宮益坂ってどんな場所?

宮益坂(みやますざか)は、JR渋谷駅宮益坂口から青山通り方面に向かって延びる坂であり、渋谷を代表する坂のひとつである。坂名の由来は、坂の途中に位置する宮益御嶽神社とされ、古くから地域の人々に親しまれてきた。第二次世界大戦後の復興期以降、この一帯は店舗や事務所が立ち並ぶビジネス街へと発展し、現在では金融機関や大手企業のオフィスに加えて、IT関連企業の拠点、飲食店、物販店舗が集まる活気あるエリアとなっている。

一方で、宮益坂には都市構造上の課題も存在する。坂の高低差に加え、明治通りなどの幹線道路が交錯し、歩行者動線が分断されている。また、周辺には1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた建物の割合が高く、災害時の安全確保の観点から都市機能の更新が求められている。

こうした状況を踏まえ、宮益坂地区は都市計画の観点から渋谷駅東側における都市再生の重点エリアとして認識・位置付けられるようになった。そして、2023年4月には再開発に必要な都市計画決定が行われ、2025年4月には東京都による市街地再開発組合が認可され、事業が本格始動している。

JR渋谷駅宮益坂口、渋谷スクランブルスクエア東棟、渋谷ヒカリエ ※2025年9月撮影JR渋谷駅宮益坂口、渋谷スクランブルスクエア東棟、渋谷ヒカリエ ※2025年9月撮影

渋谷駅周辺で進む再開発の流れ

渋谷駅周辺では、東京都による副都心としての位置付けや東京都都市計画区域マスタープランによる中核的拠点の位置付け、さらには2005年の「都市再生緊急整備地域」指定以降、官民が連携して大規模な都市再生プロジェクトを進めてきた。特に当時は経済停滞の中で、経済成長の名のもとに国が強力に支援し、国家的な市街地再編・再構築プロジェクトとして進められてきた背景がある。その結果、渋谷駅の機能更新と都市基盤整備を起点に、街全体が段階的に新しい姿へと変化している。

その代表例として、2012年に開業した渋谷ヒカリエは商業とオフィスを融合させた複合施設として東口のランドマークとなった。2018年には渋谷ストリーム、翌年には渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期となる東棟が完成し、約230メートルの高さを誇る展望施設「渋谷スカイ」は国内外から注目を集めている。以前から渋谷は若者が集まる街として知られていたが、近年では訪日客の姿も多く、忠犬ハチ公像の前には記念写真を撮るための行列ができる光景も見られる。

2010年代後半から2020年代にかけても開発は続き、渋谷フクラス(2019年)、渋谷ソラスタ(2019年)、桜丘口地区の渋谷サクラステージ(2023年)など、多様な用途を備えた建築物が新たな街並みを形づくってきた。

渋谷ストリーム ※2025年9月撮影渋谷ストリーム ※2025年9月撮影
渋谷ストリーム ※2025年9月撮影渋谷サクラステージ ※2025年9月撮影

また、現在は渋谷駅本体そのものの改良工事が進行中である。東急・JR東日本・東京メトロなどが中心となって進める「渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)」では、中央棟・西棟の建設や大規模な歩行者ネットワーク整備が進められており、2030〜2034年度にかけて段階的な完成を迎える予定だ。

こうした連続的な再開発の流れの中で、宮益坂地区における市街地再開発も重要な位置を占める。駅東側と青山方面を結ぶ結節点として、利便性の向上、防災機能の強化、そして周辺の賑わいを高める役割が期待されており、渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)における歩行者ネットワーク整備と接続するなど、連続的な街並みがつくられることとなる。

宮益坂で始まる新しい再開発とは

2025年4月、「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」における再開発組合が東京都の認可を受け、具体的に動き出した。施行地区は渋谷区渋谷一丁目および二丁目にまたがる約1.4ヘクタールで、明治通りと大山街道(宮益坂)に面している。

計画はA・B・Cの3街区で構成されている。A街区には地上33階・高さ約180メートルの超高層建築物が建設され、国際水準の宿泊施設やオフィス、商業施設、ホール、産業育成支援施設などが導入される計画となっている。これにより、渋谷に不足していたとされる大規模ホールや高品質・グレードのホテルが整備され、国際的なビジネス交流の拠点としての役割が期待されている。

B街区は地上7階の商業施設が中心となり、駅やヒカリエデッキと接続するアーバン・コアを整備し、街全体の回遊性が高められる。C街区では、宮益坂の由来となっている宮益御嶽神社が再整備され、神社参道からつながる小路等が整備される計画となっている。

また、本事業では歩行者ネットワークの改善が大きな特徴となる。A街区とB街区を4階レベルでつなぐ上空通路、駅から大山街道へ導くアーバン・コア、地下広場などが整備され、渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)と連動して進められる。

宮益坂地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:国土地理院空中写真を加工宮益坂地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:国土地理院空中写真を加工
宮益坂地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:国土地理院空中写真を加工断面イメージ等 ※出典:東京都(2025年4月28日)「宮益坂地区市街地再開発組合の設立を認可します」

今回の再開発事業の大きな設計方針は、渋谷駅と周辺を結ぶ歩行者ネットワークを強化し、多様な都市機能を集積することで、安全・快適で回遊性のあるまちの実現や、渋谷に不足する大規模ホールや宿泊施設、産業支援施設を整備し、国際的なビジネス交流拠点の形成にある。これらに加えて、省エネルギー化や防災施設の整備を進め、環境負荷の低減と防災力強化を図ることとしている。

つまりは、渋谷駅東側に新たに駅とまちがつながる歩行者ネットワーク空間と多様な都市機能を整備し、国際交流と防災・環境に対応した新しいまちをつくる再開発計画といえる。

<A街区>
【建物概要】
・建物名称:未定(宮益坂地区第一種市街地再開発事業 A街区)
・敷地面積:約7,930m2
・用  途:事務所、店舗、ホール、宿泊滞在施設、産業育成支援施設、駐車場など
・建築面積:約6,790m2
・延べ面積:約192,057m2
・規  模:地下3階・地上33階、塔屋2階
・高  さ:約180m
・総事業費:約2,431億円(A〜C街区の全体事業費)

<B街区>
【建物概要】
・建物名称:未定(宮益坂地区第一種市街地再開発事業 B街区)
・敷地面積:約2,175m2
・用  途:店舗など
・建築面積:約1,730m2
・延べ面積:約8,490m2
・規  模:地下2階・地上7階
・高  さ:約40m

<C街区>
【建物概要】
・建物名称:未定(宮益坂地区第一種市街地再開発事業 C街区)
・敷地面積:約759m2
・用  途:神社など
・建築面積:約480m2
・延べ面積:約754m2
・規  模:地下1階・地上2階
・高  さ:約10m
※出典:渋谷区「宮益坂地区市街地再開発組合 施行地区及び設計の概要を表示する図書(都市再開発法第19条第4項)」

上記のほか、地上・地下広場や通路、空地などが設けられる。

宮益坂地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:国土地理院空中写真を加工図 整備するアーバン・コアと地下広場および上空通路のイメージパース ※宮益坂地区市街地再開発準備組合、東急株式会社、ヒューリック株式会社(2025年4月30日)『「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」 市街地再開発組合設立認可のお知らせ ~渋谷駅周辺の都市再生第2ステージを促進する東口の起点開発が本格化します~』
宮益坂地区第一種市街地再開発事業の位置 ※出典:国土地理院空中写真を加工御嶽神社の建て替え、再整備を行うC街区(右)と大山街道のイメージパース ※宮益坂地区市街地再開発準備組合、東急株式会社、ヒューリック株式会社(2025年4月30日)『「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」 市街地再開発組合設立認可のお知らせ ~渋谷駅周辺の都市再生第2ステージを促進する東口の起点開発が本格化します~』

いつ完成する?事業スケジュール

宮益坂地区の再開発事業は、2025年4月の組合設立認可を皮切りに、今後数年間にわたり段階的に進められる。建築工事は2027年10月に着工し、2031年度の完成を予定している

スケジュールを整理すると次のとおりとなる。
• 2025年4月:再開発組合設立認可
• 2027年10月:建築工事着工(予定)
• 2031年度:全体竣工・開業(予定)

竣工時期である2031年度は、渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)における東京メトロ銀座線渋谷駅上空の歩行者ネットワーク完成(2030年度予定)や、渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟の完成(2031年度予定)と時期を同じくする。渋谷駅全体の大規模再開発が進む中で、宮益坂地区の整備は、駅東口の利便性を先行的に高める重要な節目となることが考えられる。

写真 渋谷ヒカリエより渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)の状況を撮影 ※2025年9月撮影写真 渋谷ヒカリエより渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)の状況を撮影 ※2025年9月撮影
写真 渋谷ヒカリエより渋谷駅街区計画(第Ⅱ期)の状況を撮影 ※2025年9月撮影図 外観イメージパース ※宮益坂地区市街地再開発準備組合、東急株式会社、ヒューリック株式会社(2025年4月30日)『「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」 市街地再開発組合設立認可のお知らせ ~渋谷駅周辺の都市再生第2ステージを促進する東口の起点開発が本格化します~』

完成後の街はどう変わる?

完成後の宮益坂地区は、渋谷駅東側の新しい顔として、大きく姿を変えることになる。

改めて、まず注目されるのは歩行者ネットワークの強化である。上空通路や地下広場が整備され、駅と青山方面をシームレスにつなぐ動線が確保される。雨の日でも快適に移動できる環境が整い、これまで課題とされてきた高低差や道路による分断は大きく解消される見通しだ。こうした改善は、通勤や日常の移動がスムーズになるだけでなく、住まい選びにおける「暮らしやすさ」の評価にも直結する。

次に、A街区に建設される高さ約180メートルの高層ビルには、オフィス、商業、宿泊、ホールといった多様な都市機能が導入される。特に国際水準のホテルや大規模ホールは、渋谷に不足していた機能を補完し、国際会議やイベントの誘致につながると見込まれる。こうした都市機能の高度化は、副都心としての役割を支えるだけでなく、周辺の住宅需要や賃貸ニーズを押し上げる要因にもなり得る。

一方、C街区では御嶽神社の再整備や小路の創出が計画され、歴史的・文化的な要素と現代的な都市空間が融合する。緑豊かな広場や人々が集いやすいスケールの空間は、来訪者に安らぎを与えるだけでなく、渋谷に暮らす人にとっても生活の質を高める効果が期待されている。

以上から、完成後の宮益坂地区は、企業・起業家にとっては利便性の高い拠点に、住民にとっては暮らしやすさと安心を備えた街に、そして訪れる人にとっても魅力的な目的地となるだろう。渋谷東口の都市ゲートとしての役割を果たし、長期的な視点で持続可能な都市空間が形成されることになる。住まい探しや賃貸ニーズを検討する際にも、この街の変化は大きな判断材料となるに違いない。

再開発予定地(宮益坂地区) ※2025年9月撮影再開発予定地(宮益坂地区) ※2025年9月撮影