景気が良いなら良いなりに、悪いなら悪いなりに、何かしら購入に向けてのプラス項目が必ずあるものなので、「○○という条件を満たす方にとっては」お買い時であるという表現が成立する。よって、新築マンションは毎年何らかの理由でお買い時であると表現できることになる。

現状に即せば「夫婦とも正社員として仕事をしており、世帯年収が1,000万円を超えているが、当面は子供を作る予定がなくキャリアアップを目標としているため、住宅ローン減税や超低金利を有効活用して職住近接エリアに資産価値の高そうなマンションを購入したいと思っている」購入予定者にとってはレバレッジの利く投資先としてマンションは買い時であるということになる。

買い時であるか否かの主な判断材料 その1:価格動向

個人的に買いたい気持ちが高まっているとか、相続税対策など何か理由があってマンションを購入する必要があるという状況でなければ、不動産を購入することについてことを急ぐ必要はない。しかし、上記でいうところの「客観的な買い時」であるかどうかを自分なりに判断できれば、その上で購入に向けての決断をすることができるようになる。

では、何を見れば良いか。以下列挙する。

①マンションの価格動向
不動産データベースを運営するいくつかの企業が市場価格を月次ベースで公開しているので、価格動向は比較的容易に知ることができる。エリアごと、駅勢圏ごとの価格動向は物件が分譲されるタイミングで大きく振幅することがあるので、参考までに「相場価格」を把握することを心がけたい。エリアごとの価格相場はネットで簡単に調べることができる。

②専有面積/面積単価の動向
これはやや専門的な見方になるが、不動産業にかかわる人は通常「坪単価」で物件価格の相場観を把握することが多い。坪とは畳2枚分/約3.3m2の広さで、その面積単価の上下を見ることで面積に左右されない価格情報を得ることができる。
一般に地価や物件価格が上昇する傾向にある時期は一戸当たり(グロス)の価格を抑えるため専有面積が縮小し、反対に価格下落期はグロス価格を維持するために専有面積を広げる傾向にあることを覚えておきたい。面積単価は振幅がより顕著になるから、広さを考慮することなく価格が上がった下がったを判断しやすくなる。現状では、新築マンションの専有面積は資材価格や人件費、供給エリアの地価高騰を受けて縮小する傾向にある。

買い時であるか否かの主な判断材料 その2:金利動向

③金利の動向
現金で購入する人でなければ、住宅ローン金利の動向は買い時であるか否かの判断に大きな影響を与える。固定金利は10年ものの新発国債の金利=長期金利に連動しているので、毎月末に公表される大手金融機関の10年固定金利やフラット35などの実施金利の動向を推測するうえで重要な指標になる。現在の長期金利は史上最低水準の0.3%~0.4%台で推移しており、2015年3月の10年固定住宅ローン金利は最低で1.05%、最高で3.675%となっている。もちろんわざわざ高い金利で借り入れたい購入者はいないから、最低金利の1.05%で借り入れ可能な金融機関に申し込みが集まることになる。

また変動金利は短プラ=短期プライムレートという金融機関の間で融通される資金の金利が基になっており、基本的に短プラ+1%が実施金利の目安になる。短プラは2009年1月から1.475%で6年ほど動きがないので、変動金利も2.475%が目安となる。
忘れてはならないのが「金利優遇」だ。住宅ローンは金融機関が販売する「商品」だから、上記のような金利水準に対して、所得や収入、勤続期間などで金利を優遇するサービスが用意されている。現状では金利優遇競争が過熱して金融庁が調査に乗り出す状況になっているほどだが、いろいろと条件はつくものの、変動金利の最低は0.539%(!)という水準にまで低下している。住宅ローン金利は様々な融資条件があるので単純比較するものではないが、消費税が8%の時代にその約1/15で借り入れられる住宅ローン商品が存在することが驚異的と言わざるを得ない。この点だけは異次元の金融緩和の恩恵と素直に歓迎すべきだろう。

また、住宅金融支援機構が提供するフラット35も「S」の条件を満たす物件に対しては、現在の実施金利から0.6%優遇することが決まっている。こちらは予算措置を経て実施されるものなので、予算が限度額に達するまでに申し込むのが必須条件になる。

現在の変動金利の最低は0.539%(!)という低水準である。</br>消費税が8%の時代にその約1/15で借りられる住宅ローンがあることは、</br>異次元の金融緩和の恩恵と素直に歓迎すべきだろう現在の変動金利の最低は0.539%(!)という低水準である。
消費税が8%の時代にその約1/15で借りられる住宅ローンがあることは、
異次元の金融緩和の恩恵と素直に歓迎すべきだろう

買い時であるか否かの主な判断材料 その3:景気動向

④景気の動向
何をいまさらと言われるかもしれないが、景気の先行きに希望が持てなければ、そう遠くない将来仕事を失うリスクや、減給されるリスクは大きくなる。景気に関係なくリストラが実施されるケースもあるにはあるが、景気動向は所得の先行きを見定めるための大切な指標だ。具体的には日経225などの株価動向や為替相場、REIT指数や消費者物価指数(CPI)などが代表的な指標となる。これらの景気指標は経済的な要因だけでなく、政治的、地勢学的要因などでも大きく変動することがあるから(最近ではその要因のほうが大きいとさえ感じる)、ほぼ毎日チェックする習慣を身につけておきたい。新聞を隅から隅まで読まなくとも、経済指標の動きとその要因とされる事柄だけはしっかりと理解しておく必要がある。特に鉄や銅、セメントなどの資材価格の動き、建設業の有効求人倍率などは目に留めるように心がけたいものだ。

情報感度の高さ=情報リテラシーが買い時を決める?

冒頭示した通り、マンションの買い時には客観的なものと個人的なものがあるのだが、実はこの2つは密接にかかわっている。なぜなら、客観的な買い時かどうかを判断するための材料は、個人の経済活動の総和とも言えるからである。経済活動を始めたばかりの新卒~若年労働者がいきなりマンションの購入適齢とはならないのと同じと考えれば良い。
更に、客観的条件には、例えば東京五輪が2020年に開催されることが決定しているから、少なくともそれまでは東京の競技会場周辺エリアを中心として、道路&街並みの整備などによってエリアポテンシャルが引き上がるであろう=当然同エリアに所在するマンションの資産価値も維持、向上することが期待できるなどのポジティブイベントも含まれるし、その効果について肯定も否定もされる“アベノミクス”の行く末も少なからず影響するものと考えられる。中長期的には日本の人口動態を背景とした「国力」も住宅購入エリアの選択の前提として考慮すべきことは言うまでもない。

住宅を購入するということは、やや大袈裟に言えば、将来の自分と家族の人生に責任を持つと宣言することに等しい。人生において守るべきものを持つという行為は、生半可な判断でできるものではないからだ。
住宅を購入する事を考えるのであれば、自分なりの「買い時」である根拠を精査し、市場動向を確認し、経済状況の動きにアンテナを張って、情報リテラシーの向上に努めていただきたい。これは資産価値を巡る検証において行うことと同じくらい「戦略的」な行動でもあるのだ。
「買い時」であるか否かの判断を他者に委ねることなく、また情報に安易に流されることなくすることができれば、自身が購入される住宅の購入満足度は高くなるに違いない。

2015年 03月25日 11時06分