顧客より不動産知識とスキルがあると言い切れるか

不動産の知識・スキルを得ることはより重要になってきている。不動産の知識・スキルを得ることはより重要になってきている。

不動産知識・スキルを高めることの必要性や現状の課題、これから不動産を扱うに際して得ておくべき知識・スキルについて書いてみる。

前回のHOME'S PRESSの記事で不動産営業パーソンにとって不動産の知識やスキルを持つことはこれからより重要になると書いた。一部の方は当然のことのように感じられたと思うが、まだまだ不動産営業パーソンの多くは良い情報を掴むことだけに熱心である。それは、不動産取引は物件から始まり物件で終わる物件ありきの商売だからしょうがない。ただ、今後はそれ一辺倒だと数字を出していくのはより厳しいのではないかと思う。

何故そのように思うのか?
それは、顧客と他業種にいる人の方が圧倒的に不動産の知識やスキルへの学習意欲が高いからである。それもそのはずだ。顧客は高額な不動産を売買するのだから当然だし、他業種の人も自分達の業種よりも楽に安定的に利益を生む不動産業に参入したいと思っているからである。また、その学習環境は整いつつある。ネット情報や書籍も充実している。

後者については最近分かった。
それは不動産賃貸業もされている飲食店オーナーと話をしたからである。話を聞くと不動産業は飲食業と比べてはるかに固定経費は安いし、利益率も高い。また、飲食業はその日の売り上げが流動的なのに対して、不動産業は安定的で先が読みやすいというメリットがある。だから「もっと勉強していきますよ」と話をしていたが、確かに聞けば聞くほど楽で安定的なような気がした。また、先日相談に来られたサラリーマン不動産投資家はハッキリこう言っていた。「不動産は法律や建築、金融といったロジック(論理)がベースなので、知識をつけてロジックで考えていけばそう失敗しない。また、競争相手である不動産会社や大家が不勉強なので他の市場と比べて勝つチャンスが多い」他所でも同様のことを言われたことがある。不動産業界のプロパーである私にとっては「そんな簡単じゃないよ」と言いたいところだが、他所から見るとそう見えることだけは理解できた。

不動産オーナーがより真剣に不動産を学んでいる

不動産の実務に関するセミナーであったが、参加者の大半は不動産業界以外からであった。不動産の実務に関するセミナーであったが、参加者の大半は不動産業界以外からであった。

不動産オーナーや売買の消費者、他業種の人ほど不動産への学習意欲が高いことが分かった出来事がある。
拙著「不動産の基本を学ぶ」の読者還元セミナーを昨年12月から今年2月まで計5回を行った。想定参加者は不動産業界の新人として、業界紙を中心に費用をかけて広告などをうった。それ以外は特段費用もかけず自社のHPや一部のネットセミナー広告で掲載した程度。その結果、23名もの参加者にお越し頂いたが、さてここで皆さんに質問をしたい。このうち何名が不動産業界人だったでしょうか?

半数の12名だと思われる方。いや、残念ながらもっと少なかった。その半分の6名だと思われる方。残念それも違う。逆に23名が全員、不動産業界人であった…と言いたいところだがそれも違う。
正解はたったの4名である。かけた広告費を考えると涙が出るのだが、現実はそのような結果であった。広告の見せ方や、そもそものセミナー内容、私のバリューといった問題も当然あると思うが、さすがに23名もの方にお越しいただいて、うち4名だけだが不動産業界人とは思わなかった。

逆に残り19名はどのような方達か。不動産オーナー(居住用不動産検討者や投資家も含め)が8名、建設業関係が3名、金融関係が同じく2名、IT関係が2名であとはその他4名という方達であった。
ろくに広告もしていないのだから、よくこのセミナーを見つけてお越しいただけたという話なのだが、不動産オーナーや売買の消費者の方に話しを聞くと常に不動産のセミナーや講座がないかネットサーフィンしており、そこでこのセミナーを見つけたらしい。そして、その参加動機は何かと言うとおおむね一言。「不動産取引を理解しておいた方が良い取引ができるから」そうだろうなという言葉である。中にはかなり分厚い実務書もお持ちの方もいて、そこまで勉強しているのかと少し感動もした。一方他業種の方は「上から不動産を勉強にしておくように」とか「関連業務だから」といったものであった。

広告やセミナーの内容、私のバリューの是非はともかく、単純にこの集客人数の差から、不動産業界人と顧客や他業種の人の不動産知識やスキルを学ぼうという意欲の差は大きく感じられないだろうか?
このことからもネットを使えば一定水準の不動産知識やスキルを学べる機会を誰もが得られる時代において、学習意欲が高い顧客や他業種の人達を相手にプロとして取引を手伝うには当然高いレベルの不動産知識やスキルは求められる、そう考えるのが自然なような気がするが皆さんどうであろうか。

説明力と予見力のスキルを持ちたい

それではどのような不動産知識・スキルが必要になるのか?ということだが取引においては法律、金融、建築などのベースとなる知識をより高く、かつ具体的な実務スキルを高くするということにつきるだろうと思う。芸がない答えと言えばそれまでだが、意外にそもそも顧客対応に必要な知識・スキルを持ち合わせていない営業パーソンも少なくない。そのため基本に忠実にベースを高めるのが正解なのではないだろうか。

ただ、もう少し細かく言えばこの2つのスキルが欲しいと思う。
1つ目は、具体的に分かり易く説明できるスキル。
池上彰さんを見ていると難しいことを分かり易く説明できる人に人気が集まるのがよく分かる。ただ、それにはベースとなる不動産の知識を高度なレベルで自分のモノにしておかないと顧客にはやさしく説明できない。なので、専門用語が多い不動産の業務を実務面まで落として自身で細かいところまで理解しておくようにしたい。たとえば、なぜ買主は所有権移転登記時に印鑑証明書が不要なのか。そんなところまで理解しておけば、顧客に取引について分かり易く説明できるに違いない。

2つ目は、将来起こりうることを予見して具体的な指示ができるスキル。
1つ目の発展系とも言える。それなりの実務力がついてからとなるが、顧客の将来の危険を避けるため、また無駄を少なくするために必要なことを具体的に指示できるスキルがあると良い。顧客から依頼を受けた時点で解決までの絵を描き、そこに至るまでの具体的道順が分かるようになればスキルがあると言える。「この時点でこのようなことが起きますので、事前にこうして下さいね」と言えれば最高だ。

プロとアマチュアの違いはこの予見力の差にあると思う。

シェア商品化する知識・スキルも必須になる?

取引以外の不動産全般に求められるスキルにも少し触れる。
おそらく不動産をシェア化して商品にする知識・スキルが必要になってくると思う。大きい物を小分けにして、多くの人にリーズナブルに気安く使ってもらえるようにする知識・スキルのことである。それは、現代は今ある資源をどう有効活用するのかを考え実践する時代らしいからだ。シェアハウスに始まり、直近では民泊(エアビー)など様々なシェア商品が生まれて来ていることからもこの不動産シェア化の流れは続くと思う。

この背景には顧客の多様化した不動産サービスへの要望があるのだと思う。
今後もますます多様化するだろう顧客の要望に法律、建築、金融などの各種不動産知識・スキルを活かして不動産を物理的時間的に小分けにしてシェア商品化して答えていく。これには知識とスキルが必要なためネットに置き換わられない不動産会社の仕事の1つになるに違いない。

不動産ビジネス実務学校を始める理由

消費者視点で理論と実務をどう結び付けていくのか。そこに焦点を合わせて学んでいく。消費者視点で理論と実務をどう結び付けていくのか。そこに焦点を合わせて学んでいく。

ここまでお読みいただいて「よし不動産知識・スキルを学ぼう!」と思っても立ちはだかるのが、今提供されている不動産知識・スキルは法律などの理論か、もしくは自分の経験談が中心の実務のどちらかに偏りすぎていて、多くの方は自分の中で消化できない、役に立つのか少し疑問と感じて先に進めないという壁である。その他には実務書が分厚くて、なかなか意欲が分かない。専門用語が分かりづらいということもあるが、メインは先述の通りだと思う。

本来、不動産知識・スキルで得たいのは、消費者が言うことに対してその解決策として理論構成はこうであって、それを具体的にしていくのはこのような実務をしていかないといけない、ということだと思う。しかも、そこそこ客観的でかなり細かい実務も含めてあるのが好ましい。ただ、あまりそういったセミナーや本などの商品が少ないのが現実である。

その理由は簡単だ。これらについて話をしたり書ける実務家は、自分の仕事をしていた方がはるかに売り上げが高いので、それを止めてわざわざ教えるようなことは何か動機がないとしない。

なので、皆さん自身で学ぼうと思ったら、そう多くない機会で実務家の話を聞きにいくか、先達の話しや本、ネットで多くの情報を吸収し、自分の頭で理論と実務をくっつけてやるしかない。結局それが最善の方法になる…と思っていたが、私自身それでやってきてかなり時間がかかって遠回りした感じがしている。

そこで、実験的に様々な不動産会社の経営者、コンサルタント、研究者の方々に声をかけて実務講座をつくってみた。取引だけに絞れば実務系のテキストを用意して、理論からどう具体的な実務を行うかのコースもつくってみた。今回は還元セミナーの失敗をもとに不動産業界へはあまり広告を行っていないので、すでに申し込みがあった方は不動産オーナーや他業種の方が多いが、少なからず不動産会社にお勤めの方もいる。もしご興味があれば参加してみて欲しい。

ここで得られた成果や、失敗はまたHOME'S PRESSにアップしてみたいと思う。
どちらにしろ、宅地建物取引主任者が宅地建物取引士と士業になったのが昨年。不動産業界自体が全体的に底上げが必要になりつつあるのだと思う。そのような時代にこの実務講座が一助になれば幸いである。

※不動産ビジネス実務講座:http://www.mf-soudan.com/school/

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