2025年は1月と12月にそれぞれ0.25%の利上げを実施 住宅ローン金利も確実に上昇

日銀は2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%にすることを決めた。0.75%の金利水準になるのは1995年9月以来のことだから、実に30年3ヶ月振りということになる。この間、誤解を恐れずに言えば日本経済は停滞し続けていたとも言えるから、植田総裁の論旨に沿って「賃金と物価がほとんど変化しないzero norm(ゼロノルム:期待水準が動かない状態)の世界に戻る可能性は大きく低下している」と考えるのであれば、今回の利上げは、これからの経済成長と賃金上昇によって景気が拡大する期待の表れと見ることもできる。

確かに、人への投資と成長分野への設備投資が進めば、労働生産性の向上によって賃金と物価の循環メカニズムが一段と強まっていくという理想的なシナリオが描けるのだが、これは春闘でベアが満額回答もしくはそれ以上を得られる見込みの高い大手企業中心の世界観で成り立つことであって、中小企業も含めて算出される全国の実質賃金指数(2020年平均=100)は足元でも103ポイント前後に留まっており、2021年以降継続する円安によって物価上昇は続いていても賃金は事実上横ばいだから、植田総裁が期待する賃金と物価の循環メカニズムはほぼ稼働していないと言わざるを得ない。

つまり、現状では主に日米の政策金利差によって発生しているとされる“過度な円安”を是正しつつ賃金の上昇を促すためにも、政策金利の引き上げが必要とのポジションを取っているのだが、日米の実質金利、すなわち政策金利から消費者物価指数の上昇率(=インフレ率)などを差し引いた金利は「日米の政策金利差が縮小しても円安に歯止めがかからない理由」に記した通り、日本はインフレ率との関係性では依然として-3%前後のマイナス金利(現金資産の価値が目減りする状態)なのに対し、アメリカの実質金利は+3%程度の水準を維持しているから、この金利差は名目金利差よりさらに大きく、また縮小もしていないので、為替相場は依然として円安が継続し進行することになる。

植田日銀はさらに政策金利を引き上げたいとする意向を表明

植田総裁は、12月25日の経団連での講演で、「物価変動を考慮した実質金利はなお低い水準であり、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げる」との考えを表明しているから、2026年も利上げの可能性は高いと考えられる。つまり、今後も住宅ローンの金利は変動・固定にかかわらず徐々に上昇していく公算が高いということだ。ただし、住宅価格の高騰が都市圏を中心に発生するなかで住宅ローン金利が上昇すれば、住宅市場全体への影響は避けられない。仮に、日本経済を支える重要な柱の1つである住宅産業がシュリンクすれば、賃金と物価の循環メカニズムを強めるどころか、景気後退局面に陥る可能性すら考えられる。

足元の住宅ローン金利上昇局面に対しては、各金融機関が返済期間35年を超える“超長期ローン”や、夫婦でペアローンを組んだ際にいずれかに万一のことがあれば配偶者のローンも終了する“ペア連生ローン”、預金額に応じてローン金利が優遇される“預金連動型ローン”など、住宅ローン商品を多様化することによってユーザーを何とか繋ぎ止めてはいるが、日銀が今後も植田総裁の意向通り利上げを続けるのであれば、少なくとも住宅市場には直接的で強い影響があるものと考えておく必要はあるだろう。ポイントになるのは“失われた30年”から脱し始めている日本経済の“リハビリ期間”をどれくらい考えておくかであり、日本経済が着実に健康体に戻るまで日銀が金融政策の健全化を我慢できるかだ。

90年バブルが弾けた直接の原因は、当時の大蔵省が金融機関に対し、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑制するよう通達した“総量規制”だったが、それほどではないにせよ、日銀の利上げは住宅産業(実需向け)に確実に大きく影響するのだから、2025年は1月の利上げから11ヶ月間をファンダメンタルズの確認作業に費やしたように、2026年も熟慮に熟慮を重ねて慎重に判断してもらいたいものだ。

中山登志朗のニュースピックアップとは

LIFULL HOME'S総合研究所副所長兼チーフアナリストの中山登志朗が、不動産業界に関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。業界関係者はもちろん、不動産に関心がある人にとっても、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。

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ホームズ君

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